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解説記事2005年03月14日 【ニュース特集】 金融審議会が立会外取引も公開買付の規制対象に(2005年3月14日号・№106)

ニュース特集
今通常国会に証券取引法の一部改正案を提出
企業買収側の行動を規制
金融審議会が立会外取引も公開買付の規制対象に

 金融庁の金融審議会金融分科会第一部会(部会長:神田秀樹東京大学大学院法学政治学科研究科教授)は3月3日、立会外取引のうち、相対取引に類似する取引については、買付け後の株券等保有割合が3分の1を超える場合に公開買付規制を適用することを決めた(施行日は公布の日から起算して10日を経過した日)。また、西武鉄道の有価証券報告書の虚偽記載問題を受け、子会社が上場している場合には、非上場の親会社についても情報開示を義務付ける他、外国会社等の英文による企業情報の開示も認める。金融庁では、今通常国会に証券取引法の一部改正案を提出する。今回の特集では、これらの改正点の概要について紹介する。

ライブドアのニッポン放送株取得が発端
 まず、今回の公開買付(TOB)規制は、ライブドアがニッポン放送株を東京証券取引所のToSTNeT-1で取得したことに端を発したもの。
 公開買付制度とは、株券等について有価証券報告書を提出しなければならない発行者の株券等を取引所有価証券市場外で買付け等を行う場合、買付者に買付期間、買付数量、買付価格等をあらかじめ開示することを義務付けるというもの。市場外の買付けで、①買付け等後の株券等所有割合が5%を超える場合、②著しく少数(10名以下)の株主等から買い付ける場合で、買付け等後の株券等所有割合が3分の1を超える場合については、公開買付けが義務付けられている。
 今回のニッポン放送株をめぐる争いについてみると、フジテレビは、ニッポン放送株について、1月17日に公開買付を行うことを公表。一方、ライブドアは2月8日、子会社のライブドア・パートナーズを通じて29.6%のニッポン放送株を東京証券取引所のToSTNeT-1(立会外取引)で取得。ライブドアの保有株式と合計して、この時点で35.0%のニッポン放送株を取得した。
 ライブドアの場合、買付け後の株券等所有割合が3分の1を超えているため、公開買付が必要ではないのかといった点が問題となっていたわけだ。しかし、東京証券取引所のToSTNeT-1については、時間外ではあるものの、市場内取引と東京証券取引所の規程があるため、前記の公開買付規制には当たらないとされているわけだ。

(※金融審議会資料より)

東証のToSTNeT-1を規制
 立会外取引は、金融ビッグバンにおける取引所集中義務撤廃に際し、機関投資家等の多様な取引ニーズに対応するために平成9年に導入された制度。平成10年に現在のシステムであるToSTNeTによる売買が開始されている。ToSTNeTにはToSTNeT-1、ToSTNeT-2がある。ToSTNeT-2については、主に自己株式の売買等に利用されており、直前の立会取引の終値等を取引価格として、原則、時間優先で取引が行われる。
 一方、ライブドアが利用したToSTNeT-1については、例えば、単一銘柄取引の場合は、他の証券会社との交渉による取引又はクロス取引(同一証券会社による売り・買いの発注)となっており、極めて相対取引の要素が強いものとなっている。このため、今回の公開買付規制の見直しでは、このToSTNeT-1が規制の対象となっている。

公開買付規制全体の見直しも示唆
 3月3日開催の金融審議会金融分科会第一部会では、ToSTNeT-1だけでなく、ToSTNeT-2についても規制をかけるべきとの意見などがあったが、今回は見送られている。神田部会長は、今回の規制の対象となる立会外取引について、透明性があるとはいえないと指摘。また、個人的な意見として、今後、日本でも企業買収が増加することが予想される中、公開買付規制の全体的な見直しも必要になってくるとの見解を明らかにした。例えば、公開買付を行っている会社も市場で取引することができるようにする考え方などを示している。

