解説記事2025年11月17日 SCOPE 国外居住親族の扶養控除、送金関係書類以外による立証は(2025年11月17日号・№1099)
地裁、生計一は法令所定書類による立証が必要
国外居住親族の扶養控除、送金関係書類以外による立証は
国外居住親族の扶養控除の適用をめぐり、納税者(居住者)と生計一であることは飽くまで法令所定の送金関係書類によって立証する必要があるという判断を裁判所が示していたことが明らかとなった(東京地裁令和7年9月2日判決・民事第51部)。本件で納税者は、経済制裁により国際送金が事実上不可能であったから送金関係書類の添付等を求めるのは不当であり、別の方法で扶養の事実を立証できる旨を主張したものの、東京地裁は平成27年改正の趣旨などを踏まえ送金関係書類以外のものによる立証は許容されるべきであるということはできないと判断した。なお本件は現在、東京高裁で審理中である。
37名に扶養控除適用も、送金関係書類の添付等がないとして適用を否認
事実関係をみると、原告である納税者(イラン国籍である居住者)は、本件各年分(平成28年分から令和2年分)において国外居住親族を扶養控除の対象とした所得税等の確定申告書を提出していた。例えば令和元年分では37名分で扶養控除の額は1,491万円であった。税務署は、納税者と生計を一にすることを明らかにする法令所定の送金関係書類(現行法では所規47の2⑧一)が提出又は提示されていないとして1名を除く36名分の扶養控除を否認する課税処分を行った。これを不服とした納税者は、国外居住親族のうち令和元年分では33名(以下「本件対象者」)が控除対象扶養親族に該当すると主張して課税処分の取り消しを求める訴訟を提起するに至った(当事者の主張は表1参照)。
【表1】納税者(原告)及び課税当局(被告)の主張の要旨
| 納税者(原告) | 課税当局(被告) |
| ・本件対象者はその対象年においてイランに居住していたところ、イランに対する経済制裁によって、イラン国内の銀行に対して国際送金をすることは事実上不可能であったことから、本件対象者について送金関係書類がなくとも別の方法で扶養の事実を立証すれば扶養控除を受けることができるものと解すべきである。 ・本件では、納税者が、日本にいる親族や友人がイランに帰国する際に現金を手渡し、その現金をイラン国内で配ってもらったり、イラン国内にある銀行(注:国送法金融機関には該当しない)の納税者及び納税者の姉名義の銀行口座から送金したりする方法によって、本件対象者を扶養していたことは明らかである。 ・したがって、納税者の本件各年分の所得税等の計算上、本件対象者は国外居住扶養親族として控除対象扶養親族に該当する。 |
・国外居住親族が居住者と「生計を一にする」かどうかは、送金関係書類によって判断される必要があるところ、納税者が提出した各証拠はいずれも送金関係書類に該当しない。 ・納税者が提出した各証拠を踏まえても、納税者と本件対象者が「生計を一にする」と認めることはできない。 ・したがって、本件対象者は納税者の本件各年分の所得税等の計算上、国外居住扶養親族として控除対象扶養親族に該当するとはいえない。 |
東京地裁は、平成27年改正の趣旨などを踏まえれば、国外居住親族を控除対象扶養親族として扶養控除を受けようとする居住者はその国外居住親族が居住者と生計を一にするものであることを送金関係書類によって立証することができない限り、その国外居住親族を控除対象扶養親族として扶養控除を受けることはできないという判断を示した。
そして納税者の主張に対し東京地裁は、平成30年11月以降の期間については国送法金融機関を通じて国際送金をすることは事実上困難であったことが認められるとした。しかしその一方で、①送金関係書類の提出が事実上困難である場合に別の方法で証明することを可能とする規定は置かれていないこと、②平成27年改正の趣旨が経済制裁下のイランに限っては及ばないものと解すべき理由もないことを踏まえれば、国送法金融機関を通じて国際送金をすることが事実上困難であったことをもって、本件対象者が納税者と生計を一にするものであることを送金関係書類以外のものによって立証することが許容されるべきであるということはできないと判断した。
以上を踏まえ東京地裁は、送金関係書類の添付等がないから本件対象者が納税者と生計一であることを認めることはできないと判断して本件対象者は控除対象扶養親族には該当しないと結論付けた(表2参照)。
【表2】裁判所の判断内容(結論部分を一部抜粋)
| 以上によれば、本件対象者が原告(納税者)と生計を一にするものであることは飽くまで送金関係書類によって立証する必要があるところ、本件各年分の所得税等の確定申告に際して送金関係書類は添付等されていない(なお、本件訴訟において提出された証拠にも送金関係書類に該当するものはない。)から、本件対象者が原告(納税者)と生計を一にするものであると認めることはできない。 したがって、本件対象者が原告(納税者)の本件各年分の所得税等の計算上、国外居住扶養親族として控除対象扶養親族に該当するということはできないものというほかはない。 |
会計検査院の指摘を踏まえ、平成27年度税制改正で書類添付等が義務化
平成27年度税制改正では、会計検査院が平成25年度決算検査報告において「国外扶養者については、国内扶養者と異なり多数の親族を扶養控除の対象としているのに適用要件を満たしているか十分な確認ができていないまま扶養控除が適用されているなどの状況となっていた」と指摘したことを踏まえ、国外居住親族に係る扶養控除等の適用を受ける際には、確定申告書等に親族であること及び生計を一にすることを確認できる書類の添付等を義務付けることとされた。具体的には、非居住者である国外居住親族に係る各人別の親族関係書類及び送金関係書類をその申告書に添付し、又はその申告書の提出の際に提示しなければならないこととされた(現行法は所法120③三、所令262④、所規47の2⑦⑧)。
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