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訴訟・登記2010年09月17日 目録のはなし 執筆者:佐藤裕義

 「目録」とは、多義的である。一般的には、「ある事柄について、名称や内容や数量等を整理してならべて見やすくした文書」ということができよう。歴史的に見ても「目録」の概念は古い。例えば、7世紀頃には班田の目録があった。財産管理や統治上の必要性から作成されていたものであろう。また、寺院では古くから物品や土地などの目録を作成していた。さらに、13世紀頃には日本の書物の現存最古の総目録として有名な「本朝書籍目録」が編纂された。
 このほか、「今川仮名目録」も有名である。これは、戦国大名今川氏の分国法で、「目録」という名称が付いているが、今川氏が領国(分国)を統治するために制定した法令(家法)である。個々の文書で発出されていた法令(条文)を目録の形式で1つの法典に整理・編集したことから「目録」という名称が付いたものと推察される。この今川仮名目録は、様々な裁判基準を定めており、裁判に携わる者としては非常に興味深い内容になっている。例えば、土地境界の紛争に関する規定や訴訟係属中の土地への私的強制執行の禁止、逃亡した家臣の追求権の時効(20年)、子供の刑事責任年齢(15歳)、河川の流木の所有権の帰属などが定められている。
 近代では、図書館であれば図書目録、蔵書目録、美術館や博物館であれば所蔵(品)目録、展示目録などがよく使われる。ここでは「目録」は「リスト」ということになろう。また、式典や祝賀会などで実物の代わりに贈る品目などを記載した文書をいう場合もある。例えば、記念品目録や贈呈目録などがあり、結納の場合も結納品目録は欠かせない。このほか「財産目録」などもよく見かける。
 このように「目録」と名の付くものは多数あり、歴史も古く、日常生活にも深く溶け込んでいる。いずれの目録も、その性質上、正確性が強く要請される。最近は目録の記載方法に関する書籍も多くなったが、古来、目録の作成は関係者にとって重い仕事である。

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 裁判手続においても「目録」は頻繁に作成される。ここでいう目録とは、当事者目録や物件目録などのように内容や数量等を見やすく整理した文書のことである。裁判上の各種目録は、当事者が訴状や各種申立書の別紙として作成する場合もあれば、裁判所が判決等の裁判書の別紙として作成する場合がある。
 当事者にとっても裁判所で働く者にとっても、この目録ほど大切なものはない。裁判上の各種目録には、審理の対象と裁判の効力が及ぶ人的範囲や物件などを明示し、特定するという機能があるからである。万が一にも目録の記載に誤りや脱漏があれば大変なことになる。
 裁判上の各種目録は、前記の当事者目録や物件目録のほか、登記目録、債権目録、担保権目録、財産目録、特許権目録など多種多様である。当事者は、これらの目録の記載を裏付け、正当化するための資料(戸籍謄本、住民票写し、登記事項証明書、契約書写し等)も提出する。これらの目録や資料は、すべて事件記録に編てつされる。一見単なる「別紙」に見える目録であるが、この目録の記載は、人の財産を差押え、処分し、あるいは権利関係に様々な影響を及ぼすものである。それを思うと、目録の作成や点検をおろそかにすることはできない。事件記録には、人の一生を左右する裁判の資料が綴り込まれており、裁判上の各種目録には、人の一生を左右する内容が記載されていると言っても過言ではない。少なくとも裁判所で働く者は、そんな思いを持って事件記録や目録に細心の注意を払っている。

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 私の執務する仙台高裁の民事部書記官室からは、眼下に、歌にも歌われた広瀬川を見ることができる。今から約60年前、台風による大雨でこの広瀬川が氾濫した。そのとき、濁流に巻き込まれながらも、命をかけて事件記録を守った裁判官の妻がいた。
 その崇高な魂と、そこまで事件記録の大切さを家族に伝えていた裁判官の信念を思いながら、今日も私は、緊張感を持って事件記録と目録に向かうのである。

(2010年9月執筆)

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