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解説記事2020年03月30日 ニュース特集 重加算税賦課事案で当局が調査審理を変更(2020年3月30日号・№828)

ニュース特集
争点整理表の形式審査を導入
重加算税賦課事案で当局が調査審理を変更


 税務調査では積極的な重加算税の賦課が検討されるようだが、課税当局内では、調査審理を効率化(スピードアップ)する観点から争訟となる見込みが低い事案について「争点整理表」の記載事項を簡略化する動きがある。本特集では、東京国税局個人課税課が平成30事務年度に導入した「重加自認事案における争点整理表の形式審査」の概要をQ&A形式で紹介する。

Q1
 まず「争点整理表」がどのようなものか教えてください。
A

 争点整理表は、調査事案の非違事項に係る争点や課税要件、事実認定等を整理・検討するためのツールで、調査担当者が争点整理表作成事案を把握した場合に作成し、審理事務担当者との協議に活用されるものです。
 争点整理表作成事案については、形式基準として、①重加算税賦課決定、②増額更正・決定、③青色申告承認の取消し、④更正の請求に理由がない旨の通知、⑤偽りその他不正の行為による6年前・7年前の年分への遡及、⑥調査着手後6か月以上の長期仕掛事案等が掲げられています。また、実質基準は、調査非協力等により争点等に係る証拠収集が難航しているなど、課税要件事実の立証が容易でないと認められる事案や法令の解釈・適用が複雑・困難である事案など処分等の適法性の立証や判断が困難であるが、課税の均衡上、課税(賦課)処分すべきと認められる調査困難事案又は課税困難事案とされています。

Q2
 「争点整理表の形式審査」が導入された背景を教えてください。
A

 審理上疑義がある事案や争訟となる見込みがある事案については、争点整理表を作成して審理が行われていますが、納税者が課税処分に納得している場合など、争訟となる見込みがさほど高くない事案については、課税要件を立証するための必要最低限の事実を争点整理表に記載することにより、メリハリのある調査審理を行うことが可能と考えたようです。
 そこで、重加算税賦課事案(調査において国税通則法68条1項又は2項の適用を見込んでいる事案)のうち、一定の重加自認事案(納税者が、重加算税が賦課されることに納得している事案)について、争点整理表の記載を形式化(簡略化)し(次頁・形式審査対象事案の記載例参照)、審査を形式的に行うこと(形式審査)で、調査パフォーマンスの向上にむけて調査審理事務の効率化とスピードアップを図るとしています。

Q3
当局が争点整理表の形式審査を導入するメリットは何ですか。
A

 形式審査の導入の目的は、①争点整理表の記載を形式化し、争点整理表作成の事務量(文章の手直しに係る事務量)を圧縮すること、②審理専門官が行う争点整理表の審査を課税要件に係る事実及び証拠が記載されているかのみに限定する(て・に・を・は等の文章の手直しや数字の確認などは行わない)ことで、調査審理の結論に至るまでの時間を短縮することとされています。
 すなわち、争点整理表の作成に係る調査担当者、審理担当者及び審理専門官の間での「文章整理のためのキャッチボール」等の時間・事務量を削減するということのようです。
 なお、争点整理表の形式化による副次的なメリットとして、調査担当者の調査事務量が削減されるとしています。

Q4
 形式審査の対象となる事案の要件は?
A

 形式審査の対象となる事案は、重加算税賦課事案のうち、次の要件のいずれも満たす事案となります。
(1)修正申告書又は期限後申告書の提出が見込まれること
(2)納税者が、隠蔽・仮装の事実があったことを認めており、かつ、重加算税賦課について異論がない旨申し述べていること
(3)課税要件が充足していることについて審理上大きな問題点がなく、形式審査の対象とすることが適当であること(審理専門官が判断)
 なお、形式審査の対象となる事案の判定フローは、を参照。

Q5
納税者が重加賦課に納得した場合、全て形式審査の対象となるのですか。
A

 重加自認事案の全てが形式審査の対象とされるものではありません。重加自認以外の事案(争訟見込事案)はもちろんですが、例えば、納税者が重加算税賦課について異論がない旨申し述べていたとしても、重加算税賦課に当たり最低限必要となる課税要件事実(いつ・誰が・何を行ったのか)を証する証拠の収集・保全がされていない場合には、審理的に疑義があるものとして、形式審査の対象とはされません。

Q6
 当局は形式審査対象外の事案について重加算税賦課を諦めるのでしょうか。
A

 重加自認事案以外であっても、従来のとおりに詳細な争点整理表を作成し、必要な課税要件事実とその証拠の内容、納税者の主張等について争点整理表を用いて整理し、積極的な重加算税の賦課を検討するとしています。
 なお、当局は、「重加を賦課すべき事案には適切に賦課する!これは国税通則法が変わらない限り永遠に変わらない!!」と強調しています。

Q7
 調査の終了間近に納税者が隠蔽・仮装行為を認めた場合は?
A

 たとえ事案の終結間近に調査担当者が重加自認を把握した場合であっても、形式審査の対象になると判断されれば、通常どおりの争点整理表を作成し終わっていて、争点整理表の形式化=簡略化のメリットはないとしても、「形式審査による回答のスピード化」のメリットがあるとされています。

Q8
 形式審査の対象とされた事案が、その後、対象外とされることはありますか。
A

 形式審査の対象とされた事案であっても、①納税者が、その後の調査において重加算税の賦課に異論を申し出た場合、②新たな事実が判明した場合、③審理の過程で新たに疑義が生じた場合、④隠蔽・仮装行為以外の事項(重加算税賦課対象金額の確認等)に疑義が生じた場合、⑤その他形式審査には不相当であると認められる事情が生じた場合には、形式審査の対象から外され、詳細な検討が進められるようです。

Q9
 納税者が重加算税の賦課に納得している場合、証拠の収集は省略されますか。
A

 省略はされません。争点整理表の記載の形式化と証拠の保全は別であり、重加自認事案においても、重加算税の課税要件「いつ・誰が・何をしたのか」について質問応答記録書などで証拠化しておく必要があるとされています。

Q10
 質問応答記録書に隠蔽・仮装を行った事実が録取された場合、これとは別に「重加算税の賦課について異論がない」旨も録取されますか。
A

 「重加算税の賦課について異論がない」旨を質問応答記録書に録取する必要はないとされています。ただし、調査経過記録書に、納税者から「重加算税の賦課について異論がない」旨の申し述べがあったことを記録しておくことが望ましいとしています。

Q11
 通則法70条《国税の更正、決定等の期間制限》第4項の適用も形式審査の対象ですか。
A

 対象とされます。形式審査の対象となる重加自認事案で、7年遡及する事案について、偽りその他不正の行為が隠蔽・仮装行為と同じ場合には、争点整理表に併記する方法で簡略化して差し支えないとされています。

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