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一般2025年11月03日 外国人1割超、27市区町村 工業、観光地の担い手 人手不足背景、データ分析 提供:共同通信社

 全国の自治体のうち13都道府県の計27市区町村は今年1月時点で、住民に占める外国人の割合が10%を超えていることが2日分かった。技能実習生を含む外国人労働者や永住者らで、全国平均は3・0%。比率の高い自治体は工業地帯や観光地などが目立つ。各地で人手不足となる中、地場産業の担い手などで定着しているとみられる。全国の在留外国人は376万人(昨年末時点)。前年比35万人増となり過去最大の伸び。住民基本台帳人口と在留外国人数のデータを分析した。
 国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は2070年に、日本に住む外国人が10・8%に達すると推計する。27市区町村は半世紀後の未来を先取りして外国人1割社会となった格好。多様な文化的背景を持つ人々が相互理解を深め、共生を進めていく取り組みが一段と求められそうだ。
 外国人割合は今年初めの住民基本台帳人口を基に算出。全国1741自治体について政令指定都市を行政区ごとに分けた計1892地域を集計した。比率が最も高いのは北海道占冠(しむかっぷ)村で住民1590人中582人(36・6%)だった。北海道赤井川村、大阪市生野区、群馬県大泉町、北海道倶知安(くっちゃん)町が続き、5区町村が20%を超えた。沖縄県恩納(おんな)村を含む10%超の27市区町村には工業地、観光地のほか、古くから永住者が多かった地域もある。
 5%超で見ると計27都道府県の151市区町村に上る。ゼロは青森県西目屋村など2村。
 日本に住む外国人の数を巡っては、1960年代まではおおむね60万人台で推移していた。90年施行の改正入管難民法によって日系人らが定住者として暮らせるようになり、増加傾向が明確になった。リーマン・ショックによる解雇、帰国で減った後、再び増加。新型コロナ禍による落ち込み後の現在は第3次の拡大期に当たる。
 ここ数年は即戦力の人材を対象とした「特定技能」の在留資格整備をはじめとする制度の見直しが重なり、在留外国人数が大きく伸びている。
 外国人の比率が12・4%の沖縄県恩納村は海岸沿いにリゾートホテルが並ぶ。村によると13年前の大学院大の開学を機に増え、宿泊施設や飲食店で働く外国人が目立つ。担当者は「トラブルが増えたということはない。うまく共生できているのではないか」と話す。

交わり乏しい「二つの村」 リゾートエリアで生活完結

 札幌市から車で1時間半ほど、北海道のほぼ中央に位置する占冠(しむかっぷ)村は1月時点で、人口1590人のうち外国人が582人。およそ3人に1人が外国人で、住民に占める比率が全国1位だ。村の代表的なリゾート地「トマム」で近年、多くの外国人従業員が働くようになったことが主な理由だが、元々の住民との交わりは乏しいという。村を歩き「共生」の現状を探った。
 「村民は外国人に慣れている。長年の国際交流が土台にある」。田中正治(たなか・まさはる)村長は役場での取材に語った。村は米コロラド州アスペン市と30年以上も交換留学を続ける。
 役場の目の前にある道の駅のレストランでは、米国人のコーリー・ルックスさん(46)が働いていた。1991年に留学生として村を訪れ、のちに英会話講師として再訪、村の日本人女性と結婚した。定住し20年以上がたち、すっかり村に溶け込んだという。「住民がサポートしてくれた」と感謝を口にする。
 とはいえ現在も、役場などがある村中心部で生活する外国人はわずかだ。北東方向に車を約30分走らせると、山から突き出た4棟の高層ホテル「星野リゾート トマム」が現れる。一帯はスキー場や雲海見学などで知られる山岳リゾート。村の外国人のほとんどがこのトマムエリアで暮らす。
 村によると、2017年に営業を始めた別のホテルが多国籍の従業員を採用し、居住者が急増したという。短期就労者も多く、村には30カ国超の人がいる。「リゾートがにぎわう時期は増える。転出入が激しい」と村の担当者。最大で300人前後の変動がある。
 星野リゾートのホテルでも多くの外国人が働く。受付などを担う中国出身の李嘉嘉(り・かか)さん(29)は寮と職場を往復する日々だ。「多国籍の同僚に何でも相談できるし、困ることはない」。衣食住は寮で完結し、村中心部に行く機会はほぼない。
 全国で外国人が急増した地域には、元々の住民との間で摩擦が起きるケースも見られる。だが占冠村中心部とトマムエリアは車で約30キロの道のりで、生活圏が全く異なる。「ある意味で、気を使わなくても共生できる」と田中村長。トラブルもほとんどないとする。
 8月初め、一年で最も人が集まるという、村の夏祭りを訪ねた。役場に近い芝生の公園に屋台が並び、伝統芸能の舞が舞台を彩る。数百人が出入りする中、外国人を探して歩いたが、出会ったのはイスラエル人観光客1人だけだった。「トマムに外国人村ができた感覚。共生の実感はない」。ある村民は淡々と語った。

