
「就活ハラスメント」が社会問題化する昨今、厚生労働省は2024年12月の労働政策審議会の建議を受け、本問題の削減などを目的とする立法化の動きを見せている。このような状況下で、企業はどのような対応を採るべきなのか。今回は審議会の建議内容、リスク回避のためにいま企業が実施したい取り組みなどを整理してみよう。
目 次
1 社会問題化する「就活ハラスメント」(前編)
2 就活ハラスメントに関する「雇用管理上の措置義務」創設を提言(前編)
3 進まない「就活ハラスメント」に関する企業の取り組み
4 早急に進めたい「就活ハラスメント対策」
3 進まない「就活ハラスメント」に関する企業の取り組み
現在、各企業では就活ハラスメントの予防や解決に、どの程度積極的に取り組んでいるのだろうか。
実は、『職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度)』(厚生労働省)によると、特に何も実施していない企業が53.0%で過半数を占めているのが現状である。

従業員規模別に見ると1,000人以上の企業でも42.1%が、100人未満の企業では65.6%が何の取り組みも実施しておらず、従業員数が少ない企業ほど取り組みに消極的な現状が見て取れる。
現在、労働施策総合推進法および男女雇用機会均等法に基づく『雇用管理上講ずべき措置等についての指針』では、就活ハラスメント防止措置を講じることは “望ましい取り組み” としか位置付けられていない。措置を講じる法律上の義務が存在しない点が、企業で就活ハラスメント防止措置の取り組みが遅れている要因のひとつといえるだろう。
このような背景があり、労働政策審議会雇用環境・均等分科会の建議では就活ハラスメント防止措置を講じることを措置義務とすることが提言され、厚生労働省の法案に盛り込まれたわけである。
4 早急に進めたい「就活ハラスメント対策」
あらゆる企業にとり、就活ハラスメントが経営に与える影響は極めて甚大である。社会的信用の失墜やブランド力の棄損などによる業績悪化はもとより、新規採用の困難化・職場風土の悪化など挙げればきりがない。ハラスメントの行為者は刑事責任を、企業は使用者責任を問われるケースさえあり、事業継続が困難になるリスクまでをもはらんでいる。
このような事態を回避するには、早急に対策に取り組むことが肝要だろう。現在、何の措置も講じていないのであれば、まずは以下の取り組みを実施したい。
(1)就活ハラスメント防止の方針の明確化
自社および企業トップの「就活ハラスメントは絶対に許容しない」という強固な経営姿勢を企業方針として明文化し、内外の利害関係者に公表する。あわせて、就活ハラスメントの行為者を処分する社内規定を整備のうえ周知する。
(2)就活ハラスメント防止体制の整備
就活ハラスメントを防止する社内体制を構築する。例えば、「就活ハラスメント防止研修の実施」「採用活動時のルール作成」「学生向け就活ハラスメント相談窓口の設置・周知」などを計画的に実施する。
他にも、厚生労働省が推奨する「公正な採用選考」の実施、リクルーターの行動指針・活動マニュアルの策定、面接官に対する学生情報の限定提供などを順次取り入れるとよいだろう。
第217回通常国会に提出された「労働施策総合推進法等の一部を改正する法律案」は2025年6月4日に成立し、同年6月11日に公布された。施行は公布後1年6カ月以内の政令で定める日で、事業主が講ずべき具体的な措置の内容などについては今後、指針で示される予定とされている。
今や就活ハラスメント対策は緊要な経営課題のひとつである。全く対策を講じていない企業はもとより、すでに一定の対策を講じている企業についてもこれまでの対策の実効性を検証するなどし、自社に適したより効果的な就活ハラスメント対策の構築・実行に取り組みたいものだ。
【参 考】
厚生労働省:「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40277.html
厚生労働省:女性活躍の更なる推進及び職場におけるハラスメント防止対策の強化について(建議)
https://www.mhlw.go.jp/content/001365967.pdf
厚生労働省:令和7年の労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)等の一部改正について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
<著者プロフィール>
大須賀 信敬
コンサルティングハウス プライオ 代表
(組織人事コンサルタント/中小企業診断士・特定社会保険労務士)
中小企業の経営支援団体で各種マネジメント業務に従事後、 2007年4月に組織運営及び人的資源管理のコンサルティングを行う中小企業診断士・社会保険労務士事務所「コンサルティングハウス プライオ」を設立。『気持ちよく働ける活性化された組織づくり』(Create the Activated Organization)に貢献することを事業理念とし、組織人事コンサルタントとして大手企業から小規模企業まで、さまざまな企業・団体の「ヒトにかかわる経営課題解決」に取り組んでいる。一般社団法人東京都中小企業診断士協会及び千葉県社会保険労務士会会員、ISO30414(人事マネジメント)リードコンサルタント/アセッサー。
オフィシャルサイト https://www.ch-plyo.net
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