解説記事2004年05月24日 【解説】 「信託業」への新規参入が可能に-新信託業法案の解説(2004年5月24日号・№067)
解説
「信託業」への新規参入が可能に-新信託業法案の解説
(社)日本経済団体連合会経済本部税制グループ長 金融審議会専門委員・信託に関するワーキング・グループ委員
阿部泰久
さる3月5日、「信託業法案」が閣議決定され、同日、国会に提出された。これは、現行信託業法の全部を改正し、信託の引き受けの対象となる財産の制限を撤廃し、信託銀行のみに限られていた信託業を広く一般事業会社等に開放するものであり、全く新しい信託ビジネスの世界を開くものである。現時点で国会の審議予定は定かではないが、今国会で成立すれば本年10月1日からの施行が予定されている。また、平成16年度税制改正では、新信託業法の施行を見通して外国信託会社等に関する規定が整備済みである。
そこで、本稿では、信託業への新規参入を中心に、新信託業法案の概要を紹介する。
1 信託業法改正の経緯
信託業法の改正作業は、平成14年6月から金融業に関する制度問題を検討する金融審議会金融分科会第二部会の中に「信託に関するワーキング・グループ(座長 神田秀樹東京大学教授)」を設置して開始され、法改正の基本的内容を平成15年7月28日に「信託業のあり方に関する中間報告書」として取りまとめた。
当初は、昨年秋の臨時国会への法案提出が予定されていたが、解散・総選挙により頓挫し、改めて今通常国会への提出、成立を目指すものである。
筆者は同ワーキング・グループに新規参入者の立場を代表するために参加し、新規参入側のニーズの説明に当たるとともに、具体的な制度設計について金融庁総務企画局信用課(後に信託法令準備室)と協議する機会を得たが、本稿中、意見にわたる部分はあくまでも私見であることをお断りしておく。
2 信託業法改正の背景
大正11年に制定された現行信託業法の趣旨は、当時乱立していた信託業者を取り締まり、免許制により信用力のある健全な業者のみが信託業を営めるようにすることにあった。さらに、業界の淘汰と「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(兼営法)」の制定(昭和18年)を経て、第二次世界大戦後には、信託業法による免許を受けた信託会社はすべて消滅し、信託業は兼営法の認可による信託銀行のみが営むこととなった。その後、外国銀行系信託銀行の参入、都市銀行・証券会社の業態別子会社形式による参入、地域金融機関の信託兼営が認められ、また、投資信託法、資産流動化法、担保附社債信託法等の個別法が整備され、信託の担い手が拡げられてきたが、一般事業会社等が信託業を営むことはできないとされてきた。
また、現行信託業法(第4条)は、信託の引き受けの対象となる財産=受託可能財産を金銭、有価証券、金銭債権、動産、土地及びその定著物、地上権及び土地の賃借権に限定しているが、たとえば特許権等の知的財産権を企業グループ内で信託することで集中的に管理・処分したり、あるいはコンテンツを信託し、その信託受益権を販売することで資金調達をする可能性などが論じられてきた。
そもそも信託は、委託者が第三者(受託者)に財産権を移転し、受託者は一の目的に従い受益者のために信託財産を管理・処分する制度であり、財産の所有権と、当該財産から生じる経済利益の帰属を分離できることに特徴がある。さらに、信託には、管理・処分機能に加えて、財産を信託受益権に転換することで小口化・流動化させる転換機能や、信託財産を委託者・受託者の倒産の影響から遮断できる倒産隔離機能があり、これらの特徴・機能を組み合わせるならば、様々な活用形態が可能である。現にアメリカやイギリス等では多様な担い手により、広範な信託ビジネスが展開されている。
3 新信託業法の概要
新しい信託業法では、このようなニーズに対応し、受託可能財産の制限を撤廃し、金融機関以外の一般事業会社等が信託業に参入することを前提に、受益者保護等のために必要な規制が置かれている。
(1)受託可能財産の拡大
信託の引き受けの対象となる財産の範囲の制限は完全に撤廃され、現行法第4条に相当する受託可能財産に関する規定は置かれていない。そのため、信託に関する一般法である信託法第1条の規定に従い、財産権一般が信託財産の対象となる。ただし、信託の性質上、具体的に分別管理することができるものでなければならない。
また、財産権一般とすることで客観的な評価が困難である財産も対象となり得るが、適切な情報開示や説明義務、不当勧誘の禁止等の行為規制(後述)により対応することとし、一律に規制するとの考えには立っていない。
(2)信託会社と管理型信託会社
