資料2024年11月04日 重要資料 令和6年6月21日付課法2−14ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明(1)(2024年11月4日号・№1049)
重要資料
令和6年6月21日付課法2−14ほか1課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明(1)
この趣旨説明は、令和6年6月21日現在の法令に基づいて作成している。
第1 法人税基本通達関係
1 組織再編成
【改正の概要】
令和6年度の税制改正において、現物出資について、次の見直しが行われた。
(1)適格現物出資の対象となる現物出資から、被現物出資法人である外国法人に無形資産等の移転を行う一定の現物出資が除外された(法2十二の十四)。
無形資産等とは、内国法人の次の資産で、その資産の譲渡若しくは貸付け又はこれらに類似する取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合にその対価の額が支払われるべきものをいう(令4の3⑩)。
イ 工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの(これらの権利に関する使用権を含む。)
ロ 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)
(2)現物出資により移転する資産又は負債が国内資産等又は国外資産等のいずれに該当するかは、内国法人の本店等若しくは外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係る資産若しくは負債又は内国法人の国外事業所等若しくは外国法人の本店等を通じて行う事業に係る資産若しくは負債のいずれに該当するかによることとされた(法2十二の十四)。
【新設】(工業所有権等の意義)
1−4−12 20−3−2((工業所有権等の意義))の取扱いは、令第4条の3第10項第1号((適格組織再編成における株式の保有関係等))に規定する「工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの」の意義について準用する。
【解説】
1 本通達では、「工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの」の意義について明らかにしている。
2 無形資産等は資産価値が形成された場所から容易に分離することができ、国外の事業所に属するとしても価値の創出の一部が国内において行われているという実態を踏まえ、内国法人の無形資産等の含み益が課税されずに国外へ持ち出されることによる課税上の弊害を防止するため、令和6年度の税制改正により、適格現物出資の対象となる現物出資から、被現物出資法人である外国法人に無形資産等の移転を行う一定の現物出資が除外された(法2十二の十四)。
無形資産等とは、内国法人の次の資産で、その資産の譲渡若しくは貸付け(資産に係る権利の設定その他他の者に資産を使用させる一切の行為を含む。)又はこれらに類似する取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合にその対価の額が支払われるべきものをいう(令4の3⑩)。
(1)工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの(これらの権利に関する使用権を含む。)
(2)著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)
3 本通達では、上記2(1)の「工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの」の意義について、法人税基本通達20−3−2の取扱いを準用する旨を明らかにしている。したがって、「工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの」とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の工業所有権及びその実施権等のほか、これらの権利の目的にはなっていないが、生産その他業務に関し繰り返し使用し得るまでに形成された創作、すなわち、特別の原料、処方、機械、器具、工程によるなど独自の考案又は方法を用いた生産についての方式、これに準ずる秘けつ、秘伝その他特別に技術的価値を有する知識及び意匠等をいい、ノウハウはもちろん、機械、設備等の設計及び図面等に化体された生産方式、デザインもこれに含まれるが、海外における技術の動向、製品の販路、特定の品目の生産高等の情報又は機械、装置、原材料等の材質等の鑑定若しくは性能の調査、検査等は、これに該当しないこととなる。
【改正】(内部取引その他これに準ずるものの例示)
