解説記事2024年06月24日 税制改正解説 令和6年度における所得税関係の改正について(下)(2024年6月24日号・№1032)
税制改正解説
令和6年度における所得税関係の改正について(下)
鷲見太希/増田高也
租税特別措置法等の改正(承前)
第三 事業所得等に係る税制の改正
1 試験研究を行った場合の所得税額の特別控除制度の改正(措法10関係)
(1)改正の内容
① 試験研究費の額の範囲から、居住者が国外事業所等を通じて行う事業に係る費用の額が除外された。
② 一般試験研究費の額に係る税額控除制度について、増減試験研究費割合が0に満たない場合の税額控除割合が次の年分の区分に応じそれぞれ次の割合とされるとともに、税額控除割合の下限が1%から0に引き下げられた。
イ 令和9年から令和11年までの年分……8.5%から、その増減試験研究費割合が0に満たない場合のその満たない部分の割合に30分の8.5を乗じて計算した割合を減算した割合
ロ 令和12年分及び令和13年分……8.5%から、その増減試験研究費割合が0に満たない場合のその満たない部分の割合に27.5分の8.5を乗じて計算した割合を減算した割合
ハ 令和14年以後の年分……8.5%から、その増減試験研究費割合が0に満たない場合のその満たない部分の割合に25分の8.5を乗じて計算した割合を減算した割合
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、令和8年分以後の所得税について適用し、令和7年分以前の所得税については従前どおりとされている。
② 上記(1)②の改正は、令和9年分以後の所得税について適用し、令和8年分以前の所得税については従前どおりとされている。
2 地域経済牽(けん)引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正(措法10の4関係)
(1)改正の内容
特別償却割合又は税額控除割合の引上げに係る措置の対象となる承認地域経済牽引事業が、地域の事業者に対して著しい経済的効果を及ぼすものである場合には、その対象となる機械装置及び器具備品の税額控除割合を6%とすることとされた。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、個人が令和6年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする特定事業用機械等について適用し、個人が同日前に取得又は製作若しくは建設をした特定事業用機械等については従前どおりとされている。
3 地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正(措法10の4の2等関係)
(1)改正の内容
次の見直しが行われた上、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定期限が令和8年3月31日まで2年延長された。
① 特定建物等の範囲に、認定地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に記載された特定業務児童福祉施設のうち特定業務施設の新設に併せて整備されるものに該当する建物等及び構築物が追加された。
② 中小事業者以外の個人の適用対象となる特定建物等の取得価額に係る要件が、3,500万円以上(改正前:2,500万円以上)に引き上げられた。
③ 特別償却限度額及び税額控除限度額の計算の基礎となる特定建物等の取得価額の上限が、80億円とされた。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、令和6年4月19日以後に地方活力向上地域等特定業務施設整備計画について認定を受ける個人が取得又は建設をするその認定に係る認定地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に記載された特定建物等について適用し、同日前に地方活力向上地域等特定業務施設整備計画について認定を受けた個人が取得又は建設をするその認定に係る認定地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に記載された特定建物等については従前どおりとされている。
② 上記(1)②及び③の改正は、令和6年4月1日以後に地方活力向上地域等特定業務施設整備計画について認定を受ける個人が取得又は建設をするその認定に係る認定地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に記載された特定建物等について適用し、同日前に地方活力向上地域等特定業務施設整備計画について認定を受けた個人が取得又は建設をするその認定に係る認定地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に記載された特定建物等については従前どおりとされている。
