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解説記事2025年12月08日 新会計基準解説 実務対応報告第47号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い」の公表について(2025年12月8日号・№1102)

新会計基準解説
実務対応報告第47号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い」の公表について
 企業会計基準委員会 専門研究員 住田晋一郎

Ⅰ はじめに

 企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は、2025年11月11日に、実務対応報告第47号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表した(脚注1)。本稿では、本実務対応報告の概要を紹介する。
 なお、文中の意見に関する部分は筆者の私見であり、ASBJの見解を示すものではないことをあらかじめ申し添える。

Ⅱ 公表の経緯

 近年、多くの企業が脱炭素、低炭素化に向けた取組みを活発化させており、当該取組みの1つとして、いわゆるバーチャル電力購入契約(Virtual Power Purchase Agreement)(以下「バーチャルPPA」という。)により取得した非化石価値と別途調達する再生可能電力でない電力を組み合わせることで実質的に再生可能電力を調達したことと同じ効果を得られる手法がみられる(図表1)。

 今後も各企業の環境意識の高まりとともに、バーチャルPPAの利用がさらに拡大することが見込まれる中、バーチャルPPAに関する会計上の取扱いが明確ではないとして、2023年11月に公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている企業会計基準諮問会議に対して、バーチャルPPAの需要家における会計処理について検討するよう要望が寄せられた。
 これを受けて、2024年7月に開催された第530回企業会計基準委員会において、企業会計基準諮問会議より、バーチャルPPAの会計処理に関して、本実務対応報告の開発時点の我が国におけるバーチャルPPAに関する実務を考慮してニーズの高い領域について当面の取扱いを定めることがASBJに提言され、ASBJは、バーチャルPPAにおいて取引される非化石価値に係る需要家の会計処理に関する当面の取扱いについて検討を行った。
 本実務対応報告は、2025年3月に公表した実務対応報告公開草案第70号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い(案)」(以下、「本公開草案」という。)に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、内容を一部修正した上で公表するに至ったものである。

Ⅲ 本実務対応報告の概要

1 用語の定義
(1)非化石価値

 本実務対応報告では、本実務対応報告を適用する契約における非化石価値は「再生可能エネルギー源」から生じるものであるとして、非化石価値について、「エネルギー供給事業者によるエネルギー源の環境適合利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律施行規則」(平成22年経済産業省令第43号)第4条第1項第2号に規定するエネルギー源の環境適合利用に由来する電気の非化石電源としての価値のうち、「エネルギー供給事業者によるエネルギー源の環境適合利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」(平成21年法律第72号)第2条第3項に規定する再生可能エネルギー源を利用する電源としての価値と定義している(本実務対応報告第5項(1))。
(2)需要家
 本実務対応報告では、需要家とは、後述する2(2)「適用する契約」に掲げる特徴を有する契約を締結する者のうち、非化石価値を自己使用目的で購入する者をいう(本実務対応報告第5項(2))。