1−4−13 令第4条の3第12項((適格組織再編成における株式の保有関係等))に規定する「内部取引その他これに準ずるもの」には、例えば、内国法人の法第69条第4項第1号((外国税額の控除))に規定する国外事業所等と同号に規定する本店等との間で行われた事実であって、同条第7項の規定により同号に規定する内部取引に含まれないものとされる事実が含まれることに留意する。
【解説】
1 本通達では、適格現物出資の対象となる現物出資から除外される現物出資の要件における「内部取引その他これに準ずるもの」に含まれる事実を明らかにしている。
2 令和6年度の税制改正前においては、内国法人が外国法人に国外資産等(国外にある事業所に属する資産で一定のもの又は負債をいう。)の移転を行う現物出資で、その国外資産等の全部又は一部がその外国法人の恒久的施設に属しないもの(国内資産等(国内にある一定の資産その他国内にある事業所に属する一定の資産又は負債をいう。)の移転を行うものに準ずる一定のものに限る。)は、適格現物出資の対象となる現物出資から除外されていた。
3 令和6年度の税制改正により、現物出資により移転する資産又は負債の内外判定の見直しが行われた結果、上記2の適格現物出資の対象となる現物出資から除外される現物出資は、内国法人が外国法人に内国法人国外資産等(国外事業所等を通じて行う事業に係る資産又は負債をいう。以下同じ。)の移転を行う現物出資で、その内国法人国外資産等の全部又は一部がその移転によりその外国法人の本店等を通じて行う事業に係る資産又は負債となるもの(国内資産等(国内事業所等を通じて行う事業に係る資産又は負債をいう。以下同じ。)の移転を行うものに準ずるものに限る。)とされた(法2十二の十四)。
国内資産等の移転を行うものに準ずる現物出資には、具体的には内国法人が外国法人に内国法人国外資産等のうち、現金、預金、貯金、棚卸資産(不動産及び不動産の上に存する権利を除く。)及び有価証券以外のものでその現物出資の日以前1年以内に法人税法第69条第4項第1号に規定する内部取引その他これに準ずるものにより内国法人国外資産等となったものの移転を行う現物出資が該当する(令4の3⑫)。これは、内国法人から被現物出資法人である外国法人に国内資産等の移転を行う現物出資については、その国内資産等の全部がその移転によりその外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係る資産又は負債となるものを除き、適格現物出資の対象となる現物出資から除外されているところ、国内資産等を国外に移転してから短期間に内国法人国外資産等の現物出資とすることにより、適格現物出資の対象となる現物出資とすることを排除するための措置である。
4 ところで、この「内部取引」は、外国税額控除制度における国外源泉所得に係る規定を引用しているところ、同条第7項において、外国税額控除制度における国外源泉所得を算定する場合には一定の事実が内部取引に含まれないものとする旨を規定していることから、そのような事実により現物出資の日以前1年以内に内国法人国外資産等となったものの移転を行う現物出資は、上記3の措置の対象となる現物出資に該当しないのではないかという疑問が生ずる。
しかしながら、同項は、あくまでも外国税額控除制度における国外源泉所得を算定する場合における規定であることから、適格現物出資の対象から除外される現物出資についての規定には影響しないため、上記3の「内部取引その他これに準ずるもの」には同項の規定により同号に規定する内部取引に含まれないものとされる事実が含まれることを本通達で留意的に明らかにしている。
5 なお、内国法人国外資産等は、国外事業所等を通じて行う事業に係る資産又は負債とされていることから、仮に、資産又は負債を内国法人の本店等から国外にあるものの形式的には国外事業所等に該当しない事業所(例えば、駐在員事務所のような海外の拠点)に内部取引その他これに準ずるものにより移転したとしても、その資産又は負債が実際は国外事業所等を通じて行う事業に係るものとなっている場合には、その資産又は負債は内国法人国外資産等に該当するため、当然に上記3の「内部取引その他これに準ずるものにより内国法人国外資産等となったもの」となる。
2 有価証券の譲渡損益、時価評価損益等
【改正の概要】
令和6年度の税制改正において、法人が事業年度終了の時(以下「期末時」という。)において有する市場暗号資産に該当する暗号資産で次の要件に該当するものの期末時における評価額は、原価法又は時価法のうちその法人が選定した評価方法(自己の発行する暗号資産でその発行の時から継続して保有するものにあっては、原価法)により計算した金額とされた(法61②、令118の7②、規26の10①②)。
(1)その暗号資産につき、譲渡についての制限その他の条件として暗号資産交換業者に関する内閣府令第23条第1項第9号に規定する移転制限が付されていること。
