資料2024年11月18日 重要資料 令和6年8月5日付課法2−21ほか2課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明(1)(2024年11月18日号・№1051)
重要資料
令和6年8月5日付課法2−21ほか2課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)の趣旨説明(1)
この趣旨説明は、令和6年8月5日現在の法令に基づいて作成している。
1 令和6年度の税制改正のうち各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の一部改正
「BEPSプロジェクト」は、公平な競争環境の確保という考え方の下、各国政府・グローバル企業の透明性を高め、BEPS(Base Erosionand Profit Shifting)を防止するために、国際課税ルール全体を見直す取組みとして、平成24年(2012年)にOECD租税委員会によって立ち上げられ、その後、平成27年(2015年)に「BEPS最終報告書」が公表された。
BEPSプロジェクトにおいて示された15の行動計画のうち、行動1では「電子経済の課税上の課題への対応」について検討が行われ、消費課税上の課題については見直しを提言するに至ったが、法人課税における対応については合意に至らず、将来に向けて検討を継続することとされていた。その後の検討を経て、令和3年(2021年)10月に、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」(Inclusive Framework on BEPS)において、市場国への新たな課税権の配分(「第1の柱」)とグローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)の「2本の柱」からなる解決策が最終的に合意されるに至った。
グローバル・ミニマム課税については、令和3年(2021年)10月の最終合意以降、同年12月、BEPS包摂的枠組みにより、各国が国内法整備に当たって参照すべきモデルルール(Global Anti-Base Erosion Model Rules)が、次いで令和4年(2022年)3月には当該モデルルールに係るコメンタリー(Commentary to the Global Anti-Base Erosion Model Rules)が承認された。その後も、納税者のコンプライアンス上の事務負担の軽減等の観点からセーフ・ハーバー等に関するルールを定めた「実施パッケージ(Implementation Package)」(令和4年(2022年)12月)及び、制度の明確化等の観点からコメンタリーを補足する「執行ガイダンス(Administrative Guidance)」(令和5年(2023年)2月、7月及び12月並びに令和6年(2024年)6月)がそれぞれ公表された。
なお、令和3年(2021年)10月の最終合意において、このモデルルール等は、「コモン・アプローチ」と位置付けられている。これは、BEPS包摂的枠組みへの各参加国は、必ずしも国内で同制度を導入することを要求されない一方、導入する場合には、モデルルール等に定められた結果に整合する形で制度を実施・運用することが求められるというものである。
我が国においては、このモデルルール等を踏まえ令和5年度の税制改正により各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税が創設され、令和6年度の税制改正においてもこれらの執行ガイダンスの内容や国際的な議論の内容を踏まえた制度の明確化等の観点からの見直しが行われた。
この各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税は、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用することとされ、対象会計年度の直前の4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度において、全世界での年間総収入金額が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業グループを対象にしており、実質ベース所得除外額を除く所得について国ごとに基準税率15%以上の課税を確保する目的で、子会社等の所在する軽課税国での税負担(実効税率)が基準税率15%に至るまで、我が国に所在する親会社等に対して上乗せ(トップアップ)課税を行う制度である。
2 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の一部改正に伴う法人税基本通達等の一部改正