2 範 囲
(1)対象とする者

 本実務対応報告では、非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計上の取扱いを定めている(本実務対応報告第1項)。企業会計基準諮問会議に寄せられたテーマ提案では、本実務対応報告を適用する契約の当事者である需要家及び発電事業者の双方の会計上の取扱いを検討する場合には一定の時間を要することが予想される中、早期の対応が必要であることに鑑み、より広範囲に影響があると考えられる需要家の会計上の取扱いのみを検討することが提案された。これを踏まえて、ASBJは、本実務対応報告において需要家の会計上の取扱いを定めることとし、発電事業者の会計上の取扱いは定めないこととした(本実務対応報告BC5項)。
(2)適用する契約
 企業会計基準諮問会議からの提言は、本実務対応報告の開発時点の我が国におけるバーチャルPPAに関する実務を考慮して当面の取扱いを定めた上で、実務の進展や国際的な会計基準の審議の動向を注視し、国際的な会計基準における取扱いがより明確になったこと等を契機として必要に応じて見直しを行うというものであった。これを踏まえて、ASBJは、当面の取扱いを検討するにあたって、現在我が国において行われているバーチャルPPAの一般的な取引形態において需要家が取得する非化石価値の性質や取引条件等を基礎として整理を行い、本実務対応報告を適用する契約の範囲について整理を行った(本実務対応報告BC10項)。
 ① 発電事業者と需要家との間の契約
 本実務対応報告では、1「用語の定義」において言及した非化石価値の取引において需要家による非化石価値の転売(子会社又は関連会社への融通を除く。以下同じ。)が想定されておらず、発電事業者から需要家に電力の取引を伴わずに非化石価値を移転する契約のうち概ね次の特徴を有するものについて、本実務対応報告を適用することとした(本実務対応報告第2項)。
(i)発電事業者と需要家の相対の契約である。
(ii)需要家は、発電事業者との間で、契約で指定された再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を購入する契約を締結する。
(iii)需要家は、当該非化石価値を買い取る義務を負う。
 ② 特定卸供給事業者等と需要家との間の契約
 本実務対応報告の開発時点の制度上、需要家は電気事業法(昭和39年法律第170号)で規定された特定卸供給事業者との直接取引においても非化石価値を購入することが認められている。
 特定卸供給事業者との取引はさまざまな類型があるが、特定卸供給事業者と需要家の相対で締結された非化石価値の移転に関する契約(図表2)で、再生可能電力発電設備で発電を行う者の再生可能電力発電設備を指定した上で、当該再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を特定卸供給事業者から需要家が購入し、需要家が当該非化石価値を買い取る義務を負う場合には、本実務対応報告を適用して会計処理を行うことが考えられる。したがって、前述の発電事業者と需要家の相対の契約に加えて、次の特徴を有する契約に本実務対応報告を適用することとした(本実務対応報告第3項)。

(i)特定卸供給事業者等と需要家の相対の契約である。
(ii)需要家は、特定卸供給事業者等との間で、再生可能電力発電設備で発電を行う者の再生可能電力発電設備を契約で指定し、当該再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を特定卸供給事業者等から購入する契約を締結する。
(iii)需要家は、当該非化石価値を買い取る義務を負う。
 需要家が非化石価値の移転に関する契約を締結する相手方になり得る者として、電気事業法上の特定卸供給事業者の定義は満たさないが、複数の再生可能電力発電設備を束ねることで再生可能電力発電設備の発電変動を吸収し、安定した供給力として卸電力市場などへ電力の供給を行う者も挙げられる。本実務対応報告上は、このような役割を担う者を特定卸供給事業者に準ずる者として、特定卸供給事業者とまとめて「特定卸供給事業者等」と定義した上で、本実務対応報告を適用するにあたり、「発電事業者」を「特定卸供給事業者等」と読み替えるものとする定めを置くこととした(本実務対応報告BC15項)。
 また、本実務対応報告の開発時点の制度上、特定卸供給事業者等は電気事業法上の発電事業者以外の発電者から非化石価値を調達することも想定されているため、再生可能電力発電設備で発電を行う者は電気事業法上の発電事業者に限らないこととした(本実務対応報告BC16項)。

3 実務上の取扱い
(1)会計上の考え方

 企業会計基準諮問会議に寄せられたテーマ提案では、非化石価値の対価として、契約上の固定価格と卸電力市場で決定される電力価格(以下「卸電力市場価格」という。)の差額に契約で指定された再生可能電力発電設備の発電に応じた電力量を乗じて得た金額を発電事業者と需要家との間で決済する(以下「差金決済」という。)ことが一般的であるとされ、差金決済の想定元本等にあたると考えられる電力量が発電実績に応じて変動するため、契約期間中の想定元本等の量が定まらないような場合に、デリバティブに該当するか否かについて明確化することを検討することが挙げられていた(本実務対応報告BC21項)。
 この点に関して、上述した2(2)①「発電事業者と需要家との間の契約」(i)から(iii)の特徴を有する契約には、需要家が支払う対価を固定価格とするものもあり、契約上の固定価格と卸電力市場価格の差額を非化石価値の価格とすることは需要家が支払う対価を決定する1つの方法であると考えられる。このため、ASBJは、契約に含まれる差金決済という特徴のみに着目してデリバティブに該当するか否かの検討を行うのではなく(脚注2)、需要家にとって契約の主たる目的であると考えられる非化石価値の取得について、非化石価値取引の概要等を踏まえてどのような会計処理が経済実態を表すのかの検討を行うこととした(本実務対応報告BC22項)。
(2)非化石価値取引の概要
 本実務対応報告の開発時点において、上述した2(2)①「発電事業者と需要家との間の契約」(i)から(iii)の特徴を有する契約に基づく非化石価値取引は、概ね以下から構成される(本実務対応報告BC23項)。
① 契約の締結
 需要家は、発電事業者との間で、指定された再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を購入する契約を締結する。
② 発電事業者による発電(図表3

