解説記事2024年06月24日 税制改正解説 令和6年度における相続税・贈与税関係の改正について(2024年6月24日号・№1032)
税制改正解説
令和6年度における相続税・贈与税関係の改正について
笠原健人
租税特別措置法等の改正(相続税・贈与税関係)
一 公益信託に係る相続税・贈与税の見直し
1 改正の内容
公益信託に関する法律(令和6年法律第30号。以下「新公益信託法」という。)第2条第1項第1号に規定する公益信託(以下「新公益信託」という。)においては、平成19年度税制改正前のように、引き続き委託者が信託財産を有するものとして課税関係を規律する必要はないと考えられることから、旧相続税法附則第24項を削除することとされた。
① 受託者(個人)に対する課税
新公益信託の受託者が遺贈又は贈与により取得した財産(その信託財産として取得したもの)の価額は、相続税又は贈与税の課税価格に算入しないことが明確化された(相法12①四、21の3①四)。
② 受給者(個人)に対する課税
新公益信託から給付を受けた財産については、その新公益信託の信託目的にかかわらず、贈与税の課税価格に算入しないこととされた(相法21の3①一)。
③ 相続財産を公益信託の信託財産とするために支出した場合の相続税の非課税措置
本特例の対象となる相続財産を金銭に限定しないこととされた(措法70③)。また、相続財産を受け入れた新公益信託がその受入れの日から2年を経過した日までに終了(信託の併合による終了を除く。)をした場合又はその新公益信託の受託者がその受け入れた相続財産を同日までにその公益信託事務の用に供しない場合若しくは供しなくなった場合には、その相続財産の価額は、相続又は遺贈に係る相続税の課税価格の計算の基礎に算入することとされた(措法70④)。
2 適用関係
上記①②の改正は、新公益信託法の施行の日(新公益信託法の公布の日から起算して2年以内)から施行され(改正法附則1九)、上記③の改正は、新公益信託法の施行の日以後に支出をする財産について適用される(改正法附則54①)。
なお、新公益信託法においては、新公益信託法による改正前の公益信託ニ関スル法律(大正11年法律第62号。以下「旧公益信託法」という。)第1条に規定する公益信託(以下「旧公益信託」という。)は、移行期間(新公益信託法の施行の日から起算して2年を経過する日までの間をいう。)内に行政庁の認可を受けた場合には、新公益信託となることができるとされており、移行期間内にこの認可を受けない旧公益信託は、移行期間が満了する日に終了するものとする経過措置が設けられているところ(新公益信託法附則4①)、税制においても、この移行期間内に、相続財産に属する金銭を認定特定公益信託(注)(上記の認可を受けたものを除く。)の信託財産とするために支出した場合には、旧租税特別措置法第70条第3項及び第4項の規定の適用を受けることができることとする経過措置が設けられている(改正法附則54②、改正措令附則21)。
(注)「認定特定公益信託」とは、特定公益信託(旧公益信託法第1条に規定する公益信託で、信託の終了の時における信託財産がその信託財産に係る信託の委託者に帰属しないこと及びその信託事務の実施につき一定の要件を満たすものであることについて、主務大臣等により証明されたものをいう。)のうち、その目的が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するもので、その目的に関し相当と認められる業績が持続できることにつき主務大臣等の認定を受けたもの(その認定を受けた日の翌日から5年を経過していないものに限る。)をいう(旧措法70③、旧措令40の4)。
二 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置等の改正
1 改正前の制度の概要
(1)直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税
令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間にその直系尊属(父母、祖父母、養父母等)からの贈与により一定の要件を満たす住宅用家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」という。)の取得をした一定の要件を満たす受贈者(以下「特定受贈者」という。)については、その贈与により取得した住宅取得等資金のうち住宅資金非課税限度額(既にこの特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合には、その算入しなかった金額を控除した残額)までの金額については、贈与税の課税価格に算入しないこととされていた(旧措法70の2①)。
