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税務・会計2011年10月11日 近年の税制改正等と会社清算実務における税務上の留意点 執筆者:荻原大輔

1.清算所得課税の廃止と会社清算

 平成22年税制改正において、清算所得課税に関する改正がなされ、従来の財産課税方式から損益課税方式に変更されました。これは、解散の前後で課税方式が違うため、この違いを利用した租税回避行為や課税の不公平が生じる可能性があることなどを理由とするものです。
 この改正により、平成22年10月1日以後に解散した法人から清算所得課税において、損益課税方式が適用されているところです。
 清算所得課税の廃止により、解散後の課税方式は、原則として通常の事業年度と同様になりましたが、税負担において改正前の課税方式との調整を図る必要もあることから、「残余財産がないと見込まれるとき」は、いわゆる「期限切れ欠損金」の損金算入を認めるという措置がとられることになりました。
 すなわち、債務免除益などが計上された場合、従来の清算所得課税においては残余財産に影響を与えないため課税されませんでしたが、損益課税方式によると課税所得が発生する場合があります。このように、改正後の課税方式においては、残余財産がないにもかかわらず納税が発生する可能性があり、従来の清算所得課税の税負担との調整を図るため、会社が解散した場合において、「残余財産がないと見込まれるとき」は、過去の期限切れとなった欠損金の損金算入を認めるという措置がとられることになりました。

2.会社清算とタックスプランニング

 従来の財産課税方式から損益課税方式に変わったことにより、租税の発生についての計画(タックスプランニング)を立案することが、従来の清算手続に増して重要となります。
 第一に、含み益のある資産と含み損のある資産を保有している清算会社において、清算手続き中、含み益のある資産の売却が先行し、含み損のある資産の売却が進まない場合には含み益のある資産を売却した事業年度において所得が発生し、納税が発生する可能性があります。利用できる青色欠損金若しくは期限切れ欠損金がない状況では、資産の売却による含み益と含み損の実現のタイミングを合わせるか又は含み損の実現を先行させないと税負担が発生する可能性があります。
 第二に、清算事業年度において、過去の粉飾決算等により「実在性のない資産」が計上されている場合、実在性のない資産の額についても債務免除を受けなければならず、期限切れ欠損金を使用しても債務免除益を相殺しきれない可能性があります。
 「実在性のない資産」の取扱いについては国税庁から公表されており、①実在性のない資産の計上根拠(発生原因)等が明らかであり、更正期限内の事業年度中に生じたものである場合には更正手続を通じて発生原因の生じた事業年度の欠損金額とし、②実在性のない資産の計上根拠(発生原因)等が明らかであるが更正期限を過ぎている場合又は実在性のない資産の計上根拠(発生原因)等が明らかでない場合には、期首利益積立金額を直接修正し欠損金として取り扱うこととされています。ただし、期首利益積立金額を直接修正できるのは、法的整理手続又は公的機関が関与若しくは一定の準則に基づき独立した第三者が関与する私的整理手続において、資産の実在性がないことの客観性が担保されている場合とされています。
 従って、実在性のない資産の内容や発生時期が解明できない場合や資産の実在性がないことの客観性が担保されていない場合には、実在性のない資産について税務上損金処理又は欠損金として認められず、課税が発生する可能性があります。従って、実在性のない資産が存在する会社においては、その原因調査と内容把握、税務上損金処理ができるか否かを十分検討する必要があります。
 第三に、清算中の事業年度において、債務免除を受け、債務免除益を計上したが、当該事業年度末に債務超過にならない場合には期限切れ欠損金が使用できず、債務免除益が相殺しきれない可能性があります。
 通常の清算手続においては、銀行などの債権者に弁済可能な債務はすべて弁済したうえで弁済不能部分について債務免除を受けるのですが、例えば、オーナー会社においてオーナー個人からの借入金だけが残っており、オーナー個人からの債務免除を受けて清算するような場合に、一部弁済可能な資金が残っているにもかかわらず、全額債務免除を受けてしまうようなケースが考えられます。このような場合には、債務免除を受けた後に債務超過にはならず、期限切れ欠損金が使用できないことになります。弁済可能な資金はすべて弁済に回したうえで債務免除を受けるように注意することが必要です。

3.震災特例法と会社清算

 平成23年4月27日に東日本大震災の被災者等の負担軽減等を図るため、国税関係の法律の特例を定めた「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」(震災特例法)が制定され、公布されました。
 震災特例法は、個人を対象にしたものと法人を対象としたものがあり、所得税関係、登録免許税関係、相続税・贈与税関係、法人税関係、消費税関係、自動車重量税関係、印紙税関係と幅広く税制上の措置が取られています。
 清算会社の場合に特に考慮すべき事項は、法人税関係、消費税関係及びその他の税制の特例において、清算を前提とする会社であっても被災による損失を受けた会社には、一定の税制上の軽減措置が受けられる点にあります。
 具体的には、①震災損失の繰戻しによる法人税額の還付(震災特例法15、23)、②被災代替資産等の特別償却の特例(震災特例法18、26)、③消費税の届出や中間申告期限の特例措置(震災特例法42、43)、④自動車重量税の還付、免税措置(震災特例法46)、⑤印紙税の非課税措置(震災特例法47、48)、⑥登録免許税の免税措置(震災特例法39)などがあります。
 清算会社においても、このような税制上の軽減措置等を受けることにより、清算会社における資金負担等を軽減できる点に留意すべきでしょう。

(2011年10月執筆)

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