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民事2013年04月02日 家事事件手続法の施行 利用しやすい制度を目指して 執筆者:伊庭潔

 「家事事件手続法」は、平成23年5月25日に公布され、同25年1月1日から施行されました。
 同法には、家庭に関する紛争(家事事件)を解決するための手続が定められており、その構成は、「家事審判に関する手続」と「家事調停に関する手続」に分けられます。
 この家事事件を解決するための手続は、従前は、家事審判法に規定されていました。上述したように、家事事件というのは、家事審判事件だけではなく、家事調停事件もまた重要な構成要素です。にもかかわらず、法律名は「家事審判法」とされていました。これは、家庭に関する紛争を家事審判事件によって代表させていたためといわれていますが、法律の内容と法律名の間に多少のずれがあり、実務家にとっても分かりにくいものでした。しかし、今回の家事事件手続法の制定により、名実ともに、家事事件の手続を包括的に定める法律となったことで、理解しやすいものになりました。
 従前の家事審判法では、主な手続に関し、旧非訟事件手続法の第1編を準用する形式になっていました(家事審判法7条)。そのため、家事事件の手続を確認するには、家事審判法だけでなく、旧非訟事件手続法の条文も見なければならず、やはり分かりにくいものになっていました。しかし、家事事件手続法では、家事事件に関する手続が自己完結的に規定されているため、利用者にとって非常に分かりやすいものになっています。
 そこで、今回施行された家事事件手続法において、家事審判法から変更されたポイントをいくつか紹介します。

 1つめのポイントは、家事事件の公益性の高低により、手続が2類型に分けられたことです。従来の家事審判法で「甲類事件」と「乙類事件」に区分されていたものが、新法では「別表第1の事件」と「別表第2の事件」に分類されました。
 「別表第1の事件」は、公益性が高く、当事者が自らの意思により処分することができない権利などに関する事項が対象になっています。つまり、別表第1の事件は、調停により解決することができない事件となります。
 他方、「別表第2の事件」は、公益性が低く、当事者が自らの意思により処分することができる権利などに関する事項が対象になっています。そのため、別表第2の事件は、調停により解決することができる事件ということになります。
 また、家事事件手続法の制定により、従前、乙類事件(別表第2の事件)であったものが、別表第1の事件(旧甲類事件)に分類されたものがあります。〈1〉夫婦財産契約による財産の管理者の変更等(家事事件手続法別表第1の58号)、〈2〉扶養義務の設定(同84号)と扶養義務の設定の取消し(同85号)、及び〈3〉推定相続人の廃除(同86号)と推定相続人の廃除の審判の取消し(同87号)が、それに当たります。これらは、実体法(民法)の趣旨を再検討した結果、新たに、対象が当事者に自由処分を許さない事項、すなわち調停により解決することができない事件と判断されたものです。

 2つめのポイントとして、申立書の写しの相手方への送付が可能になったという点です。従前、家事審判法では、申立書の写しの送付が明文に規定されていませんでした。そのため、離婚調停の相手方は、調停期日前に、申立人がどういう理由から離婚を求めているかを知ることができず、事前に準備ができませんでした。そこで、家事事件手続法では、予め申立人の主張を知っていた方が、第1回期日から充実した話し合いが可能となり、早期解決につながるという点を考慮し、原則として、申立書の写しを相手方へ送付することになりました(同法256条1項)。もっとも、申立書の写しを相手方へ送ることで、相手方を感情的に刺激し、手続の円滑な進行の妨げになるおそれがあると考えられる場合には、例外的に、相手方へ申立書の写しを送付しないことができるとされています(同項ただし書)。

 3つめのポイントとして、電話会議システムまたはテレビ会議システムの導入が明文化されたという点が挙げられます(同法54条・258条1項)。当事者が遠隔地に居住していて、審判期日または調停期日に出頭が困難な場合でも、電話会議システムやテレビ会議システムを利用することにより、手続を進行させることができるようになりました。民事訴訟法では、これらの制度を利用する場合、当事者の一方が期日に出頭していることが要件になっていますが(民事訴訟法170条3項ただし書)、家事事件手続法では、双方の当事者が出頭しなくても期日を成立させることができ、当事者にとって、裁判所が利用しやすいものになりました。ただし、証拠調べに関しては、テレビ会議システムに限って利用できるとされています(家事事件手続法258条1項・64条、民事訴訟法204条・210条・215条の3)。なお、例外として、離婚および離縁の調停事件においては、電話会議システムおよびテレビ会議システムによって、調停を成立させることはできないとされています(家事事件手続法268条3項)。

 この他にも、家事事件手続法では、利用者がより利用しやすくなるように、様々な規定が盛り込まれました。今後は、運用面において、利用者と裁判所が協力しながら、家事手続をより良い制度にすることが望まれます。その観点から、普段から家事事件に携わっている弁護士の役割は大きいといえます。家事事件手続法が適切に運用されるためには、我々弁護士が新法の趣旨を十分に理解したうえで、家事事件に取り組んでいくことが大切であると考えています。

(2013年3月執筆)

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