(注1)上記の住宅資金非課税限度額は、良質な住宅(注2)については1,000万円、一般の住宅については500万円とされていた(旧措法70の2②六)。
(注2)良質な住宅とは、①耐震住宅(耐震等級2以上又は免震建築物に該当する住宅)、②省エネ住宅(断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上の住宅)又は③バリアフリー住宅(高齢者等配慮対策等級3以上の住宅)をいう。
(2)特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例
平成15年1月1日から令和5年12月31日までの間にその年1月1日において60歳未満の者からの贈与により住宅取得等資金を取得した特定受贈者が、一定の要件を満たす住宅用家屋の新築、取得又は増改築等を行った場合には、その特定受贈者は、相続時精算課税制度を選択することができることとされていた(旧措法70の3)。
(3)東日本大震災の被災者が直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税
令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間(警戒区域設定指示等が行われた日においてその警戒区域設定指示等の対象区域内に所在する家屋をその居住の用に供していた者又はその居住の用に供しようとしていた者については、警戒区域設定指示等が行われた日からその警戒区域設定指示等が解除された日以後1年を経過する日までの間)にその直系尊属(父母、祖父母、養父母等)からの贈与により住宅取得等資金の取得をした一定の要件を満たす受贈者(以下「被災受贈者」という。)が、一定の要件を満たす住宅用家屋の新築、取得又は増改築等を行った場合には、その贈与により取得した住宅取得等資金のうち住宅資金非課税限度額(既にこの特例の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかった金額がある場合には、その算入しなかった金額を控除した残額)までの金額については、贈与税の課税価格に算入しないこととされていた(旧震災税特法38の2①)。
(注)上記の住宅資金非課税限度額は、良質な住宅については1,500万円、一般の住宅については1,000万円とされていた(旧震災税特法38の2②六)。
2 改正の内容
(1)適用期限等の見直し
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税(以下「非課税特例」という。)及び特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例の適用期限(令和5年12月31日)が令和8年12月31日まで延長された(措法70の2①、70の3①)。
東日本大震災の被災者が直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税(以下「震災特例」という。)については、次の①又は②の被災受贈者の区分に応じてそれぞれ適用期間が定められていたが、このうち①については、本特例の適用対象から除外された(震災税特法38の2①、②一ニ)。
① 東日本大震災によりその居住の用に供していた家屋又はその居住の用に供しようとしていた家屋が滅失をした者 令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間
② 警戒区域設定指示等が行われた日においてその警戒区域設定指示等の対象区域内に所在する家屋をその居住の用に供していた者又はその居住の用に供しようとしていた者(上記①に掲げる者を除く。) 警戒区域設定指示等が行われた日からその警戒区域設定指示等が解除された日以後1年を経過する日までの間
(2)住宅資金非課税限度額の上乗せ措置の適用対象となる住宅用の家屋の要件の見直し
従来、住宅資金非課税限度額が1,000万円(震災税特法については、1,500万円)とされていた良質な住宅のうち、新築をした住宅用の家屋又は取得をした建築後使用されたことのない住宅用の家屋については、その要件がエネルギーの使用の合理化に著しく資する基準(注1)に引き上げられた(措法70の2②六イ(1)、震災税特法38の2②六イ(1)、措令40の4の2⑧、震災税特令29の2⑧)。なお、この引上げ後の基準に適合する住宅用の家屋について本措置の適用を受けようとする者は、その基準に適合する住宅用の家屋に該当する旨を証する書類(注2)を贈与税の申告書に添付しなければならない(措規23の5の2⑤、震災税特規14の2⑥)。