 発電事業者は、契約で指定された再生可能電力発電設備で発電を行う。
③ 発電事業者による電力量の申請(図表3
 発電事業者は、発電月から2か月後の末日までに、一般送配電事業者から通知された電力量に基づき電力量を国へ申請する。
④ 国による電力量の認定(図表3
 国は、取引される非化石価値の信頼性を担保するため、発電事業者から報告を受けた電力量が正確な値であることを認定する。当該認定により、需要家が受け取る非化石価値の量が確定する。認定結果は発電月から3か月後の月末(電力量の申請期限から1か月後)に、国から発電事業者へ通知される。また、国は、認定した電力量を一般社団法人日本卸電力取引所(以下「取引所」という。)へ通知する。
⑤ 発電事業者の口座残高の増加
 取引所は非化石価値取引の参加者ごとに非化石価値を管理する口座を設けており、取引参加者は保有する非化石価値の量を確認することができる。取引所は、国から通知された電力量に基づき、取引所が用意するコンピュータ・システム(以下「非化石価値取引システム」という。)において発電事業者の非化石価値の口座残高を増加させる。
⑥ 非化石価値の移転
 非化石価値は、発電事業者と需要家が契約において合意した日に発電事業者から需要家へ移転する。
⑦ 需要家による対価の支払
 需要家は、契約で定められた日に非化石価値の対価を発電事業者に支払う。
⑧ 需要家の口座残高の増加(図表3
 取引所は、発電事業者からの非化石価値の移転の申請に基づき、非化石価値取引システムにおいて発電事業者の口座残高を減少させるとともに、需要家の口座残高を増加させる。非化石価値の移転の申請が行われる時期は毎月又は3か月ごとなど個々の契約により異なるが、遅くとも後述する⑩の口座の凍結までには当該申請が行われ、取引所は需要家の口座残高を増加させる。
⑨ 非化石価値の使用(図表3
 需要家は、非化石価値を「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号)(以下「温対法」という。)の報告等に使用する。
⑩ 口座の凍結(図表3
 取引所の口座は毎年6月に凍結される。
 なお、特定卸供給事業者等と需要家との間の契約に基づく非化石価値取引では、国への電力量の申請(上記③)は特定卸供給事業者等が行い、国による電力量の認定後、特定卸供給事業者等の口座残高が増加(上記⑤)し、契約に基づいて特定卸供給事業者等から需要家に非化石価値の移転(上記⑥)がなされるとされている。
(3)非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務に関する会計処理
 本実務対応報告では、需要家は、非化石価値を受け取る権利について、契約で指定された再生可能電力発電設備による発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点において費用処理を行うとともに、対価の支払義務に係る負債を計上し、遅くとも国による電力量の認定時点では、金額を信頼性をもって測定できるものとして取り扱う(本実務対応報告第6項及び第7項)。
 本実務対応報告を適用する契約では、需要家が契約で指定された再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を購入することをあらかじめ約束しているため、発電により将来非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務が需要家に生じていることを考慮すると、発電時点において需要家が非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務の会計処理を行うことが考えられる(本実務対応報告BC25項)。
 しかしながら、国による電力量の認定時点より前は非化石価値の量が確定していないこと等により、発電時点において会計処理を行うことが実務的に困難な場合があることが想定されることから、発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点において会計処理を行うこととした(本実務対応報告BC28項)。
 一方、国による電力量の認定時点では、非化石価値の量が確定することとなり、契約内容や卸電力市場価格等に基づき価格についても情報を得ることができると考えられるため、遅くとも当該時点においては金額を信頼性をもって測定できるものとして取り扱うこととした(本実務対応報告BC28項)。
 また、我が国の会計基準では、資産の定義及び認識要件は明示的に定められていないが、将来の経済的便益の流入又は将来の経済的資源の流出の削減をもたらす蓋然性が高い項目について、会計上、資産を認識していると考えられる。この点、本実務対応報告の開発時点の我が国における制度において、需要家が取得する非化石価値は第三者への転売が想定されておらず、また、需要家に温室効果ガスの排出量の削減義務は課されていない。このため、非化石価値及び非化石価値を受け取る権利は、将来の経済的便益の流入又は経済的資源の流出の削減を間接的にしか捉えることができず、将来の経済的便益の流入又は経済的資源の流出の削減をもたらすかどうかについて不確実性があると考えられることから、費用処理することとした(本実務対応報告BC31項からBC34項)。
 本公開草案に寄せられたコメントの中には、決算日後に国による電力量の認定が行われた場合等の取扱いを明らかにすべきとの意見があった。この点、決算日において発電が完了しているものの、非化石価値の量や価格に係る情報を収集できていない等の状況下で、需要家が非化石価値を受け取る権利の金額を信頼性をもって測定することができなかった場合には、当該需要家は非化石価値を受け取る権利に係る費用を計上することはなく、したがって、仮に決算日後の事実と状況により信頼性をもって測定することが可能となったとしても、修正後発事象として非化石価値を受け取る権利に係る費用計上の修正を行う必要はないと考えられる。
 ただし、決算日において、発電が完了しており、かつ、需要家が非化石価値を受け取る権利の金額を信頼性をもって測定したことにより、非化石価値を受け取る権利に係る費用を計上していた場合には、決算日後に、より精緻な測定が可能となる情報を入手したことを受けて、重要性に応じて計上した費用の金額を修正することは考えられる(本実務対応報告BC29項)。
(4)対価の差金決済を行う場合の取扱い
 対価の差金決済を行う場合において、卸電力市場価格が契約上の固定価格を上回ることにより、需要家が対価を受け取ることとなるときは、当該対価を費用から減額する(本実務対応報告第8項)。
 非化石価値の対価の支払条件が差金決済の場合は、需要家が支払う対価がマイナスとなることがあり得るが、需要家が支払う対価がマイナスとなるのは、卸電力市場価格が契約上の固定価格を上回る場合であり、電力量がマイナスとなって需要家が発電事業者に対して非化石価値を引き渡す義務を負うことはない。このことを踏まえると、需要家は常に非化石価値を取得しており、その対価はプラスにもマイナスにもなり得るものと考えられる。このため、本実務対応報告では非化石価値を受け取る権利について費用処理することとしたことから、需要家が支払う対価がマイナスとなる場合には、マイナスの対価を費用から減額することとした(本実務対応報告BC37項及びBC38項)。
(5)子会社又は関連会社への非化石価値の融通
 本実務対応報告は、需要家による非化石価値の転売からその子会社又は関連会社への融通を除き(本実務対応報告第2項)、需要家から子会社又は関連会社への非化石価値の融通(図表4)に関して、次のとおり定めている。

