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経営・総務2013年05月23日 ブラック企業と過重労働 執筆者:深津伸子

 最近、「ブラック企業」というキーワードが注目されています。これまでは、主に、就職活動中の若者の間で使用される言葉でしたが、そうでない人にとっても、このキーワードに触れる機会が増えています。そんな折、自民党は夏の参院選公約に、「ブラック企業」と呼ばれる会社を念頭に、「若者の“使い捨て”が疑われる企業への対策強化」を盛り込む予定です(日本経済新聞平成25年4月17日記事)。
 ブラック企業の存在は、若者の早期退職につながっています。また、最近の就職活動では、受験する企業にブラック企業の評判がないか、ネット検索が多用され、それが企業選択の理由の一つになっています。このようなネット情報の真偽はともかく、有名企業や大手の方が比較的リスクが少ないと考える学生が多く、企業選択が保守的になり、人手不足の中小企業や新興企業が優秀な人材を確保できないという状況を生み出す要因にもなっています。
 では、「ブラック企業」とは、どのような企業を指すのでしょうか。現在の所、「ブラック企業」に関する明確な定義はありませんが、一般的には、長時間労働等によるうつ病の発病、サービス残業の強要などの法違反、パワハラ・セクハラの横行など、労働環境が劣悪又は違法な状態の企業を指します。ここでは、長時間労働に注目してみます。
 うつ病などの精神障害は、企業規模、業種を問わず、どの企業にも増えています。平成23年度、精神障害の労災請求件数は1272件、うち労災と認定された件数は325件であり、請求件数、認定件数ともに年々増加傾向にあります。
 精神障害の労災認定は、〈1〉対象疾病を発病していること、〈2〉発病前6か月間に強い業務ストレスが認められること、〈3〉業務以外のストレスや個体側要因により発病していないこと、のいずれも満たすことが認定要件となります(「心理的負荷による精神障害の認定基準について」平成23.12.26基発1226-1)。
 労働基準監督署の調査に基づき、発病前おおむね6か月の間に起きた業務による出来事について、業務ストレスが「強」と評価される場合、認定要件の〈2〉を満たすことになります。例えば、「退職を強要された」、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」といった出来事は、その程度や内容により業務ストレスが「強」と判断されます。
 また、長時間労働は、発病の大きな要因となります。発病直前の1か月間に160時間、連続2か月間に月120時間、連続3か月間に月100時間の時間外労働は、業務ストレスが「強」となり、このような勤務状態の従業員が精神障害にかかれば、個人的な発病要因がある場合を別として、労災認定されることになります。
 さらに、会社には、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものという、安全配慮義務があります(労働契約法第5条)。月100時間の残業といった過重労働状態の中で、自殺に及んだ場合に、会社の損害賠償責任が認められる裁判例が続出しています。
 現状、多くの企業でメンタル不調者を抱えていますが、さらに長時間労働やサービス残業、パワハラなどの問題が加わり、何らかの経緯でこれらの問題が表面化することになれば、いつどんな企業でもブラック企業の烙印をおされてもおかしくないと考えます。こういった事態は、企業規模、業種を問わず起こり得ることで、各企業は今一度自社の労働環境を調査し、長時間労働、サービス残業があれば、これをなくすための労働時間管理の見直し、パワハラ対策等、労働環境の改善策を講じる必要があります。

(2013年5月執筆)

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