(注1)この基準は、省エネ性能が断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上に相当するものである(令和6年国土交通省告示319による改正後の平成24年国土交通省告示389①、令和6年国土交通省告示322による改正後の平成24年国土交通省告示392①)。
(注2)この書類は、具体的には国土交通省の告示で定められている(令和6年国土交通省告示320、令和6年国土交通省告示323)。
3 適用関係
(1)上記2の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得をする住宅取得等資金に係る贈与税について適用され、同日前に贈与により取得をした住宅取得等資金に係る贈与税については、従前どおりである(改正法附則54④、62①)。
(2)令和6年1月1日以後に住宅取得等資金の贈与を受けて住宅用家屋の新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をする場合において、その住宅用家屋の省エネ性能が断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上であり、かつ、その住宅用家屋が次の①又は②のいずれかに該当するものであるときは、その住宅用家屋は省エネ性能が断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上に相当する住宅用家屋とみなして、非課税特例及び震災特例が適用される(改正法附則54⑤、62②)。
① その住宅用家屋が令和5年12月31日以前に建築確認を受けているものであること
② その住宅用家屋が令和6年6月30日以前に建築されたものであること
三 次世代システムへの対応
1 改正の内容
国税庁長官は、次の申告書又は調書の書式について必要があると認めるときは、所要の事項を付記すること又は一部の事項を削除することができることとされた。また、この付記や削除に併せて、その書式の大きさについても、産業標準化法第20条第1項に規定する日本産業規格に適合する大きさに変更することができることとされた(相規8②、31②)。
① 障害者非課税信託申告書(相規第1号書式)
② 障害者非課税信託取消申告書(相規第2号書式)
③ 障害者非課税信託廃止申告書(相規第3号書式)
④ 障害者非課税信託に関する異動申告書(相規第4号書式)
⑤ 生命保険金・共済金受取人別支払調書(相規第5号書式)
⑥ 損害(死亡)保険金・共済金受取人別支払調書(相規第6号書式)
⑦ 退職手当金等受給者別支払調書(相規第7号書式)
⑧ 保険契約者等の異動に関する調書(相規第8号書式)
⑨ 信託に関する受益者別(委託者別)調書(相規第9号書式)
2 適用関係
上記の改正は、令和8年9月1日から施行される(改正相規附則)。
四 調書の電磁的提出基準の見直し
1 改正の内容
電子情報処理組織(e-Tax又は認定クラウド)を使用する方法等による提出が義務付けられる調書の枚数の基準が、30枚以上(改正前:100枚以上)に引き下げられた(相法59⑤)。
2 適用関係
上記の改正は、令和9年1月1日以後に提出すべき調書について適用され、同日前に提出すべき調書については、従前どおりである(改正法附則12②)。
五 相続税法の規定に基づく更正の請求の対象となる事由の拡充
1 改正の内容
民法等の一部を改正する法律(令和4年法律第102号)による民法の改正により、嫡出推定規定の見直しが行われている。
これに関連して、被相続人の相続の開始後、民法第774条の規定により(その被相続人以外の者の)嫡出であることについて否認権が行使され、同法第772条の規定により新たにその被相続人が父と定められた者が相続人として遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既に分割その他の処分をしていたときは、その遺産の分割の請求は、価額のみによる支払の請求により行うこととされた(民法778の4)。
この価額支払請求を受けた他の共同相続人については、弁済すべき額が確定した場合には、その課税価格及び相続税額が過大となることになる。そこで、更正の請求の対象となる事由の範囲に、「民法第778条の4の規定による請求があったことにより弁済すべき額が確定したこと」が追加された(相令8②二)。
