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解説記事2003年10月27日 【会計実務解説】 実務対応報告第11号「外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理に関する実務上の取扱い」の解説(2003年10月27日号・№040)

実務解説
実務対応報告第11号「外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理に関する実務上の取扱い」の解説

企業会計基準委員会 専門研究員   蓮井明博




 企業会計基準委員会(ASB)は、平成15年9月22日に、実務対応報告第11号「外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理に関する実務上の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表した。本稿では、本実務対応報告の概要について解説する。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見である。


Ⅰ はじめに

 新株予約権付社債の会計処理については、平成14年3月29日に、実務対応報告第1号「新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第1号」という。)が公表されている。
 しかしながら、外貨建転換社債型新株予約権付社債の円換算については、企業会計審議会が平成11年10月22日付で改訂した「外貨建取引等会計処理基準」(以下「外貨基準」という。)及び日本公認会計士協会が平成12年3月31日付で改正した会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下「外貨建実務指針」という。)1をどのように適用すべきかが必ずしも明確ではなかった。このため、本実務対応報告により、その実務上の取扱いを明確にすることとしたものである。


Ⅱ 検討の経緯等

 平成13年改正商法(平成13年法律第128号)により、新株予約権、新株予約権付社債の制度が創設され、これに伴い、改正前の商法(以下「旧商法」という。)の新株引受権付社債、転換社債は、この新たな規定の枠組みの中に取り込まれることとなった。
【新株引受権付社債等と新株予約権付社債の関係】
旧商法
平成13年改正商法
新株引受権付社債(分離型)新株予約権と社債を同時に募集し、同時に割当てたものとして扱う
新株引受権付社債(非分離型)※
新株予約権付社債(商法341条ノ3第1項第7号及び同8号)
転換社債
※代用払込可の場合


1 なお、後述するように、日本公認会計士協会から、平成15年9月22日付で「会計制度委員会報告第4号『外貨建取引等の会計処理に関する実務指針』の改正について」(以下「改正外貨建実務指針」という。)が公表されている。



 これに対応して実務対応報告第1号が公表された他、日本公認会計士協会により、会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正(文言の修正)が行われた。その際、外貨建実務指針についても同様の修正が必要と考えられたが、外貨建転換社債型新株予約権付社債の円換算に関する発行者側の処理については、単なる文言の修正にとどまらず、内容の検討も必要ではないかとの指摘があった。
 このため、企業会計基準委員会では、平成15年2月28日開催の委員会で審議を行った結果、「外貨建転換社債型新株予約権付社債の換算」に関する部分(発行者側の処理)については企業会計基準委員会が検討を行うこととした。それ以外の部分については、外貨建実務指針のメンテナンスの範囲であるため、日本公認会計士協会が対応している(脚注1参照)。


Ⅲ 本実務対応報告における取扱いの範囲

 最初に、新株予約権付社債の分類と会計処理の概略(実務対応報告第1号 Q2 A2、3参照)を確認した上で、本実務対応報告の取扱いの範囲について触れておきたい。

1 新株予約権付社債の分類と会計処理
(1)代用払込が認められる新株予約権付社債
  これは、新株予約権を行使しようとする新株予約権者から請求があったときに新株予約権付社債の全額を償還することに代えて権利行使に際し払い込むべき額の全額につき代用払込があったものとする旨(商法第341条ノ3第1項第7号)を決議した新株予約権付社債をいう。この新株予約権付社債は従来の非分離型新株引受権付社債とその経済的実質が同一であると考えられることから、従来の非分離型新株引受権付社債に準じ、区分法により会計処理することとされている。
(2)代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債
  これは、新株予約権の行使があったときに代用払込の請求があったものとみなす旨(商法第341条ノ3第1項第8号)を決議した新株予約権付社債をいい、さらに以下に分類される。
① 代用払込の請求があったとみなすもので、従来の転換社債と経済的実質が同一であると考えられないもの
② 代用払込の請求があったとみなすもので、従来の転換社債と経済的実質が同一であると考えられるもの(以下「転換社債型新株予約権付社債」という。)
  上記①は、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在しえないことが予め社債要項等で明確にされていないため、従来の転換社債と経済的実質が同一であると考えられないものをいう。これについては、(1)の代用払込が認められる新株予約権付社債と同様に、区分法により会計処理することとされている。
  これに対し、②は、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在しえないことが明確にされるように、以下のいずれかの事項が予め社債要項等に記載されており、従来の転換社債と経済的実質が同一であると考えられるものである。これらの条件に該当する新株予約権付社債については、一括法又は区分法により会計処理することとされている。
・新株予約権について消却事由を定めておらず、かつ、社債についても繰上償還を定めていないこと
・新株予約権について消却事由を定めている場合には、新株予約権が消却されたときに社債も同時に償還されること、かつ、社債について繰上償還を定めている場合には、社債が繰上償還されたときに新株予約権も同時に消却されること

【新株予約権付社債の会計処理の概要】
平成13年改正商法
会計処理
新株予約権付社債
(商法341条ノ3第1項第7号及び同8号)
(1)代用払込が認められる(7号)新株予約権付社債
区分法
(2)-①
代用払込の請求があったとみなす(8号)もののうち、従来の転換社債と経済的実質が同一であると考えられない新株予約権付社債
区分法
(2)-②
代用払込の請求があったとみなす(8号)もので、従来の転換社債と経済的実質が同一であると考えられる新株予約権付社債(転換社債型新株予約権付社債)
区分法
又は
一括法