(2)その暗号資産につき、暗号資産交換業者が認定資金決済事業者協会を通じて上記(1)の譲渡についての制限その他の条件が付されていることを公表するための一定の手続を行っていること。
なお、評価方法は、上記(1)及び(2)の要件に該当する暗号資産の種類ごとに選定し、その暗号資産の取得をした日の属する事業年度に係る確定申告書の提出期限(仮決算による中間申告書を提出する場合には、その中間申告書の提出期限)までに、納税地の所轄税務署長に届け出なければならないこととされた(令118の6④⑤、118の9①)。また、評価方法を選定しなかった場合には、原価法により評価した金額をその暗号資産の期末時における評価額とすることとされた(法61②)。
【新設】(棚卸資産の評価方法の選定等に係る取扱いの準用)
2−3−67の5 令第118条の9第1項((特定譲渡制限付暗号資産の評価の方法の選定の手続等))に規定する選定特定譲渡制限付暗号資産(以下2−3−67の5において「選定特定譲渡制限付暗号資産」という。)の評価の方法の選定の手続及び変更手続については、それぞれ次による。
(1) 同項において準用する場合(同条第2項の規定により同項に規定する特定譲渡制限付暗号資産を選定特定譲渡制限付暗号資産に該当するものとして、同条第1項において準用する令第118条の6第5項((短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法及びその選定の手続等))の規定を適用する場合を含む。)における令第118条の6第4項の規定の適用に当たっては、5−2−12((評価方法の選定単位の細分))の取扱い(事業所別の評価方法の選定に係る取扱いに限る。)を準用する。
(2) 選定特定譲渡制限付暗号資産(令第118条の9第2項の規定により選定特定譲渡制限付暗号資産に該当するものとされたものを含む。)の評価の方法について変更承認申請書の提出があった場合における令第118条の9第3項の規定の適用に当たっては、5−2−13((評価方法の変更申請があった場合の「相当期間」))及び5−2−14((評価方法の変更に関する届出書の提出))の取扱いを準用する。
【解説】
1 本通達では、特定譲渡制限付暗号資産(自己発行暗号資産を除く。以下同じ。)の期末における評価の方法の選定の手続及び変更手続についての取扱いを明らかにしている。
2 選定特定譲渡制限付暗号資産(市場暗号資産に該当する特定譲渡制限付暗号資産をいう。以下同じ。)の期末における評価の方法の選定の手続については、短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法及びその選定の手続等の規定を準用することとされている(令118の6④~⑥、118の9①)。すなわち、選定特定譲渡制限付暗号資産の期末における評価の方法はその種類ごとに選定し、その選定特定譲渡制限付暗号資産の取得をした日の属する事業年度に係る確定申告書の提出期限(仮決算をした場合の中間申告書を提出する場合には、その中間申告書の提出期限。以下同じ。)までに書面により納税地の所轄税務署長に届け出ることとされている。
3 棚卸資産の評価方法については事業所別に異なる方法を選定することが認められており(基通5−2−12)、短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出方法についても事業所別に異なる方法の選定が認められている(基通2−3−64)。暗号資産は短期売買商品等に含まれることから、選定特定譲渡制限付暗号資産も当然に一単位当たりの帳簿価額の算出方法について事業所別に異なる方法の選定が認められているところ、本通達の(1)において、評価の方法についても事業所別に異なる方法を選定することを認める旨を明らかにしている。
なお、特定譲渡制限付暗号資産の取得をした場合には、その特定譲渡制限付暗号資産が市場暗号資産に該当しないときであっても、その特定譲渡制限付暗号資産を選定特定譲渡制限付暗号資産に該当するものとして、上記2のとおり評価の方法を選定して届け出ることとされているが(令118の9②)、このように特定譲渡制限付暗号資産を選定特定譲渡制限付暗号資産に該当するものとして評価の方法を選定して届け出る場合を本通達の(1)括弧書において含めているため、市場暗号資産に該当しない特定譲渡制限付暗号資産についても同様に、評価方法を事業所別に選定することが認められる。
4 また、法人税基本通達5−2−13において、棚卸資産の評価方法の変更申請があった場合の「現によっている評価の方法を採用してから相当期間を経過しているかどうか」の判断における「相当期間」について「3年」とすることが明らかにされているが、特定譲渡制限付暗号資産の評価方法についても、一定の方法を継続適用することによって合理性が担保されるものと考えられることから、本通達の(2)において、選定特定譲渡制限付暗号資産(市場暗号資産に該当しない特定譲渡制限付暗号資産を含む。)について変更申請があった場合にも、同様に取り扱う旨を明らかにしている。
