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企業法務2011年03月10日 消費者保護に向けた法整備の状況と企業の留意点 執筆者:池田和世

1.消費者庁の発足

 我が国の消費者行政は、従来、製品や事業分野ごとに所管省庁が異なる、いわゆる「縦割り行政」であったため、事故情報が一元化されず新たなリスクへの対応が遅れる、いわゆる「すきま事案」に対応できない等の弊害があったとの指摘がありました。このような指摘を踏まえて、平成21年5月29日、消費者庁関連三法(消費者庁及び消費者委員会設置法、消費者庁及び消費者委員会設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律、消費者安全法)が国会で全会一致で成立し、平成21年9月1日には、消費者行政の司令塔・エンジン役として消費者庁が発足し、消費者行政の横断化が図られました。
 消費者庁には、各省庁、国民生活センター、地方公共団体の消費生活センター等から消費者庁への事故情報の一元的な集約がはかられるとともに、事故情報を調査・分析・発信を行う、他の法律で措置を要求できる事案については当該法律の所管省庁に適切な措置を求める、他の法律で措置を要求できない「すきま事案」については自ら対応を行う等の役割が与えられています。
 このうち情報の調査・分析・発信については、消費者庁のホームページに随時情報が公表されるとともに、消費者庁と国民生活センターが連携して運用するデータベースとして、生命・身体に係る消費生活上の事故情報をインターネット上で簡単に閲覧・検索できる「事故情報データバンク」が設けられています(なお、平成23年3月1日時点で、約28,000件の情報が登録されています)。
 このことは、企業にとって、他社の類似製品の事故情報等を参考にできるというメリットもあります。他方で、万一、自社の事故情報が消費者庁の公表によってはじめて明らかになることになれば、企業イメージのダウンは避け難いと思われます。このことから、企業にとっては、速やかに自社の事故情報を把握し、公表を行うかを検討する必要性がますます高くなったと言えるでしょう。

2.消費者団体訴訟制度の適用範囲の拡大

 民事法の分野に目を移すと、平成13年4月1日に、民・商法の特別法として、「消費者」・「事業者」間の契約を包括的に対象にして、消費者が契約を取消したり、契約条項の効力を否定したりできる要件を拡大、明確化する法律として施行された消費者契約法が施行されています。
 消費者契約法では、その後、平成19年6月7日に施行された改正法で、内閣総理大臣が認定した消費者団体(適格消費者団体)に、消費者契約法に違反する事業者の不当な勧誘行為や不当な契約条項に対する差止請求権を認めるという消費者団体訴訟制度が導入されました。
 さらに、平成21年4月1日および12月1日にそれぞれ施行された、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)ならびに特定商取引に関する法律(特定商取引法)の改正法で、景品表示法および特定商取引法に違反する行為に対しても、適格消費者団体に差止請求権が認められました。なお、現時点での適格消費者団体は9団体であり、適格消費者団体による差止請求訴訟は平成22年11月の段階で12件に上っています(坂東俊矢著「消費者団体訴訟制度の導入による成果と課題」月刊国民生活2011年1月号14頁)。
 上記のように消費者団体訴訟制度の対象範囲が拡大してきていることからすれば、各企業において、今一度、消費者契約法の観点から、約款等を見直す必要がないかの検討を行うことも重要になるものと考えます。

3.ADR制度の充実等

 上記のほか、裁判外での民事的救済の窓口として、従前からの弁護士会の紛争解決センターや各種業界団体が運営するあっせん制度などに加えて、金融分野で、平成22年10月1日から、法律上の制度として金融ADR制度がスタートするなど(金融商品取引法をはじめとする16の法律の改正)、消費者が事業者を相手に権利主張を行いやすい制度も整備されてきています。
 以上のように、消費者保護が年々重視され、消費者が権利主張を行いやすい制度整備が行われていることに加えて、横断的に消費者保護が図られる傾向にあるように思われます。昨今の立法のスピードが速いことを踏まえると、今後の改正の動きにも十分注視する必要があるところです。加えて、消費者の事業者に対する権利主張は、古くからある様々な事例で行われてきていますので、各企業におかれては、今一度、過去の事例の分析も踏まえて、トラブルの未然防止に努めて頂ければと願っております。

(2011年3月執筆)

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