4 地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除制度の改正(措法10の5等関係)
(1)改正の内容
次の見直しが行われた上、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定期限が令和8年3月31日まで2年延長された。
① 地方事業所特別基準雇用者数に係る措置について、地方事業所特別税額控除限度額の計算の基礎となる地方事業所特別基準雇用者数が、無期雇用かつフルタイムの雇用者の数に限ることとされた。
② 地方活力向上地域等特定業務施設整備計画が特定業務施設の新設に係るものである場合の適用年が、その特定業務施設を事業の用に供した日(改正前:計画の認定を受けた日)の属する年以後3年内の各年とされた。
③ 適用要件のうち離職者に関する要件について、離職者がいないこととの要件を満たさなければならない年が本制度の適用を受けようとする年並びにその前年及び前々年(改正前:本制度の適用を受けようとする年及びその前年)とされた。
(2)適用関係
上記(1)①から③までの改正は、令和6年4月1日以後に地方活力向上地域等特定業務施設整備計画について計画の認定を受ける個人のその地方活力向上地域等特定業務施設整備計画について適用し、同日前に地方活力向上地域等特定業務施設整備計画について計画の認定を受けた個人のその地方活力向上地域等特定業務施設整備計画については従前どおりとされている。
5 所得税の額から控除される特別控除額の特例の改正(措法10の6等関係)
(1)改正の内容
特定税額控除制度の不適用措置について、次の見直しが行われた上、その適用期限が令和9年まで3年延長された。
① 継続雇用者給与等支給額に係る要件について、次のいずれにも該当する場合には、その個人の継続雇用者給与等支給額からその継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額のその継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が1%以上であることとされた。
イ その対象年の12月31日においてその個人の常時使用する従業員の数が2,000人を超える場合
ロ 次のいずれかに該当する場合
(イ)その対象年が事業を開始した日の属する年、相続又は包括遺贈により事業を承継した日の属する年及び事業の譲渡又は譲受けをした日の属する年のいずれにも該当しない場合であって、その対象年の前年分の事業所得の金額が0を超える一定の場合
(ロ)その対象年が事業を開始した日の属する年、相続若しくは包括遺贈により事業を承継した日の属する年又は事業の譲渡若しくは譲受けをした日の属する年に該当する場合
② 国内設備投資額に係る要件について、上記(1)①イ及びロのいずれにも該当する場合には、国内設備投資額が償却費総額の40%(改正前:30%)相当額を超えることとされた。
③ 継続雇用者給与等支給額に係る要件の判定上、継続雇用者給与等支給額及び継続雇用者比較給与等支給額の算定に際し、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額のうち役務の提供の対価として支払を受ける金額は、給与等の支給額から控除しないこととされた。
(2)適用関係
① 上記(1)①及び②の改正は、令和7年分以後の所得税について適用し、令和6年分以前の所得税については従前どおりとされている。
② 上記(1)③の改正は、令和7年分以後の所得税について適用し、令和6年分以前の所得税については従前どおりとされている。
6 環境負荷低減事業活動用資産等の特別償却制度の改正(措法11の4等関係)
(1)改正の内容
基盤確立事業用資産に係る措置について、次の見直しが行われた上、制度の適用期限が令和8年3月31日まで2年延長された。
① 基盤確立事業用資産の適合基準に、専ら化学的に合成された肥料又は農薬に代替する生産資材を生産するために用いられる機械等及びその機械等と一体的に整備された建物等であることについて基盤確立事業実施計画に係る認定の際、確認が行われたものであることが追加された。
② 個人が、その取得等をした機械等につき本措置の適用を受ける場合には、その機械等につき本措置の適用を受ける年分の確定申告書にその機械等が基盤確立事業用資産に該当するものであることを証する書類を添付しなければならないこととされた。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、令和6年4月1日から施行されている。
② 上記(1)②の改正は、個人が令和6年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする機械その他の減価償却資産について適用することとされている。
7 生産方式革新事業活動用資産等の特別償却制度の創設(措法11の5関係)
(1)改正の内容