信託業を営む者は、「信託業」すなわち「信託の引受けを行う営業」を行う「信託会社」と、委託者等からの指図により受託財産の管理または処分のみを行うか、あるいは、信託財産について保存行為または財産の性質を変えない範囲内の利用行為・改良行為のみを行う「管理型信託業」にその業務が限られる「管理型信託会社」に分けられる(法2①~④)。
信託業については、「内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ営むことができない(法3)」として免許制を維持したが、管理型信託業は「内閣総理大臣の登録(法7①)」により可能である。なお、この登録は3年ごとに更新が必要である(法7②)。
信託会社ならびに管理型信託会社は株式会社でなければならず、また、最低資本金・純資産額について政令による額を満たすことが必要である(法5②、10①)。政令は新法成立後公布されることになるが、今のところ最低資本金額として、信託会社は1億円、管理型信託会社は5,000万円が予定されている。
(3)信託会社・管理型信託会社に対する規制
商号規制は従前どおり、誤認防止を図るため信託業を営む者は商号中に「信託」の文字を使わなければならず、信託業を営まない者が商号中に「信託」の文字を使うことはできない(法14①②)。ただし、「管理型信託会社」と表示させるものではない。また、名義貸しの禁止、取締役の兼職制限、主要株主規制(届出制等)等の規定が置かれている。
信託会社は、信託業、信託契約代理店、信託受益権販売業及び信託財産と同種の財産で信託財産と同様の管理方法による財産の管理のほか、他業は禁止される(法21①)。ただし、その行う信託業務に関連する業務を行うことは承認を得て可能であるが、従たるものに限られる(法21②)。すなわち、事業会社の本体が信託業に参入することはできず、子会社を設立して参入することになる。
受託財産保護に関する規制として、現行法の国債供託義務に代えて、一般的な営業保証金の供託義務を課すこととされている(法11)。その額は政令で定められるが、他の金融業法(保険業法、投資顧問業法等)とのバランスや受益者保護の視点から、運用型では2500万円(認可投資顧問業者並み)、管理型では1000万円が想定されている。ただし、投資顧問業等とは異なり支店ごとに供託義務を課すものではない。
信託業に関する「行為規制」として、信託引き受けに係る行為準則(断定的判断の提供、特別の利益・損失補てん等の禁止、適合性原則等)(法24)、信託契約の内容の説明義務(法25)、信託契約時の書面交付義務等(法26)の販売勧誘ルール、信託財産に係る行為準則(通常の条件と異なる条件での取引の禁止等)(法29)、信託財産の状況に関する受益者への報告義務(法27)、分別管理義務、取引における忠実義務(法28)等が課されている。自己と信託財産との取引については、信託契約に内容を記載する等により例外的に可能とされる(法29③)。
また、業務・財産についての説明書類の営業所への備置と公衆縦覧、報告徴求権、立入検査権、業務改善命令権、営業報告書の提出義務、業務方法書・合併等の認可などが規定されている。
信託業務を第三者に委託することについては、全部委託は禁止され、一部委託についても、①委託する旨及び委託先の明記(未確定の場合は選定基準・選定手続)、②適格な業務遂行能力、③分別管理能力の全ての要件を満たすことが必要である(法22)。
(4)グループ内信託会社とTLO
上記の信託会社、管理型信託会社の重要な例外として、①同一の会社集団に属する者の間における信託についての特例(法51)、および、②特定大学技術移転事業に係る信託に関する特例(法52)が置かれている。
①グループ内信託会社
「同一の会社集団に属する者の間における信託」とは、親会社とその子会社(外国子会社も含む)からなる企業グループ内の財産の受託のみを行う信託会社、すなわち、グループ内信託会社(法令上の用語ではない)である。
グループ内信託会社は、内閣総理大臣への届出のみにより設立でき、最低資本金規制等は課されないほか、グループ内自治を重んじ、グループ内信託かどうかを確認するための報告徴求権、立入検査権以外の行為規制や、監督規制は課されない。ただし、例えば、集めた受託財産をSPCに移したり匿名組合スキームを活用することにより外部から資金調達をするような脱法行為は禁止されている。
グループ内信託会社は、たとえばグループ各社の有する知的財産権を一元的に管理し、他社との間でクロスライセンス契約を行うなどの活用ニーズがある他、企業年金をグループ内においた信託会社で直接運用するなどの活用が考えられている。
②TLOの特例
特定大学技術移転事業=TLO(Technology Licensing Organization)とは、大学や公立研究機関の技術研究成果を民間に移転させるための制度であり、「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」により、事業計画を文部科学技術大臣または経済産業大臣が認可することで設立される。
