税務ニュース2025年05月30日 自宅建物の負担付贈与時の通常取引価額(2025年6月2日号・№1076) 再建築価格を基準に、経過年数に応じ減価又は償却費の額を控除
負担付贈与があった場合の贈与税は、贈与された財産の価額から負担額を差し引いた価額に相当する財産の贈与があったものとして計算される(相基通21の2−4)。そして、この場合の財産の価額は評価通達によらず、「通常の取引価額」(客観的交換価値)とされる(負担付贈与通達1)。通常の取引価額は、贈与の目的物が路線価地域内の「土地等」であれば、簡便的に路線価方式に基づいて算出された評価額を0.8で除して、基準時点(当年1月1日)の公示価格水準に割り戻した上、その基準時点から譲渡時点までの時点修正をすることによりその価額を算定することも認められている(地価の極めて高い地域等の土地等を除く)。一方、贈与の目的物が「建物」であった場合、どのように通常の取引価額を算定すべきかは必ずしも明確でない。
例えば、父がコロナ前の令和元年に5,000万円で新築した自宅建物を住宅ローンの残債4,000万円を付して子に贈与した場合、本件建物の通常の取引価額は、7年前に新築と築浅であることを考慮し、再建築価額を5,000万円とすればよいのではないかとの見解もあり得るが、コロナの影響により建材費及び人件費が7年前と比べ高騰していることを踏まえると、妥当とは言い難い。
建物の通常の取引価額は本来、近隣の類似の建物の取引事例を基礎とした「取引事例法」により算定するのが合理的だが、取引事例の把握が困難な場合が多いことから、平成18年12月15日裁決では「再建築価格を基準として、これに建物の建築時からその経過年数に応じ減価又は償却費の額を控除して評価する方法も客観的な交換価値を算出するための方法の一つであると解される」との判断が示されている。したがって、本件建物の通常の取引価額は、課税時点の再建築価額をベースとして上記裁決で示された計算方法に従って算定するのが妥当であろう。本件の場合、平成30年当時の建築費が明らかとなっているため、本件建物の再建築価額は、建築費5,000万円に令和6年までの建設物価指数等の変動率を加味して算定することが合理的と言える。
なお、償却費を計算する際に使用する耐用年数については、譲渡所得の取得費の計算上は非業務用資産の耐用年数は1.5倍されるが、建物の通常の取引価額の算定において業務用資産と非業務用資産とで区別する合理性はないため、1.5倍することは相当ではないと考えられる。
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