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経営・総務2010年01月29日 就業規則における休職・復職規定 執筆者:南波卓

 新年早々、相談したいことがあると某中堅商社の総務部長の来訪を受けた。相談の内容は、同社の就業規則に規定されている「12カ月の休職期間」満了を前に主治医の診断書を提出して復職した社員のことであった。
 復職直後の勤務の様子は休職前と変わらず、健康回復をみんなで喜んでいたところ、一週間も経たたないうちに様子が変わってきたのに気付いたというのである。ボーッと空中を見つめたり、居眠りをしたり、同僚社員との会話がかみ合わないことも度々おこり、このまま仕事をさせることは本人の健康維持上よくないし、業務上大きな間違いを惹き起すことになりかねないと悩んでいるとのことであった。
 当人の主治医に会って治療経過や治癒状況を詳しく聞いてみてはどうかとアドバイスする。アドバイスしながらも、当人が務める会社の上司といえども、主治医がすんなりと治療内容や治癒状況といった個人の医療情報を教えてくれるかと内心気にかかっていた。こういう場合、就業規則に予め「社員は、会社に対して主治医宛の医療情報開示同意書を提出するものとする。」という規定を設け、事前に同意書を受け入れていれば問題なかったのだが・・・。
 しかし、心配は杞憂に帰し、主治医は「まだ治っていないし、会社に出ればさらに重症化する筈。本人がどうしても復職したいという強い意欲を訴えたので、本人の意向に沿う診断書を出した。病気を治そうと思ったら会社を辞めてゆっくり治療しなければならないネ。アッハッハ・・・。」とあっけらからんとした回答だったとのこと。
 そもそも同社の休職に関する就業規則の規定は、多くの会社の規定例に見られるように「私傷病により欠勤し、3カ月を経過しても治らない場合は休職とする。」という単純な規定であったので、自然に休職に入ってしまったようだ。
 休職の要否の判断は、会社の指定する産業医もしくは専門医の所見を聞き、会社が決定して休職を命じるという規定を設けたい。そして休職期間中に治癒の見込みがないと認められる社員に対しては休職を命じないことがある旨を規定しておきたい。また、休職発令前の調査・検討目的で、社員の主治医、家族等の関係者と協力提携しようとする場合に、会社がこれらの関係者と連絡を取ることに社員は同意し、協力しなければならないという規定も設けたい。さらに、休職期間中は、原則として毎月治癒状況等休職の必要性について診断書等を添えて会社に報告しなければならないことを規定し、会社も常に休職社員の動静を把握して回復に協力することが大切と思われる。
 復職の場合も、社員からの復職申請に基づき会社の指定する医師の受診命令、休職事由消滅の証明、復職後の職務内容、労働条件・待遇、旧職務と異なる職務への配置、業務の軽量等の措置、その場合の降格・減給等トラブル防止のため特に詳細規定が必要である。復職後再発した場合の取扱いについての規定も設けたい。
 最近、精神疾患とりわけうつ病による休職が増加し、多くの会社でその対応を余議なくされている。就業規則に休職に関する簡単な規定を設けておくだけでなく、「私傷病休職者規程」で詳細な規定を設け、社員の健康保持と無用なトラブル回避を目指したいものである。
 ところで、当初は休職復帰社員の解雇問題にまで発展するかと心配していた総務部長の悩みの結末はどうなったかというと、当該社員から自己都合退職として退職願が出され会社が受理。現在、元社員は病気治療に専念し、徐々に快方に向かっているという知らせを受けている。
 総務部長は悩みが一気に解消し、目下「私傷病休職者規程」の新規作成に着手する等他の社内規程についてもその整備に意欲を燃やしている。

(2010年1月執筆)

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