2 適用関係
上記の改正は、令和6年4月1日から施行される(改正相令附則)。
六 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の見直し
1 改正の内容
児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)による児童福祉法の改正に伴い、「子育て関係費用」の対象となる施設の範囲に、児童福祉法に規定する子育て世帯訪問支援事業又は親子関係形成支援事業に係る施設が追加された(措規23の5の4②二)。
2 適用関係
上記の改正は、令和6年4月1日から施行される(改正措規附則1)。
七 非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予の特例制度等の改正
1 改正の内容
特例承継計画の提出期限が令和8年3月31日まで2年延長された(円滑化省令17②)。また、特例承継計画の提出期限の延長にあわせて、個人事業承継計画の提出期限についても令和8年3月31日まで2年延長された(円滑化省令17④)。
2 適用関係
上記の改正は、令和6年4月1日から施行される(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和6年経済産業省令第27号)附則①)。
租税特別措置法等の改正(登録免許税関係)
一 職権登記等の非課税の範囲の改正
1 改正の内容
登録免許税が非課税とされる登記機関が職権に基づいてする登記又は登録で政令で定めるものの範囲が登録免許税法別表第1第32号(人の資格の登録若しくは認定又は技能証明)に掲げる登録等まで拡充された(登令2)。
2 適用関係
上記の改正は、令和6年4月1日以後に受ける登録等に係る登録免許税について適用される(改正登令附則)。
二 脱炭素成長型経済構造移行推進機構の創設に伴う非課税の登記等の範囲の改正
1 改正の内容
登録免許税法別表第3に掲げる者が自己のために受ける一定の登記等については登録免許税を課さないこととされているところ(登法4②)、この別表第3に掲げる者の範囲に脱炭素成長型経済構造移行推進機構(以下「GX推進機構」という。)が追加され、同機構が受ける同機構の事務所用建物の所有権の取得登記又は当該建物の敷地の用に供する土地の権利の取得登記については、登録免許税が課されないこととされた(登法別表第3の16の項)。
なお、この非課税措置の適用を受けようとするGX推進機構は、その登記の申請書に、その登記を受けようとする不動産がGX推進機構の事務所用建物又はその敷地の用に供するものであることを証する経済産業大臣の書類を添付することとされている(登規4の5)。
2 適用関係
上記の改正は、令和6年4月1日以後にGX推進機構が受ける登記に係る登録免許税について適用される(改正法附則1)。
三 認定特別事業再編計画に基づき行う登記の税率の軽減措置の創設等
1 改正の内容
次に掲げる事項について登記を受ける場合において、その事項が、産業競争力強化法に規定する認定特別事業再編計画に係る認定に係る一定の特別事業再編に伴うものであって新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律(令和6年法律第45号)の施行の日から令和9年3月31日までの間にされたその認定に係るものであるときは、その登記に係る登録免許税の税率は、その認定の日から2年以内に登記を受けるものに限り、次に掲げる事項の区分に応じ、それぞれ次に定める割合とされる(措法80②)。
① 合併による資本金の額の増加 イ又はロに掲げる部分の区分に応じイ又はロに定める割合
イ 合併により増加した資本金の額のうち、合併により消滅した会社のその合併の直前における資本金の額に対応する部分 1,000分の1
ロ イに掲げる部分以外の部分(その認定により増加した資本金の額のうち3,000億円を超える部分を除く。) 1,000分の1.5
② 分割による資本金の額の増加(その認定により増加した資本金の額のうち3,000億円を超える部分を除く。) 1,000分の3
③ 事業に必要な資産の譲受けの場合における不動産又は船舶の所有権の取得 イ又はロに掲げる事項の区分に応じイ又はロに定める割合
イ 不動産の所有権の取得 1,000分の12
ロ 船舶の所有権の取得 1,000分の18
④ 合併による不動産又は船舶の所有権の取得 イ又はロに掲げる事項の区分に応じイ又はロに定める割合
イ 不動産の所有権の取得 1,000分の1
