解説記事2026年04月27日 ニュース特集 Q&Aで読み解く暗号資産取引に係る課税の見直し(2026年4月27日号・№1120)
ニュース特集
同じ暗号資産でも譲渡先で取扱いが異なるケースも
Q&Aで読み解く暗号資産取引に係る課税の見直し
令和8年度税制改正では、暗号資産取引に係る課税の見直しが行われている。現行、個人が暗号資産取引により得た利益は原則として雑所得に該当し、給与所得等と合算する総合課税が適用されているが、株式等と同様に分離課税となる。ただし、暗号資産取引の分離課税への見直しは、金融商品取引法の改正が前提となる。政府は4月10日、「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「金商法改正法案」)を特別国会に提出。金商法改正法案では、暗号資産取引に係る規制をこれまでの資金決済法から金商法に移管し、暗号資産を有価証券とは異なる金融商品として金商法に位置付けた上で、利用者保護を図るための方策が講じられている。なお、すでにお伝えしたとおり、金商法改正法案が今特別国会で成立することになれば、令和10年1月1日以後の取引から分離課税が実現することになる(本誌1119号10頁参照)。本特集では暗号資産取引に係る課税の見直しの概要について解説する。
暗号資産、株式等と同様の取扱いに
Q
令和8年度税制改正では、暗号資産取引に係る課税の見直しが行われていますが、具体的な取扱いについて教えてください。
A
居住者が、暗号資産取引業者が取り扱う暗号資産(ビットコインやイーサリアムなど)を、暗号資産取引業者に対して譲渡等をした場合には、株式等と同様、その譲渡所得は分離課税となる。最大で55%だった税率は20%(所得税15%、個人住民税5%)に引き下げられることになる。また、分離課税の対象となる暗号資産取引により発生した損失については、3年間の繰越控除が認められる。
そのほか、暗号資産取引業者が取り扱う暗号資産を原資産としたデリバティブ取引についても分離課税とし、暗号資産ETF等については、投信法施行令の改正を前提に分離課税とする(表1参照)。改正金商法の施行の日の属する年の翌年の1月1日(適用開始日)以後に行う暗号資産の譲渡等について適用されるため、国会での審議が順調にいけば、令和10年1月1日以後に行う暗号資産の譲渡等から分離課税となる。

「暗号資産交換業者」から「暗号資産取引業者」へ名称変更
Q
暗号資産取引業者が取り扱う暗号資産が対象になるとのことですが、暗号資産取引業者とはどのような業者のことをいうのでしょうか。
A
暗号資産取引業者とは、内閣総理大臣の登録を受けたもの。現行の暗号資産交換業者(令和8年2月末現在で28の暗号資産交換業者が登録)から名称が変更されることになる。ただし、暗号資産取引業者に対しては、利用者保護の観点からあらかじめ暗号資産の情報(暗号資産の性質・機能や供給量、基盤技術等)の開示義務や業規制が行われることになる。暗号資産取引業者に対する主な規制等としては、必要な基準に適合しない暗号資産の取扱いの禁止や、暗号資産取引業を適確に遂行するための業務管理体制の整備、不正流出事案が生じた場合の顧客への補償原資として責任準備金を積み立てることなどが求められる(表2参照)。
なお、税務上は、暗号資産取引業者はその年中に暗号資産の取引を行った居住者等の氏名、住所及び個人番号、その取引に係る暗号資産の名称その他の事項を記載した報告書について、その取引があった日の翌年1月31日までに税務署長に提出することが義務付けられている。

