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厚生・労働2012年08月02日 事故・災害が起きたとき 執筆者:田中幸治

1 事故報告について

 今年2月、クレーン事故の裁判で、業務上過失致死罪に問われた建設業元請会社の社員に執行猶予付きの有罪判決が下ったという報道があった。
 この事故は、建設現場で大型クレーン(杭打ち機)が倒れ、通行人1人が死亡、4人が重軽傷を負ったというものである。
 (移動式)クレーンの倒壊、ジブの折損という事故は、結構頻繁に発生している。私の住居地の近くでも、昨年、つり上げ荷重150トンの大型クローラークレーンが倒れて、ジブを折損し、2人の作業員が負傷するという災害が発生している。また、同年、大阪でも同様の事故が報告されている。
 報道されていないところでも、クレーンのジブの折損等の事故は多いようである。例えば、台風の際、強風対策が不十分であったことによるジブの折損事故や、ユニック車で前方吊りをしていてブームが根元で破断したというような事故も仄聞した。これらの事故は、幸い人身事故は伴わなかったが、そのこともあってか、前者については、解体してしまってから、しかも相当日数を経て労働基準監督署に報告したとのこと。また、後者については、修理工場に運び込んでしまい、破断の状況をきちんと確認できないまま、これも数日を経て労働基準監督署に届け出たとのことであった。
 労働安全衛生規則では、事業者に対し、事業場における火災や爆発の事故、クレーン・移動式クレーンの倒壊やジブの折損などの事故、エレベーターのワイヤロープの切断事故など、場合によっては大きな災害につながりかねないような事故について、速やかに最寄りの労働基準監督署に報告をする義務を課している。
 結果的に人身事故がなかったからそれで良しとしてはいけないのである。事業者としても事故の原因を究明し、再発防止の対策をしっかりと確立することが求められており、また、行政の立場からも原因調査・再発防止対策を図ることになるので、法令に基づく報告は速やかに行う必要がある。

2 「労災かくし」について

 厚生労働省のホームページを見ると、「労災かくし」による検察庁への送検件数は、平成10年の79件から平成19年の140件と10年間でほぼ倍増している。
 一口に「労災かくし」といっても、内容は様々である。工事現場で足場から墜落し重傷を負って休業したにもかかわらず、労働基準監督署に労働者死傷病報告を提出しなかったもの。マンション新築工事で、3次下請の塗装業の労働者が転倒して手首を骨折したが、元請に迷惑を掛けたくないとして、2次下請の塗装業者と共謀して労働災害を隠蔽したとするもの。ビル建設工事現場で被災したにもかかわらず、自社の資材置場で発生したと虚偽の報告をしたもの。製造業において、工場内で発生した労働災害について、労働災害では使えない健康保険扱いにしたり、業務上災害を通勤災害扱いとしていたもの等々。
 労働災害が発生した場合、労働基準監督署に労働者死傷病報告を提出しなかったり、虚偽の報告を行ったりすると、労働安全衛生法により刑事責任を問われることがある。
 事業者は、労働災害等により労働者が死亡又は休業した場合には、遅滞なく、労働者死傷病報告を労働基準監督署に提出しなければならない。また、言うまでもないことではあるが、併せて、労災保険請求の手続を取ることになる。

(2012年7月執筆)

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