① 本実務対応報告を適用する契約を締結する者が、その子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入する場合において、当該子会社又は関連会社が非化石価値を自己使用目的で取得するときは、当該契約を締結する者を「需要家」として取り扱う(本実務対応報告第5項(2)ただし書き)。
② 需要家がその子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入する場合、当該需要家とその子会社又は関連会社との間の取引については、両者の合意内容に基づき会計処理を行う(本実務対応報告第9項)。
 本実務対応報告の開発時点における我が国の制度上、調達の効率化や与信面等を理由にグループの親会社が調達した非化石価値をグループ内の他社に融通したいという要望があったことを背景として、親会社が購入した非化石価値を会社法(平成17年法律第86号)上の子会社又は会社計算規則(平成18年法務省令第13号)上の関連会社に融通することが認められている(本実務対応報告BC6項)。
 このような制度を前提に、子会社又は関連会社に代わり親会社がまとめて非化石価値を購入することはグループ経営の一環として通常考え得ることから、親会社から子会社又は関連会社への融通を「転売」として本実務対応報告の適用対象外とするのではなく、子会社又は関連会社において自己使用目的となる場合には、グループ全体としては自己使用目的であるとして本実務対応報告の適用対象とすることとし、本実務対応報告を適用する契約を締結する者を「需要家」として取り扱うこととした(本実務対応報告BC7項からBC9項)。
 需要家が子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入した場合、需要家は、子会社又は関連会社へ融通する分も含めて費用処理を行った上で、需要家と子会社又は関連会社の取引について取引の経済実態を適切に表すように両者の合意内容に基づき会計処理を行うこととした(本実務対応報告BC39項及びBC40項)。
(6)開示に関する検討
 企業会計基準諮問会議において、バーチャルPPAが長期の取引であり、対価の差金決済を行う場合があることから一定の開示を求める意見が聞かれたため、ASBJは、本実務対応報告を適用する契約に関して追加的な開示を求めるかどうかの検討を行った(本実務対応報告BC41項)。
 審議の結果、本実務対応報告の開発時点で観察される契約における非化石価値の金額が電力料金に比べて相対的に少額である中で、その開示の有用性を勘案し、非化石価値を自己使用目的で取得するという本実務対応報告の範囲では、開示に関する定めは設けないこととした。
 ただし、本実務対応報告を適用する契約が財務諸表全体の観点から重要であり、利害関係者が企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる場合には、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)等に基づき、追加情報として開示することとなると考えられる(本実務対応報告BC45項)。