令和6年度の税制改正において各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の見直しが行われたことに伴い、法人税基本通達等の一部改正を行うこととした。
上記1のとおり、各国がグローバル・ミニマム課税を導入する場合には、モデルルール等に定められた結果に整合する形で制度を実施・運用することが求められている。
このような背景から、法人税基本通達等の一部改正においても、その法令解釈についてはモデルルール等の趣旨を十分に踏まえて行っており、また、諸外国の税制や会計制度は区々であることから一義的な取扱いを定めることができないようなケースについては、例示をするにとどめている。したがって、通達中に例示がない、通達に定められていない等の理由で法令の規定の趣旨、本制度の導入の背景等に即しない解釈に陥ることのないよう留意が必要である。
第1 法人税基本通達関係
1 定義
【新設】(総収入金額の円換算)
18−1−7の2 特定多国籍企業グループ等(法第82条第4号((定義))に規定する特定多国籍企業グループ等をいう。以下この章において同じ。)の判定に当たり、多国籍企業グループ等に係る最終親会社等(同条第10号に規定する最終親会社等をいう。以下この章において同じ。)の連結等財務諸表が外国通貨で表示される場合には、当該連結等財務諸表に外国通貨で表示される同条第4号の「総収入金額として財務省令で定める金額」を当該判定に係る対象会計年度開始の日(規則第38条の3((本邦通貨表示の金額への換算))に規定する開始の日をいう。)の属する年の前年12月における欧州中央銀行によって公表された外国為替の売買相場の平均値により、本邦通貨表示の金額に換算した金額を用いて当該判定を行うことに留意する。
(注) 本文の取扱いは、法第82条の2第7項各号((国際最低課税額))、令第155条の6第3項第2号及び第3号((特定多国籍企業グループ等の範囲))、令第155条の18第2項第8号((個別計算所得等の金額の計算))、令第155条の35第4項各号((調整後対象租税額の計算))、令第155条の40第1項第2号((構成会社等に係る再計算国別国際最低課税額))並びに令第155条の44第1項第2号((無国籍構成会社等に係る再計算国際最低課税額))並びに規則第38条の10第7項第1号((除外会社等の範囲))及び規則第38条の44第5項第2号((収入金額等に関する適用免除基準))に係る判定を行う場合についても、同様とする。
【解説】
1 本制度の対象範囲を決定する特定多国籍企業グループ等とは、多国籍企業グループ等のうち、各対象会計年度の直前の4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度において、その「総収入金額として財務省令で定める金額」が「7億5,000万ユーロを財務省令で定めるところにより本邦通貨表示の金額に換算した金額」以上であるもの(以下「対象多国籍企業グループ等」という。)をいい(法82四、令155の6④一)、また、多国籍企業グループ等がグループ結合又はグループ分離により組織されていた場合には、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める多国籍企業グループ等も特定多国籍企業グループ等に該当することとされている(令155の6③)。
(1)多国籍企業グループ等の各対象会計年度(以下「判定対象会計年度」という。)の直前の4対象会計年度のうち最も古い対象会計年度開始の日からその判定対象会計年度終了の日までの間にその多国籍企業グループ等に係るグループ結合があった場合 そのグループ結合に係る被支配企業グループ等のそのグループ結合の日以前に終了した各会計年度の総収入金額がその各会計年度に対応するその多国籍企業グループ等の対象会計年度における総収入金額に含まれるものとした場合に対象多国籍企業グループ等に該当することとなるもの
(2)多国籍企業グループ等の判定対象会計年度がその多国籍企業グループ等に係るグループ分離があった日後最初に終了する対象会計年度である場合 その多国籍企業グループ等のうち、判定対象会計年度の総収入金額が7億5,000万ユーロを財務省令で定めるところにより本邦通貨表示の金額に換算した金額以上であるもの
(3)多国籍企業グループ等の判定対象会計年度がその多国籍企業グループ等に係るグループ分離があった日後最初に終了する対象会計年度後の3対象会計年度のいずれかである場合 その多国籍企業グループ等のうち、その最初に終了する対象会計年度から判定対象会計年度までの各対象会計年度のうち2以上の対象会計年度の総収入金額が7億5,000万ユーロを財務省令で定めるところにより本邦通貨表示の金額に換算した金額以上であるもの
(注)「総収入金額」とは、それぞれ最終親会社等の連結等財務諸表(規38の6①)、被支配企業グループ等が法人税法施行令第155条の6第4項第3号イに掲げる企業グループ等である場合のその企業グループ等に係る最終親会社等の連結等財務諸表(規38の6②一)及び同号ロに掲げる非グループ会社等の計算書類(規38の6②二)における「売上金額、収入金額その他の収益の額の合計額」をいうこととされている。