ロ 船舶の所有権の取得 1,000分の2
⑤ 分割による不動産又は船舶の所有権の取得 イ又はロに掲げる事項の区分に応じイ又はロに定める割合
イ 不動産の所有権の取得 1,000分の1
ロ 船舶の所有権の取得 1,000分の18
この特例の適用を受けようとする者は、その登記の申請書に、その登記が上記に該当するものであることについての主務大臣の証明書で、その登記を受ける事項が上記に該当すること及びその事項が記載された認定特別事業再編計画に係る認定の日の記載があるものを添付しなければならない(措規30の2④)。
2 適用関係
上記の特例は、新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律(令和6年法律第45号)の施行の日以後に受ける登記に係る登録免許税について適用される(改正法附則1十三イ)。
四 特定創業支援等事業による支援を受けて行う登記の税率の軽減措置の改正
1 改正の内容
特例の適用対象となる登記の範囲から合名会社及び合資会社の設立登記が除外された上、その適用期限が令和9年3月31日まで3年間延長された(措法80③)。
2 適用関係
上記の改正は、令和6年4月1日以後に個人が受ける株式会社又は合同会社の設立登記に係る登録免許税について適用される(改正法附則1)。
五 認定開発供給実施計画に基づき行う登記の税率の軽減措置の創設
1 制度の内容
次に掲げる事項について登記を受ける場合において、その事項が、農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律(令和6年6月19日現在未公布(令和6年中に公布予定))に規定する認定開発供給実施計画に係る認定に係るものであって同法の施行の日から令和9年3月31日までの間にされたその認定に係るものであるときは、その登記に係る登録免許税の税率は、その認定の日から1年以内に登記を受けるものに限り、次に掲げる事項の区分に応じ、それぞれ次に定める割合とされる(措法80の3)。
① 株式会社の設立又は資本金の額の増加(その認定により増加した資本金の額のうち3,000億円を超える部分及び②③に掲げるものを除く。) 1,000分の3.5
② 合併による株式会社の設立又は資本金の額の増加 イ又はロに掲げる部分の区分に応じイ又はロに定める割合
イ 資本金の額又は合併により増加した資本金の額のうち、合併により消滅した会社のその合併の直前における資本金の額に対応する部分 1,000分の1
ロ イに掲げる部分以外の部分(その認定により増加した資本金の額のうち3,000億円を超える部分を除く。) 1,000分の3.5
③ 分割による株式会社の設立又は資本金の額の増加(その認定により増加した資本金の額のうち3,000億円を超える部分を除く。) 1,000分の5
④ 法人の設立、資本金若しくは出資金の額の増加又は事業に必要な資産の譲受けの場合における不動産の所有権の取得(⑤⑥に掲げるものを除く。) 1,000分の16
⑤ 合併による不動産の所有権の取得 1,000分の2
⑥ 分割による不動産の所有権の取得 1,000分の4
この特例の適用を受けようとする者は、その登記の申請書に、その登記が上記に該当するものであることについての農林水産大臣の証明書で、その登記を受ける事項が上記に該当すること及びその事項が記載された認定開発供給実施計画に係る認定の日の記載があるものを添付しなければならない(措規30の4①)。
2 適用関係
上記の特例は、農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律(令和6年6月19日現在未公布(令和6年中に公布予定))の施行の日以後に受ける登記に係る登録免許税について適用される(改正法附則1十四)。
六 特定国際船舶の所有権の保存登記等の税率の軽減措置の改正
1 改正の内容
(1)本特例の適用期限が、令和9年3月31日まで3年延長された。
(2)特例の対象となる建造した船舶が海上運送法第39条の23に規定する認定特定船舶導入計画に基づき建造した特定国際船舶(注1)に限定された上、その軽減税率が1,000分の2(改正前:1,000分の3.5)に引き下げられた(措法82①③)。
(注1)「特定国際船舶」とは、対象船舶(注2)のうち海上運送法第39条の19第1項に規定する特定船舶に該当するものをいう。
(注2)「対象船舶」とは、国際船舶のうち総トン数が1万トン以上のものをいう。
(3)国際船舶の類型が、次の2類型に改められた(海上運送法施行規則43①四)。