青色申告書を提出する個人で農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律(以下「スマート農業法」という。)の認定生産方式革新事業者であるものが、同法の施行の日から令和9年3月31日までの間に、その認定生産方式革新事業者として行う生産方式革新事業活動の用に供するための認定生産方式革新実施計画に記載された設備等を構成する機械その他の減価償却資産のうち農作業の効率化等を通じた農業の生産性の向上に著しく資する一定のもの等(以下「生産方式革新事業活動用資産等」という。)の取得等をして、これをその個人のその生産方式革新事業活動等の用に供した場合には、その用に供した日の属する年において、その生産方式革新事業活動用資産等の区分に応じ次に定める額の特別償却ができる制度が創設された。
① 認定生産方式革新実施計画に記載された生産方式革新事業活動の用に供する設備等を構成する機械装置、器具備品、建物等及び構築物……その取得価額の32%(建物等及び構築物については、16%)相当額
② 認定生産方式革新実施計画に記載された促進措置の用に供する設備等を構成する機械装置……その取得価額の25%相当額
(2)適用関係
上記(1)の制度は、スマート農業法の施行の日から施行することとされている。
8 特定地域における工業用機械等の特別償却制度の改正(措法12等関係)
(1)改正の内容
① 過疎地域等に係る措置の適用期限が令和9年3月31日まで3年延長された。
② 奄美群島に係る措置は、その適用期限(令和6年3月31日)の到来をもって廃止された。
(2)適用関係
上記(1)②の改正は、個人が令和6年4月1日前に取得等をした産業振興機械等については従前どおりとされている。
9 事業再編計画の認定を受けた場合の事業再編促進機械等の割増償却制度の廃止(旧措法13等関係)
(1)改正の内容
制度が廃止された。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、個人が取得又は製作若しくは建設をした事業再編促進機械等で令和6年4月1日前に受けた農業競争力強化支援法第18条第1項の認定に係る同法第19条第2項に規定する認定事業再編計画に記載されたものについては従前どおりとされている。なお、個人が令和6年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする事業再編促進機械等にあっては、同年3月31日に上記の認定事業再編計画に記載されているものに限ることとされている。
10 特別償却等に関する複数の規定の不適用措置の改正(措法19関係)
(1)改正の内容
個人の有する減価償却資産につきその年の前年以前の各年において租税特別措置法の規定による特別償却又は税額控除制度に係る規定のうちいずれか一の規定の適用を受けた場合には、その減価償却資産については、そのいずれか一の規定以外の租税特別措置法の規定による特別償却又は税額控除制度に係る規定は、適用しないこととされた。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和7年分以後の所得税について適用することとされている。
11 特定の基金に対する負担金等の必要経費算入の特例の改正(措法28関係)
(1)改正の内容
独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済事業に係る措置について、個人の締結していた共済契約につき解除があった後共済契約を締結したその個人がその解除の日から同日以後2年を経過する日までの間にその共済契約について支出する掛金については、本特例を適用しないこととされた。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、個人の締結していた上記(1)の共済契約につき令和6年10月1日以後に解除があった後上記(1)の共済契約を締結したその個人がその共済契約について支出する上記(1)の掛金について適用することとされている。
12 中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例の改正(措法28の2関係)
(1)改正の内容
適用期限が令和8年3月31日まで2年延長された。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和6年4月1日から施行されている。
13 特定復興産業集積区域において機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正(震災税特法10関係)
(1)改正の内容
適用期限が令和8年3月31日まで2年延長された上、令和7年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得等をした特定機械装置等の特別償却限度額及び税額控除割合が次のとおりとされた。