4 適用時期等
(1)適用時期

 本実務対応報告は、適用時期について次のとおり定めている(本実務対応報告第10項)。
① 2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。
② ただし、公表日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる。
 本実務対応報告の適用開始日より前に締結されている契約については、本実務対応報告の適用により会計処理の変更が生じる場合があると考えられることから、一定の準備期間を確保することとした(本実務対応報告BC46項)。ただし、企業会計基準諮問会議に寄せられたテーマ提案では、早期に会計処理を明確化することが要望されており、できるだけ速やかに適用可能とすることへのニーズは一定程度あると考えられることから、早期適用を認めることとした(本実務対応報告BC46項ただし書き)。
(2)経過措置
 本実務対応報告を適用することによりこれまでの会計処理と異なることとなる場合、需要家に生じた非化石価値を受け取る権利で、契約で指定された再生可能電力発電設備により適用初年度の期首までに発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できるものについては、当該非化石価値を受け取る権利の金額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する。この場合、当該期首時点で国による電力量の認定時点が到来しているものに係る金額は、適用初年度の期首の利益剰余金に加減する金額に含める(本実務対応報告第11項)。
 本実務対応報告を遡及適用する場合、どの時点で金額を信頼性をもって測定することが可能となるかを判断することが困難であることから、本実務対応報告の適用にあたっては遡及適用を求めないこととし、適用初年度の期首時点で国による電力量の認定時点が到来しているものに係る金額は、適用初年度の期首の利益剰余金に加減する金額に含めることとした(本実務対応報告BC47項及びBC48項)。

Ⅳ おわりに

 本実務対応報告は、バーチャルPPAについての明確な定義はなく、さまざまな類型が考えられる中で、範囲を限定して当面必要と考えられる実務上の取扱いを明らかにしたものである。ASBJでは、今後の非化石価値取引の進展や会計実務の状況により、本実務対応報告において定めのない事項に対して別途の対応を図ることの要望が市場関係者によりASBJに提起された場合には、公開の審議により、別途の対応を図ることの要否をASBJにおいて判断することとしている(本実務対応報告BC4項)。
 本稿が本実務対応報告の概要の把握に資するとともに、非化石価値の購入取引に携わる関係各位の会計実務の一助となれば幸いである。

脚注
1 本実務対応報告の全文については、ASBJのウェブサイト(https://www.asb-j.jp/jp/practical_solution/y2025/2025-1111.html)を参照のこと。
2 このため、本実務対応報告では、非化石価値取引がデリバティブに該当するか否かについては言及していない

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