TLOは、内閣総理大臣の登録を受けて信託業を行うことができ、大学内で生み出された特許権を信託し、民間企業に実施許諾権を与えて得た対価を信託受益権として発明者に還元したり、研究資金の調達に活用できる。
TLOは事業計画承認後、業務運営をモニタリングし、改善を求めていくための規定が不十分であるため、商号規制、役員の兼職制限等を除き、管理型信託会社並びの扱いとされる。
また、TLOはどの形態の法人であるかは問われないため、株式会社のみならず財団法人等の形態によることも可能であり、最低資本金規制も当然、適用されない。
(5)信託契約代理店・信託受益権販売業者
信託サービスの利用者の窓口を拡大するために、「信託契約代理店(法67以下)」ならびに「信託受益権販売業者(法86以下)」の制度が創設される。
①信託契約代理店
信託契約代理店は、信託会社(所属信託会社)の委託を受けて、信託契約の締結の代理または媒介を行う者である。ただし、信託受益権が有価証券又はみなし有価証券で受託者がその発行者となる場合(貸付信託の場合等)は除かれている。
信託契約代理店は登録制であり、法人のみならず個人も営むことができる。所属信託会社制とし代理店の責任は原則として所属信託会社が負う。信託契約の内容の説明義務、信託引き受けに係る行為準則、標識の掲示等の義務を負う。
②信託受益間販売業者
信託受益権販売業者は、信託受益権の販売またはその代理・媒介を行う者である。登録制とし、3年ごとの更新を要する。法人のみならず個人も営むことができる。営業保証金の供託(1000万円を予定)、信託受益権の内容の説明義務、信託受益権の内容を記載した正面の交付義務、信託引き受けに係る行為準則、帳簿の作成・保存義務、標識の掲示などが課される。
管理型信託会社が信託受益権販売業者を自ら兼ねることによって、信託財産を信託受益権に転換、小口化して広く流通させることにより、いわゆる流動化型信託が可能となる。
(6)その他
新信託業法により、信託業が広く一般事業会社に開放されることとなるが、元本補填付信託や現行の併営業務は、引き続き兼営法上の兼営金融機関(信託銀行)のみが行うことができる。
また、外国信託業者(法53以下)の規定が整備されるほか、信託子会社の保有に関し銀行法、保険業法の所要の改正が行われ、新信託業法により使命を終えることとなる特債法を廃止するなどの改正が行われる。
「信託業」への新規参入が可能に-新信託業法案の解説
(社)日本経済団体連合会経済本部税制グループ長 金融審議会専門委員・信託に関するワーキング・グループ委員
阿部泰久
さる3月5日、「信託業法案」が閣議決定され、同日、国会に提出された。これは、現行信託業法の全部を改正し、信託の引き受けの対象となる財産の制限を撤廃し、信託銀行のみに限られていた信託業を広く一般事業会社等に開放するものであり、全く新しい信託ビジネスの世界を開くものである。現時点で国会の審議予定は定かではないが、今国会で成立すれば本年10月1日からの施行が予定されている。また、平成16年度税制改正では、新信託業法の施行を見通して外国信託会社等に関する規定が整備済みである。
そこで、本稿では、信託業への新規参入を中心に、新信託業法案の概要を紹介する。
1 信託業法改正の経緯
信託業法の改正作業は、平成14年6月から金融業に関する制度問題を検討する金融審議会金融分科会第二部会の中に「信託に関するワーキング・グループ(座長 神田秀樹東京大学教授)」を設置して開始され、法改正の基本的内容を平成15年7月28日に「信託業のあり方に関する中間報告書」として取りまとめた。
当初は、昨年秋の臨時国会への法案提出が予定されていたが、解散・総選挙により頓挫し、改めて今通常国会への提出、成立を目指すものである。
筆者は同ワーキング・グループに新規参入者の立場を代表するために参加し、新規参入側のニーズの説明に当たるとともに、具体的な制度設計について金融庁総務企画局信用課(後に信託法令準備室)と協議する機会を得たが、本稿中、意見にわたる部分はあくまでも私見であることをお断りしておく。
2 信託業法改正の背景
大正11年に制定された現行信託業法の趣旨は、当時乱立していた信託業者を取り締まり、免許制により信用力のある健全な業者のみが信託業を営めるようにすることにあった。さらに、業界の淘汰と「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(兼営法)」の制定(昭和18年)を経て、第二次世界大戦後には、信託業法による免許を受けた信託会社はすべて消滅し、信託業は兼営法の認可による信託銀行のみが営むこととなった。その後、外国銀行系信託銀行の参入、都市銀行・証券会社の業態別子会社形式による参入、地域金融機関の信託兼営が認められ、また、投資信託法、資産流動化法、担保附社債信託法等の個別法が整備され、信託の担い手が拡げられてきたが、一般事業会社等が信託業を営むことはできないとされてきた。