2 ここで、特定多国籍企業グループ等である対象多国籍企業グループ等の判定において、多国籍企業グループ等に係る最終親会社等の連結等財務諸表が外国通貨で表示される場合(例えば、我が国のみならず外国でも上場している場合、外国に最終親会社等があり日本に被部分保有親会社等がある場合、為替変動が業績に与える影響を排除する目的で外国通貨建ての連結等財務諸表を作成している場合等)には、外国通貨で表示される「総収入金額として財務省令で定める金額」と「7億5,000万ユーロを財務省令で定めるところにより本邦通貨表示の金額に換算した金額」とを比較することとなるため、その「総収入金額として財務省令で定める金額」の円換算の方法が問題となる。そこで、本通達では、この外国通貨で表示される「総収入金額として財務省令で定める金額」の円換算の方法を留意的に明らかにしている。
3 この方法については法令上特段の規定はないところ、判定の基準となる「7億5,000万ユーロを財務省令で定めるところにより本邦通貨表示の金額に換算した金額」の円換算については、法人税法施行規則第38条の3に規定が設けられており、具体的には、その判定に係る対象会計年度(同条に規定する対象会計年度をいう。以下同じ。)開始の日(その対象会計年度が参照日(各対象会計年度開始の日を決定するための基準となる日をいう。)から最も近い特定の曜日から開始することとされる場合にあっては、その参照日。以下同じ。)の属する年の前年12月における欧州中央銀行によって公表された外国為替の売買相場の平均値により円換算を行うこととされている。
4 そのため、外国通貨で表示される法人税法第82条第4号の「総収入金額として財務省令で定める金額」についても、判定の基準となる「7億5,000万ユーロを財務省令で定めるところにより本邦通貨表示の金額に換算した金額」の円換算と同様に、その判定に係る対象会計年度開始の日の属する年の前年12月における欧州中央銀行によって公表された外国為替の売買相場の平均値により円換算を行うことが相当である。
5 また、この特定多国籍企業グループ等である対象多国籍企業グループ等の判定以外にも、判定の基準となる金額が法令上ユーロで規定され、これを上記3と同様に本邦通貨表示の金額に円換算して判定を行う場合がある。本通達の注書では、これらの判定における金額(次に掲げる判定の区分に応じそれぞれ次に定める金額)の円換算についても、本通達の本文と同様の方法により、外国通貨で表示される金額を円換算して判定を行うことを明らかにしている。
(1)構成会社等に係る収入金額等に関する適用免除基準(デミニマス除外)の適用があるかどうかの判定(法82の2⑦各号) 法人税法第82条の2第7項第1号の「収入金額の平均額として政令で定めるところにより計算した金額」及び同項第2号の「利益又は損失の額の平均額として政令で定めるところにより計算した金額」
(注)共同支配会社等に係る収入金額等に関する適用免除基準(デミニマス除外)の適用についても、構成会社等に係る収入金額等に関する適用免除基準(デミニマス除外)の規定が準用されているため(法82の2⑬)、共同支配会社等についても同様に取り扱うこととなる。
(2)多国籍企業グループ等に係るグループ分離があった場合における特定多国籍企業グループ等の判定(令155の6③二・三) 法人税法施行令第155条の6第3項第2号及び第3号の「総収入金額」
(3)構成会社等の特例適用前個別計算所得等の金額の計算における当期純損益金額に加算することとなる罰金等の金額に該当するかどうかの判定(令155の18②八) 法人税法施行令第155条の18第2項第8号の「当該罰金等の金額(……)」
(注)共同支配会社等の特例適用前個別計算所得等の金額の計算における当期純損益金額に加算することとなる罰金等の金額についても、構成会社等の特例適用前個別計算所得等の金額の計算の規定が準用されているため(令155の18④)、共同支配会社等についても同様に取り扱うこととなる。
(4)過大であった過去対象会計年度における調整後対象租税額が少額である場合に係る特例の判定(令155の35④各号) 法人税法施行令第155条の35第4項各号の「調整後対象租税額の合計額」
(5)構成会社等に係る再計算国別国際最低課税額の計算を行うかどうかの判定(令155の40①二) 法人税法施行令第155条の40第1項第2号の「当該過去対象会計年度終了の日の翌日から3年を経過する日までに納付されなかった金額」
(注)共同支配会社等に係る再計算国別国際最低課税額の計算についても、構成会社等に係る再計算国別国際最低課税額の計算の規定が準用されているため(令155の48①)、共同支配会社等についても同様に取り扱うこととなる。
(6)無国籍構成会社等に係る再計算国際最低課税額の計算を行うかどうかの判定(令155の44①二) 法人税法施行令第155条の44第1項第2号の「当該過去対象会計年度終了の日の翌日から3年を経過する日までに納付されなかった金額」