イ 承認船員配乗船(船舶職員及び小型船舶操縦者法第23条第1項の承認を受けた者が船舶職員として乗り組んでいる船舶)
ロ 代替燃料船(環境への負荷低減に資する物質(液化天然ガス等)を燃料とする船舶)
2 適用関係
上記(2)の改正は、令和6年4月1日以後に受ける登記に係る登録免許税について適用され(改正法附則1)、上記(3)の改正は、令和6年4月1日から施行される(海上運送法施行規則の一部を改正する省令(令和6年国土交通省令第47号)附則①)。
七 都市緑化支援機構が土地を取得した場合の所有権の移転登記の免税措置の創設
1 制度の内容
都市緑化支援機構(公益社団法人又は公益財団法人であるものに限る。)が、都市緑地法等の一部を改正する法律(令和6年法律第40号)の施行の日から令和8年3月31日までの間に、都市緑地法第17条の2第4項の規定又は古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法第13条第4項の規定により土地の所有権の取得をした場合には、その土地の所有権の移転の登記については、その取得後1年以内に登記を受けるものに限り、登録免許税を課さないこととされた(措法82の2)。
なお、本特例の適用を受けようとする都市緑化支援機構は、その登記の申請書に、その登記に係る土地の所有権の取得が都市緑地法第17条の2第4項の規定又は古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法第13条第4項の規定によるものであること及びその取得の日の記載がある都道府県知事又は市長の証明書を添付しなければならない(措規31の3)。
2 適用関係
上記の特例は、都市緑地法等の一部を改正する法律(令和6年法律第40号)の施行の日以後に受ける登記に係る登録免許税について適用される(改正法附則1十ロ)。
八 認定鉄道事業再構築実施計画に基づき不動産を取得した場合の所有権等の移転登記の税率の軽減措置の創設
1 制度の内容
地域公共交通の活性化及び再生に関する法律第2条第2号イに規定する鉄道事業者(同法第25条第1項の規定により鉄道事業法第3条第1項の許可を受けたものとみなされた者を含む。以下同じ。)が、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律第24条第8項に規定する認定鉄道事業再構築実施計画(令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)に基づき同法第2条第9号に規定する鉄道事業再構築事業に係る旅客鉄道事業の用に供する土地又は建物(注)の所有権、地上権又は賃借権の取得をした場合には、その土地又は建物の所有権、地上権又は賃借権の移転の登記に係る登録免許税の税率は、その認定の日から1年以内に登記を受けるものに限り、所有権の移転の登記については1,000分の10(本則1,000分の20)とされ、地上権又は賃借権の移転の登記については1,000分の5(本則1,000分の10)とされる。
なお、本特例の適用を受けようとする者は、その登記の申請書に、その登記に係る土地又は建物の所有権、地上権又は賃借権を取得した者が鉄道事業者であること、その土地又は建物が下記(注)の要件を満たすものであること及び認定鉄道事業再構築実施計画の認定の日の記載がある国土交通大臣の証明書を添付しなければならない(措規31の5の3)。
(注)この特例の対象となる土地又は建物は、旧所有者が、認定鉄道事業再構築実施計画に係る国土交通大臣の認定の日において鉄道事業再構築事業に係る旅客鉄道事業の用に供していたものであって、新所有者が、その取得の日以後遅滞なく、旅客鉄道事業の用に供することが確実であると見込まれるものに限られる(措令43の4)。
2 適用関係
上記の特例は、令和6年4月1日以後に受ける登記に係る登録免許税について適用される(改正法附則1)。
九 租税特別措置等の適用期限の延長
1 次に掲げる租税特別措置等の適用期限が令和8年3月31日まで2年延長された。
(1)マンション建替事業の施行者等が受ける権利変換手続開始の登記等の免税措置(措法76)
(2)農地中間管理機構が農用地等を取得した場合の所有権の移転登記の税率の軽減措置(措法77の2)
(3)経営強化計画等に基づき行う登記の税率の軽減措置(措法80の2)
(4)特定連絡道路工事施行者が取得した特定連絡道路に係る土地の所有権の移転登記の免税措置(措法84の2の2)
(5)経営強化計画に基づき行う登記の税率の軽減措置(震災税特法41の2)
2 次に掲げる租税特別措置の適用期限が令和9年3月31日まで3年延長された。
