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企業法務2026年05月18日 求職者へのセクハラに関する企業の対応 執筆者:大西隆司

1 就活セクハラに関する法改正

 男女雇用機会均等法11条及び指針では、事業主に、セクハラに関する雇用管理上必要な措置として、①セクハラに関する方針の明確化、従業員に対する周知・啓発、②相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、③発生した場合の迅速で適切な対応等を義務付けています。

 さらに、2026年10月1日の施行予定の労働施策総合推進法 、男女雇用機会均等法の改正法(令和7年法律第63号)では、事業者は、雇用する労働者による、求職者等(求人に応募する者以外にも、採用に資する活動への参加者や実習の参加者を含む)に対するセクハラについても、雇用管理上必要な措置を講じることが必要となりました(改正均等法13①)。

 以下、改正法の内容とこれを怠った場合の企業のリスクについてみていきたいと思います。

2 改正法の措置の内容

 求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止指針(改正均等法13③)によれば、事業主が雇用する労働者による性的な言動により求職者等による求職活動等が阻害されるものをいい、事業者は、以下の措置を講じなければならないとされています。

(1)まず、①求職者等に対するセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、及び労働者への周知・啓発、②行った者への厳正な対処の方針と対処の内容についての労働者への周知・啓発、③面談時間、場所、方法の指定、規則などの就職活動等に関するルールを予め明確化、労働者及び求職者等に周知・啓発の措置を行うことが必要です。

(2)また、①相談窓口をあらかじめ定め、求職者等へ周知するとともに、②相談窓口担当者が広く相談に対応し、適切に対応できるよう相談体制を整備することも必要とされます。

(3)事後の対応として、①事実関係の迅速かつ正確な確認を行うこと、事実が確認された場合に、②引き離す措置、謝罪、相談対応などの被害者に対する配慮のための措置、③懲戒その他の行為者に対する適正な措置 、及び④再発防止に向けた措置をとることが必要となります。

(4)これらの措置と併せ、①マニュアルや研修等、相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置とその周知も必要とされています。

 また、事業主は、労働者が当該事業主による求職者等からの相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として 、解雇その他不利益な取扱をしてはならないとされていますが(改正均等法13②)、労働者が事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、労働局に対して相談、紛争解決の援助の求め、調停の申請を行ったこと、調停の出頭の求めに応じたことを理由として不利益な取り扱いをされない旨の定めと、労働者への周知も必要とされています。

3 違反した場合の効果

 以上の違反は、厚生労働大臣の報告聴取、助言、指導、勧告の対象となり(改正均等法29、30)、勧告に従わなかった場合は、その旨を公表される可能性があります(改正均等法30②)。

 また、改正施行後は、損害賠償等の民事上の請求でも、これらの違反が事業主側に不利に判断されるリスクがあります。

 使用者責任(民法715①)は、労働者の行為が「事業の執行について」なされた場合に使用者も賠償責任を負うとされています。周知されていた就職活動のルール外の場所、時間等にセクハラが行われた場合、使用者側が事業の執行と関係なく行われた旨を主張することが考えられますが、この措置が不十分な場合は不利に判断される可能性があります。また、事業主として十分な措置をとっていた場合には、選任監督に注意を尽くしたとして使用者側で免責の主張をすることも考えられるところです(民715①但書)。

 雇用管理上講ずべき措置を怠っていた場合、事業主自身の信義則上の配慮義務の違反としての過失も認定されやすくなり、不法行為(民709)として賠償責任を負うリスクも増えるでしょう。

 さらに、事後の適切な措置を十分行っていない場合、求職者からこの違反による損害の拡大の主張がなされることも予想され、損害を争うのに不利な事情となるでしょう。

(2026年4月執筆)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

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執筆者

大西 隆司おおにし たかし

弁護士(なにわ法律事務所)

略歴・経歴

なにわ法律事務所URL:http://naniwa-law.com/

「大阪産業創造館 経営相談室「あきないえーど」 経営サポーター(2012年~2015年3月、2016年~2019年3月、2020年4月~)」、関西大学非常勤講師(2014年度〜2016年度)、関西大学会計専門職大学院非常勤講師(2017年度〜)、滋賀県商工会連合会 エキスパート登録(2013年~)、大阪弁護士会遺言相続センター登録弁護士、大阪弁護士会高齢者・障害者支援センター「ひまわり」支援弁護士。

著書
『特別縁故者をめぐる法律実務―類型別のポイントと書式―』(新日本法規出版、2014年)共著
『法務・税務からみた相続対策の効果とリスク』(新日本法規出版、2015年)相続対策実務研究会代表大西隆司(なにわ法律事務所)編著
『事例でみる事業承継の実務―士業間連携と対応のポイント―』(新日本法規出版、2017年)編著
『〔改訂版〕事例でみるスタンダード相続手続―士業間連携による対応方法―』(新日本法規出版、2018年)編著等
『事例でみる スタンダード債権回収手続―専門家の視点と実務対応―』(新日本法規出版、2019年)編著
『相続対策別法務文例作成マニュアル―遺言書・契約書・合意書・議事録―』(新日本法規出版、2020年)著等

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