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解説記事2020年10月05日 未公開裁決事例紹介 保険料負担者で相続税又は所得税の課税対象を判定(2020年10月5日号・№852)

未公開裁決事例紹介
保険料負担者で相続税又は所得税の課税対象を判定
審判所、更新後の保険料のみ控除可能


○請求人が受け取った死亡保険金が相続税又は所得税の課税対象になるか否かで争われた裁決。国税不服審判所は、更新後の保険契約における保険料の全額を請求人は負担したと認められることから、死亡保険金は一時所得として所得税が課税されるとの判断を示し、納税者の請求を棄却した。また、一時所得の金額の計算上、総収入金額から控除される「その収入を得るために支出した金額」は更新後支払保険料の総額になるとした(令和元年10月8日、棄却)。

主  文

 審査請求をいずれも棄却する。

基礎事実等

(1)事案の概要
 本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)の所得税等の申告について、生命保険契約に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算に誤りがあるなどとして更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分の一部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令(略)
(3)基礎事実

 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 請求人の母である×××は、平成14年8月1日、×××××××××××(以下「本件保険会社」という。)との間で、保険契約者及び被保険者を×××、死亡保険金の受取人を請求人とし、保険料を月額39,720円、保険期間を10年などとする生命保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結した。
ロ 平成15年11月27日、本件保険契約の保険契約者が×××から請求人に変更された(以下「本件契約者変更」という。)。
ハ 本件保険契約は、平成24年7月31日に保険期間が満了となり、その翌日の同年8月1日、本件保険契約の締結時における定期保険普通保険約款(平成14年7月改訂版。以下「本件約款」という。)第34条《契約の更新》各項の定めに基づいて更新された(以下、更新後の保険契約を「本件更新後保険契約」という。)。
  本件更新後保険契約では、保険料が月額39,720円から83,040円に、保険期間が10年から4年にそれぞれ変更された。
ニ ×××は、××××××××に死亡した。
ホ 本件保険会社は、平成27年4月15日、×××の死亡を支払事由とする死亡保険金として××××××(以下「本件死亡保険金」という。)の支払手続を行い、同月17日、本件死亡保険金から同年3月分の未払込保険料の額(83,640円)を差し引いた後の金額である××××××が、請求人名義の××××××××口座(以下「本件口座」という。)に振り込まれた。
へ 本件保険契約に係る支払保険料(以下「本件更新前支払保険料」という。)の総額は4,766,400円、本件更新後保険契約に係る支払保険料(以下「本件更新後支払保険料」という。)の総額は2,657,280円(上記ホの未払込保険料の額を含む。)であり、その合計額(以下「本件支払保険料総額」という。)は7,423,680円である。
(4)審査請求に至る経緯
イ 請求人は、平成27年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、別表の「確定申告」欄のとおり記載して法定申告期限までに申告した(以下、この申告を「本件申告」という。)。
  請求人は、本件申告において、本件死亡保険金に係る一時所得の金額の計算上、総収入金額を××××××(本件死亡保険金の額に、請求人が負担したとする支払保険料の額885,760円の本件支払保険料総額に対する割合を乗じて算出した額)とし、「その収入を得るために支出した金額」を上記885,760円とした(なお、所得税法第22条《課税標準》第2項第2号の規定により算定した、本件死亡保険金に係る一時所得の金額の2分の1に相当する金額を、以下「本件一時所得の金額」という。)。
ロ 原処分庁は、請求人の平成27年分の所得税等について、平成30年8月28日付で、別表の「更正処分等」欄のとおり更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
  原処分庁は、本件更正処分において、本件一時所得の金額の計算上、総収入金額を本件死亡保険金の額(××××××)、「その収入を得るために支出した金額」を本件更新後支払保険料の総額の2,657,280円とした。
ハ 請求人は、平成30年10月24日、原処分に不服があるとして、審査請求をした。

