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民事2007年10月11日 公益法人制度改革 執筆者:宇賀克也

 平成18年5月、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の公益法人制度改革関連3法が制定された。明治29年制定の民法は、主務官庁による許可主義に基づく公益法人制度を設けたが、このたびの公益法人制度改革は、従前の制度を抜本的に変更し、法人格の取得と公益性の判断を分離し、剰余金の分配を目的としない社団または財団については、準則主義に基づき簡易に法人格を取得することを可能にし(一般社団法人および一般財団法人)、一般社団法人または一般財団法人からの申請に基づき公益認定されたものに公益社団法人または公益財団法人の地位を付与するという二階建て構造にしている。そして、この公益認定が、主務官庁の縦割りではなく、内閣総理大臣または都道府県知事により行われることとしている。また、この公益認定が公正中立に行われるように、認定基準を具体的に法定し、内閣総理大臣が認定する場合には内閣府に置かれる公益認定等委員会、都道府県知事が認定する場合には都道府県に置かれる合議制の機関に諮問することとしている。内閣府に置かれる公益認定等委員会、都道府県に置かれる合議制の機関は、民間有識者からなり、諮問機関とはいえ、これらの諮問機関の判断が尊重されることになろう。「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」では、従前の中間法人や公益法人による新制度への移行を円滑にするための実体的・手続的規定を設けている。
 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」は、平成20年12月1日に施行されるが、既存の公益法人であって公益社団法人または公益財団法人への移行を希望する者は、この施行日から5年間の移行期間中に内閣総理大臣または都道府県知事に対し、移行認定を申請することができる。この申請を行うためには、まず、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」が定めるガバナンスの仕組み等、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」が定める公益認定基準等に適合するように、定款や寄附行為の目的・名称・組織・事業・財務等に関する規定を見直し、定款の変更案を作成し、社団法人にあっては社員総会の決議、財団法人にあっては理事会・評議員会の決議等、定款や寄附行為に従い、当該法人としての意思決定を行っておく必要がある。さらに、申請書、事業計画書・収支予算書、当該事業を行うに当たり法令上行政機関の許認可等を必要とする場合においては当該許認可等があったことまたはこれを受けることができることを証する書類、財産目録、貸借対照表、役員報酬等の支給基準を記載した書類等を提出しなければならない。
 移行期間は十分に長いようにも思われるが、期限近くになってから申請したところ、思わぬ不備があり、補正に時間を要しているうちに期限が到来し、公益社団法人または公益財団法人への移行ができなくなるという事態も生じかねない。早めに準備を進め、余裕をもって申請を行うことが望ましいといえよう。

(2007年10月執筆)

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