 なお、これらの新株予約権付社債については、社債の発行価額(商法第341条ノ3第1項第1号)と新株予約権の行使に際して払い込むべき金額(商法第341条ノ13第1項)が同額でなければならず(商法第341条ノ3第2項)、また、通常の新株予約権の行使と同様に、新株予約権の発行価額と新株予約権の行使に際して払い込むべき金額の合計が新株の発行価額とみなされる(商法第341条ノ15第5項、商法第280条ノ20第4項)。

2 本実務対応報告の取扱いの範囲
 本実務対応報告は、上記のうち、外貨建ての転換社債型新株予約権付社債であって、会計処理に一括法が適用されるものを取扱いの範囲としている。これは、現状における外貨建新株予約権付社債の発行状況等を勘案した上で、実務上、必要と考えられるもののみを採り上げたものと思われる。
 この点について、本実務対応報告では、転換社債型新株予約権付社債に関する発行者側の会計処理については、一括法又は区分法が適用されるが、実務上は一括法が適用されている例が大半であると思われるため、一括法の適用を前提にしているとされている。
 そして、今回、本実務対応報告の取扱いの範囲とされなかったものについては、今後、外貨建転換社債型新株予約権付社債について、発行条件が大きく異なる事例2や、区分法が適用される事例などが多く見受けられるようになった場合、また、外貨建転換社債型新株予約権付社債以外の外貨建新株予約権付社債が多く見受けられるようになった場合などで、その会計処理を検討する必要が生じた場合には、それらを前提とした実務上の取扱いを明らかにすることもあるとされている。


2 例えば、新株予約権の行使に際して払い込むべき金額(行使価額)が外貨建の場合や、平価発行ではなく割引発行や打歩発行の場合が考えられる。


Ⅳ 外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側における円換算


1 発行者側における円換算


 本実務対応報告では、外貨建転換社債型新株予約権付社債で、会計処理に一括法が適用される場合、発行者側における円貨への換算は以下のように行うことが適当と考えられるとしている。
(1)発行時
  発行時の円貨への換算は、発行時の為替相場による。ただし、発行による入金外貨額に本邦通貨による為替予約等が締結され、振当処理を採用している場合には、為替予約等により確定した円貨額により記録する。
(2)決算時
  新株予約権行使期間満了前における決算時の円貨への換算は、発行時に記帳された為替相場による。ただし、行使の可能性がないと認められるものについては、決算時の為替相場による円換算額を付する。行使の可能性がないと認められるか否かは、外貨建実務指針第22項に準じて判断される。また、新株予約権行使期間満了後における円貨への換算は、決算時の為替相場による。
(3)新株予約権行使時
  新株予約権行使時の円貨への換算は、発行時に記帳された為替相場による。

2 考え方
 これは、転換社債型新株予約権付社債が、従来の転換社債と経済的実質が同一と考えられるため、外貨建転換社債型新株予約権付社債の円換算の処理は、従来の外貨建転換社債の円換算の処理(外貨基準 一2(1)②ただし書き及び外貨建実務指針第20項参照)と同様に行うことが適当であるとの考えによるものである。
 従来の外貨建転換社債の発行時及び転換時の会計処理は、転換社債の転換による新株発行の法律関係をどのように解するかによって異なり、現物出資説、相殺説、転換社債の発行自体を潜在的株式の発行と解する説等があるとされている(外貨建実務指針第63項参照)。この点、旧商法では、転換により発行する株式の発行価額(旧商法第341条ノ7)は、転換社債の発行価額とする(旧商法第222条ノ3)とされていたため、これにより、転換社債の発行自体を潜在的株式の発行、すなわち、転換権の行使を停止条件とする特殊な株式発行の一形態と解し、転換請求期間満了前の自社発行の転換社債は、原則として発行時の為替相場による円換算額を付すという解釈がなされていた(外貨基準 一2(1)②ただし書き及び外貨建実務指針第63項参照)。
 本実務対応報告では、新株予約権付社債制度が創設された平成13年の改正商法においては、上記の旧商法第222条ノ3の規定は削除されているが、新設された新株予約権付社債に関する規定の中で実質的に同様の内容が踏襲されているものと解される(Ⅲ 1なお書き参照)としている。そして、現物出資や相殺と解する考え方についても一定の合理性は認められるとしつつも、新株予約権付社債制度の創設によって、円換算の考え方を変更するほどの法律上の改正はないものと解し、従来の外貨建転換社債の換算方法を踏襲することが妥当であるとしている。
【外貨建新株予約権付社債等の発行者側における会計処理】
平成13年改正商法
会計処理
決算時の換算方法
新株予約権と社債を同時に割当て同時に募集
区分法
社債CR
新株予約権HR
(改正外貨建実務指針第19-6項)
新株予約権付社債(1)代用払込が認められる(7号)新株予約権付社債
区分法
(取り扱われていない)
(2)-①
代用払込の請求があったとみなす(8号)もののうち、従来の転換社債と経済的実質が同一であると考えられない新株予約権付社債
区分法
(2)-②
転換社債型新株予約権付社債
区分法
又は
一括法
HR(発行時の為替相場)(本実務対応報告)


Ⅴ 適用時期

 本実務対応報告は、公表日以後に終了する中間会計期間又は事業年度から適用するとされている。
 なお、平成13年改正商法は、平成14年4月1日から施行されているため、公表日前に発行された外貨建転換社債型新株予約権付社債につき、公表日を含む事業年度開始前に本実務対応報告において示されている会計処理と異なる会計処理が行われている場合、それがどのように取り扱われているかが問題になりうる。もっとも、外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行件数は限られていること、また、本実務対応報告における会計処理は従来の外貨建転換社債と同様の取扱いとなっていることなどから、異なる会計処理が行われている場合の取扱いについては、特に示されていないものと思われる。

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