(注)無国籍共同支配会社等に係る再計算国際最低課税額の計算についても、無国籍構成会社等に係る再計算国際最低課税額の計算の規定が準用されているため(令155の51①)、無国籍共同支配会社等についても同様に取り扱うこととなる。
(7)一定の除外会社等に係る要件の判定(規38の10⑦一) 法人税法施行規則第38条の10第7項の「収入金額(……)の合計額」
(8)連結除外構成会社等に該当するかどうかの判定(規38の44⑤二) 法人税法施行規則第38条の44第5項第2号の「調整後収入金額」
【新設】(本店配賦経費がある場合の恒久的施設等の作成されることとなる個別財務諸表)
18−1−40の2 令第155条の16第11項第3号((当期純損益金額))の「恒久的施設等に帰せられるべきものとされる所得に係る財産及び損益の状況を記載した個別財務諸表を作成するとしたならば作成されることとなる個別財務諸表」とは、例えば、構成会社等の同号に掲げる恒久的施設等を通じて行う事業とそれ以外の事業に共通する費用のうち当該恒久的施設等を通じて行う事業に係るもの(いわゆる本店配賦経費)がある場合には、これを含めて作成されることとなるものをいうことに留意する。
【解説】
1 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税は、子会社等の所在地国における国別実効税率が基準税率(15%)を下回る場合に、親会社等の所在地国でその親会社等に対して、その税負担が基準税率(15%)に至るまで上乗せ(トップアップ)課税を行う仕組みである。また、この国別実効税率とは、所在地国を同一とする全ての構成会社等のその対象会計年度に係る調整後対象租税額の合計額(国別調整後対象租税額)が、その全ての構成会社等のその対象会計年度に係る個別計算所得金額の合計額からその全ての構成会社等のその対象会計年度に係る個別計算損失金額の合計額を控除した残額(以下「国別グループ純所得の金額」という。)のうちに占める割合をいうこととされている(法82の2②一イ(3))。
2 この国別グループ純所得の金額の計算の基礎となる個別計算所得金額又は個別計算損失金額は、個別計算所得等の金額から算出することとされており(法82二十七・二十八)、この個別計算所得等の金額は、当期純損益金額を出発点として計算することとされている(法82二十六)。
そして、構成会社等(恒久的施設等を除く。以下同じ。)又は共同支配会社等(恒久的施設等を除く。以下同じ。)の当期純損益金額とは、各対象会計年度に係る特定連結等財務諸表の作成の基礎となるその構成会社等又は共同支配会社等の税引後当期純損益金額(最終親会社等財務会計基準に基づき計算される構成会社等又は共同支配会社等の当期純利益金額又は当期純損失金額として財務省令で定める金額であって、特定連結等財務諸表の作成において必要とされる一定の会計処理が行われなかったものとしたならば算出されることとなる金額をいう。)をいうこととされている(令155の16①一)。
また、恒久的施設等(法人税法第82条第6号ニに掲げる恒久的施設等を除く。以下同じ。)の当期純損益金額は、最終親会社等財務会計基準に従って作成された又は作成されることとなるその恒久的施設等の各対象会計年度に係る個別財務諸表がある場合に該当するかどうかに応じて、それぞれ最終親会社等財務会計基準に基づき計算された又は計算される恒久的施設等純損益金額をいうこととされている(令155の16①二)。
3 ここで、この恒久的施設等の個別財務諸表には、税務上、恒久的施設等に帰属しない所得項目が反映されている場合もあると考えられることから、その恒久的施設等の個別財務諸表が次に掲げる恒久的施設等の区分に応じてそれぞれ次に定める個別財務諸表(最終親会社等財務会計基準(最終親会社等財務会計基準に基づくことが実務上困難であると認められる場合には、代用財務会計基準。以下同じ。)に従って作成されることとなるものに限る。以下同じ。)と異なる場合には、その対象会計年度に係る次に定める個別財務諸表に係る最終親会社等財務会計基準に基づき計算される恒久的施設等純損益金額をもってその恒久的施設等のその対象会計年度に係る恒久的施設等純損益金額とすることとされている(令155の16⑪)。
(1)条約等に基づく恒久的施設等(法人税法第82条第6号イに掲げる恒久的施設等) その条約等においてその恒久的施設等に帰せられるべきものとされる所得に係る財産及び損益の状況を記載した個別財務諸表を作成するとしたならば作成されることとなる個別財務諸表
(2)国内法に基づく恒久的施設等(同号ロに掲げる恒久的施設等) その恒久的施設等の所在地国の租税に関する法令において恒久的施設等に帰せられるべきものとされる所得に係る財産及び損益の状況を記載した個別財務諸表を作成するとしたならば作成されることとなる個別財務諸表
