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解説記事2025年04月21日 SCOPE 高裁、固定資産税の徴収猶予、不許可処分は適法と判断(2025年4月21日号・№1071)

徴収猶予の要件該当事実を証する書類が不十分
高裁、固定資産税の徴収猶予、不許可処分は適法と判断


 不動産に係る固定資産税の徴収猶予(地法15①)の申請に対する不許可処分の適法性が争われた事案で、東京高裁第2民事部(谷口園恵裁判長)は令和7年4月10日、処分を適法とした地裁判決を支持した。
 東京地裁は、徴収猶予の要件に該当する事実を証する客観的な書類等を原告が提出していない点に加え、そもそも、収入の減少は明らかに原告の責任によるもので、猶予該当事実に該当するとは認められないとして原告の訴えを斥けていたが、高裁も同様の判断を示した。

徴収猶予の要件該当事実は、納税者の責めに帰すべき理由でない減収等

 のとおり、地方税法15条1項は、同項各号に掲げる事実があり、地方税を一時に納付することが困難な場合には、1年以内の徴収の猶予を認めている。

【表】地方税法

(徴収猶予の要件等)
第十五条
 地方団体の長は、次の各号のいずれかに該当する事実がある場合において、その該当する事実に基づき、納税者又は特別徴収義務者が当該地方団体に係る地方団体の徴収金を一時に納付し、又は納入することができないと認められるときは、その納付し、又は納入することができないと認められる金額を限度として、その者の申請に基づき、一年以内の期間を限り、その徴収を猶予することができる。
 一 納税者又は特別徴収義務者がその財産につき、震災、風水害、火災その他の災害を受け、又は盗難にかかつたとき。
 二 納税者若しくは特別徴収義務者又はこれらの者と生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したとき。
 三 納税者又は特別徴収義務者がその事業を廃止し、又は休止したとき。
 四 納税者又は特別徴収義務者がその事業につき著しい損失を受けたとき。
 五 前各号のいずれかに該当する事実に類する事実があつたとき。


(徴収猶予の申請手続等)
第十五条の二
 徴収の猶予(前条第一項の規定によるものに限る。)の申請をしようとする者は、同項各号のいずれかに該当する事実があること及びその該当する事実に基づき当該徴収の猶予に係る地方団体の徴収金を一時に納付し、又は納入することができない事情の詳細、当該徴収の猶予を受けようとする金額及びその期間その他の当該地方団体の条例で定める事項を記載した申請書に、当該該当する事実を証するに足りる書類、財産目録、担保の提供に関する書類その他の当該地方団体の条例で定める書類を添付し、これを当該地方団体の長に提出しなければならない。

 また、新型コロナウイルス感染症等に係る徴収猶予の特例(地法附則59①)が適用される場合は、延滞金が免除される(令和2年2月1日から令和3年2月1日までの納期限の地方税)。
 なお、国税についても、国税通則法に同様の規定がある(46条)。
 原告(個人)は、所有する4件の不動産に係る固定資産税等の納付について、該当条項を地方税法15条1項5号とし、同項4号に類似する事実があったとして徴収猶予の申請をしたが、処分行政庁は、本件猶予申請を不許可とする旨の本件各処分をした。
 なお、原告はその後、本件猶予申請に係る固定資産税等を納付したものの、本件延滞金については判決日時点で納付せずにいた。
 東京地裁は、まず本件各処分の適法性の判断にあたり、地方税法15条1項による徴収の猶予の趣旨について、「同項1号及び2号が、天災や疾病といった納税者の責に帰することのできない事由を猶予該当事実としていることとの均衡からみても、納税者に大幅な減収等が生じた場合であっても、それが納税者の責めに帰すべき事情によることが明らかなときは、同項3号及び同項4号に定める事実並びに同項5号に定めるこれらに類する事実に当たらないと解するのが相当である」との考えを示した。
 また、「地方税法15条の2第1項が、該当する事実を証するに足りる書類の提出を求めていることからすると、徴収の猶予を求める納税者の側において、猶予該当事実に該当すること及び当該事実に基づき一時に納税することができないことにつき、書面により証することが求められる」との解釈も示した。
延滞金は取消の対象となる行政処分にあらず
 その上で東京地裁は、①原告の提出した本件各申請書には、個人事業主であるが新型コロナウイルス感染症の影響により休業している旨並びに芸能事務所の収入が令和元年および令和2年のいずれも0円である旨の記載があるのみで、当該記載に係る事実を証する客観的な書類は提出されなかった、②一方、本件各確認文書には、平成29年8月のアクシデント以来収入が0円である旨の記載もされており、新型コロナウイルス感染症の影響により休業している旨の本件各申請書の上記記載との整合性も不明である、と指摘した。
 そしてこれらの点から、処分行政庁が、原告の提出した本件各申請書などの記載から、原告が猶予該当事実に該当するとは認められないと判断したことに誤りがあるとはいえないとの判断を下した。
 さらに東京地裁は、原告が平成29年8月に逮捕され、有罪判決を宣告されて令和3年8月まで服役していたことや、原告の提出した本件各申請書などの記載から、原告は上記の逮捕及び服役によって収入がなくなったと認められるとし、「そうすると、上記の収入の減少は明らかに原告の責任によるものであって、猶予該当事実に該当するとは認められないから、原告は、徴収の猶予を受ける要件を満たさないというべきである」と結論づけた。
 なお、原告は、延滞金の取消しも訴えていたが、延滞金の納付義務は、延滞金の計算の基礎となる地方税に係る納期限の経過によって特別の手続を要することなく当然に成立するものであり、本件延滞金が生じたことについて取消しの対象となる行政処分は存在しないから、本件延滞金取消しの訴えは不適法とされている。
 東京高裁も、東京地裁判決を支持し、補正をほぼ加えることなく、処分を適法とした。

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