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企業法務2014年10月20日 改正会社法と監査役実務への影響と雑感 執筆者:田伏岳人

 2014年6月20日に可決成立した「会社法の一部を改正する法律」及び「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が、同年6月27日に公布され、2015年4月以降に施行される見込みです。
 監査役の職務との関係では、いわゆる「インセンティブのねじれ問題」(経営者に会計監査人の選解任等に関する議案及び報酬等の決定権があると、会計監査人の独立性は確保されず適正な監査の実施が危ぶまれるのでないかという問題)を改善するために、会計監査人の選任等に関する議案については、現行制度(会社法344条・監査役(会)による同意)をより積極的に改め、監査役(会)に決定権が付与されることになりました(改正会社法344条)。そのため、監査役は会計監査人の選解任等の原案の作成により責任を負うことになり、株主総会において株主から質問があれば説明義務を果たさなければなりません。

 それにしても、監査役の職責は確実に重くなってきたように感じます。
 監査役がその職責を果たすためには専門的知識の習得、十分な情報収集(監査役への社内情報の伝達の問題については常に指摘されております。)に努めることもさることながら、経営者からの独立が重要と思っています。この独立性は、突き詰めると、経営者や組織から何らの心理的拘束を受けることなく、物申せる自由であると考えています。

 監査役の独立性を担保するための制度(選解任、任期、報酬、社外監査役等)を設けても、その制度では解消できない心理的拘束を生む要因が残り、あるいは作り出されると、結局、なすべきことをなさない状況が生じます。
 社内監査役の人事権は経営者が握っていることは常に指摘される事実ですし、社外監査役であっても経営者と直接、間接の人的繋がりがある方が選任されることが多いでしょうから、心理的拘束が全くないわけではないと思います(なお、今回の改正では、親会社の取締役や従業員等は社外監査役になれなくなる等、社外監査役の要件が厳格化されました(改正会社法2条16号ハニホ)が、これで解消されるものでないと思っております。)。
 この心理的な拘束が障害となり、監査役がなすべきことをなさない場合には、任務懈怠として責任を負うことになります。

 法は、監査役の独立性の強化に努めていますが、法制度でなしうることには限界があります。こう考えてくると、制度はどうあれ、結局、個人の資質、気概の問題に行きつくような気がします。
 「じゃあ、(監査役は)どうすればよいのよ?」と言われると、精神論のようですが「監査役とはどうあるべきか」と思うことから始め、専門的知識を高め、社内情報の収集に努め、いざというときにはやるべきことはやるという気概が必要ということでしょうか。

(2014年10月執筆)

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