個性尊重し、交ざり合う 人間関係の〝温暖化〟を P・ハーランさん

 お笑いコンビ「パックンマックン」のパックンこと、パトリック・ハーランさんは言語や文化の違いを乗り越え、相方の吉田眞(よしだ・まこと)さんと日本中に笑いを届けてきた。日本で長年暮らした経験からルーツの異なる人たちが共に生きるには「個性を尊重し、交ざり合うことが大切」と話す。
 ―今の日本社会の空気をどう感じているか。
 「在留外国人への風当たりが強まったこの半年、1年ぐらい、少し怖いと思います。中には駅の階段でわざとぶつかられたり、『どけよ外人』と言われたりした友達もいて、ピリピリ感が漂っているのは間違いないです」
 ―外国人排斥の風潮もあります。
 「日本に外国人を入れるかどうかは日本人が決めれば良いし、日本に暮らす上でのルールを厳しくしても良いと思う。ただ、ルールを守って暮らしている外国人に対しては、共生を目指していただきたいなと思います。外国人が日本にいる意味、それは労働力だけではないはずです。人口が減る中で例えばみこしの担ぎ手になって地域社会を元気にしたり、新しい価値観で商品を開発するなどして日本を面白くしたりできるかもしれない。メリット、デメリットを冷静に考えてもらえたらうれしい」
 ―約30年のコンビの歩みが「共生」の参考に?
 「結成当初はお笑い文化の違いなどから、けんかもよくした。米国人は突っ込まれるとムカつくんです。ある公演後に文句を言ったらマックン(吉田さん)が『解散だ』と帰ってしまったが、時間を置いて電話で謝ると、マックンも歩み寄ってくれた。お互い腹が立っている時は、やり返したい、痛めつけたいという感情になる。でも大事なのは問題改善に(気持ちを)シフトすること。だから今、僕らは舞台の反省会を翌日か翌々日にしています」
 ―永住権を取得した立場から「共生」に大切なことは。
 「来日して32年。いまだに『ピザやアメフト』が一番好きですが、心は『みそ汁と相撲』に近づいている。気持ちとしては6割日本人です。飲食店で、英語で『フォークは要りますか?』と聞かれるたびに、見た目で判断しないでほしいなぁと思う。30年いても外の人として扱われることが多い。昔ならムカついたと思うけれど、諦めも大事。完全には溶け込めないでしょう。料理に例えれば、それぞれの味(個性)を生かしたまま、同じ器の中でおいしく交ざり合えれば良い。いわばサラダボウルの精神です」
 ―マックンと各地で行う講演会では、お客さん同士で自己紹介してもらう時間を設けている。
 「お隣さんに自分に関する情報を伝え、同じことを相手から聞く。そうすれば人と知り合う機会は増える、と思って続けています。人は知らないものが怖いし、嫌い。でも知ったら案外好きになれるかもしれない。社会の空気が少し冷え冷えとしてしまっている中で、日本人、外国人に関係なくコミュニケーションの輪が広がればと願っています。人間関係はもう少し〝温暖化〟しても良いのではないでしょうか」
   ×   ×   
 1970年生まれ、米コロラド州出身。93年に来日し、英会話講師を経てお笑い芸人に。テレビ「爆笑オンエアバトル」などで注目され、報道番組などに多数出演。東京科学大非常勤講師。

分析の方法

 市区町村別の外国人住民比率は、総務省が今年8月に公表した1月1日時点の住民基本台帳人口のデータを調べた。東京都区部は23特別区それぞれの数値を出し、横浜市や大阪市などの20政令指定都市は171行政区のデータを抽出した。総数に占める外国人の割合をパーセントで示し、小数第2位を四捨五入した。戦後の外国人数の長期推移は、2011年までは外国人登録者数を調査した。外国人登録制度の廃止に伴い、12年からは出入国在留管理庁(旧入国管理局)の在留外国人統計を対象とした。

外国人住民

 3カ月を超えて日本に滞在する外国人には原則、住民票が作成される。総務省は1月1日時点の住民基本台帳人口を毎年発表しており、市区町村別の外国人住民比率を把握できる。このほか、外国人に関する統計には、国勢調査や出入国在留管理庁の在留外国人統計がある。定義などの違いにより、各統計の数値には若干の差異がある。入管庁によると、6月末現在の在留外国人数は395万人。出入国記録などから算出した不法残留者は、7月1日現在で7万1千人いる。

(2025/11/03)

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