(3)OECDモデル租税条約第5条における恒久的施設等(同号ハに掲げる恒久的施設等) その恒久的施設等がその会社等から独立して事業を行う事業者であったとしたならば、その恒久的施設等が果たす機能、その恒久的施設等において使用する資産、その恒久的施設等とその会社等の本店等との間の内部取引その他の状況を勘案して、その恒久的施設等に帰せられるべきものとされる所得に係る財産及び損益の状況を記載した個別財務諸表を作成するとしたならば作成されることとなる個別財務諸表
4 上記3(3)に定める個別財務諸表とは、OECDモデル租税条約第7条に基づいて恒久的施設に帰せられるべきものとされる所得に係る財産及び損益の状況を記載した個別財務諸表である。つまり、同条に基づいて恒久的施設に帰せられるべき所得及びこれを決定する方法を規定した法人税法第138条第1項第1号に掲げる国内源泉所得(以下「恒久的施設帰属所得」という。)を認識する方法及びこれに係る所得の金額を計算する方法と同様の方法に基づいてその恒久的施設等に帰せられるべきものとされる所得に係る財産及び損益の状況を記載した個別財務諸表ということとなる。
したがって、会社等の恒久的施設等が上記3(3)のOECDモデル租税条約第5条における恒久的施設等(法人税法第82条第6号ハに掲げる恒久的施設等)である場合に作成されることとなる個別財務諸表の財産及び損益については、恒久的施設帰属所得に係る所得の金額を計算する場合に考慮されるいわゆる本店配賦経費(共通費用)を考慮する必要がある。本通達では、このことを例示により留意的に明らかにしている。
5 なお、上記3のとおり、会社等の恒久的施設等が上記3(1)に掲げる恒久的施設等である場合における上記3(1)に定める個別財務諸表とは法人税法第82条第6号イに規定する条約等によってその恒久的施設等に帰せられるべきものとされる所得に係る財産及び損益の状況を記載した個別財務諸表をいうこととされ、また、会社等の恒久的施設等が上記3(2)に掲げる恒久的施設等である場合における上記3(2)に定める個別財務諸表とはその恒久的施設等の所在地国の租税に関する法令によってその恒久的施設等に帰せられるべきものとされる所得に係る財産及び損益の状況を記載した個別財務諸表をいうこととされている。したがって、その条約等やその租税に関する法令の規定がOECDモデル租税条約第7条の規定に相当するものである場合には、本通達の取扱いと同様となることに留意が必要である。
【新設】(直接又は間接保有の持分)
18−1−46の2 規則第38条の16第11項第1号((個別計算所得等の金額の計算))に規定する「特殊の関係」(以下18−1−46の2において「特殊の関係」という。)にあるかどうかを判定する場合の直接又は間接に保有する持分には、株式の払込み又は給付の金額(以下18−1−46の3において「払込金額等」という。)の全部又は一部について払込み又は給付(以下18−1−46の3において「払込み等」という。)が行われていないものが含まれるものとする。
(注) 名義株は、その実際の権利者が保有するものとして特殊の関係の有無を判定することに留意する。
【解説】
1 令和6年度の税制改正により、いわゆる「譲渡」(適用者変更)が認められる税額控除(譲渡可能税額控除:Transferable tax credits)の額のうち、市場性がある一定のものについて、適格適用者変更税額控除額と位置付け、適格給付付き税額控除額(法人税法施行令第155条の18第2項第12号に規定する適格給付付き税額控除額をいう。以下同じ。)と同様に収益として取り扱うこととされたほか、その「譲渡」が可能であるという性質を踏まえ、個別計算所得等の金額及び調整後対象租税額の計算における所要の調整が措置された(令155の18②十二、令155の35②二ハ、規38の16⑩~⑫⑱~)。譲渡可能税額控除は、政府から全額の給付を受けるのではなく、その「譲渡」に際して税額控除を割安で売却しなければならないため、給付付き税額控除ほど価値がないとはいえ、税額控除として適用を受ける以外に対価を得られるという意味では、その「譲渡」が認められる税額控除は給付付き税額控除と類似しているといえる。
2 具体的に、この適格適用者変更税額控除額とは、一定の場合を除き、国又は地域の租税に関する法令において、適用者変更(税額控除を受けることができる者と他の者との間の取引に基づき、その税額控除を受けることができる者がその税額控除を受けることができる金額の全部又は一部につきその適用を受けることができないこととなることにより、その適用を受けることができないこととなる金額に相当する額につき当該他の者が税額控除を受けることができることをいう。以下同じ。)が認められる税額控除に係る最初にその適用を受けることができる金額(適格給付付き税額控除額を除く。以下「適用者変更税額控除額」という。)のうち、各対象会計年度におけるその適用者変更税額控除額に係る構成会社等又は共同支配会社等の次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める金額とされている(規38の16⑩)。
