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解説記事2024年10月28日 法令解説 実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」の公表に伴う財務諸表等規則等の改正について(2024年10月28日号・№1048)

法令解説
実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」の公表に伴う財務諸表等規則等の改正について

 金融庁企画市場局企業開示課 主任会計専門官 鹿子木慎亮
 金融庁企画市場局企業開示課 専門官 七海健太郎
 金融庁企画市場局企業開示課 係長 齊藤義裕

1 はじめに

 2024年(令和6年)8月22日に「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則及び連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令」(令和6年内閣府令第70号)が公布・施行され、あわせて関係ガイドラインが改正・公表された(以下、内閣府令第70号と関係ガイドラインをあわせて「改正府令等」という)。
 本改正府令等は、2024年(令和6年)3月22日付けで企業会計基準委員会(ASBJ)から公表された実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下、「実務対応報告第46号」という)を踏まえ、次の規則及びガイドライン(以下、あわせて「財規等」という)について、所要の改正を行ったものである。
・財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下、「財規」という)
・連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下、「連結財規」という)
・「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(財務諸表等規則ガイドライン)
・「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(連結財務諸表規則ガイドライン)
 本稿は、改正府令等の主な内容について解説を行うものであるが、意見にわたる部分については、筆者らの私見であることをあらかじめ申し添えておく。

2 改正の経緯・概要

 2021年(令和3年)10月に経済協力開発機構(OECD)/主要20か国・地域(G20)の「BEPS包摂的枠組み」において当該枠組みの各参加国により合意されたグローバル・ミニマム課税へ対応するため、2023年(令和5年)3月に公布された所得税法等の一部を改正する法律(令和5年法律第3号)において、所得合算ルール(Income Inclusion Rule:IIR)に係る法制化として、各対象会計年度の「国際最低課税額に対する法人税等」(国際最低課税額に対する法人税その他当該国際最低課税額に関連する金額を課税標準として課される租税)の創設が行われ、2024年(令和6年)4月1日以後開始する対象会計年度から適用することとされた。
 グローバル・ミニマム課税制度は、課税の源泉となる純所得(利益)が生じる企業と納税義務が生じる企業が相違する新たな税制である。このため、現行の企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」等では、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等(当期税金)及び当該法人税等に関する税効果会計についてどのように取り扱うかが明らかでないとの意見が聞かれた。
 これを受けてASBJにおいて審議が行われ、税効果会計の取扱いについては、2023年(令和5年)3月に実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」が公表された。その後、2024年(令和6年)3月22日にグローバル・ミニマム課税制度における法人税等の会計処理及び開示に関する取扱いについて実務対応報告第46号が公表された。
 改正府令等においては、実務対応報告第46号の公表を踏まえ、グローバル・ミニマム課税制度における「国際最低課税額に対する法人税等」の貸借対照表及び損益計算書における表示及び注記について所要の改正を行っている。

3 改正の内容

(1)貸借対照表における表示
 実務対応報告第46号第8項では、グローバル・ミニマム課税制度に係る未払法人税等のうち、貸借対照表日の翌日から起算して1年を超えて支払の期限が到来するものは、連結貸借対照表及び個別貸借対照表の固定負債の区分に「長期未払法人税等」などその内容を示す科目をもって表示することとされた。これを踏まえ、財規等においては、固定負債の区分に「長期未払法人税等」を追加することにより、当該負債を計上する区分の明確化を行っている。

□ 財規第52条第1項

第52条 固定負債に属する負債は、次に掲げる項目の区分に従い、当該負債を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。
 [一~四 略]
  長期未払法人税等
 [六~十 略]

※:下線は、追加箇所を示すため筆者らが付したものである。

(2)損益計算書における表示及び注記
 連結損益計算書においては、実務対応報告第46号第9項及び第10項により、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は「法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)」を示す科目に表示し、重要な場合は、当該金額を注記することとされている。これを踏まえ、改正後連結財規においても、重要性があるときは当該金額が注記の対象となるよう改正している。なお、中間連結損益計算書においては、改正前より、「法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)」と「法人税等調整額」を一括して記載することを可能としているが、改正後連結財規においては、「国際最低課税額に対する法人税等」がこれに含まれる場合で当該金額に重要性がある場合は、当該金額を注記することとしている。

