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解説記事2020年05月25日 SCOPE 税理士の報酬算定は採用せず、裁判所は会社提案の報酬額で(2020年5月25日号・№835)

税理士報酬をめぐるトラブル
税理士の報酬算定は採用せず、裁判所は会社提案の報酬額で


 税理士業務を行っていく上では、残念ながら顧客とトラブルになってしまうこともあるだろう。今回のスコープでは税理士(原告)が会社(被告)に対して約400万円の税理士報酬を請求したものの、裁判で約100万円しか認められなかった事件を紹介する。裁判所は、税理士の報酬の算定方法は不動産の売却関連業務には採用できないと否定。相当な報酬額を算定するに足りる十分な資料はないとした上で、裁判所は、会社側が税理士に示した100万円が相当であるとの判断を示している(東京地裁、平成31年4月11日判決)。

当該決算期の申告における所得金額を基準とすべき

 本件は、顧問税理士であった原告が、被告(会社)のために行った①不動産売却関連業務、②持株会社設立等業務、③株価算定業務に関する報酬金(約400万円)の支払いを求めた事件である。
 被告は、原告に対し不動産売買契約の締結に伴い、不動産売却に関する法人税申告、特定資産を買い換えた場合の圧縮記帳の適用申請、特定資産の買換期間の延長申請、圧縮対象資産の取得に関する限度額の計算を内容とする税務代理業務を委託するとともに、新たに設立する持株会社の設立業務と株式買取りに当たっての株価算定業務を委託していた。
 原告は、不動産売却関連業務に関しては、5期の事業年度にわたる節税プランであるが、途中で被告の顧問税理士を止めることになったため、それまでに行った仕事量を80%と見積もって報酬請求を行っているとしている。

【表】当事者の主な主張

原告(税理士) 被告(会社)
不動産売却関連業務に係る税理士報酬の額
 原告における税理士報酬規定によれば、法人税に関する決算報酬は1,000万円未満の所得金額に対しては1%、1,000万円以上の所得金額に対しては0.5%を乗じて計算することとされており、法人税申告書作成報酬は10万円とされている。本件では、既払金等を控除すると被告に対する請求額は158万7,600円となる。  本件業務の内容は、税理士の扱う業務としては通常の業務に属するところ、被告は原告に対し、毎月18万円以上の高額の顧問料を支払っていたから、売却関連業務の報酬もこれにより賄われていたというべきである。
持株会社設立等業務に係る税理士報酬の額
 持株会社の設立に関する設立等業務(設立に関する提案、設立届の官庁への提出、決算期の会計業務、決算期の年末調整、法人税等の申告、金銭消費貸借契約書作成、株式譲渡書類等の作成)を行ったところ、かかる業務に対する報酬は30万円とするのが相当である。  被告は、持株会社設立等業務に係る税理士報酬30万円につき、その根拠及び支払い義務を了解していない。
株価算定業務に係る税理士報酬の額
 被告の株式の株価総額は2億8,593万8,280円であるところ、株価の算定は非常に時間と技術を要する作業であるから、これによる税理士報酬の額は、株価総額の約2%である570万とするのが相当である(既払金380万円等を控除すると被告に対する請求額は205万2,000円となる)。  株式を売却した者については税理士報酬として380万円を原告に支払っている。

原告の報酬規定は決算書類作成の算定基準
 東京地方裁判所(阿波野右起裁判官)は、原告は被告の平成26年11月決算期の所得金額は、確定申告上は1億2,636万5,055円の欠損であるが、株価算定業務に当たり、同決算期時点での被告の株価を算定するために必要な計算(不動産売買契約による譲渡益約7億2,000万円のうち、買換特例により翌事業年度以降に繰り延べた5億7,000万円を加算するなど)を行うと、4億863万4,869円の所得になるとし、これを基準として原告報酬規定に従い計算すると、税込158万7,600円が売却関連業務の報酬として認められるべきであると主張するが、原告の報酬規定はあくまで決算書類作成や納税申告に対する報酬の算定基準であるから、当該決算期の申告における所得金額を基準とすべきであると指摘。平成26年11月決算期においては欠損金額を1億2,636万5,055円として確定申告がされている以上、原告が主張する算定方法は採用できないとした。
報酬額算定の十分な資料はなし
 この点裁判所は、不動産売買契約は日常の業務とは異なる特殊なものと認められるから、顧問料で全て賄われているということはできず、被告との間で一定額の報酬支払合意があったと認めるのが相当であるとし、少なくとも商法512条に基づく報酬は認められるべきであると指摘した。しかし、不動産売却関連業務の報酬については、どのように算定するかは困難な問題であるとし、相当な報酬額を算定するに足りる十分な資料はないとした。
 このため裁判所では、被告が原告に報酬100万円の提案をしていることに鑑み、本件不動産売却関連業務に係る報酬額については100万円と認めるのが相当であるとの判断を示した。
株価算定業務などの報酬は認めず
 そのほか、持ち株会社設立等業務の報酬については、設立等業務が本件売却関連業務や株価算定業務とも密接に関連することから、これらの業務に対する報酬により設立等業務の報酬も賄われている面があると指摘。商法512条に基づくものとしても、設立等業務の報酬は認められないとした。
 また、株価算定業務の報酬については、認定事実からすると、請求することが元々予定されていなかったものであり、また、被告との間で株価算定業務の報酬が支払われるとの合意があったと認めるに足りる証拠はないとした。

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