税務ニュース2025年04月04日 輸出免税の適用を否認した原処分取消し(2025年4月7日号・№1069) 審判所、輸出許可通知書の記載が事実と異なるとの主張認めず
本件は、化粧品、日用雑貨等の販売業を営む法人(請求人)に対し、原処分庁が、一部の取引については輸出取引に該当することの証明がされたものではないため輸出免税の規定は適用されず、また一部の帳簿保存要件を満たしていない仕入れについて、仕入税額控除は適用できないとして課税処分等を行ったことから、請求人が処分の取消しを求めた事案である。
原処分庁はまず、インボイス記載総重量と原処分庁算出総重量との間に開差があることから、本件各輸出許可通知書に記載された品名又は数量のいずれかが事実と異なると主張。
これに対して審判所は、①開差割合が20%を超えるインボイスがある一方、1%に満たないインボイスもあり、両者の間に常に大きな開差が生じているわけではない、②本件各インボイスには本件各処分対象輸出取引に係る商品以外の商品も含まれているから、当該開差が本件各処分対象輸出取引に係る商品によって生じたものとは必ずしも認められない、③原処分庁算出総重量は、請求人が使用した段ボール箱の数や重量を推計して算出されたものであるから、一定の誤差が含まれるなどと指摘し、上記の開差を理由として、本件各インボイスに記載された品名又は数量のいずれかが事実と異なるものと推認することはできないと判断した。
次に原処分庁は、目薬に係る輸出取引について、在庫表の記載からすると、在庫がないにもかかわらず輸出されたこととなり、本件目薬に相当する何かが輸出されていたと推認されると主張した。
これに対し請求人は、本件目薬12,000個は本件在庫表への記載が漏れていたものであり、本件目薬は本件各インボイスのとおり輸出されていると主張。
審判所は、12,000個の仕入れがあったことが推認できるほか、その他の事実からも、請求人が本件在庫表に誤った記載をした可能性も否定できないから、本件在庫表の記載のみをもって、輸出されたものが本件目薬ではないと推認することはできないとした。
また原処分庁は、請求人が既に解散したX社に対して輸出しているのは不自然であると主張。これに対し審判所は、解散したX社に対して商品を販売したとする本件各輸出許可通知書及び本件各インボイスの記載は不自然であるとしながらも、本件各インボイスの記載内容は本件各輸出許可通知書の内容と整合的であり、X社が解散している事実のみをもって、当該各処分対象輸出取引が「当該資産の品名並びに品名ごとの数量及び価額」の記載の要件を満たしていないとはいえないとした。
以上のことから、審判所は、本件各輸出許可通知書は「当該資産の品名並びに品名ごとの数量及び価額」(消規5①一ハ)の記載要件を満たしておらず、輸出の許可等があったことを証する書類に該当しないとの原処分庁の主張は理由がないとした。その上で、本件各処分対象輸出取引は、輸出免税取引に該当すると結論づけた。
続いて、原処分庁は、請求書に記載されている9件の仕入の相手方の氏名又は名称については真実のものではなく、帳簿及び請求書の保存要件を満たしていないから仕入税額控除は適用されないと主張した。
原処分庁は、そのうちの1件の仕入先については、相手方が請求人に商品を販売していないとの申述は信用できるとして、請求書に記載された氏名は真実のものではないと認定。
また、3件の仕入先については、①相手方が日本に滞在しておらず、少なくとも請求書に記載された住所地に居住あるいは事業を営んでいた事実は認められない、②電話番号が記載されていない、あるいは記載された電話番号の契約者ではなかった、③仕入先はウィーチャットで知り合った個人であり、請求人は、在留カード等の写しを受け取り本人確認を行った旨申述するも本人確認を行ったとは認められず、当該2件の仕入先は真実の仕入先であるとはいえないなどとした。
一方、残りの5件のうち2件については、原処分庁が、仕入れ先の経営実態が不明などと主張するも、審判所は、経営実態が必ずしも明らかではないとしても、そのことのみをもって、当該仕入先が請求人との取引の当時において事業を行っていなかったとまではいえないし、業務を行っていなかったことを裏付ける証拠もなく、本件仕入先の名称が真実の記載でないことをうかがわせる事情は認められないとした。
また、原処分庁は、1件については、大量の商品を保存する場所がなく、倉庫も賃借しておらず、商品を運搬する資産を所有していないことから、請求書に記載された仕入先の名称は真実と異なると主張。これに対し審判所は、仮に原処分庁の主張内容が事実であったとしても、例えば、第三者に商品の保管を委託し、他社の所有する運搬具を用いるなどして請求人に納品することも可能であるから、原処分庁の主張する事実のみをもって、仕入先が真実の記載でないということはできないとした。
そのほか、関係者等の申述の信用性等を検討し、結果として、5件の仕入先との取引に係る各仕入れについては帳簿保存要件を満たしており、仕入税額控除が適用できるとした。
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