争点および主張

 本件一時所得の金額は幾らか(参照)。

【表】争点についての主張

原処分庁 請 求 人
(1)生命保険金受取人の取得した保険金が、一時所得として所得税の課税対象となるか、相続財産として相続税の課税対象となるかは、保険契約の契約者が誰かによるのではなく、保険料の実質的負担者が誰であるかにより決せられるものである。本件更新後支払保険料は全額請求人が負担したものと認められるから、本件死亡保険金は請求人の一時所得として所得税の課税対象となる。
(2)本件一時所得の金額の計算上、総収入金額(本件死亡保険金の額の××××××)から控除される「その収入を得るために支出した金額」となる「当該生命保険契約に係る保険料の総額」は、本件更新後支払保険料の総額の2,657,280円である。本件死亡保険金は本件更新後保険契約に基づき支払われたものであるから、更新前の本件保険契約は「当該生命保険契約」に該当せず、本件更新前支払保険料の総額は上記の「支出した金額」に含まれない。
  したがって、本件一時所得の金額は請求人に支払われた本件死亡保険金の額の××××××から、その収入を得るために支出した金額である本件更新後支払保険料の総額の2,657,280円を控除するなどして算出した××××××(本件更正処分における金額と同額)である。
(1)本件契約者変更は、保険料の支払の便宜上、近隣に金融機関がある請求人名義の口座に保険料支払口座を変更するために行ったものであり、契約者を変更するつもりで行ったものではない。そうすると、本件契約者変更は錯誤によるものであり、課税庁との関係では、本件契約者変更後も×××が保険契約者として取り扱われるべきであるから、本件死亡保険金は相続税の課税対象となり、請求人の所得税の負担はない。
  仮に本件死亡保険金が一時所得として所得税の課税対象となるとしても、請求人が負担したのは本件更新後支払保険料の総額の3分の1の額の885,760円であるから、請求人が支払を受けた本件死亡保険金のうち、本件支払保険料総額に対する請求人が負担した保険料の割合に相当する額のみが所得税の課税対象になり、この額から請求人が負担した上記885,760円を控除するなどして算出した本件一時所得の金額は、××××××(本件申告における金額と同額)である。
(2)原処分庁は、本件一時所得の金額を、本件死亡保険金の額から本件更新後支払保険料の総額のみを控除して計算しているが、本件保険契約と本件更新後保険契約の証券番号は同一であり、更新時に健康診断書の再提出の必要もなく、自動更新条項があることから、一時所得の金額を計算するに当たって本件死亡保険金の額から控除すべき「その収入を得るために支出した金額」は更新前後を通じて支払われた保険料の合計額(本件支払保険料総額)とすべきであり、原処分庁の計算方法は違法である。