また、現行信託業法(第4条)は、信託の引き受けの対象となる財産=受託可能財産を金銭、有価証券、金銭債権、動産、土地及びその定著物、地上権及び土地の賃借権に限定しているが、たとえば特許権等の知的財産権を企業グループ内で信託することで集中的に管理・処分したり、あるいはコンテンツを信託し、その信託受益権を販売することで資金調達をする可能性などが論じられてきた。
そもそも信託は、委託者が第三者(受託者)に財産権を移転し、受託者は一の目的に従い受益者のために信託財産を管理・処分する制度であり、財産の所有権と、当該財産から生じる経済利益の帰属を分離できることに特徴がある。さらに、信託には、管理・処分機能に加えて、財産を信託受益権に転換することで小口化・流動化させる転換機能や、信託財産を委託者・受託者の倒産の影響から遮断できる倒産隔離機能があり、これらの特徴・機能を組み合わせるならば、様々な活用形態が可能である。現にアメリカやイギリス等では多様な担い手により、広範な信託ビジネスが展開されている。
3 新信託業法の概要
新しい信託業法では、このようなニーズに対応し、受託可能財産の制限を撤廃し、金融機関以外の一般事業会社等が信託業に参入することを前提に、受益者保護等のために必要な規制が置かれている。
(1)受託可能財産の拡大
信託の引き受けの対象となる財産の範囲の制限は完全に撤廃され、現行法第4条に相当する受託可能財産に関する規定は置かれていない。そのため、信託に関する一般法である信託法第1条の規定に従い、財産権一般が信託財産の対象となる。ただし、信託の性質上、具体的に分別管理することができるものでなければならない。
また、財産権一般とすることで客観的な評価が困難である財産も対象となり得るが、適切な情報開示や説明義務、不当勧誘の禁止等の行為規制(後述)により対応することとし、一律に規制するとの考えには立っていない。
(2)信託会社と管理型信託会社
信託業を営む者は、「信託業」すなわち「信託の引受けを行う営業」を行う「信託会社」と、委託者等からの指図により受託財産の管理または処分のみを行うか、あるいは、信託財産について保存行為または財産の性質を変えない範囲内の利用行為・改良行為のみを行う「管理型信託業」にその業務が限られる「管理型信託会社」に分けられる(法2①~④)。
信託業については、「内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ営むことができない(法3)」として免許制を維持したが、管理型信託業は「内閣総理大臣の登録(法7①)」により可能である。なお、この登録は3年ごとに更新が必要である(法7②)。
信託会社ならびに管理型信託会社は株式会社でなければならず、また、最低資本金・純資産額について政令による額を満たすことが必要である(法5②、10①)。政令は新法成立後公布されることになるが、今のところ最低資本金額として、信託会社は1億円、管理型信託会社は5,000万円が予定されている。
(3)信託会社・管理型信託会社に対する規制
商号規制は従前どおり、誤認防止を図るため信託業を営む者は商号中に「信託」の文字を使わなければならず、信託業を営まない者が商号中に「信託」の文字を使うことはできない(法14①②)。ただし、「管理型信託会社」と表示させるものではない。また、名義貸しの禁止、取締役の兼職制限、主要株主規制(届出制等)等の規定が置かれている。
信託会社は、信託業、信託契約代理店、信託受益権販売業及び信託財産と同種の財産で信託財産と同様の管理方法による財産の管理のほか、他業は禁止される(法21①)。ただし、その行う信託業務に関連する業務を行うことは承認を得て可能であるが、従たるものに限られる(法21②)。すなわち、事業会社の本体が信託業に参入することはできず、子会社を設立して参入することになる。
受託財産保護に関する規制として、現行法の国債供託義務に代えて、一般的な営業保証金の供託義務を課すこととされている(法11)。その額は政令で定められるが、他の金融業法(保険業法、投資顧問業法等)とのバランスや受益者保護の視点から、運用型では2500万円(認可投資顧問業者並み)、管理型では1000万円が想定されている。ただし、投資顧問業等とは異なり支店ごとに供託義務を課すものではない。
信託業に関する「行為規制」として、信託引き受けに係る行為準則(断定的判断の提供、特別の利益・損失補てん等の禁止、適合性原則等)(法24)、信託契約の内容の説明義務(法25)、信託契約時の書面交付義務等(法26)の販売勧誘ルール、信託財産に係る行為準則(通常の条件と異なる条件での取引の禁止等)(法29)、信託財産の状況に関する受益者への報告義務(法27)、分別管理義務、取引における忠実義務(法28)等が課されている。自己と信託財産との取引については、信託契約に内容を記載する等により例外的に可能とされる(法29③)。
