一般2025年06月19日 ネットカジノ誘導禁止 接続抑止へ改正法成立 違法賭博、規制強化 提供:共同通信社

オンラインカジノの規制を強化する改正ギャンブル依存症対策基本法が18日、参院本会議で与野党の賛成多数により可決、成立した。従来の賭博罪での取り締まりに加え、インターネットで利用を誘導する発信を禁止し、アクセス抑止を図る。警察庁の推計では、オンラインカジノの国内利用経験者は300万人を超え、芸能界やスポーツ界でも利用が判明しており、違法性を周知徹底する。公布から3カ月後に施行される。
オンラインカジノは海外で合法的に運営されているものが多いが、国内からアクセスして金を賭ければ刑法の賭博罪に該当する。スマートフォンなどから手軽にでき、違法性の認識が薄いまま若者を中心に利用が広がっており、与野党は緊急対策が必要として今国会での法整備を急いだ。
改正法ではオンラインカジノを紹介するウェブサイト「リーチサイト」や交流サイト(SNS)での情報発信を禁止し、違法情報と規定。管理するプロバイダーやSNS事業者に削除を促す。オンラインカジノサイトの開設禁止も明記した。
警察庁が3月に公表した利用状況調査に基づく推計では、オンラインカジノの国内の利用経験者は約337万人、年間の賭け金総額は約1兆2423億円に上る。政府は日本向けにサービスを提供するオンラインカジノサイトにライセンスを発行しているオランダ領キュラソーなど八つの国や地域の関係政府に、日本からの接続を禁止するよう協力を要請している。
総務省もオンラインカジノ対策に関する有識者検討会を4月に立ち上げ、サイトへの接続を強制的に遮る「ブロッキング」などを検討している。
ギャンブル依存症対策基本法は2018年、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法を成立させる前提として議員立法により成立した。
紹介動画1本、狂った人生 「寝る時間以外賭けた」
ユーチューブにアップされた1本の動画をきっかけに、東京都中野区の男性(30)の人生は大きく狂い始めた。オンラインカジノを実際にプレーしてみせる紹介動画。日本語での説明に違法との言及はなかった。「寝ている時間以外は賭けた」。資金を犯罪でまかなうまでに賭博の沼に陥ってしまった。
2018年に会社員として就職。東京から地方に転勤すると、新型コロナウイルス禍に見舞われて外出の機会が減り、趣味のゴルフにも行けなくなった。21年1月、退屈な日々に何げなく目にした動画だった。
違法とは思わず、その日のうちに日本からも多数のアクセスがある「ベラジョンカジノ」に登録。個人情報やクレジットカード情報を入力すると、簡単にプレーできた。初日は5万円を入金。翌日も賭け、止まらなくなった。他のサイトにも登録し、入金には決済代行業者を使った。
以前に遊んだパチンコやスロットと、のめり込み方が違った。「24時間、いつでも手元の端末で簡単に賭けられてしまう。終わりどころがない」。通勤中、仕事中、入浴中でさえも。開始2カ月後、初めて消費者金融から借金。その2カ月後にはヤミ金へ。1日で300万円をつぎ込んだ日もあった。
しばらくして行政の啓発広報で違法だと知ったが、もうやめられない状態だった。
金策に追われ、勤務先の金に手を付けたのが発覚して退職に。それでも立ち止まれなかった。賭け金は万引で工面した。23年12月、書店で万引したところを警戒中の警察官に呼び止められて事情聴取。「正直、ほっとしたんです」。これで異常な生活を終えられるかもしれない―。
約3年で費やした額は利息も含めて2千万円ほど。職と住む場所を失い、借金を巡るトラブルでインターネット上に個人情報をさらされた。
人生をやり直そうと、ギャンブル依存症の支援団体に相談し、同じ苦しみを抱えた人が集まる会合に参加。「誰にも言えなかった悩みを打ち明けられた。もっとこの人たちと一緒にいたいと思った」。男性は現在、全てのギャンブルを断ち切った。再起を目指すとともに、自身の経験を当事者やその家族に伝えて啓発する活動を続けている。
「入り口」封じる第一歩 アクセス遮断になお課題 Q&A「オンラインカジノ」
オンラインカジノの規制を強化する改正ギャンブル依存症対策基本法が成立しました。
Q どのように規制を強化するのですか。
A インターネット上には「リーチサイト」と呼ばれるオンラインカジノの紹介サイトや、X(旧ツイッター)などの交流サイト(SNS)上で利用を勧める投稿が多数あります。違法賭博の「入り口」を封じるため、改正法はこうした利用を誘導する情報を違法と規定し、SNS事業者やサイトを管理するプロバイダーに削除を促します。
Q カジノサイトに接続できないような仕組みはないのですか。
A 総務省がオンラインカジノ対策を協議する有識者検討会を4月に立ち上げ、サイトへの接続を強制的に遮る「ブロッキング」の導入などを検討しています。
Q 問題はないのですか。
A 通信事業者が利用者のアクセス情報を把握する必要があるため、憲法が保障する「通信の秘密」を侵害する恐れがあるとも指摘されますが、依存症当事者の支援団体などからはこうした強力な対策を求める声が上がっています。
Q 運営会社は摘発されないのですか。
A 賭博罪に国外犯の規定がないことなどから、摘発は難しいのが実情です。警察は賭け金や配当を仲介して手数料を得る「決済代行業者」や、SNSなどでオンラインカジノを宣伝して運営側から報酬を得る「アフィリエイター」らの摘発を進めています。
抜本解決へさらなる対策を 識者談話
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」田中紀子(たなか・のりこ)代表の話 改正法により違法なオンラインカジノに誘導する広告が減ることは期待できるが、運営する事業者の取り締まりなど課題は残されたままで、抜本解決に向けてさらなる対策強化が必要だ。導入の可否が検討されている「ブロッキング」もアクセスを強制的に遮断するもので効果的だろう。すでにオンラインカジノがまん延し、依存症で苦しんでいる人がいる。政府は違法賭博であることの周知や啓発とともに、相談しやすい環境整備にも取り組むべきだ。
オンラインカジノ
インターネットサイトでアカウントを開設し、クレジットカードなどを登録して入金すれば、スマートフォンやパソコンから現金や暗号資産を賭けてスロットやバカラなどのゲームができる。プロスポーツの勝敗に賭けるものもある。日本では競馬や競輪など公営ギャンブル以外の賭博は禁止されており、金を賭けてゲームをすれば賭博罪に当たる。賭け金や配当の入出金の決済に関与したり、広告などで勧誘したりすると賭博ほう助罪に問われることもある。
(2025/06/19)
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