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民事2025年05月03日 憲法78年、論点多様化 少数与党国会、調整型に 改憲勢力「数の力」後退 提供:共同通信社

 日本国憲法は3日、1947年の施行から78年を迎えた。国会で憲法改正に前向きな「改憲勢力」は後退し、従来の「数の力」を背景に発議を目指す動きは鳴りを潜める。野党から衆院憲法審査会長に就いた枝野幸男氏は、与野党筆頭幹事との事前協議でテーマを調整。交流サイト(SNS)対策や臨時国会の召集期限など論点は多様化し、共通点を探るには時間を要する見込みだ。少数与党国会で、憲法論議は変化を見せている。
 昨年10月の衆院選の自民党大敗で、改憲勢力は国会発議に必要な3分の2を割り込んだ。衆院選前の憲法審では、改憲勢力で一致する「緊急時の国会議員任期延長」を中心にテーマを限定。総裁任期中の改憲を狙った岸田文雄前首相は「立憲民主党外し」も検討した。
 今年の通常国会では、枝野会長(立民)が審査会運営に積極的に関与する。自民と立民の与野党筆頭幹事と共に進め方を話し合い、2月に双方が取り上げたいテーマのバランスを考慮して設定。少数会派を尊重する故中山太郎元衆院憲法調査会長(自民)の「中山方式」を手本とし、各党の「最大公約数」を探る。
 2025年度予算案の衆院通過後の3月から審査会はスタートし、すでに議員任期延長や参院の緊急集会、国民投票時のCM規制とSNSの偽情報拡散対応、臨時国会の召集期限に関する討議を終えた。開催ペースは昨年より速い。大型連休明けには衆院解散権の制約のほか、SNS対策の参考人質疑も予定する。
 議員任期延長の討議では、改憲勢力と立民は変わらず対立した。だが、安倍政権が長期間放置した臨時国会の召集要求を巡っては、立民に加え、改憲勢力の日本維新の会と国民民主党も「要求から20日以内に召集」と期限を区切るよう主張。自民と公明党は明記に慎重で、枠組みが異なった。
 枝野氏は「想定の中で議論は進んでいる」と総括する。与党筆頭幹事の船田元氏(自民)は「議論は深まったが、なかなか結論は見いだせない。努力すべき点は残っている」と指摘した。

デジタル化、質高い司法に 憲法記念日、最高裁長官

 最高裁の今崎幸彦(いまさき・ゆきひこ)長官は3日の憲法記念日を前に記者会見し、来年5月までに民事訴訟手続きのデジタル化が全面施行されることについて「全国の裁判所で円滑な運用開始に向けた準備が進められており、質の高い司法サービスの提供につなげていきたい」と述べた。
 デジタル化は刑事分野でも関連法案が国会で審議されており「手続きを合理化・効率化し、よりいっそう適正かつ迅速な裁判を実現していきたい」と強調した。
 長期化が問題視され、超党派の国会議員連盟や法制審議会で見直し議論が進む再審請求にも言及。各地の裁判官が再審事件の課題を共有する研修会が初めて司法研修所で開かれたことに触れ「手続き遂行の責任を負う裁判官が過去の経験から学び、広く共有することは重要だ」と指摘した。

平和主義に背向ける懸念 日弁連会長が談話

 日弁連の渕上玲子(ふちがみ・れいこ)会長は3日の憲法記念日に合わせて談話を公表した。近年の防衛政策について「恒久平和主義に背を向けた方向に進んでいることが懸念される」と指摘。今年は戦後80年を迎えることに触れ「憲法の基本理念を実現するための活動を積極的に行う」と強調した。
 また、政府が3月に、日本学術会議を現在の「国の特別機関」から特殊法人に移行させる法案を閣議決定したことに関し「科学者コミュニティーの戦争協力への反省を背景として設立されたという経緯を軽視し、学問の自由に由来する日本学術会議の独立性・自律性を損なう恐れをはらむ」と訴えた。