審判所の判断

(1)法令解釈等
イ 税法上、被保険者の相続人である保険金受取人の取得した死亡保険金が一時所得として所得税の課税対象となるのか、あるいは相続財産とみなされて相続税の課税対象となるかは、その保険金に対応する保険料の実質的負担者が保険金受取人か被保険者かによって判断されるものである(相続税法第3条第1項柱書及び同項第1号参照)。
ロ 所得税法第34条第2項は、一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする旨規定している。そして、施行令第183条第2項第2号本文が、生命保険契約に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算について、同項第1号の「当該一時金の支払の基礎となる生命保険契約」との規定を受けて、「当該生命保険契約」に係る保険料の総額は、その年分の一時所得の金額の計算上、支出した金額に算入する旨規定していることからすれば、同項第2号本文にいう「当該生命保険契約」とは、その文理上、「当該一時金の支払の基礎となる生命保険契約」を意味するものと解される。
  したがって、生命保険契約に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算上、「支出した金額」に算入するものとして施行令第183条第2項第2号本文が規定する「保険料」の「総額」とは、当該一時金の支払の基礎となる生命保険契約に係る保険料の総額と解するのが相当である。
(2)認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 保険契約の更新について
(イ)本件保険契約は、上記のとおり、平成24年7月31日に保険期間が満了となり、同年8月1日、本件約款第34条各項の定めに基づいて本件更新後保険契約へ更新された。本件更新後保険契約においては、証券番号は本件保険契約と同一であり、保険金額も××××××のまま変更されなかったが、保険料が月額39,720円から83,040円に、保険期間が10年から4年にそれぞれ変更された。
(ロ)本件約款第34条各項の定めは、要旨、以下のとおりである。
 A 第1項には、保険期間が満了する場合、契約者がその2か月前までに更新しない旨の申出をしない限り、契約は保険期間が満了する日の翌日に更新される旨が、第2項には、前項の定めにかかわらず同条の更新を取り扱わない場合がそれぞれ定められている。
 B 第3項ないし第5項には、更新後の保険期間及び保険金額は基本的には更新前のものと同じ内容とされるが、更新の際にこれらを変更して更新することができる旨定められている。
 C 第6項には、更新後の保険料は、更新日の被保険者の契約年齢によって新たに計算する旨定められている。
 D 第7項には、更新後の第1回保険料の払込みについて、更新前の2回目以降の払込みに関する定め(本件約款第14条《保険料の払込》及び第17条《保険料払込の猶予期間及び契約の失効》)を準用する旨定められている。
 E 第8項には、死亡保険金を支払わない場合(責任開始期から3年以内の自殺等)に関する定め等、一定の定め(本件約款第3条《高度障害保険金の支払》、第5条《保険料の払込免除》、第6条《死亡保険金を支払わない場合》、第10条《告知義務》、第11条《告知義務違反による解除》及び第12条《契約を解除しない場合》)を適用するときは、更新前後の保険期間は継続されたものとする旨定められている。
 F 第9項には、契約者又は被保険者の詐欺によって契約を締結等した場合にはその契約を無効とする旨の本件約款第9条《詐欺による無効》の定めを契約の更新の場合に準用する旨定められている。
 G 第10項には、更新契約には、更新日現在の普通保険約款及び保険料率を適用する旨定められている。
 H 第11項には、契約を更新した場合には、旧保険証券と契約更新通知書をもって新保険証券に代える旨定められている。
 I 第12項には、契約更新時に保険会社が当該契約を取り扱っていない場合には、契約の更新ができない旨定められている。
ロ 保険料の負担状況等について
(イ)本件更新前支払保険料は、平成17年9月以降、本件口座及び請求人名義の×××××××××××××口座等から振替等により本件保険会社に支払われていた。
(ロ)本件更新後支払保険料は、本件口座から振替により本件保険会社に支払われていた。また、口座振替ができなかった場合は、請求人から本件保険会社へ直接振り込まれていた。
(ハ)平成24年8月1日付の「念書」と題する書面(以下「本件念書」という。)には、本件更新後支払保険料の月額83,040円のうち、3分の2に相当する金額を×××が、3分の1に相当する金額を請求人が負担する旨が記載されており、×××及び請求人の氏名が手書きされ、それぞれ押印がされている。
(ニ)本件更新後保険契約の保険期間である、平成24年8月1日から××××××××(×××の死亡日)までの間に、本件口座に×××からの入金があったことを示す記録はない。
ハ 支払調書の記載等について
 本件保険会社が作成した、平成27年分生命保険契約等の一時金の支払調書(以下「本件支払調書」という。)には、既払込保険料等の欄に7,340,640円と記載されている(なお、当該金額は本件支払保険料総額から平成27年3月分の未払込保険料の額の83,040円を差し引いた額である。)。
