解説記事2005年01月24日 【編集部レポート】 定期借地権の賃料を前払いした場合の税務上の取扱い(2005年1月24日号・№099)
定期借地権の賃料を前払いした場合の税務上の取扱い
~契約書により明記すれば期間配分可能へ~
国税庁は1月7日、「定期借地権の賃料の一部又は全部を前払いとして一括して授受した場合における税務上の取扱いについて」と題する文書回答を国土交通省に対して行った(原文については16頁参照)。定期借地権設定時に賃料の前払いの一時金とすることを契約で定めておけば、借地権者については前払費用として計上し、また借地権設定者については、前受収益として計上し、期間配分することが可能となっている。今回は、定期借地権の賃料を前払いした場合の税務上の取り扱いについてレポートする。
国土交通省が国税庁に意見照会
定期借地権の一時金としては、保証金と権利金とがあるが、そのほとんどは保証金方式が利用されているのが現状だ。権利金方式の場合、減価償却することが認められていないため、費用収益対応の原則からみて不合理であるとの批判が寄せられていたわけだ。
このため、今回の取扱いについては、国土交通省が平成17年度税制改正で要望していたものだが、結果的に運用上の取扱いの明確化ということで国税庁との間で昨年末から検討が進められていたもの。
具体的には、定期借地権の設定時において、借地権者(借地人)が借地権設定者(土地所有者)に対し、借地に係る契約期間の賃料の一部又は全部を一括前払いの一時金(以下、一時金)として支払うことを契約書で定めた上で行う場合には、借地権者側は「前払費用」、借地権設定者側は「前受収益」として計上し、期間配分することができる。
一時金は消費税上非課税
また、この一時金については、消費税法上非課税となる。これは、土地の課し付けの対価の前受金に該当するため。
借地権者設定者である消費税の課税事業者においては、仕入控除税額の計算に当たり、当該事業年度又は当該年分の賃料に相当する金額を当該課税期間の「資産の譲渡等の対価の額」に算入し、課税売上割合の計算を行うことになる。なお、借地権者においては、仕入税額控除の対象にはならない。
定期借地権の設定時がポイント
今回の取り扱いのポイントをまず挙げると、対象になるのは、定期借地権設定時であるという点だ。したがって既存の契約分については、今回の取扱いの対象外となる。また、権利金方式の場合で、契約を改訂する場合も今回の取扱いの対象外となる可能性が高い。ただ、権利金方式の場合であれば、すでに一度、権利金を支払っているため、実務上、わざわざ改訂するということはしないことが予想される。
一方、定期借地権における保証金方式の場合であれば、両者の合意の下、契約を解除し、再度契約を交わせば、今回の取り扱いが認められる方向だ。
通常の賃金水準を逸脱すればNG
また、前払賃料については、一部ではなく、前払賃料の全部を一括して前払いすることも可能だ。しかし、この場合であっても賃料の額が前払い方式によらない賃料水準に照らして逸脱するような水準の場合には認められないので注意が必要だ。この点、国税庁では、企業グループ内での取引について、特に注視していくことが予想される。
前払賃料を契約書で明確化する必要
今回の取り扱いが適用されるには、一時金を前払賃料として書式例(別添資料参照)に準拠した契約書によって契約し、その契約書を契約期間にわたって保管した上で、その取引の実態も契約に沿っていることが条件となる。
契約書を作成する上では、賃料の残額月払いとは区別した上で前払賃料として明確にする必要がある。
具体的には、①前払賃料として○○円を一括して支払うこと、②前払賃料は、契約期間にわたって賃料の一部に均等に充当する、③契約期間満了時において、前払賃料として一時金の支払いがあったことを根拠とする借地権の消滅の対価に相当する金銭の授受は行わない、④借地権の存続期間満了前に契約を解除する場合には、前払賃料のうち契約期間の残余期間に充当されるべき金額を返還するといったことなどの記載が求められている。③については保証金との違い、④は権利金との違いを明確にするという趣旨である。
固定資産税相当分とする契約も可能
また、別途定める賃料の項目では、「賃料の額から前払賃料の月額換算額を減じた残余の額を・・・支払う」旨を明記する必要があるが、これについては、固定資産税等の月額分に応じて定めることも可能としている。
土地所有者にとってみれば、一時金をもらった上で固定資産税相当分については、実質、借地人が払うという便利な契約とすることもできるわけだ。
相続対策にも活用OK
国土交通省では、今回の取扱いの明確化により、現行の権利金方式のデメリットを解消することが可能としており、また、戸建て住宅やマンションの定期借地権に効果を発揮するのではといった期待を寄せている。ただし、借地人にとっての一時金は、地代の前払いであり、資産の取得には該当せず、当該資金部分について住宅ローン減税の適用は受けることはできないので要注意だ。
また、相続税対策にも役立ちそうだ。例えば、相続税を支払うための資金を確保することから土地の切り売りするといったことが行われているが、一時金を前払いとして受け取れば、これを元に相続税を支払うこともでき、定期借地権期間満了後には土地も返還されることになる。