□ 連結財規第65条第1項及び第2項

第65条 次に掲げる項目の金額は、その内容を示す名称を付した科目をもつて、税金等調整前当期純利益金額又は税金等調整前当期純損失金額の次に記載しなければならない。
 一 当該連結会計年度に係る法人税、地方法人税、住民税及び利益に関連する金額を課税標準として課される事業税(以下「法人税、住民税及び事業税」という。)
 二 法人税等調整額(税効果会計の適用により計上される前号の法人税、住民税及び事業税の調整額をいう。)
2 前項第一号に掲げる項目の金額のうちに当該連結会計年度に係る国際最低課税額(法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第八十二条の二第一項に規定する国際最低課税額をいう。)に対する法人税その他当該国際最低課税額に関連する金額を課税標準として課される租税(以下「国際最低課税額に対する法人税等」という。)の金額がある場合において、当該国際最低課税額に対する法人税等に重要性があるときは、当該金額を注記しなければならない。

※:下線は、追加箇所を示すため筆者らが付したものである。

 また、個別の損益計算書においては、実務対応報告第46号第11項及び第12項により、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)を表示した科目の次にその内容を示す科目をもって区分して表示するか、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)に含めて表示し当該金額を注記するとされ、それに関わらず、当該金額に重要性が乏しい場合は、法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)に含めて表示することができ、当該金額の注記を要しないこととされている。これを踏まえ、改正後財規においては、「法人税、住民税及び事業税」の次に表示する項目に「国際最低課税額に対する法人税等」を追加し、併せて、当該金額を法人税、住民税及び事業税に含めて表示することも許容し、重要性が乏しい場合を除き当該金額を注記することとしている。なお、中間損益計算書においては、改正前の規定を踏まえ、「法人税、地方法人税、住民税及び事業税(所得割)」、「国際最低課税額に対する法人税等」及び「法人税等調整額」を一括して記載することが可能だが、「国際最低課税額に対する法人税等」の金額の重要性が乏しい場合を除いて、当該金額を注記することとしている。

□ 財規第95条の5第1項及び第2項

第95条の5 次に掲げる項目の金額は、その内容を示す名称を付した科目をもつて、税引前当期純利益金額又は税引前当期純損失金額の次に記載しなければならない。
 一 当該事業年度に係る法人税、地方法人税、住民税及び利益に関連する金額を課税標準として課される事業税(以下「法人税、住民税及び事業税」という。)(次号に掲げる項目に該当するものを除く。)
 二 当該事業年度に係る国際最低課税額(法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第八十二条の二第一項に規定する国際最低課税額をいう。)に対する法人税その他当該国際最低課税額に関連する金額を課税標準として課される租税(以下「国際最低課税額に対する法人税等」という。)
 三 法人税等調整額(税効果会計の適用により計上される第一号の法人税、住民税及び事業税の調整額をいう。)
2 前項の規定にかかわらず、同項第二号に掲げる項目の金額は、同項第一号に掲げる項目の内容を示す名称を付した科目に含めて記載することができる。この場合においては、当該金額の重要性が乏しい場合を除き、当該金額を注記しなければならない。

※:下線は、追加箇所を示すため筆者らが付したものである。

(3)その他の改正内容及び留意点
 本改正府令等においては、前述の(1)(2)以外に従前は「法人税」に含まれていた「地方法人税」を明記する改正も行っている(財規第49条第3項及び第95条の5第1項第1号並びに連結財規第37条第3項及び第65条第1項第1号)。これは、企業会計基準において法人税と地方法人税を区別していることと財規等の規定との平仄を合わせたものであり、これにより実務を変更する意図はない。
 また、財規第95条の5第1項第2号、第198条第1項第2号及び第300条第1項第2号並びに連結財規第65条第2項、第170条第3項及び第282条第3項では、「国際最低課税額に対する法人税等」の金額の記載を求めているが、ここでは当該事業年度または当該連結会計年度に計上した国際最低課税額に対する法人税等の金額を記載する必要があり、当然ながら、前事業年度または前連結会計年度に計上した国際最低課税額に対する法人税等との見積差額も含むものであることに留意されたい。

4 適用時期

 改正府令等は公布と同日に施行されている。ただし、2024年(令和6年)4月1日より前に開始した事業年度(連結会計年度)に係る財務諸表(連結財務諸表)については、なお従前の例によることとしている(中間も同様)。

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