税務ニュース2024年07月26日 固定資産の課税仕入れは客観的事実重視(2024年7月29日号・№1037) 売買契約締結日を課税仕入れの日として否認された事例も
例えば、課税事業者である個人事業者が、令和5年11月1日に事業用の店舗を購入するために手付金を支払った上で売買契約書を締結したが、売主側の事情で令和6年2月10日に売買代金の残額の支払いとともに店舗の引渡しを受け、同日に所有権移転登記が完了したとする。
固定資産の譲渡について所得税上は、譲渡所得の総収入金額の収入とすべき時期を原則「資産の引渡しがあった日」としつつ、納税者の選択により、「資産の譲渡に関する契約の効力発生の日」とすることも認められている(所基通36−12)。また、法人税でも所得税と同様の取扱いとなっている(法基通2−1−14)。
消費税でも、固定資産の譲渡の時期は原則「引渡しがあった日」としつつ、ただし固定資産が土地、建物等である場合には、「当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日」とすることが認められている(消基通9−1−13)。しかし、東京地裁平成31年3月14日判決は、「消基通9−1−13のただし書きは、権利確定主義に反する取扱いを認めるものではなく、契約においてその効力発生日を資産の譲渡の日と定めている場合に、効力発生日をもって権利が確定したと認められる事情があるときは、その日を『課税仕入れを行った日』とすることも法30条1項1号に反しない旨を確認したにすぎないと解される。」とした上で、「課税仕入れを行った日とは、課税資産の対価を収受する権利が確定した日であり、所有権移転登記が完了し、使用収益が可能になれば不動産の引渡しがあったといえることから、その時に代金請求権が確定し、課税仕入れがあったと認められる。」旨判示している。
したがって、上記事例では、売買代金の残額の支払いとともに引渡しを受け、同日に所有権移転登記が完了した令和6年2月10日が「課税資産の対価を収受する権利が確定した日」として課税仕入れを行った日となる。納税者の選択により譲渡の時期を決めることができる所得税及び法人税に対し、消費税では、権利証の交付、登記の有無、代金の受領状況等の“客観的事実”によって引渡しが実現しているのかが重視され、契約形式に基づく当事者の主観的意思のみによって判断されない点、留意したい。
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