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2024年12月09日 クレームをめぐり従業員を被害者にも加害者にもしない企業の対応(後編) 執筆者:佐久間大輔

 顧客や取引先からのクレームは企業のコントロール外で起こるので、対応が難しくなります。企業は、後述する3つの価値を守るため、組織全体の意識醸成とカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)防止体制の整備が喫緊の課題となります。さらに、クレームが発生した後に組織的対応ができると、カスハラへの発展を防止するだけでなく、従業員の生産性やモチベーションが向上します。一方、従業員がカスハラをして加害者とならない対応も重要です。このようにカスハラは多面的に対策を講じることが必要となります。

目 次

1 クレームから3つの価値を守る
2 カスハラの予防管理


3 クレーム発生後の組織的対応(後編)
4 従業員がカスハラをしたときの対応(後編)

3 クレーム発生後の組織的対応
 原則として、クレームが発生したとき、初動は現場対応となります。その場合でも、クレーマーへの対応は単独で行わせるべきではなく、まずは顧客や取引先に複数名で対応し、その主張を傾聴しながら記録を取ることが肝要です。
 とはいえ、現場でクレーム対応の前線に立つ管理職はそのプロではないので、次の段階として、専門部署を設置し、または教育を受けた担当者を選任して、専門担当者がクレーム対応の窓口になることが望ましいです。そして、組織内のコミュニケーションを円滑化し、現場内、現場と専門担当者との間で情報共有をして、この情報的資源を多重利用します。これにより組織内で機能横断的に協調をしながら、早期に証拠収集や関係者の事情聴取を実施します。その結果、クレーム対応業務に関して全体最適化が図られます。それだけでなく、職場のサポートが促進されて従業員の心理的負荷が軽減されることになります。
 初動後は現場任せにしておくと、対応の遅れや不適切な対応から二次クレームが発生する可能性があります。二次クレームが発生すると解決に時間がかかるので、専門担当者が対応した方がよいでしょう。
 実際にクレーム対応業務に従事するに当たって、担当者はどのような点に留意した方がよいでしょうか。
 顧客からのクレームを受けたとき、迅速性と誠実性のバランスを図りつつ両方を追求することが重要です。迅速性を重視しすぎると対応が不十分で拙速となる一方、誠実性を重視しすぎると対応が遅くなり、いずれも顧客から二次クレームが発生するからです。
 クレーム対応に当たっては、担当者が「自分は会社の代表」という意識を醸成します。この意識の下で、消極的な姿勢を取らず、能動的に対応策を検討すべきでしょう。クレーム対応を後回しにせず、受け身は禁物です。
 そして、必ず「事件」は解決するという意識を持つことが重要です。これを徹底すると、職場のサポートと相まって、長期化するクレーム対応による心理的負荷を軽減することができるでしょう。

4 従業員がカスハラをしたときの対応
 カスハラは、従業員を被害者にしないことも重要ですが、逆に加害者にしないことも、3つの「守る」を実践する上で重要となります。
 従業員が取引先に対して悪質なクレームを付けて加害者になったとき、カスハラによりメンタルヘルス不調となった取引先の従業員から損害賠償請求を受けることは否定できません。被害者が損害賠償請求を提起してプレスリリースをしたときは、企業にレピュテーションリスクが発生します。
 レピュテーションリスクは組織内で発生するハラスメントにおいても同様ですが、カスハラは組織外で発生する点が異なります。すなわち、カスハラにおいては、顧客からカスハラを受けたのに企業の対応が不十分であったためメンタルヘルス不調となり、従業員から安全配慮義務違反を問われるという場合だけでなく、取引先の従業員がカスハラを受けたとして使用者責任を追及する場合もあるのです。
 そこで、カスハラをした自社の従業員に対しては、懲戒処分を含めた厳正な対処をすることが肝要です。その前提として就業規則においてカスハラを禁止し、この違反を懲戒事由としてあらかじめ定め周知しておかなければなりません。また、ハラスメント研修のメニューに加え、定期的に従業員を教育すべきです。
 一方、カスハラを受けた取引先の従業員に対しては、迅速かつ誠実に対応することとし、二次クレームを予防することが重要となります。

以上

<プロフィール>
佐久間 大輔
榎本・藤本・安藤総合法律事務所 弁護士・中小企業診断士

1993年中央大学法学部卒業。1997年東京弁護士会登録。2022年中小企業診断士登録。2024年榎本・藤本・安藤総合法律事務所参画。近年はメンタルヘルス対策やハラスメント対策など予防法務に注力している。日本産業保健法学会所属。
著書は『管理監督者・人事労務担当者・産業医のための労働災害リスクマネジメントの実務』(日本法令)、『過労死時代に求められる信頼構築型の企業経営と健康な働き方』(労働開発研究会)など多数。
DVD「カスタマー・ハラスメントから企業と従業員を守る!~顧客からクレームを受けたときの適切な対応とは~」、「パワハラ発生!そのとき人事担当者はどう対処する?-パワーハラスメントにおけるリスクマネジメント」も好評発売中。
公式ウェブサイト「企業のためのメンタルヘルス対策室/事業承継支援相談室」
https://sakuma-legal.com/

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