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経営・総務2026年05月21日 AI時代の税理士事務所経営② AIの進化を、税理士事務所はどこまで追いかけるべきか 執筆者:大石佳明

生成AIの進化は非常に速く、税理士事務所の経営においても無視できないテーマになっています。数か月単位ではなく、場合によっては一、二週間で新しい機能や活用方法が登場し、昨日まで難しかったことが短時間でできるようになることもあります。一方で、便利だと思っていた使い方が、別のサービスや既存システムの更新によって、すぐに古くなることもあります。

このような状況の中で悩ましいのは、税理士事務所としてAIに関する情報をどこまで追いかけるべきかという点です。AIに関する情報は、セミナー、研究会、SNS、専門家の発信、システム会社からの案内など、さまざまなところから入ってきます。しかし、そのすべてを追い続けようとすると、情報収集そのものに多くの時間を取られてしまいます。AIを活用するための情報収集が、本来の業務を圧迫してしまっては本末転倒です。

重要なのは、新しい機能をすべて知ることではなく、自社の業務に影響する変化を見極めることだと考えています。たとえば、そのAI機能が顧問先への説明文作成に使えるのか、所内マニュアルの整備に役立つのか、面談記録の要約や資料依頼リストの作成に活用できるのか。あるいは、税務論点の洗い出しや、職員の確認作業の補助になるのか。こうした実務への影響を見ながら、取り入れるべきものを判断していく必要があります。

AI活用には、大きく二つの方向があります。一つは、ChatGPTなどの汎用AIを使い、自社で試行錯誤しながら業務に取り込んでいく方法です。この方法は、スピード感があり、自社の業務に合わせて柔軟に活用できます。一方で、入力する情報の管理、出力内容の正確性、職員ごとの使い方のばらつきなど、注意すべき点も多くあります。

もう一つは、会計ソフト、税務申告ソフト、業務管理システムなど、システム会社がAI機能を実装するのを待つ方法です。こちらは、既存の業務フローに組み込まれるため、操作性や安全性の面で安心感があります。ただし、実装までに時間がかかる場合もあり、自社の細かな業務に合った使い方まで対応できるとは限りません。したがって、どちらか一方を選ぶのではなく、自社で先に試す領域と、システム会社の更新を待つ領域を分けて考えることが大切です。

弊社でも、AIの活用については試行錯誤を続けています。具体的には、複数のAI研究会に所属し、日々更新されるAI関連情報を確認しています。また、Xなどで公開されている情報も参考にしながら、AIに詳しい税理士の先生方と定期的に情報交換を行っています。

もっとも、得られた情報をすべて業務に取り込むわけではありません。その中から、自社の業務に合いそうなもの、職員の負担軽減や顧問先対応の品質向上につながりそうなものを選別しています。そのうえで、取り込みたいものについては、AI専門のコンサルタントに相談し、弊社の業務に合ったプロンプトや設定を整えてもらっています。AIは便利な道具ではありますが、事務所ごとの業務フロー、顧問先の属性、職員の習熟度に合わせて調整しなければ、継続的な活用にはつながりにくいと感じています。

また、AI活用は、詳しい職員が個人的に使っているだけでは事務所全体の力になりません。どの業務でAIを使ってよいのか、入力してよい情報と避けるべき情報は何か、AIが作成した文章を誰が確認するのか、顧問先に出す前にどのようなチェックを行うのか。このようなルールを整えなければ、効率化どころか、品質のばらつきや情報管理上のリスクにつながる可能性もあります。

AI時代の税理士事務所経営において重要なのは、最新情報をすべて追いかけることではありません。自社の業務に必要な変化を見極め、小さく試し、必要なものだけを仕組みとして定着させることです。AIに振り回されるのではなく、AIをどのように業務品質の向上や顧問先への価値提供につなげるのか。その経営判断こそが、これからの税理士事務所に問われているのだと思います。

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(2026年4月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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執筆者

大石 佳明おおいし よしあき

税理士

略歴・経歴

税理士・スタートアップサポート税理士法人代表・AI業務改善コンサル

中小企業・個人事業主の税務顧問、法人決算、所得税確定申告、相続税申告、創業支援、融資支援、経営改善支援などに従事。税務申告業務に加え、月次決算を活用した経営数値の把握、資金繰り改善、金融機関対応など、経営者の意思決定を支える支援を行っている。
また、税理士事務所におけるAI活用や業務効率化にも取り組み、複数のAI研究会に所属。生成AIを活用した所内業務の改善、顧問先対応文書の作成支援、業務マニュアル整備、情報発信業務の効率化などを実践している。
難しい税務・会計の内容を、中小企業の経営者に分かりやすく伝えることを重視している。

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