民事2025年06月25日 「福利」重視し反対意見 別姓訴訟、現行制度は違憲 元最高裁判事の草野弁護士 提供:共同通信社

選択的夫婦別姓を認めない現行制度を合憲とした2021年6月の最高裁大法廷決定で反対意見を述べ、今年3月に最高裁判事を退任した草野耕一(くさの・こういち)弁護士(70)が、25日までに共同通信の単独インタビューに応じた。根底には「国民の福利の最大化」との考えがあったとし「司法として夫婦別姓を認めないのは違憲だと意見を付けるべきだと考えた」と振り返った。
21年の大法廷決定は、働く女性が増えたことや国民意識の変化などを踏まえても「合憲とした15年判決の判断を変更すべきだとは認められない」とした。一方、草野氏を含む3人は違憲だとして反対意見を述べた。
草野氏は取材に、選択的別姓には経済的合理性があり、名前に対するアイデンティティーも確保できるとし「福利の充実を得られることは明らかだ」と指摘。夫婦同姓の場合、離婚時に旧姓に戻すと周囲に気付かれるため、プライバシーを侵害するとの見方も示した。
別姓反対派は子どもへの影響を懸念するが、「親には、自分と子の福利の追求をどう振り分けていくかという裁量がある」と説く。別姓夫婦が増えれば、親子で姓が異なっても違和感などは抱かないだろうと推測した。
さらに、約30年前に選択的別姓を導入したドイツで、実際に別姓を選ぶのは2割以下にとどまる例を挙げ「決して別姓が社会の多数になるわけではないし、各夫婦が選べば良いことだ」と強調。草野氏自身の家族観としては、夫婦同姓が良いとした。
自身の見解は大法廷の多数意見とはならなかったが、納得はしている。理由として、条文や判例を踏まえて議論する「法の支配」を尊重している点を挙げた。その上で「国会での法改正や最高裁での違憲判断があった場合、自分の反対意見が先駆けになったとすれば裁判官冥利(みょうり)に尽きる」と期待し「そこに最高裁判事の個別意見の役割があると思う」と語った。
草野氏は1980年に弁護士登録し、国際弁護士として活躍。2019年2月に最高裁判事に就任し、在任中に25件の個別意見を書いた。司法を通じて豊かで公正で寛容な社会を実現する「司法立国」を目指すことを提唱している。
選択的夫婦別姓
夫婦が望む場合、結婚後もそれぞれの結婚前の姓を使うことを認める制度。法相の諮問機関である法制審議会が1996年に導入を盛り込んだ民法改正要綱を答申したが、保守系議員の抵抗もあり、法案提出されなかった。最高裁大法廷は2015年と21年、現行規定を「合憲」としたが、それぞれで複数の裁判官が違憲と判断した。22日閉幕の通常国会では、立憲民主党と国民民主党がそれぞれ民法改正案を提出。日本維新の会提出の戸籍法改正案も含め一括して審議入りしたが、採決に至らず継続審議となった。
(2025/06/25)
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