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税務・会計2007年05月22日 厳しくなった物納制度 執筆者:木村信夫

1.現金納付困難事由
 平成18年4月以降の相続から、新しい物納制度になりました。まず、物納手続きが迅速になり、最長でも1年以内に物納の適否の判断をするようになりました。この手続きが早くなったことよりもさらに重要なことは、物納の世界に入る前の現金納付困難事由が難しくなったことです。
 改正前は、被相続人の現金がない場合には、相続人の現金についてはそれ程うるさく詮索されずに物納世界に入れました。その世界に入った上での手続き・期間・条件等の検討が実務上行われていました。つまり、物納の世界に入ることが比較的簡単にできたと言えます。

2.物納の世界は遠し
 それが激変しました。かなり厳しくなったのです。具体的には、まず①被相続人の財産の中に預貯金や換価容易財産があるかどうか、②次に相続人の固有の財産としての預貯金や換価容易財産があるかどうか、③さらに延納できる金額を求められて、④そしてやっと物納の世界に入れるわけです。
 つまり、従来は物納の世界入るまでは被相続人の預貯金無し→即物納となったのが、新しい制度は、①→②→③→④物納と三つのフィルターを通らねばならなくなったのです。

3.換価容易財産
 さらに被相続人と相続人の財産のなかに換価容易財産があればそれも現金とみなしてその財産を解約して相続税を納めてください、ということになりました。この換価容易財産というものが今回新しくできた概念でして、その代表例が養老保険です。
 預貯金ではないのですが現金等価物ということで、積み立て金額を下回っていないという条件はありますが、基本的には解約して相続税に充当してもらうことになりました。
 養老保険以外でどのようなものがあるかというと、公社債その他の有価証券等、退職金、貸付金・未収金、取引相場のあるゴルフ会員権等、財産形成貯蓄、生命保険などで解約等による負担が少ないもの等がその対象です。

4.相続人の個別事情
 このような財産を考慮して金銭で即納できる金額を求める訳ですが、ここで一つ納税者の共通事情として当面の生活費を考慮してくれます。ですがその生活費として、納税者本人は100,000円/月、その親族は45000円/月×人数総額を必要な生活費として考慮してくれます。ただし、3ヶ月相当額だけです。毎月の金額もさることながら、その考慮してくれる月数が三ヶ月です。これらの金額が多いか少ないかは別として、何か相続税の納税が優先するというような考え方があるような気がします。
 もちろん、住宅ローン・子供の教育費・家の新築・老後の生活費・賃貸マンションの借入金の返済等の納税者の個別事情は、別に考慮してくれる訳ですが、なかなか厳しいものがありそうです。

5.やはり事前準備が必要 
 また、従来は物納か延納かどちらかを選択するのが普通でしたが、今回は物納の前にまず延納ありきですから並列となりました。必ずといっていいほど、延納による分割払いを求められることになると思われます。この点も大きな改正点といえます。
 このように現金納付困難事由がかなり厳密に行われることになりましたので、相続税を考慮した全体の納税方法の検討と、物納戦略としての財産の組み換えの検討が急務かと思われます。

(2007年5月執筆)

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