経営・総務2025年08月27日 企業の未来を拓く5つの出口戦略。成功の鍵は「早期検討」と「選択」にあり 執筆者:畑中外茂栄

会社の出口戦略が重要なのは、それによって取るべき戦術が変わるからです。
例えば、売上が低迷している状況を想像してください。課題を2人の責任者にヒアリングしたところ、1人は「商品に問題がある。早急に新商品の開発が必要だ」と答え、もう1人は「接客に問題がある。接客サービス向上のために社内研修を充実すべきだ」と答えました。
課題の捉え方が異なれば、取るべき手段も異なります。出口戦略も同様です。上場(IPO)を目指すのか、M&Aによる売却を検討するのか、あるいは後継者への事業承継を行うのかによって、今から準備すべき内容は大きく変わります。
出口戦略は、単に事業を終えるためのものではありません。経営者、従業員、そして社会にとって最善の未来を築くための重要な経営戦略です。
本稿では、代表的な5つの出口戦略―上場(IPO)・事業承継・第三者承継(M&A)・清算・倒産―について概要と課題を整理します。

1. 上場(IPO):成長のための手段と捉える
IPOは、知名度や信用力の向上、多額の資金調達を可能にする華やかな出口戦略です。しかし、実現には厳格な審査基準をクリアするための時間とコストがかかります。
IPOは事業拡大を実現するための「手段」と位置づけ、その後の成長ビジョンを明確に描くことが重要です。
2. 事業承継:家業を次世代へ
事業承継は、親族や役員・従業員に事業を引き継ぐ方法です。日本の中小企業が直面する後継者不在問題の解決策として重要です。
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b1_3_6.html
3. 第三者承継(M&A):後継者不足解消の選択肢
第三者承継は、後継者不足や事業成長のための有効な手段です。かつての「敵対的買収」イメージから、近年は友好的なM&Aが主流になっています。
4. 清算:最終手段としての選択
清算は、会社を法的に消滅させる手続きです。
5. 倒産:回避すべき出口
倒産は経営破綻による強制的な事業停止で、最も避けたい選択肢です。倒産のリスクを理解した上で、他の出口戦略を早期に検討することが望まれます。
まとめ
出口戦略は、経営者・従業員・株主・取引先にとって将来を左右する重要な決断です。どの戦略にもメリットとデメリットがあり、概要と課題を理解したうえで早期に準備することが不可欠です。
重要なのは「いつか」ではなく「今」から取り組むこと。専門家と連携し、経営者のビジョンと現状を整理し、最適な出口戦略を設計しましょう。
(2025年8月執筆)
(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)
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執筆者

畑中 外茂栄はたなか ともえ
税理士法人SUN/株式会社SUN Consulting/畑中公認会計士事務所 代表
一般財団法人 日本的M&A推進財団 理事
公認会計士・税理士・第三者承継士。
略歴・経歴
1985年生まれ。
自身の大工だった父親の経営難から、中小企業の経営者支援を行うために公認会計士取得を目指す。同志社大学商学部卒業後、公認会計士試験に合格。
大手監査法人・義父の会計事務所・財務戦略特化型の税理士法人で経験を積み、現職。
「事業承継は、親子2代におけるダブル脚本&ダブル主演」をモットーに、
日本の後継者不在問題を解決するための親族内事業承継・第三者承継の専門家として中小企業の財務改善と発展を支援しています。
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