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解説記事2024年07月08日 SCOPE IHIへの移転価格税制適用、地裁が処分取消し(2024年7月8日号・№1034)

取引単位営業利益法に準ずる方法と認められず
IHIへの移転価格税制適用、地裁が処分取消し


 株式会社IHIに対する移転価格税制の適用の可否が争われた事案で、東京地裁民事2部(品田幸男裁判長)は令和5年12月7日、処分行政庁が取引単位営業利益法に準ずる方法と同等の方法により算定した独立企業間価格は過大だとして、更正処分等を取り消した。
 東京地裁は、本件算定方法について、国外関連者と比較対象法人の比較可能性を検討した結果、市場の状況に関する差異が売上高営業利益率の相違に重要な影響を与えるものであるから、本件算定方法は合理的な方法ということはできないとの判断を下した。

複数の取引を一体と扱うことは認めるも、比較対象法人との比較可能性なし

 本件は、IHI(原告)が、国外関連者であるITT社に対し行った車両過給機(ターボチャージャ)に係る部品輸出取引等などの国外関連取引について、当該取引により受けた対価の額が独立企業間価格に満たないとして更正処分等を受けたことから争いになった事案である。
 処分行政庁は、2社のタイ法人を比較対象法人として選定し、図表1の算式のとおり、取引単位営業利益法に準ずる方法と同等の方法(措令39の12⑧二)により独立企業間価格を算定したが、原告は、処分行政庁が採用した方法は、取引単位営業利益法に準ずる方法と同等の方法ではないなどと主張して、処分の取消しを求めた。

 原告は、処分行政庁の算定方法について、原告とITT社との間の輸出取引、無形資産取引及び役務提供取引の三つの取引(本件国外取引)をもって一つの取引とするのは、本件国外関連取引の内容に適合しない、取引単位営業利益法の考え方から乖離した不合理な方法であるなどと主張した。
 これに対し東京地裁は、これら三つの取引は相互に密接に結び付いており、個別の取引ごとに評価するのでは適正に独立企業間価格を算定することができないから、これらを一体の取引として取扱い、これに対応する取引価格をもって独立企業間価格を算定したことは、取引内容に適合し、取引単位営業利益法の考え方から乖離しない合理的な方法であるとの考えを示した。
市場の状況に関する差異は重要な影響与える
 また、原告は、本件国外関連者と本件比較対象法人との間には、売上高営業利益率の算定に明らかな影響を及ぼす差異が存在し、適切な差異調整も行われていないから、本件国外関連者と本件比較対象法人との間に比較可能性はないとも主張した。
 東京地裁は、ITT社と本件比較対象法人の比較可能性について、国外関連者と比較対象法人の差異が、①売上高営業利益率の相違に重要な影響を与えないか、又は②当該差異が与える影響を取り除くために相当程度正確な調整が可能であれば、比較対象法人の売上高営業利益率を基に、国外関連取引の独立企業間価格を算定することができるとの考えを示した上で、事業の内容、製品の特徴、当事者の遂行する機能、市場の状況、経営の効率性の各要素について、図表2のとおり検討した。

 その結果、市場の状況に関する差異は、売上高営業利益率の相違に重要な影響を与えるものであって、当該差異が与える影響を取り除くための相当程度正確な調整ができないものであるから、ITT社と本件比較対象法人との間に比較可能性があるということはできないと判断した。そして、本件算定方法は、取引内容に適合し、取引単位営業利益法の考え方から乖離しない合理的な方法ということはできないとして、本件更正処分等を取り消した。

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