また、業務・財産についての説明書類の営業所への備置と公衆縦覧、報告徴求権、立入検査権、業務改善命令権、営業報告書の提出義務、業務方法書・合併等の認可などが規定されている。
信託業務を第三者に委託することについては、全部委託は禁止され、一部委託についても、①委託する旨及び委託先の明記(未確定の場合は選定基準・選定手続)、②適格な業務遂行能力、③分別管理能力の全ての要件を満たすことが必要である(法22)。
(4)グループ内信託会社とTLO
上記の信託会社、管理型信託会社の重要な例外として、①同一の会社集団に属する者の間における信託についての特例(法51)、および、②特定大学技術移転事業に係る信託に関する特例(法52)が置かれている。
①グループ内信託会社
「同一の会社集団に属する者の間における信託」とは、親会社とその子会社(外国子会社も含む)からなる企業グループ内の財産の受託のみを行う信託会社、すなわち、グループ内信託会社(法令上の用語ではない)である。
グループ内信託会社は、内閣総理大臣への届出のみにより設立でき、最低資本金規制等は課されないほか、グループ内自治を重んじ、グループ内信託かどうかを確認するための報告徴求権、立入検査権以外の行為規制や、監督規制は課されない。ただし、例えば、集めた受託財産をSPCに移したり匿名組合スキームを活用することにより外部から資金調達をするような脱法行為は禁止されている。
グループ内信託会社は、たとえばグループ各社の有する知的財産権を一元的に管理し、他社との間でクロスライセンス契約を行うなどの活用ニーズがある他、企業年金をグループ内においた信託会社で直接運用するなどの活用が考えられている。
②TLOの特例
特定大学技術移転事業=TLO(Technology Licensing Organization)とは、大学や公立研究機関の技術研究成果を民間に移転させるための制度であり、「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」により、事業計画を文部科学技術大臣または経済産業大臣が認可することで設立される。
TLOは、内閣総理大臣の登録を受けて信託業を行うことができ、大学内で生み出された特許権を信託し、民間企業に実施許諾権を与えて得た対価を信託受益権として発明者に還元したり、研究資金の調達に活用できる。
TLOは事業計画承認後、業務運営をモニタリングし、改善を求めていくための規定が不十分であるため、商号規制、役員の兼職制限等を除き、管理型信託会社並びの扱いとされる。
また、TLOはどの形態の法人であるかは問われないため、株式会社のみならず財団法人等の形態によることも可能であり、最低資本金規制も当然、適用されない。
(5)信託契約代理店・信託受益権販売業者
信託サービスの利用者の窓口を拡大するために、「信託契約代理店(法67以下)」ならびに「信託受益権販売業者(法86以下)」の制度が創設される。
①信託契約代理店
信託契約代理店は、信託会社(所属信託会社)の委託を受けて、信託契約の締結の代理または媒介を行う者である。ただし、信託受益権が有価証券又はみなし有価証券で受託者がその発行者となる場合(貸付信託の場合等)は除かれている。
信託契約代理店は登録制であり、法人のみならず個人も営むことができる。所属信託会社制とし代理店の責任は原則として所属信託会社が負う。信託契約の内容の説明義務、信託引き受けに係る行為準則、標識の掲示等の義務を負う。
②信託受益間販売業者
信託受益権販売業者は、信託受益権の販売またはその代理・媒介を行う者である。登録制とし、3年ごとの更新を要する。法人のみならず個人も営むことができる。営業保証金の供託(1000万円を予定)、信託受益権の内容の説明義務、信託受益権の内容を記載した正面の交付義務、信託引き受けに係る行為準則、帳簿の作成・保存義務、標識の掲示などが課される。
管理型信託会社が信託受益権販売業者を自ら兼ねることによって、信託財産を信託受益権に転換、小口化して広く流通させることにより、いわゆる流動化型信託が可能となる。
(6)その他
新信託業法により、信託業が広く一般事業会社に開放されることとなるが、元本補填付信託や現行の併営業務は、引き続き兼営法上の兼営金融機関(信託銀行)のみが行うことができる。
また、外国信託業者(法53以下)の規定が整備されるほか、信託子会社の保有に関し銀行法、保険業法の所要の改正が行われ、新信託業法により使命を終えることとなる特債法を廃止するなどの改正が行われる。
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