① 特別償却限度額……その取得価額の45%(建物等及び構築物については、23%)相当額(改正前:その取得価額の50%(建物等及び構築物については、25%)相当額)
② 税額控除割合……14%(建物等及び構築物については、7%)(改正前:15%(建物等及び構築物については、8%))
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和6年4月1日から施行されている。
14 特定復興産業集積区域において被災雇用者等を雇用した場合の所得税額の特別控除制度の改正(震災税特法10の3関係)
(1)改正の内容
対象者指定の期限が令和8年3月31日まで2年延長された上、令和7年4月1日から令和8年3月31日までの間に認定地方公共団体の指定を受けた個人がその認定地方公共団体の作成したその認定を受けた復興推進計画に定められた特定復興産業集積区域内に所在する産業集積事業所に勤務する被災雇用者等に対して支給する給与等の額の税額控除割合が9%(改正前:10%)とされた。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和6年4月1日から施行されている。
15 特定復興産業集積区域における開発研究用資産の特別償却等制度の改正(震災税特法10の5関係)
(1)改正の内容
適用期限が令和8年3月31日まで2年延長された上、令和7年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得等をした開発研究用資産の特別償却限度額が、その取得価額の30%(その個人が中小事業者である場合には、45%)相当額(改正前:その取得価額の34%(その個人が中小事業者である場合には、50%)相当額)とされた。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和6年4月1日から施行されている。
第四 その他の改正
1 令和6年分における特別税額控除の創設(措法41の3の3等関係)
(1)改正の内容
① 令和6年分における所得税額の特別控除
イ 居住者の令和6年分の所得税については、その年分の所得税の額から、令和6年分特別税額控除額を控除することとされた。ただし、その者のその年の合計所得金額が1,805万円を超える場合には、控除できない。
ロ 上記イの令和6年分特別税額控除額は、次の合計額とされている。
(イ)3万円
(ロ)居住者の一定の同一生計配偶者又は扶養親族1人につき……3万円
② 令和6年分の所得税に係る予定納税に係る特別控除の額の控除等
イ 居住者の令和6年分の所得税に係る第1期納付分の予定納税額から、予定納税特別控除額を控除することとされた。
ロ 上記イの予定納税特別控除額は、3万円とされている。
ハ 一定の居住者の令和6年分の所得税につき予定納税額の減額の承認の申請により予定納税額から減額の承認に係る予定納税特別控除額の控除を受けることができることとされた。
ニ 上記ハの減額の承認に係る予定納税特別控除額は、上記①ロの令和6年分特別税額控除額の見積額とされている。
③ 令和6年6月以後に支払われる給与等に係る特別控除の額の控除等
イ 令和6年6月1日において給与等の支払者から主たる給与等の支払を受ける者である居住者の同日以後最初にその支払者から支払を受ける同年中の主たる給与等(年末調整の適用を受けるものを除く。)につき所得税法の規定により徴収すべき所得税の額は、その所得税の額に相当する金額から給与特別控除額の控除(その所得税の額に相当する金額が限度。)をした金額に相当する金額とすることとされた。
ロ 給与特別控除額のうち上記イの控除をしてもなお控除しきれない部分の金額があるときは、その控除しきれない部分の金額を、上記イの最初に主たる給与等の支払を受けた日後にその支払者から支払を受ける令和6年中の主たる給与等(年末調整の適用を受けるものを除く。)につき所得税法の規定により徴収すべき所得税の額から順次控除(それぞれのその所得税の額に相当する金額が限度。)をした金額に相当する金額をもって、それぞれのその主たる給与等につき所得税法の規定により徴収すべき所得税の額とすることとされた。
ハ 上記イ及びロの給与特別控除額は、次の合計額とされている。
(イ)3万円
(ロ)給与所得者の扶養控除等申告書に記載された一定の源泉控除対象配偶者で合計所得金額の見積額が48万円以下である者又は一定の控除対象扶養親族等1人につき……3万円
④ 令和6年における年末調整に係る特別控除の額の控除等
イ 居住者の令和6年中に支払の確定した給与等における年末調整により計算した年税額は、その年税額に相当する金額から年末調整特別控除額を控除した金額に相当する金額とすることとされた。
ロ 上記イの年末調整特別控除額は、次の合計額とされている。
(イ)3万円
(ロ)給与所得者の配偶者控除等申告書に記載された一定の控除対象配偶者又は給与所得者の扶養控除等申告書に記載された一定の控除対象扶養親族等1人につき……3万円
⑤ 令和6年6月以後に支払われる公的年金等に係る特別控除の額の控除等