暗号資産取引業者以外に譲渡した場合は総合課税
Q
暗号資産取引業者以外に暗号資産を譲渡した場合の課税関係はどのようになりますか。
A
この場合は総合課税の対象となる。加えて、総合課税の譲渡所得となる暗号資産については、①5年超保有の資産に係る譲渡所得の金額の計算上2分の1とする措置を適用しない、②暗号資産の譲渡益について、譲渡所得の特別控除を控除しない、③暗号資産に係る譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額について、他の総合課税の対象となる各種所得との損益通算を適用しないこととされている。
暗号資産の購入先は関係なし
Q
海外の暗号資産取引業者からビットコインを購入しました。海外で購入したビットコインも国内の暗号資産取引業者に売却(譲渡)すれば分離課税になるとの理解でよいですか。
A
どこで暗号資産を購入したかは関係なく、譲渡先が問題となる。ビットコインなどの暗号資産はブロックチェーン技術を基盤としたインターネット上で移転できる財産的価値だからだ。したがって、海外の暗号資産取引業者から購入した暗号資産であっても、国内の暗号資産取引業者に譲渡した場合には分離課税が適用される。
同じビットコインでも海外の取引業者に譲渡した場合には総合課税
Q
同じビットコインであっても、譲渡先が異なれば、税務上の取扱いが変わることになるのでしょうか。例えば、海外の暗号資産取引業者に譲渡した場合には、総合課税になるのでしょうか。
A
暗号資産を譲渡した先で税務上の取扱いも変ることになる。したがって、国内の暗号資産取引業者に譲渡した場合には分離課税、海外の暗号資産取引業者に譲渡した場合には総合課税となる。
現在保有の暗号資産も適用日以降に譲渡なら分離課税
Q
国会での審議が順調に進めば、令和10年1月1日(適用日)以降の暗号資産取引業者への譲渡から、その譲渡所得は分離課税になるとのことですが、現在保有している暗号資産をその適用日以降に譲渡した場合にも分離課税が適用されますか。
A
現在保有している暗号資産であっても、適用日以降に暗号資産取引業者に譲渡した場合には分離課税が適用されることになる。
課税売上割合の計算が変更、高額な暗号資産を譲渡した場合には注意
Q
暗号資産については、所得税法上の取扱いに加えて消費税法上の取扱いも一部変更されるとのことですが、これまでの実務と比べて何か影響がありますか。
A
消費税に関しても、金商法の改正を前提として課税の取扱いが見直される(表3参照)。消費税法上、支払手段及びこれに類するものの譲渡は非課税とされているが、現行、国内の暗号資産交換業者を通じた暗号資産の譲渡は、この支払手段等の譲渡に該当し、消費税は非課税となっている。今回の金商法の改正により、暗号資産は有価証券に類するものとなるが、引き続き消費税は非課税となる。一方、暗号資産及び電子決済手段の貸付けについては、現行では暗号資産の譲渡等には該当しないことから課税とされているが、非課税取引に見直されることになる。

加えて、暗号資産の譲渡に係る課税売上割合の計算が変更になる。現行、支払手段等に該当する当該暗号資産の譲渡については、課税売上割合の算出に当たり、非課税売上高に含めて計算する必要はなかったが、有価証券の譲渡と同様、譲渡の対価の額の5%を算入することになる。このため、かなり高額の暗号資産を譲渡した場合には、課税売上割合が95%未満となる可能性もあるので留意したい。
なお、適用は改正金商法の施行日の属する年の翌年の1月1日(令和10年1月1日を想定)以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等からとされている。
資金決済手段から投資対象に、利用者保護が必要
Q
暗号資産の課税の見直しの前提となる金商法改正案の概要について教えてください。
A
現行、暗号資産は決済手段の観点から資金決済法で規制されているが、昨今では、国内の暗号資産交換業者における口座開設数は延べ1,400万口座を超え、利用者預託金残高は5兆円に達しており、暗号資産の投資対象化が進んでいる。
このため、今回の金商法改正法案では、暗号資産取引に係る規制を資金決済法から金商法に移管し、有価証券とは異なる金融商品として金商法に位置付けた上で、利用者保護の充実を図ることとしている。
具体的には、①無登録業者等への対応の強化、②情報公表規制の整備、③暗号資産交換業者(名称は暗号資産取引業者へ変更)への規制の強化、④インサイダー取引規制の創設を含む不公正取引規制の強化を図るとしている。
なお、暗号資産取引に係る規制は資金決済法から削除され、新たに金商法に規定されることになる。
「暗号資産の取扱開始・中止」等がインサイダー取引規制の重要事実に該当
Q
暗号資産についてもインサイダー取引規制が行われるとのことですが、どのようなケースが重要事実に該当することになりますか。
A
現行の金商法では、暗号資産についても、上場有価証券等と同様、偽計・相場操縦行為等の禁止規制が整備されているが、インサイダー取引規制の規定は設けられていない。今回の金商法改正法案では、国際的な情勢を踏まえ、取引の公正を確保する観点から、暗号資産のインサイダー取引規制の整備が行われることになる(表4参照)。

具体的には、上場有価証券等のインサイダー取引規制の枠組みをベースに、①「対象暗号資産」について、②「重要事実」に接近できる③特別の立場にある者(インサイダー)が、当該事実の公表前に、売買等を行うことを禁止することとする。対象暗号資産とは国内の暗号資産取引業者で取り扱われる暗号資産であり、重要事実とは、例えば、暗号資産発行者等に関する重要事実としては「発行者の解散等」、暗号資産取引業者に関する重要事実としては「暗号資産の取扱開始・中止等」、大量売買を行う者に関する重要事実としては「大量売買(発行済暗号資産の20%以上の売買等)」を列挙した上で、バスケット条項で補完している。また、規制対象者としては、暗号資産発行者の関係者、暗号資産取引業者の関係者、大量売買を行う者の関係者(これらの者からの情報受領者を含む)であり、罰則は、上場有価証券等と同様、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金又は併科としている。
なお、暗号資産に係る不公正取引についても証券取引等監視委員会の犯則調査や課徴金制度の対象に追加される。
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