5 さらに、法人税基本通達5−2−14において、棚卸資産の評価方法の変更の届出書を提出することとなる場合を留意的に明らかにしているが、本通達の(2)において、特定譲渡制限付暗号資産の評価方法について変更の届出書を提出することとなる場合も同様である旨を明らかにしている。
第2 租税特別措置法関係通達(法人税編)関係
1 第42条の11の3((地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除))関係
【改正の概要】
令和6年度の税制改正において、地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度について、次の見直しが行われた上、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定期限が令和8年3月31日まで2年延長された(措法42の11の3①)。
(1)特定建物等の範囲に、認定地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に記載された特定業務児童福祉施設のうち特定業務施設の新設に併せて整備されるものに該当する建物及びその附属設備並びに構築物が追加された(措法42の11の3①)。
(2)本制度の対象となる特定建物等の取得価額について、その特定建物等に係る一の特定業務施設を構成する建物及びその附属設備並びに構築物の取得価額の合計額が80億円を超える場合には、80億円にその特定建物等の取得価額がその合計額のうちに占める割合を乗じて計算した金額とされた(措法42の11の3①)。
(3)中小企業者(適用除外事業者又は通算適用除外事業者に該当するものを除く。)以外の法人の適用対象となる特定建物等の取得価額に係る要件が、3,500万円以上(改正前:2,500万円以上)に引き上げられた(措令27の11の3)。
【新設】(取得価額の合計額が80億円を超えるかどうかの判定)
42の11の3−4 措置法第42条の11の3の規定の適用上、一の特定業務施設(同条第1項に規定する特定業務施設をいう。以下同じ。)を構成する建物及びその附属設備並びに構築物の取得価額の合計額が80億円を超えるかどうかは、その特定業務施設が記載された同項又は同条第2項に規定する認定地方活力向上地域等特定業務施設整備計画ごとに判定することに留意する。
【解説】
1 本通達では、本制度の対象となる特定建物等の取得価額の上限の判定単位について明らかにしている。
2 令和6年度の税制改正により、本制度の特別償却限度額又は税額控除限度額の計算の基礎となる特定建物等の取得価額は、一の特定業務施設を構成する建物及びその附属設備並びに構築物の取得価額の合計額が80億円を超える場合には、80億円にその特定建物等の取得価額がその合計額のうちに占める割合を乗じて計算した金額とされた(措法42の11の3①)。
3 ここで、逐次、特定業務施設の整備を進めているような場合は、その整備の規模をどのような単位で捉えるか疑問が生ずる。これについては、その整備に係る認定地方活力向上地域等特定業務施設整備計画ごとに一の特定業務施設を構成する建物及びその附属設備並びに構築物の取得価額の合計額が80億円を超えるかどうかで判定することを、本通達において留意的に明らかにしている。
【新設】(2以上の事業年度において事業の用に供した場合の取得価額の計算)
42の11の3−5 措置法第42条の11の3第1項に規定する特定建物等(以下「特定建物等」という。)に係る一の特定業務施設を構成する建物及びその附属設備並びに構築物でその取得価額の合計額が80億円を超えるものを2以上の事業年度において事業の用に供した場合には、その取得価額の合計額が初めて80億円を超えることとなる事業年度(以下「超過事業年度」という。)における同項の規定による特別償却限度額又は同条第2項の規定による税額控除限度額の計算の基礎となる個々の特定建物等の取得価額は、次の算式による。

(注) 超過事業年度前の各事業年度において事業の用に供した個々の特定建物等については、その取得価額の調整は行わないことに留意する。
【解説】
1 本通達では、本制度の対象となる特定建物等の取得価額が上限を超える場合で、その特定建物等を複数の事業年度において事業の用に供するときにおける特別償却限度額及び税額控除限度額の計算の基礎となる取得価額の計算方法を明らかにしている。
