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企業法務2007年03月16日 メンタリティーの違い 執筆者:田中義幸

 公認会計士で弁護士の資格を持つ人が目立つようになってきた。ということは、弁護士で公認会計士の資格を持つ人が多くなってきたということでもある。正確な数はわからないが、もう公認会計士全体の1%ぐらいを占めるのではないだろうか。法科大学院制度が出来て資格をとりやすくなったことも追い風になっているようだが、弁護士、会計士ともに10年後ぐらいには5万人体制にまで拡大するという規制緩和の影響もあって、今後はそうしたケースがますます増えるのだろう。ただ、会計士が弁護士の資格を持つと弁護士の仕事に専念して、公認会計士の肩書きは残しながらもその仕事からは完全に足を洗ってしまう人がほとんどである。これは、どうしたことだろうか。

 弁護士の方が割がいいという経済的な理由はもちろんあるだろう。時間当たりの付加価値はたいてい弁護士の方が高い。しかし、そんなことはそれほど大きな問題ではない。大きいのは仕事の上での両者のメンタリティーの違いではないかと思う。

 少し大づかみな言い方だが、弁護士は他者に同調しないことに快を得る存在である。安易に他者に同調するようでは仕事にならないから当然ということもあるが、もともとそういうメンタリティーを持った人が弁護士になるということもあるだろう。もっとも、最近は法律事務所の大規模化が進んだり、法廷弁護士よりも渉外弁護士が脚光を浴びたりして、組織人としての行動が求められる面もないわけではなさそうだ。しかし、そうは言ってもやはり、安易に同調しないというのが弁護士としてのアイデンティティーであることには変わりないだろう。 

 それに対して、どちらかというと会計士は他者と協調することに快を得る存在である。会計士の多くが監査法人という組織の組織人として行動しているためにそうならざるをえないという面ももちろんあるが、もともとそういうメンタリティーを持った人が会計士になったというところがあるように思う。会計ルールの国際的な統一化が進んでいるのも、もしかしたらそうした会計士のメンタリティーが背景にあるかもしれない。会社法やその他の法律を国際的に統一しようなどという話は、寡聞にして聞いたことがない。

 このあまりにも異なる二つのメンタリティーをひとりの人間の中に併せ持つのはおよそ至難の業である。それで、会計士が弁護士の資格を持つと弁護士に専念することになるのだろう。もっとも、どんなものにも例外があるというのは言わずもがなのことである。

 ところで、両者のメンタリティーの違いを際立たせてから、こんなことを言うのもなんだが、今回の会社法は、これまで以上に弁護士と会計士の連携を促すこととなった。企業経営において財務の重要性が高まったことを反映して、会社法が会計基準を大きく取り入れた法制となったからである。そのため、企業にとっても、また弁護士や会計士にとっても、両者の連携が今まで以上に求められる時代になってきたのであるが、これを快とするかどうかは、やはりそれぞれのメンタリティーによることになるのだろう。

(2007年3月執筆)

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