(1)その対象会計年度において、その適用者変更税額控除額に係る当初適用者(税額控除につき最初にその適用を受けることができることとなった者をいう。以下同じ。)に該当することとなった構成会社等又は共同支配会社等(その適用者変更税額控除額が次に掲げる要件の全てを満たす場合における構成会社等又は共同支配会社等に限る。) その適用者変更税額控除額
イ その国又は地域の租税に関する法令において、その対象会計年度又はその対象会計年度終了の日の翌日から1年3か月以内において当初適用者が他の者(その当初適用者と特殊の関係にある者を除く。)との間で適用者変更を行うことが認められていること(法的譲渡性基準(legal transferability standard))。
ロ その対象会計年度又はその対象会計年度終了の日の翌日から1年3か月以内に当初適用者のいずれかと他の者(その当初適用者と特殊の関係にある者を除く。)との間でその適用者変更税額控除額に係る適用者変更が行われ、かつ、その適用者変更につき支払を受けた対価の額が適格適用者変更価格以上であったと認められること(市場性基準(marketability standard))。
(2)その適用者変更税額控除額に係る新適用者(税額控除につき適用者変更によりその適用を受けることができることとなった者をいう。)に該当する構成会社等又は共同支配会社等(その適用者変更税額控除額が次に掲げる要件の全てを満たす場合における構成会社等又は共同支配会社等に限る。) 新適用者変更税額控除額(その適用者変更税額控除額のうち適用者変更により構成会社等又は共同支配会社等がその適用を受けることができることとなった部分の金額をいう。以下同じ。)からその新適用者変更税額控除額に係る適用者変更につき支払った対価の額を控除した残額に、その新適用者変更税額控除額のうちその対象会計年度においてその適用を受けた部分の金額(その対象会計年度がその適用を受けた課税期間(国税通則法第2条第9号に規定する課税期間又は我が国以外の国若しくは地域の租税に関する法令におけるこれに相当するものをいう。)終了の日の属する対象会計年度である場合におけるその金額に限る。)がその新適用者変更税額控除額のうちに占める割合を乗じて計算した金額
イ その国又は地域の租税に関する法令において、その対象会計年度において構成会社等又は共同支配会社等が他の者(その構成会社等又は共同支配会社等と特殊の関係にある者を除く。ロにおいて同じ。)との間で適用者変更を行うことが認められていること(法的譲渡性基準)。
ロ 他の者との間でその適用者変更税額控除額に係る適用者変更が行われ、かつ、その適用者変更につき支払った対価の額が適格適用者変更価格以上であったこと(市場性基準)。
3 ここで、上記2(1)イ及びロ並びに(2)イ及びロの他の者からは「その当初適用者と特殊の関係にある者」又は「その構成会社等又は共同支配会社等と特殊の関係にある者」を除くこととされているところ、この特殊の関係とは次に掲げる関係をいうこととされている(規38の16⑪一)。
(1)一方の者が他方の会社等の持分(自己が有する自己の持分を除く。)の総数又は総額(以下「総持分数」という。)の50%以上の数又は金額の持分を直接又は間接に保有する関係その他の一方の者が他方の者を直接又は間接に支配する関係
(2)2の会社等が同一の者によってそれぞれその総持分数の50%以上の数又は金額の持分を直接又は間接に保有される場合におけるその2の会社等の関係その他の2の者が同一の者によって直接又は間接に支配される場合におけるその2の者の関係((1)に掲げる関係に該当するものを除く。)
4 ところで、現状として、譲渡可能税額控除は外国のみに存在することから、その「譲渡」の当事者となる会社等は外国の会社等が想定されるところ、その設立の根拠となった会社法等の規定により、その株式の払込金額等の全部又は一部の払込み等が行われていない会社等が存在することが考えられる。
この場合、その払込み等が行われていない株式についても、その効力、すなわち、株主たる地位が与えられるということとなると、そのような株式を発行している会社等について自己と特殊の関係にある者に該当するかどうかを判定する場合には、その払込み等が行われていない株式をどのように取り扱うのかといった疑義が生ずる。
そこで、本通達の本文では、この直接又は間接に保有する持分には、株式の払込金額等の全部又は一部について払込み等が行われていないものも含まれるものとして取り扱うことを明らかにしている。
5 また、本通達の注書では、この場合の直接又は間接に保有する会社等の持分の中に名義株があるときは、実際の権利者が保有するものとして取り扱うことを留意的に明らかにしている。
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