2 令和6年度の税制改正により、本制度の特別償却限度額又は税額控除限度額の計算の基礎となる特定建物等の取得価額は、一の特定業務施設を構成する建物及びその附属設備並びに構築物の取得価額の合計額が80億円を超える場合には、80億円にその特定建物等の取得価額がその合計額のうちに占める割合を乗じて計算した金額とされた(措法42の11の3①)。すなわち、その80億円がいずれの特定建物等の取得価額から成るかについては、特定の特定建物等の取得価額から成るものとするのではなく、特定建物等の全部の取得価額の中に平均的に含まれているものとして計算することとされている。
3 ところで、一の認定地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に従って特定業務施設の整備をする場合において、特定建物等の取得価額の合計額が80億円を超え、かつ、その事業の用に供する時期が複数の事業年度にまたがるときの特別償却限度額又は税額控除限度額の計算については、その同一の認定地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に基づいて取得する特定建物等の全部に80億円を配賦するという考え方、あるいは、その適用を受ける特定建物等の取得価額の合計額が80億円を超えることになった場合に、既にその適用を受けている事業年度に遡及して限度額の計算をするという考え方もある。しかしながら、これらによると計算が非常に煩雑になるため、本通達において、事業の用に供した特定建物等の取得価額が初めて80億円を超えることとなる事業年度で、その事業年度において事業の用に供した特定建物等について本制度の対象となる特定建物等の取得価額の調整計算をすることとしている。
2 第42条の12の5((給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除))関係
【改正の概要】
令和6年度の税制改正において、給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度について、次の見直しが行われた。
(1)法人の継続雇用者給与等支給額が増加した場合に係る措置について、次の見直しが行われた上、その適用期限が令和9年3月31日まで3年延長された(措法42の12の5①)。
イ 税額控除割合の上乗せ措置について、次の要件を満たす場合には、それぞれ次の割合を加算した割合を税額控除割合とし、次の要件のうち2以上の要件を満たす場合には、それぞれの割合を合計した割合を加算した割合を税額控除割合とすることとされた(措法42の12の5①)。
(イ)継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が4%以上であること……5%(その増加割合が5%以上である場合には10%とし、その増加割合が7%以上である場合には15%とする。)
(ロ)教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上であり、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であること……5%
(ハ)次世代育成支援対策推進法のプラチナくるみん認定(以下「プラチナくるみん認定」という。)又は女性の職業生活における活躍の推進に関する法律のプラチナえるぼし認定(以下「プラチナえるぼし認定」という。)を受けていること……5%
ロ 本措置の適用を受けるために「給与等の支給額の引上げの方針、取引先との適切な関係の構築の方針その他の事項」を公表しなければならない法人に、本措置の適用を受けようとする事業年度終了の時においてその法人の常時使用する従業員の数が2,000人を超えるものが追加された(措法42の12の5①)。
ハ 原則の税額控除割合が10%(改正前:15%)に引き下げられた(措法42の12の5①)。
(2)青色申告書を提出する法人で常時使用する従業員の数が2,000人以下であるもの(その法人及びその法人との間にその法人による支配関係がある法人の常時使用する従業員の数の合計数が10,000人を超えるものを除く。)が、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が3%以上であるときは、控除対象雇用者給与等支給増加額の10%(次の要件を満たす場合には、それぞれ次の割合(次の要件のうち2以上の要件を満たす場合には、それぞれの割合を合計した割合)を加算した割合)の税額控除ができる措置が追加された。ただし、控除を受ける金額は、当期の調整前法人税額の20%相当額を上限とされた(措法42の12の5②)。
イ 継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が4%以上であること……15%
ロ 教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上であり、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であること……5%