~契約書により明記すれば期間配分可能へ~
国税庁は1月7日、「定期借地権の賃料の一部又は全部を前払いとして一括して授受した場合における税務上の取扱いについて」と題する文書回答を国土交通省に対して行った(原文については16頁参照)。定期借地権設定時に賃料の前払いの一時金とすることを契約で定めておけば、借地権者については前払費用として計上し、また借地権設定者については、前受収益として計上し、期間配分することが可能となっている。今回は、定期借地権の賃料を前払いした場合の税務上の取り扱いについてレポートする。
国土交通省が国税庁に意見照会
定期借地権の一時金としては、保証金と権利金とがあるが、そのほとんどは保証金方式が利用されているのが現状だ。権利金方式の場合、減価償却することが認められていないため、費用収益対応の原則からみて不合理であるとの批判が寄せられていたわけだ。
このため、今回の取扱いについては、国土交通省が平成17年度税制改正で要望していたものだが、結果的に運用上の取扱いの明確化ということで国税庁との間で昨年末から検討が進められていたもの。
具体的には、定期借地権の設定時において、借地権者(借地人)が借地権設定者(土地所有者)に対し、借地に係る契約期間の賃料の一部又は全部を一括前払いの一時金(以下、一時金)として支払うことを契約書で定めた上で行う場合には、借地権者側は「前払費用」、借地権設定者側は「前受収益」として計上し、期間配分することができる。
一時金は消費税上非課税
また、この一時金については、消費税法上非課税となる。これは、土地の課し付けの対価の前受金に該当するため。
借地権者設定者である消費税の課税事業者においては、仕入控除税額の計算に当たり、当該事業年度又は当該年分の賃料に相当する金額を当該課税期間の「資産の譲渡等の対価の額」に算入し、課税売上割合の計算を行うことになる。なお、借地権者においては、仕入税額控除の対象にはならない。
定期借地権の設定時がポイント
今回の取り扱いのポイントをまず挙げると、対象になるのは、定期借地権設定時であるという点だ。したがって既存の契約分については、今回の取扱いの対象外となる。また、権利金方式の場合で、契約を改訂する場合も今回の取扱いの対象外となる可能性が高い。ただ、権利金方式の場合であれば、すでに一度、権利金を支払っているため、実務上、わざわざ改訂するということはしないことが予想される。
一方、定期借地権における保証金方式の場合であれば、両者の合意の下、契約を解除し、再度契約を交わせば、今回の取り扱いが認められる方向だ。
通常の賃金水準を逸脱すればNG
また、前払賃料については、一部ではなく、前払賃料の全部を一括して前払いすることも可能だ。しかし、この場合であっても賃料の額が前払い方式によらない賃料水準に照らして逸脱するような水準の場合には認められないので注意が必要だ。この点、国税庁では、企業グループ内での取引について、特に注視していくことが予想される。
前払賃料を契約書で明確化する必要
今回の取り扱いが適用されるには、一時金を前払賃料として書式例(別添資料参照)に準拠した契約書によって契約し、その契約書を契約期間にわたって保管した上で、その取引の実態も契約に沿っていることが条件となる。
契約書を作成する上では、賃料の残額月払いとは区別した上で前払賃料として明確にする必要がある。
具体的には、①前払賃料として○○円を一括して支払うこと、②前払賃料は、契約期間にわたって賃料の一部に均等に充当する、③契約期間満了時において、前払賃料として一時金の支払いがあったことを根拠とする借地権の消滅の対価に相当する金銭の授受は行わない、④借地権の存続期間満了前に契約を解除する場合には、前払賃料のうち契約期間の残余期間に充当されるべき金額を返還するといったことなどの記載が求められている。③については保証金との違い、④は権利金との違いを明確にするという趣旨である。
固定資産税相当分とする契約も可能
また、別途定める賃料の項目では、「賃料の額から前払賃料の月額換算額を減じた残余の額を・・・支払う」旨を明記する必要があるが、これについては、固定資産税等の月額分に応じて定めることも可能としている。
土地所有者にとってみれば、一時金をもらった上で固定資産税相当分については、実質、借地人が払うという便利な契約とすることもできるわけだ。
相続対策にも活用OK
国土交通省では、今回の取扱いの明確化により、現行の権利金方式のデメリットを解消することが可能としており、また、戸建て住宅やマンションの定期借地権に効果を発揮するのではといった期待を寄せている。ただし、借地人にとっての一時金は、地代の前払いであり、資産の取得には該当せず、当該資金部分について住宅ローン減税の適用は受けることはできないので要注意だ。
また、相続税対策にも役立ちそうだ。例えば、相続税を支払うための資金を確保することから土地の切り売りするといったことが行われているが、一時金を前払いとして受け取れば、これを元に相続税を支払うこともでき、定期借地権期間満了後には土地も返還されることになる。
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