イ 公的年金等で一定のものの支払を受ける者である居住者の令和6年6月1日以後最初にその公的年金等の支払者から支払を受ける同年分の所得税に係るその公的年金等につき所得税法の規定により徴収すべき所得税の額は、その所得税の額に相当する金額から年金特別控除額の控除(その所得税の額に相当する金額が限度。)をした金額に相当する金額とすることとされた。
ロ 年金特別控除額のうち上記イの控除をしてもなお控除しきれない部分の金額があるときは、その控除しきれない部分の金額を、その居住者が上記イの最初に公的年金等の支払を受けた日後にその支払者から支払を受ける令和6年分の所得税に係るその公的年金等につき所得税法の規定により徴収すべき所得税の額に相当する金額から順次控除(それぞれのその所得税の額に相当する金額が限度。)をした金額に相当する金額をもって、それぞれのその公的年金等につき所得税法の規定により徴収すべき所得税の額とすることとされた。
ハ 上記イ及びロの年金特別控除額は、次の合計額とされている。
(イ)3万円
(ロ)公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された一定の源泉控除対象配偶者で合計所得金額の見積額が48万円以下である者又は一定の控除対象扶養親族等1人につき……3万円
(2)適用関係
① 上記(1)①から③及び⑤の改正は、令和6年6月1日から施行される。
② 上記(1)④の改正は、令和6年中に支払うべき給与等で、その最後に支払をする日が同年6月1日以後であるものについて適用される。
2 新たな公益信託制度の創設に伴う租税特別措置法等の整備(措法29の2等関係)
(1)改正の内容
① 国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税について、次の措置が講じられた。
イ 非課税の特例の対象となる公益法人等の範囲に、公益信託に関する法律の公益信託(以下「公益信託」という。)の受託者(非居住者又は外国法人に該当するものを除く。)が追加されるとともに、特例の対象となる贈与又は遺贈の範囲について、公益信託の受託者(改正前から特例の対象となっている公益法人等に該当する法人を除く。)に対する贈与又は遺贈は公益信託の信託財産とするためのものに限る等の整備が行われた。
ロ 非課税承認要件である贈与者等の所得税等を不当に減少させる結果とならないことを満たすための条件について、その贈与又は遺贈が公益信託の信託財産とするためのものである場合における公益信託が満たすべき条件の整備が行われた。
ハ 非課税承認の取消しにより公益信託の受託者に課税する場合において、その受託者が2以上あるときは、その主宰受託者を、贈与等を行った個人とみなして所得税を課することとする等、公益信託の受託者に課税がされる場合の取扱いの整備が行われた。
ニ 特定贈与等を受けた公益信託の受託者(以下「当初受託者」という。)が、任務終了事由等により特定贈与等に係る財産等を新受託者等(以下「引継受託者」という。)に移転しようとする場合において、当初受託者が、新受託者の選任等の認可又は届出の日の前日までに、一定の事項を記載した書類を納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出したときは、本非課税制度を継続して適用することができることとされた。
ホ 特定贈与等を受けた公益信託(以下「当初公益信託」という。)の受託者が、公益信託の終了により特定贈与等に係る財産等を他の公益法人等に移転し、又は類似の公益事務をその目的とする他の公益信託の信託財産としようとする場合において、当初公益信託の受託者が、公益信託の終了の日の前日までに、一定の事項を記載した書類を納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出したときは、本非課税制度を継続して適用することができることとされた。
ヘ 公益法人等が解散する場合及び公益法人等が公益法人認定法の公益認定の取消処分を受けた場合における非課税制度の継続の特例措置について、適用対象に、次に掲げる場合が追加された。
(イ)特定贈与等を受けた公益法人等が、解散による残余財産の分配又は引渡しにより、特定贈与等に係る財産等を類似の公益事務をその目的とする公益信託の信託財産としようとする場合
(ロ)当初法人が、公益法人認定法の定款の定めに従い、引継財産を類似の公益事務をその目的とする公益信託の信託財産としようとする場合
ト 他の公益法人等が特定贈与等を受けた公益法人等から資産の移転を受けた場合における非課税制度の継続の特例措置について、次の措置が講じられた。
(イ)引継受託者が当初受託者の任務終了事由等により資産の移転を受けた場合において、引継受託者が、その移転を受けた資産が特定贈与等に係る財産等であることを知った日以後2月以内に、一定の書類を納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出したときは、本非課税制度を継続して適用することができることとされた。
