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建設・運輸2007年03月16日 耐震偽装問題と建築士の責任 執筆者:大森文彦

 建築物は、「衣・食・住」のうちの「住」を担うものであり、人間生活に密接に関係しています。したがって、建築物の質の確保は、極めて重要です。しかし、残念なことに、かつては欠陥住宅問題、平成17年からはいわゆる耐震偽装事件が社会問題化し、建築界に対する信用を大きく揺るがしています。とくに耐震偽装事件では、建築物の質の確保において中核的役割を果たす建築士の信用が失墜したといっても過言ではないでしょう。

 もっとも、一方で誠実に業務を遂行されている建築士の方々が多くおり、私自身も彼らの素晴らしい仕事振りを知ってはいますが、建築界全体としては、良質な建築物を生産するために何をどのようにすべきかという問題について、建築士だけでなく施工者や建築主その他建築生産に関係する者全員が真剣に再検討すべき時期にきていると考えられます。
 法的には、平成18年6月に、第一段として、建築確認・検査の厳格化、指定確認検査機関の業務の適正化、建築士等の業務の適正化・罰則の強化、処分を受けた建築士等の情報開示など建築基準法、建築士法等の改正がされました。
 また、平成18年12月に第二段として、一定の建築物について、構造設計一級建築士、設備設計一級建築士による法適合確認等の義務付け、管理建築士の要件強化、管理建築士等による重要事項説明書面交付の義務付け、一定の建築設計等について一括再委託の禁止、一定の工事について一括下請負の禁止などの法改正も行われました。

 こうした改正により、不良建築物の輩出をかなり防止できることが期待されますが、良質な建築物を生産するためには、より幅広い視点からの様々な再検討が必要と思われます。たとえば、発注者、設計者、工事監理者、施工者(下請負を含む)、コントラクションマネージャーなどの建築生産関与者の役割と責任を明確化したうえで、各関係者が各自の役割と責任を十分認識する必要があります。とくに、建築士は、建築に関する高度な技術的能力を有する専門家として、設計や工事監理以外の業務にも幅広く活躍することが予想されるばかりか、そもそも建築生産の川上に位置する設計及び施工の正確性を担保する役割としての工事監理については、建築士しか行うことができません。したがって、建築士は、いわば建築生産の中核的役割を担う存在とも言えますので、とくにその課されている善管注意義務の内容を十分理解した上で業務を遂行することが重要です。
 建築士の責任、特に注意義務に関して建築士の自覚を促し、建築士の信頼回復が進むことを望んでいます。

(2007年3月執筆)

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