 他方、本件保険会社が請求人に発行した平成30年9月14日付「保険料お払い込みに関する通知書」と題する書面には、×××が死亡した××××××××現在の保険契約に係る既払込保険料が2,657,280円と記載されているほか、本件保険会社が原処分庁に提出した平成29年10月30日付の「契約照会回答書」と題する書面には、既払込保険料総額欄に2,657,280円と記載されており、本件保険会社が当審判所に提出した平成31年2月19日付の「契約照会回答書」と題する書面にも、既払込保険料総額欄に2,657,280円と記載され、備考欄に「当初契約日からの既払込保険料総額は、7,340,640円です。」と記載されている。
(3)検討
イ はじめに
 本件においては、本件保険契約及び本件更新後保険契約が存在しているので、まず、本件死亡保険金の「支払の基礎となる生命保険契約」(施行令第183条第2項。以下同じ。)は本件更新後保険契約に加えて更新前の本件保険契約を含むか否かを検討し、次に、当該基礎となる生命保険契約に係る保険料の負担者が誰かを判断した上で、本件死亡保険金を課税対象とする税目及び本件一時所得の金額を検討する。
ロ 本件死亡保険金の「支払の基礎となる生命保険契約」について
(イ)本件死亡保険金は、本件更新後保険契約の保険期間中に生じた被保険者の死亡に基因して請求人に支払われたものであるが、上記(2)のイの(イ)のとおり、本件更新後保険契約は本件保険契約を更新したものであることから、本件死亡保険金の「支払の基礎となる生命保険契約」に更新前の本件保険契約も含まれるかが問題となる。この点、更新前後の保険契約に継続的な契約としての一体性が認められれば、更新前の本件保険契約についても本件死亡保険金の「支払の基礎となる生命保険契約」であるといえることから、以下、本件保険契約と本件更新後保険契約が継続的な契約としての一体性を有するか否かを検討する。
(ロ)本件約款第34条の定め(上記(2)のイの(ロ))によれば、保険契約の更新について、契約者が保険期間の満了の2か月前までに更新しない旨の申出をしない限り、満了日の翌日に更新されるとの定めに従って(同条第1項)、改めて契約締結行為をすることなく保険期間満了の日の翌日に更新されるものとされ、その際改めて保険証券の交付もされず(同条第11項)、また、更新後の保険期間や保険金額も基本的には更新前から変更がないものとされ(同条第3項及び第5項)、死亡保険金を支払わない場合等の定めの適用に関して更新前後の契約の保険期間が継続しているものとされているほか(同条第8項)、当初契約時に詐欺行為があった場合に契約が無効とされる定めも準用されている(同条第9項)。本件約款のこれらの定めや、上記(2)のイの(イ)のとおり、本件更新後保険契約において本件保険契約と同一の証券番号が使用されていることからすれば、更新後の保険契約は、更新前と同一性を保ったままその保険期間のみを延長するものであるようにも考えられる。
  しかしながら、他方で、本件約款第34条によれば、更新後の保険料は更新日の被保険者の契約年齢によって新たに計算するものとされ(同条第6項)、また、更新後の契約には更新日現在の普通保険約款及び保険料率が適用されることとされているのであって(同条第10項)、これらの定めは、更新後の保険契約が更新前の保険契約とは別個の新たな契約であることを前提としているといえる。さらに、保険期間や保険金額について、更新の際に変更する場合があることが定められているほか(同条第3項ないし第5項)、更新前後の保険期間を継続しているものとする旨の定めや当初契約時に詐欺行為があった場合の準用の定め(同条第8項及び第9項)についても、更新前後の保険期間が継続していないことを前提として、例外的に継続するものと扱う場合をあえて定めたものとみることもできる。そして、上記(2)のイの(イ)のとおり、本件更新後保険契約では、保険料が更新前の月額39,720円から83,040円に変更されていることに加え、保険期間が更新前の10年から4年へと短縮されている。
  以上を総合的に勘案すると、本件更新後保険契約は、契約の同一性を保ったままでその保険期間のみを延長したというものではなく、本件保険契約とは別の保険契約とみるのが相当である。
(ハ)上記(ロ)の判断に関し、本件支払調書には、上記(2)のハのとおり、既払込保険料等の欄に7,340,640円(本件支払保険料総額である7,423,680円から平成27年3月分の未払込保険料の額である83,040円を差し引いた額)と、更新前の本件保険契約及び本件更新後保険契約の両契約の保険期間中の既払込保険料の総額が記載されていることから、同記載は本件保険契約及び本件更新後保険契約の一体性を前提とするものと考えられる。
  しかしながら、他方で、本件保険会社は、上記(2)のハのとおり、請求人に発行した平成30年9月14日付「保険料お払い込みに関する通知書」と題する書面では、×××が死亡した××××××××現在の保険契約に係る既払込保険料を2,657,280円(本件更新後支払保険料の総額と同額)と記載したほか、原処分庁に提出した平成29年10月30日付「契約照会回答書」と題する書面及び当審判所に提出した平成31年2月19日付「契約照会回答書」と題する書面のいずれにおいても、既払込保険料総額を2,657,280円として、本件支払調書上の既払込保険料の記載と齟齬する記載をしている。そして、この齟齬の理由については、本件保険会社の従業員の当審判所に対する答述やその他の証拠によっても明らかにならなかったことから、本件支払調書の記載をもって、本件保険契約及び本件更新後保険契約に継続的な契約としての一体性があることの根拠とすることは困難である。したがって、本件支払調書の上記記載内容は、上記(ロ)の判断を左右しない。