ハ プラチナくるみん認定若しくはプラチナえるぼし認定を受けていること又はその事業年度において女性の職業生活における活躍の推進に関する法律のえるぼし認定(3段階目)を受けたこと……5%
(3)中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合に係る措置について、次の見直しが行われ、控除限度超過額は5年間の繰越しができることとされた上、その適用期限が令和9年3月31日まで3年延長された(措法42の12の5③④)。
イ 教育訓練費に係る税額控除割合の上乗せ措置について、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が5%以上であり、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合に税額控除割合に10%を加算する措置とされた(措法42の12の5③二)。
ロ プラチナくるみん認定若しくはプラチナえるぼし認定を受けている場合又はその事業年度において次世代育成支援対策推進法のくるみん認定若しくは女性の職業生活における活躍の推進に関する法律のえるぼし認定(2段階目以上)を受けた場合に税額控除割合に5%を加算する措置が追加された(措法42の12の5③三)。
(4)給与等の支給額から控除する「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」から役務の提供の対価として支払を受ける金額を除くこととされた(措法42の12の5⑤四)。
【改正】(中小企業者であるかどうかの判定の時期)
42の12の5−1の3 措置法第42条の12の5第3項の規定の適用上、法人が措置法第42条の4第19項第7号に規定する中小企業者(以下「中小企業者」という。)に該当するかどうかの判定(以下「中小判定」という。)は、次に掲げる法人の区分に応じそれぞれ次に定める取扱いによるものとする。
(1) 通算法人以外の法人 当該法人の措置法第42条の12の5第3項の規定の適用を受ける事業年度終了の時の現況による。
(2) 通算法人 当該通算法人及び他の通算法人(当該通算法人の同項の規定の適用を受けようとする事業年度(以下「適用事業年度」という。)終了の日において当該通算法人との間に通算完全支配関係がある法人に限る。)の適用事業年度終了の時の現況による。
(注)1 (2)の取扱いは、通算親法人の事業年度の中途において通算承認の効力を失った通算法人のその効力を失った日の前日に終了する事業年度における中小判定についても、同様とする。
2 措置法第42条の12の5第4項の規定の適用に当たっては、同項の規定の適用を受ける事業年度終了の時において中小企業者に該当する必要はないが、同条第5項第12号に規定する繰越税額控除限度超過額の生じた事業年度終了の時において中小企業者に該当する必要があることに留意する。
【解説】
1 本通達では、給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度の中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合に係る措置において行う中小企業者に該当するかどうかの判定の時期を明らかにしている。
2 令和6年度の税制改正において、本制度に繰越税額控除制度が追加された。繰越税額控除制度は、青色申告書を提出する法人の各事業年度において、その法人の雇用者給与等支給額がその比較雇用者給与等支給額を超える場合には、その有する繰越税額控除限度超過額の税額控除を認めるというものである(措法42の12の5④)。また、繰越税額控除限度超過額とは、その事業年度開始の日前5年以内に開始した各事業年度で本制度の中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合に係る措置(以下「本措置」という。)による控除をしてもなお控除しきれない金額(既に繰越税額控除制度の適用を受けて控除された金額を除く。)の合計額をいうこととされている(措法42の12の5⑤十二)。この改正を受けて、本通達において、繰越税額控除制度に係る中小企業者の判定を明らかにする改正を行っている。
3 上記2のとおり、繰越税額控除制度による税額控除の基礎となる繰越税額控除限度超過額が本措置の適用により生ずるものであることから、本措置と同様に、繰越税額控除制度の適用を受ける事業年度終了の時においても中小企業者に該当していなければならないのではないかとの疑問が生ずる。
