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2024年10月28日 クレームをめぐり従業員を被害者にも加害者にもしない企業の対応(前編) 執筆者:佐久間大輔

 顧客や取引先からのクレームは企業のコントロール外で起こるので、対応が難しくなります。企業は、後述する3つの価値を守るため、組織全体の意識醸成とカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)防止体制の整備が喫緊の課題となります。さらに、クレームが発生した後に組織的対応ができると、カスハラへの発展を防止するだけでなく、従業員の生産性やモチベーションが向上します。一方、従業員がカスハラをして加害者とならない対応も重要です。このようにカスハラは多面的に対策を講じることが必要となります。

目 次
1 クレームから3つの価値を守る
2 カスハラの予防管理


3 クレーム発生後の組織的対応(後編)
4 従業員がカスハラをしたときの対応(後編)

1 クレームから3つの価値を守る
 カスハラが社会問題化しています。政府は2025年の通常国会に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の改正案を提出する予定です。これにより、事業主には雇用管理上の措置が義務づけられることになります。
 厚生労働省は、カスハラを次のとおり定義しています。
Ⅰ 「(顧客や取引先からの)クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして」、
Ⅱ 「当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって」、
Ⅲ 「当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」
 カスハラにつき、企業は、クレームが必ず発生することを前提に、3つの「守る」を実践しましょう。守るべきものとは、①企業のブランド価値、②顧客や取引先との信頼関係、③従業員の健康です。
 企業、対顧客、対従業員という3つの観点からカスハラの定義を考えると、①と②は企業と対顧客、③は対従業員において問題となります。
 顧客や取引先、従業員などステークホルダーとの信頼関係を基礎に具体的なケースにおける対応方法を検討すれば、顧客等との紛争の発生・拡大リスクを低減でき、また、従業員のメンタルヘルス不調による休職や退職を減らせます。これにより、企業価値の維持・向上を図ることができるのです。

2 カスハラの予防管理
 顧客や取引先からのクレームが増加している現状では、企業の実情に応じて職場をサポートする体制を整備することが求められます。
 体制づくりに当たり、まず、経営者が、カスハラを許さず、自ら防止に取り組むとともに、組織全体の意識を向上させて、カスハラを行わせない、放置しないとの方針を表明することが重要です。トップマネジメントが「顧客第一主義」にも例外があることを示すと、カスハラ防止に予算と人員を使ってよいことが組織全体に理解されるようになります。
 クレーム自体の発生予防については、リスクの洗い出しをし、クレームの影響度や発生頻度から優先順位づけをした上で、クレーム予防の具体策(例:自社製品の知識習得)を検討します。また、サービスの成功または失敗の原因や理由を明確にし、会議や文書などで共有します。特に過去の失敗事例を検証し、改善策や再発防止策を策定した上で、研修において水平展開しておきましょう。
 リスクアセスメントや研修において明らかにされたクレームごとに、従業員が持つ属人的なノウハウをマニュアル化しておくと、クレーム対応の質的負担を平準化することにつながり、従業員の心理的負荷が軽減されます。
 また、相談窓口を設けて、従業員に周知します。従業員に対しては、一人で悩まず、相談窓口、上司や同僚に相談することを徹底するとともに、相談しやすい環境づくりも肝要です。そして、相談を受けたら、その相談内容や状況に応じて適時適切に対応することが望ましいです。
 従業員の健康を守る体制の整備をしなければ、安全配慮義務違反を問われることになります。逆にカスハラ防止体制が有効に機能すると、相乗効果により3つの価値が向上することになるでしょう。

(後編へ続く)

<プロフィール>
佐久間 大輔
榎本・藤本・安藤総合法律事務所 弁護士・中小企業診断士

1993年中央大学法学部卒業。1997年東京弁護士会登録。2022年中小企業診断士登録。2024年榎本・藤本・安藤総合法律事務所参画。近年はメンタルヘルス対策やハラスメント対策など予防法務に注力している。日本産業保健法学会所属。
著書は『管理監督者・人事労務担当者・産業医のための労働災害リスクマネジメントの実務』(日本法令)、『過労死時代に求められる信頼構築型の企業経営と健康な働き方』(労働開発研究会)など多数。
DVD「カスタマー・ハラスメントから企業と従業員を守る!~顧客からクレームを受けたときの適切な対応とは~」、「パワハラ発生!そのとき人事担当者はどう対処する?-パワーハラスメントにおけるリスクマネジメント」も好評発売中。
公式ウェブサイト「企業のためのメンタルヘルス対策室/事業承継支援相談室」
https://sakuma-legal.com/

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