証券取引法違反!?
 なお、ニッポン放送は、ライブドアが東京証券取引所のToSTNeT-1を利用してニッポン放送株を取得した件について、株主にとって著しく透明性・公平性を欠く取引であり、少なくとも公開買付規制の趣旨に反し、かつ違法の疑いもある取引であるとの考え方を表明している。
 また、前述のToSTNeT-1が東証の規程において市場内取引とされていても、証券取引法上においては、果たして、市場内との解釈ができるかどうか不明との問題点を指摘する声もある。今後、注目される点である。

TOB規制に乗り出す金融庁

西武鉄道問題で非上場親会社の財務諸表等も開示
 西武鉄道の有価証券報告書の虚偽記載問題を受け、上場会社の親会社(非上場)に対する情報開示の義務付けも行う(図参照)。親会社の範囲は、上場会社の議決権の過半数を直接又は間接に保有する会社。具体的には、子会社(上場会社)の有価証券報告書に、①株式の所有者別状況及び大株主の状況、②役員の状況、③商法に基づく貸借対照表、損益計算書、営業報告書、附属明細書等の開示を義務付ける(施行日は平成17年12月1日)。

 なお、東京証券取引所では、すでに上場会社の親会社等が非上場会社である場合には、当該親会社等の会社情報に関する適時開示を義務付けている。3月4日現在で同取引所に上場している会社2,315社(一部1,675社、二部516社、マザーズ124社)のうち、非上場の親会社を有する上場会社はエスエス製薬や東燃ゼネラル石油など、18社となっている(次頁の表参照)。

【開示対象となる非上場の親会社を有する上場会社及び当該親会社】
上場会社名
開示対象となる非上場親会社の名称
間組(一部) 青山管財
フジタ(二部) ACリアルエステート
ソネット・エムスリー(マザーズ) ソニーコミュニケーションネットワーク
アスクル(一部) プラス
日研化学(一部) 興和
エスエス製薬(一部) 日本ベーリンガーインゲルハイム
エイトコンサルタント(二部) 八雲
東燃ゼネラル石油(一部) エクソンモービル
ボッシュオートモーティブシステム(一部)
ロバート・ボッシュゲーエムゲーハー
明星電気(二部) ディー・エス・エムインベストメンツラムダ
プリヴェチューリッヒ企業再生グループ(二部) プリヴェチューリッヒ証券グループ本社
栃木富士産業(一部) ジーケーエヌ・ドライブライン・スマイア・エセ・アー
シャディ(一部) ツインツリー・ホールディングス
さいか屋(二部) 雑賀屋不動産
ワンダーテーブル(二部) ヒューマックス
アサガミ(二部) オーエーコーポレーション
鈴与シンワート(二部) 鈴与
光栄(一部) 光優
(※東京証券取引所の資料より作成)

日本語の要約を条件に外国会社等の英文開示を認める
 その他、外国会社等に義務付けられている開示書類について、本国等において適切な開示基準に基づいているものであれば、日本語による要約や補足書類を添付することを条件に、英語による有価証券報告書を提出できるようにする。日本の証券市場を魅力あるものにするには、外国会社等のコスト軽減と利便性を高める必要があると判断したためだ。これについては、すでに昨年の6月23日に同部会が「外国会社等の我が国における開示書類に係る制度上の整備・改善について」と題する報告書をまとめている(本誌No.73・12頁参照)。具体的には、施行日(平成17年12月1日)以後提出される「外国株価指数連動型上場投資信託(外国ETF)」について適用し、その他の有価証券を対象としたものは、施行日から平成21年3月31日までの範囲内において政令で定める日から適用される。

【上場外国会社数(東証)】
  S56 S61 H3 H8 H13 H16
上場会社数(年末ベース) 15 52 125 67 38 30
(※金融審議会資料より)

継続開示義務違反企業に対する課徴金導入は見送りも…
 西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載問題を受け、金融庁では、継続開示義務違反についても、課徴金を導入する考えを示していた(本誌No.103・13頁参照)。しかし、課徴金の算定方法について、内閣法制局との折り合いが最後までつかず、今回の証券取引法の一部改正法案の中には盛り込まないことが決定されている。
 ただ、自民党では、課徴金の導入について、議員立法として法案を提出する方針を決定しており、今後の動向に注目したい点だ。

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