この点、繰越税額控除制度における繰越税額控除限度超過額は、本措置を適用した結果として生じたものであるものの、繰越税額控除制度による税額控除を受けるための要件として中小企業者に該当することは法令上、定められていない。したがって、本措置を適用した結果として控除しきれなかった部分の金額について実際に繰越税額控除制度による税額控除を受ける事業年度終了の時において中小企業者に該当する必要はない。ただし、繰越税額控除限度超過額の生じた事業年度、すなわち本措置を適用し、租税特別措置法第42条の12の5第3項に規定する中小企業者等税額控除限度額の控除をしてもなお控除しきれなかった金額が生じた当初の事業年度は、当然にその事業年度終了の時において中小企業者に該当する必要がある。本通達の注書2において、これらのことを留意的に明らかにしている。
【改正】(補填額の範囲)
42の12の5−2 措置法第42条の12の5第5項第4号から第6号まで、第9号及び第11号の規定の適用上、給与等の支給額から控除する「補填額」には、補助金等(補助金、助成金、給付金又は負担金その他これらに類する性質を有するものをいい、国又は地方公共団体から受ける雇用保険法第62条第1項第1号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものを除く。以下同じ。)のうち次に掲げるものの交付額が該当する。
(1) 補助金等の要綱、要領又は契約において、その補助金等の交付の趣旨又は目的がその交付を受ける法人の給与等の支給額に係る負担を軽減させることであることが明らかにされているもの
(2) (1)に掲げるもののほか、補助金等の交付額の算定方法が給与等の支給実績又は支給単価(雇用契約において時間、日、月、年ごとにあらかじめ決められている給与等の支給額をいう。)を基礎として定められているもの
(注)1 補助金等には、役務の提供に対する対価の性質を有するものは含まれないことに留意する。
2 例えば、次の(1)の金額は本文の「補填額」に該当し、次の(2)の額は役務の提供に対する対価の性質を有するため本文の「補填額」に該当しない。
(1) 法人の使用人が他の法人に出向した場合において、その出向した使用人(以下「出向者」という。)に対する給与を出向元法人(出向者を出向させている法人をいう。以下同じ。)が支給することとしているときに、出向元法人が出向先法人(出向元法人から出向者の出向を受けている法人をいう。以下同じ。)から支払を受けた出向先法人の負担すべき給与に相当する金額(以下「給与負担金の額」という。)
(2) 看護職員処遇改善評価料の額及び介護職員処遇改善加算の額のように、イからハまでに掲げる報酬の額その他これらに類する公定価格(法令又は法令に基づく行政庁の命令、許可、認可その他の処分に基づく価格をいう。)が設定されている取引における取引金額に含まれる額
イ 健康保険法その他法令の規定に基づく診療報酬の額
ロ 介護保険法その他法令の規定に基づく介護報酬の額
ハ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律その他法令の規定に基づく障害福祉サービス等報酬の額
【解説】
1 本通達では、給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度の適用要件の判定及び税額控除限度額の計算の基礎となる給与等の支給額から控除することとなる補填額の範囲について明らかにしている。
2 本制度では、適用要件の判定及び税額控除限度額の計算に当たって、継続雇用者給与等支給額(措法42の12の5⑤四)、継続雇用者比較給与等支給額(措法42の12の5⑤五)、雇用者給与等支給額(措法42の12の5⑤九)、比較雇用者給与等支給額(措法42の12の5⑤十一)といった用語が定められているが、これらの計算の基礎となる給与等の支給額について、その給与等に充てるため他の者(本制度の適用を受ける法人が外国法人である場合の法人税法第138条第1項第1号に規定する本店等を含む。以下同じ。)から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除することとされている。
3 令和6年度の税制改正前においては、国又は地方公共団体から受ける雇用保険法第62条第1項第1号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものの額については、法令上、「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」から除くこととされていたが、看護職員処遇改善評価料の額及び介護職員処遇改善加算の額のように給与等に充てることとされているものの、役務の提供の対価としての性質を有するものについては、「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」から除くのかどうか、法令上、明確ではなかった。