(1)住宅用家屋の所有権の保存登記若しくは移転登記又は住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記の税率の軽減措置(措法72の2、73、75)
(2)特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等の税率の軽減措置(措法74)
(3)認定低炭素住宅の所有権の保存登記等の税率の軽減措置(措法74の2)
(4)特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記の税率の軽減措置(措法74の3)
(5)産業競争力強化法に規定する認定事業再編計画等に基づき行う登記の税率の軽減措置(措法80①)
十 租税特別措置の廃止
1 農業競争力強化支援法に係る認定事業再編計画に基づき行う登記の税率の軽減措置の廃止
(1)改正前の制度の概要
次に掲げる事項について登記を受ける場合において、その事項が、農業競争力強化支援法に規定する認定事業再編計画に係る認定に係るものであって同法の施行の日から令和7年3月31日までの間にされたその認定に係るものであるときは、その登記に係る登録免許税の税率は、その認定の日から1年以内に登記を受けるものに限り、次に掲げる事項の区分に応じ、それぞれ次に定める割合とされていた(旧措法80④)。
① 株式会社の設立又は資本金の額の増加(その認定により増加した資本金の額のうち3,000億円を超える部分及び②③に掲げるものを除く。) 1,000分の3.5
② 合併による株式会社の設立又は資本金の額の増加 イ又はロに掲げる部分の区分に応じイ又はロに定める割合
イ 資本金の額又は合併により増加した資本金の額のうち、合併により消滅した会社のその合併の直前における資本金の額に対応する部分 1,000分の1
ロ イに掲げる部分以外の部分(その認定により増加した資本金の額のうち3,000億円を超える部分を除く。) 1,000分の3.5
③ 分割による株式会社の設立又は資本金の額の増加(その認定により増加した資本金の額のうち3,000億円を超える部分を除く。) 1,000分の5
④ 法人の設立、資本金若しくは出資金の額の増加又は事業に必要な資産の譲受けの場合における不動産の所有権の取得(⑤⑥に掲げるものを除く。) 1,000分の16
⑤ 合併による法人の設立又は資本金若しくは出資金の額の増加の場合における不動産の所有権の取得 1,000分の2
⑥ 分割による法人の設立又は資本金若しくは出資金の額の増加の場合における不動産の所有権の取得 1,000分の4
(2)改正の内容
制度が廃止された(旧措法80④、旧措規30の2⑥)。
(3)適用関係
令和6年4月1日前に受けた認定に係る登記に対する登録免許税については、従前どおりである(改正法附則55②)。
2 その他の租税特別措置の廃止
次に掲げる租税特別措置は、適用期限の到来をもって廃止された。
(1)認定経営力向上計画に基づき行う登記の税率の軽減措置(旧措法80③)
(2)認定特定民間中心市街地経済活力向上事業計画に基づき不動産を取得した場合の所有権の移転登記等の税率の軽減措置(旧措法81)
(3)低未利用土地権利設定等促進計画に基づき不動産を取得した場合の所有権等の移転登記等の税率の軽減措置(旧措法83の2)
(4)特定の社債的受益権に係る特定目的信託の終了に伴い信託財産を買い戻した場合の所有権の移転登記等の免税措置(旧措法83の4)
十一 国立研究開発法人情報通信研究機構に対する非課税措置の改正
1 改正前の制度の概要
国立研究開発法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。)が受けるNICTの一定の業務の用に供する研究用建物の所有権の取得登記等については、登録免許税が非課税とされていた(旧登録免許税法別表第3告示国立研究開発法人情報通信研究機構の項)。
2 改正の内容
NICTが登録免許税法の別表第2の基準を満たすこととなったことから、同表に掲げられるとともに、別表第3から削除されることとされた(登録免許税法別表第2告示国立研究開発法人情報通信研究機構の項、旧登録免許税法別表第3告示国立研究開発法人情報通信研究機構の項)。
3 適用関係
上記2の改正は、令和6年4月1日以後にNICTが受ける登記等に係る登録免許税について適用される(令和6年財務省告示第92号)。
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