税務ニュース2026年06月12日 役員貸付金は事実上の貸倒として処理を(2026年6月15日号・№1126) 免責の見込みを理由に債務免除益の非課税を否定した裁決に疑問の声
本誌1100号で既報の通り、令和7年2月12日裁決(名裁(所)令6第29号)では、請求人が元勤務先法人から受けた債務免除が所得税法44条の2(本件規定)の「破産法……に規定する免責許可の決定又は再生計画認可の決定があつた場合その他資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合」に該当するかが争われた。税務調査では、請求人の不正行為(本来の仕入れに紛れ込ませた高級腕時計の売却等)が発覚し、元勤務先法人と合意した債務承認・債務返済契約書には債務の一部を支払う旨の記載があった。審判所は、請求人が浪費・賭博その他の射幸行為のために不正行為に及び、債務の負担に至った可能性等を指摘し、裁量による免責が認められる証拠はないとした。併せて再生計画案による支払継続も極めて困難で再生計画不認可の可能性があるとし、所得税基本通達44の2−1に定める場合に該当するとはいい難いとして、本件規定の適用を否定している。
この判断は一見、上記要件を「破産手続開始の申立てをしたならば……免責許可の決定……がされると認められるような場合」と読み替える所基通44の2−1が示す解釈に沿うように見える。しかし、本件規定は平成26年度改正で旧所基通36−17を法令化したものであり、その趣旨は、弁済不能下の債務免除による経済的利益は形式的なもので、これを課税所得とするのは実情にそぐわない(平成26年度税制改正の解説103頁)と説明されている。そうすると、非課税の本質的な要件は経済的実質の欠如であり、免責適格(浪費等の道徳的非難の有無)を非課税の独立要件とする根拠は乏しい。条文上も、「その他」は前後を並列に接続する語であり、免責許可決定等が「資力を喪失」を限定する関係(その場合は「その他の」が用いられる)にはなく、資力喪失は独立の適用類型と考えられる。実際、旧通達下でも、その該当性は事実上の弁済可能性により判定するとした裁判例もある(広島高判平成29年2月8日)。
もっとも、債務者による浪費・賭博等の事情がある場合、税務紛争を避ける観点からは、法人がその貸借対照表上の役員等への貸付金を清算時に整理する場面では、債務免除によらず、「事実上の貸倒れ」として処理することも検討すべきだろう。その場合、貸倒損失の損金算入のため、回収不能の事実を裏づける資料を整えておきたい。
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