税務ニュース2025年10月17日 日星租税条約22条の見落しに要注意(2025年10月20日号・№1095) 特有の送金課税ルールと日本企業が負う源泉徴収漏れリスク
日本企業がシンガポールに所在する法人に対して何らかの支払いを行う場合、通常はそれが日本の所得税法上、源泉徴収の対象とされる国内源泉所得に該当するか、日星租税条約によりその減免が可能かを検討することになる。ここで注意したいのが、同条約にはあまり見られない特殊な規定が含まれているということだ。22条1項がそれであり、「日本国内の源泉から生じた所得につき日本国において条件付きで又は無条件に租税を減免することがこの協定に規定されている場合において、シンガポールにおいて施行されている法令に基づきその所得の全額ではなくその所得のうちシンガポールに送金され又はシンガポール内で受領された部分に対して租税を課するときは、この協定に基づき日本国において認める租税の減免は、その所得のうちシンガポールに送金され又はシンガポール内で受領された部分についてのみ適用する」とされている。すなわち、シンガポールの税制上、いわゆる“送金課税”のルールにより日本源泉の所得がシンガポール国内に送金または同国内で受領されないことでシンガポールの税制上非課税の扱いを受ける場合は、租税条約による日本源泉所得に対する課税の減免は認めない、と解される。この規定からは、シンガポール側で“送金等されずに非課税”の場合に日本源泉の所得に対して日星租税条約による減免を適用しないということが読み取れる一方、現地の税制上“送金等をしても非課税”とされる場合にまでこの条項の規定が及ぶのか、という疑問も生じる。前述22条1項の後半部分には「租税の減免は、その所得のうちシンガポールに送金され又はシンガポール内で受領された部分についてのみ適用する」とあることから、減免は適用されるという考え方もあろう。しかし、この点について本誌が課税当局に取材したところ、前半部分に「シンガポールに送金され又はシンガポール内で受領された部分に対して租税を課するときは」とあるため、シンガポールに送金されて課税された部分についてのみ22条1項が適用される、すなわち、送金されても非課税となる場合は日本での減免は適用されないという見解であることが確認された。
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