(ロ)引継法人が当初法人から資産の贈与を受けた場合の措置について、適用対象に、類似の公益事務をその目的とする公益信託の受託者が当初法人から引継財産を公益信託の信託財産として受け入れた場合が追加された。
チ 非課税承認申請書の記載事項等について、上記①又は②の改正に伴う所要の整備が行われた。
② 特定寄附信託の利子所得の非課税措置等について、次の措置が講じられた。
イ 特定寄附信託の利子所得の非課税措置の対象となる対象特定寄附金の範囲について、一定の特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭(旧所得税法の規定により特定寄附金とみなされたもの)に代えて、特定寄附金のうち公益信託の信託財産とするために支出した寄附金(所得税法第78条第2項第4号に掲げる特定寄附金)とされた。なお、一定の特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭については、引き続き対象特定寄附金とする経過措置が講じられた。
ロ 信託の計算書制度について、上記①の改正に伴う記載事項の整備が行われた。
③ 公益信託の受託者である個人に対する贈与又は遺贈(その信託財産とするためのものに限る。)をみなし譲渡課税の対象となる事由に追加する改正が行われたことに伴い、租税特別措置法等の特例のうちみなし譲渡課税の対象となる事由を基準にその適用対象等が定められている措置について、所要の整備が行われた。
(2)適用関係
① 上記(1)①及び③の改正は、公益信託法の施行の日から施行される。
② 上記(1)②イの改正は、公益信託法の施行の日から施行される。
なお、同日以後に、既に必要な証明及び認定を受けている認定特定公益信託(移行認可を受けたものを除く。以下同じ。)の信託財産とするために支出する金銭については従前どおり対象特定寄附金の範囲に含まれ、特定寄附信託の利子所得の非課税措置の対象となる。
③ 上記(1)②ロの改正は、公益信託法の施行の日から施行される。
なお、認定特定公益信託の信託財産とするために支出する金銭については従前どおり上記(1)②の対象特定寄附金の範囲に含まれ、信託の計算書の記載事項の対象となる。
3 山林所得に係る森林計画特別控除制度の改正(措法30の2関係)
適用期限が令和8年まで2年延長された。
4 給付金等の非課税の改正(措規19の2関係)
(1)改正の内容
次の貸付けについて受けた債務免除により受ける経済的な利益の価額については、引き続き所得税を課さないこととされた。
① 児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業による貸付け。
② 児童扶養手当受給者等に対するひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業の住宅支援資金貸付け。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和6年4月1日から施行される。
5 政治活動に関する寄附をした場合の寄附金控除の特例又は所得税額の特別控除の改正(措法41の18関係)
適用期限が令和11年12月31日まで5年延長された。
6 公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除制度の改正(措令26の28の2等関係)
(1)改正の内容
① 一定の要件を満たす学校法人等に係るいわゆるパブリック・サポート・テストの絶対値要件について、現行の要件に代えて、その実績判定期間を2年(原則:5年)とするとともに、寄附者数の要件を各事業年度(原則:年平均)100人以上とし、寄附金の額の要件を各事業年度(原則:年平均)30万円以上として判定できることとする特例措置が講じられた。
② 国立大学法人、公立大学法人又は独立行政法人国立高等専門学校機構に対する寄附金のうち特例の対象となる寄附金の使途に係る要件について、その使途の対象となる各法人の行う事業の範囲に、次に掲げる事業が追加された。
イ 個々の学生等の障害の状態に応じた合理的な配慮を提供するために必要な事業であって、障害のある学生等に対するもの
ロ 外国人留学生と日本人学生が共同生活を営む寄宿舎の寄宿料の減額を目的として寄宿舎の整備を行う場合における施設整備費等の一部を負担する事業であって、経済的理由により修学に困難がある学生等に対するもの
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、令和7年4月1日から施行される。
② 上記(1)②の改正は、控除予定年が令和6年以後である場合について適用し、控除予定年が令和5年以前については従前どおりとされている。
当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.