相続・遺言2026年03月04日 長年連れ添った夫婦のための“おしどり贈与”活用法 執筆者:北島淳

マイホームは、取得した後に長い期間所有し続けることが想定される不動産ですが、今回は、夫婦間での贈与につき、居住用不動産を贈与した場合の贈与税の配偶者控除(通称:おしどり贈与)についてご紹介します。
おしどり贈与とは、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が、配偶者に「居住用不動産」またはその取得資金を贈与した場合に利用できる贈与税の特例です。「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地もしくは土地の上に存する権利、または家屋で、国内にあるものをいいます。土地は所有権だけでなく、借地権も対象になります。贈与税の基礎控除110万円に加え、最大2,000万円まで配偶者控除が認められ、合計2,110万円まで非課税で贈与できる点が大きな特徴です。
この特例の適用には、①婚姻期間が20年以上であること(内縁・事実婚は含まれない)、②贈与財産が居住用不動産またはその取得のための金銭であること、③贈与を受けた翌年3月15日までにその不動産に居住し、引き続き居住する見込みがあること、④同一配偶者からの適用は一生に一度限りであること、という要件を満たす必要があります。なお、土地は所有権だけでなく借地権も対象となり、店舗兼住宅の場合でも居住部分については適用が可能です。申告の際には、戸籍謄本や戸籍附票、登記事項証明書、不動産評価明細書などの書類を贈与税申告書に添付しなければなりません。
おしどり贈与の大きなメリットの一つは、相続税対策になる点です。財産の多い配偶者から少ない配偶者へ、生前に非課税で財産を移転できるため、相続発生時の税負担を軽減できます。また、この特例による贈与は、相続開始前7年以内の生前贈与加算の対象外となり、一般的な贈与よりも相続税を抑える効果があります。
さらに、自宅を夫婦の共有名義にすることで、将来売却する際に、夫婦それぞれが「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」を利用できます。夫婦合計で最大6,000万円まで譲渡所得を控除することが可能となります。
賃貸に転用した場合も、不動産所得を夫婦それぞれの持分に応じて分散でき、各自が確定申告をすることで、青色申告特別控除等を活用でき、全体の税負担を軽減できますので有効です。
おしどり贈与を活用した場合、通常の相続や包括遺贈には本来かからない不動産取得税がかかります(固定資産税評価額×3~4%程度)。また、同じく登録免許税(固定資産税評価額×2%)も余分にかかります。さらに毎年の固定資産税がかかることとなりますので注意が必要です(税率は各自治体ごとに異なる可能性あり)。
「おしどり贈与」には、税金面だけではなく、残された配偶者がそのまま自宅に住み続けることができるというメリットがあります。「おしどり贈与」で配偶者に自宅の権利を移しておくことで、相続が発生したときに相続の対象となる自宅は、配偶者に「一部所有権がある不動産」になります。そのため、遺産分割の際に自宅に住み続ける権利を主張できます。2018年の民法改正で「配偶者居住権」が創設され、終身あるいは一定期間(最低6か月)自宅に住み続けることができるようになりました。この権利は亡くなった配偶者の遺言か、相続人全員の遺産分割協議で設定できます。
例えば、亡くなった人が夫で、配偶者が後妻、相続人に前妻との子がいる場合、夫名義の自宅に後妻が住み続けていても、相続の結果、その家の所有者が前妻の子になることがあります。このとき後妻が配偶者居住権を主張していないと、将来、立ち退きや売却を求められたり、家賃の支払いを求められたりするおそれがあります。また、相続財産の大部分が自宅で預貯金が少ない場合、後妻が家をそのまま相続すると生活資金が不足してしまうことがあります。配偶者居住権を利用すれば、後妻は住み慣れた自宅に住み続けながら、現金などを多めに相続でき、生活の安定につながります。
おしどり贈与は、夫婦の一方に相続が発生したとしても、将来に渡り安心して自宅に住み続けるための心強い制度です。税金や手続きの注意点も理解した上で、相続税や配偶者居住権とあわせて考えることで、住まいと生活の不安を減らすことができます。メリット・デメリットを踏まえ、活用をご検討下さい。
(2026年2月執筆)
(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)
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執筆者

北島 淳きたじま じゅん
税理士(北島淳税理士事務所)
略歴・経歴
1973年福井県生まれ。南山大学大学院法学研究科修士課程修了。
理念は「税理士はお客様を成功へと導くビジネスパートナー」。
税務・会計のみに留まらず広い視野から物事を捉え、お客様の将来像を共に考え共に描く
「未来創造型コンサルティング」を得意とする。
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