(ニ)以上のとおり、本件保険契約と本件更新後保険契約に継続的な契約としての一体性があるとは認められないから、本件死亡保険金の「支払の基礎となる生命保険契約」は本件更新後保険契約のみということになる。
ハ 本件更新後保険契約に係る保険料の負担者について
 上記ロのとおり、本件更新後保険契約は、更新前の本件保険契約とは別の保険契約とみるのが相当であることから、本件死亡保険金がいかなる税目の課税対象になるかの判断については、本件死亡保険金の支払の基礎とされた本件更新後保険契約の保険料について、その実質的負担者が誰であるか(具体的には、請求人か、×××か)によって判断することになる。
 上記(2)のロの(ロ)のとおり、本件更新後支払保険料は、請求人名義である本件口座からの口座振替により支払われており、口座振替ができない場合にも、請求人から本件保険会社へ振り込まれていたのであるから、本件更新後支払保険料の実質的負担者は請求人であると推認でき、同推認を覆すに足りる事情は見当たらない。
 この点、上記の(2)のロの(ハ)のとおり、本件念書には、本件更新後支払保険料の3分の2相当額を×××が負担する旨の記載があるものの、当審判所の調査によっても、本件念書の記載内容を裏付ける事情は認められず、他に×××が本件更新後支払保険料の一部を負担していたと認めるに足りる証拠もない。
 したがって、本件更新後支払保険料は、請求人が全て負担したものと認めるのが相当である。
ニ 本件死亡保険金を課税対象とする税目について
 本件死亡保険金は、上記のとおり、請求人がその全額を受け取っているところ、上記ロ及びハのとおり、本件死亡保険金の支払の基礎となる生命保険契約は本件更新後保険契約であり、また、本件更新後支払保険料の全額を請求人が負担していると認められることから、本件死亡保険金は、その全額が請求人の一時所得として所得税の課税対象となる。
ホ 本件一時所得の金額について
 本件死亡保険金は、上記ニのとおり、その全額が請求人の一時所得として課税対象となり、本件一時所得の金額に係る総収入金額は、本件死亡保険金の額の××××××、その収入を得るために支出した金額は、本件更新後支払保険料の総額の2,657,280円となる。したがって、本件一時所得の金額は、上記総収入金額から支出した金額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額(500,000円)を控除した金額の2分の1の金額の××××××となる。
ヘ 請求人の主張について
(イ)請求人は、本件契約者変更は錯誤によるものであり、保険契約者は×××のままであるから、本件死亡保険金は相続税の課税対象となり、請求人の所得税負担はない旨主張する。
  しかしながら、税法上、保険金受取人の取得した死亡保険金が、一時所得として所得税の課税対象となるか、あるいは、相続財産とみなされて相続税の課税対象となるかは、保険契約者が誰であるかにかかわらず、その保険金に対応する保険料の実質的負担者が誰であるかによって判断されるものであるところ、本件死亡保険金の受取人は請求人であり、また、保険料の実質的負担者が請求人と認定できることについては上記ハのとおりである。したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
  また、請求人は、仮に本件死亡保険金が一時所得として所得税の課税対象となるとしても、請求人が負担した保険料は、本件更新後支払保険料の総額の3分の1の額であるから、請求人が支払を受けた本件死亡保険金のうち、請求人が負担した保険料の本件支払保険料総額に対する割合に相当する額のみが所得税の課税対象になる旨主張する。
  しかしながら、上記ロ及びハのとおり、本件死亡保険金の支払の基礎となる生命保険契約は本件更新後保険契約のみと認められ、また、本件更新後支払保険料は請求人が全て負担していると認められることから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ロ)請求人は、本件一時所得の金額の計算上、「その収入を得るために支出した金額」は本件支払保険料総額であり、原処分庁の計算方法は違法である旨も主張する。
  しかしながら、上記ロのとおり、本件死亡保険金の支払の基礎となる生命保険契約は本件更新後保険契約と認められるから、本件一時所得の金額の計算上、総収入金額から控除される「その収入を得るために支出した金額」は、上記ホのとおり、本件更新後支払保険料の総額の2,657,280円である。したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(4)本件更正処分の適法性について(略)
(5)本件賦課決定処分の適法性について(略)
(6)結論(略)

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