憲法記念日の各党談話

 憲法記念日に当たり、各党は3日付で談話などを発表した。
 ▽自民党(党声明)戦後80年を迎える中、社会環境や国民意識の変化に基づき必要な憲法改正を行わなければならない。わが党は自衛隊の明記、緊急事態対応など改憲4項目を提示している。今後も早期の改正実現に向けて全力で取り組む。
 ▽立憲民主党(野田佳彦代表談話)戦後日本の平和と民主主義に憲法は寄与してきた。権力の行使を統制し、個人の尊厳を確保する憲法の価値を具現化する歩みを続けなければならない。立憲主義にのっとったまっとうな政治をつくっていく。
 ▽日本維新の会(吉村洋文代表談話)憲法改正は国家百年の大計で、実現なくして日本の将来は切り開けない。少数与党の国会情勢は、超党派の幅広い合意形成を図る絶好の機会だ。時代の要請に応える憲法を取り戻すため先頭に立つ。
 ▽国民民主党(玉木雄一郎代表談話)平和主義、基本的人権の尊重など憲法の三大原理を堅持していく。誰もが安心して暮らせる社会を築くため憲法改正は必要だ。護憲と改憲の二元論に拘泥せず、国民との対話を続け、議論をリードする。
 ▽公明党(党アピール)選択的夫婦別姓制度の論議の合意形成に努める。憲法9条下で許される専守防衛の範囲内で防衛力を強化し、日米同盟の信頼性向上に努めていく。日本が核兵器禁止条約を批准できるよう環境整備を前進させる。
 ▽れいわ新選組(党声明)今、国民の生活が苦しい状態で、憲法について行うべき議論はいかに失われた30年の経済・労働政策が憲法の保障する人権を破壊してきたかだ。国民生活を底上げし、日本を再興するための最後のとりでが憲法だ。
 ▽共産党(田村智子委員長談話)自公政権は敵基地攻撃能力の保有など大軍拡に突き進んでいる。平和も暮らしも脅かす戦争国家づくりを止める。個人の尊重、法の下の平等、幸福追求権、学問の自由など全条項を守るために闘う決意だ。
 ▽参政党(党談話)憲法の個人主義によって失われた価値も大きく、国体や哲学、歴史観、家族や地域の絆は損なわれた。戦後80年の節目を迎える今年、個人と公共の利益が調和する新たな憲法を一から構想する憲法草案を公表する。
 ▽日本保守党(党声明)軍事的どう喝を常態化させている中国や北朝鮮、わが国の領土を不当に占拠し続けるロシアと韓国。日本を守るために不戦をうたう憲法を改正しなければならない。占領下でつくられた憲法を私たちの手で改正しよう。
 ▽社民党(党アピール)政府は中国、北朝鮮の脅威を口実に軍拡している。「戦争の放棄」はただの理想論ではない。対話による平和外交の確立こそ戦争回避の道だ。7月に予定される参院選で平和国家への道を目指す勢力拡大を実現する。

日本国憲法

 日本の最高法規。1946年11月3日に公布、47年5月3日に施行された。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を基本原則とし、前文と計103条で構成。1条は象徴天皇制、9条は戦争放棄や戦力不保持を定める。連合国軍総司令部(GHQ)の草案を基に政府が大日本帝国憲法改正案を作り、帝国議会が修正した。改正には、衆参両院で総議員の3分の2以上の賛成を得て発議し、国民投票で過半数の賛成が必要。これまで改正されたことはない。

中山方式

 衆院憲法調査会長を務めた故中山太郎氏が提唱した運営ルール。少数会派を尊重しながら合意形成を図るため①政局とは一定の距離を保つ②野党第1党の幹事を会長代理とし、会長とともに運営に責任を持つ③少数会派の発言権を保障する―といった原則を打ち出した。憲法改正は多様な価値観を持つ全国民の生活に影響するため、理想を追求しつつも、歩み寄りながら妥協してつくり上げるとの考え方に基づく。中山会長の下で、枝野幸男氏は会長代理を務めた。

(2025/05/03)

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