4 令和6年度の税制改正において、給与等の支給額から控除する「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」から役務の提供の対価として支払を受ける金額を除くこととされた(措法42の12の5⑤四)。改正前の本通達(1)では、「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に該当する金額として一定の要件を満たす補助金等(補助金、助成金、給付金又は負担金その他これらに準ずるものをいう。)の交付額を掲げていたが、令和6年度の税制改正により、補助金等(補助金、助成金、給付金又は負担金その他これらに類する性質を有するものをいう。以下同じ。)であっても役務の提供の対価として支払を受ける金額は、「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」から除かれることとされたことを受け、本通達の注書1において、補助金等には、役務の提供に対する対価の性質を有するものは含まれないことを留意的に明らかにしている。
5 また、本通達の注書2(2)において、給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額であるものの、役務の提供に対する対価の性質を有するため補填額に該当しない額を例示しており、本通達の注書2(2)イからハまでに掲げられている金額以外にも、これらに類する公定価格(法令又は法令に基づく行政庁の命令、許可、認可その他の処分に基づく価格をいう。)が設定されている取引における取引金額に含まれる額は、補填額に該当しないことが明らかにされている。
【新設】(被合併法人等が有する繰越税額控除限度超過額)
42の12の5−5 措置法第42条の12の5第5項第12号に規定する繰越税額控除限度超過額(以下「繰越税額控除限度超過額」という。)を有している法人が、当該法人を被合併法人等(被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人をいう。)とする合併等(合併、分割、現物出資又は現物分配をいう。以下同じ。)を行った場合には、当該合併等が適格合併等(適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配をいう。)に該当するときであっても、当該繰越税額控除限度超過額を合併法人等(合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人をいう。)に引き継ぐことは認められないのであるから留意する。
【解説】
1 本通達では、給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除制度の繰越税額控除限度超過額を被合併法人等が有している場合の取扱いについて明らかにしている。
2 令和6年度の税制改正において、本制度の中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合に係る措置における控除をしてもなお控除しきれない金額は、5年間の繰越しができることとされた。具体的には、本制度の中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合に係る措置は、控除対象雇用者給与等支給増加額の一定割合が中小企業者等税額控除限度額とされるが、その中小企業者等税額控除限度額がその事業年度の調整前法人税額の20%相当額を超える場合には、その20%相当額が限度となり、繰越税額控除限度超過額が生ずることとなるところ、この繰越税額控除限度超過額について、翌期以後5年間繰り越すことが認められた(措法42の12の5④、⑤十二)。
3 本制度においては、合併法人等の比較教育訓練費の額の計算における教育訓練費の額及び比較雇用者給与等支給額の計算における給与等の支給額について調整計算を行うこととされており、被合併法人等の教育訓練費の額及び給与等の支給額もその調整計算の基礎とされていることから、合併法人等が適格合併等により被合併法人等の資産及び負債の移転を受け、かつ、その被合併法人等が繰越税額控除限度超過額を有していた場合、合併法人等においてその繰越税額控除限度超過額による税額控除が認められるのではないかという疑問が生ずる。この点、適格合併等により被合併法人等の資産及び負債が移転した場合であっても、合併法人等に繰越税額控除限度超過額を引き継いで、合併法人等において繰越税額控除限度超過額による税額控除を受けることができるとする法令の定めはなく、繰越税額控除限度超過額を引き継ぐことは認められていない。
4 したがって、本通達では、適格合併等により被合併法人等の資産及び負債が移転した場合であっても、被合併法人等が有する繰越税額控除限度超過額を合併法人等に引き継ぐことは認められないことを留意的に明らかにしている。
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