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解説記事2005年11月14日 【編集部解説】 名古屋高裁の航空機リース訴訟の控訴審判示(2005年11月14日号・№138)

解説
名古屋高裁の航空機リース訴訟の控訴審判示
「控訴人(課税庁)は主観的要素と効果意思とを混同」


 名古屋高裁民事第1部(田中由子裁判長)は、10月27日、航空機リース訴訟の控訴審判決を言渡した。田中裁判長は、「当裁判所も被告人らの本件各請求はいずれも理由があるものと判断する。その理由は、次項で控訴理由に対する判断をするほかは、原判決『事実及び理由』の『第3 当裁判所の判断』1ないし7のとおりであるから、これを引用する。」と判示した上で、課税庁の控訴理由を悉く斥け、課税庁の控訴を棄却した。高裁段階での初の司法判断が示された。本誌では、控訴人(課税庁)の主張と名古屋高裁の判示を対比表にまとめてみた。
控訴人(課税庁)の主張
名古屋高裁の判示
課税要件における事実認定のあり方について、一審の名古屋地裁判決は、被控訴人らが『民法上の組合契約』の契約類型を選択したことを所与の前提とした上で、その真意を探求しており、被控訴人らが締結した契約がいかなるものであったかという通常の課税要件事実の認定場面において当然行われるべき実体ないし実質による判断を放棄するもので、当事者の締結した契約の認定のあり方を誤ったものである。 法律行為の解釈は、当事者の意思を探求するものではあるが、その意思表示は専ら表示行為を介してなされるのであるから、被控訴人らが締結した契約がいかなるものであったかを判断するに当たり、まず『民法上の契約類型を選択したこと』を前提として表示行為の解釈を行うのは当然というべきである。そして、その結果、仮に、被控訴人らの達成しようとする法的ないしは経済的目的に照らして、上記契約類型の選択が著しく不合理である場合には、真実は民法上の組合契約を締結する意思ではなく、同契約は不成立であると判断される余地があるにすぎない。したがって、上記したところを前提に表示行為の解釈をしたとしても、外形的資料のみに拘泥し、実体ないし実質による判断を放棄するものではない。
契約の締結に当たって、税負担を伴わないあるいは税負担が軽減されることを目的として、実体ないし実質と異なる外観ないし形式をとった場合には、当該実体ないし実質に従って課税されるべきであるのは当然であり、税負担の有無を法律行為の解釈をする際に全く考慮すべきでないという趣旨であれば、これもまた誤りである。 いかなる法律効果を発生させるかとの効果意思と、契約締結の動機、意図などの主観的要素とは理論的には別であり、(もっとも後述するとおり、上記主観的要素は、上記効果意思を推認させる一事情であるといえるから、その限度で法律行為の解釈において考慮することはあり得る。)、控訴人らの左記主張は、これらを混同するものである。 現代社会における合理的経済人の通常の行動として、仮に、租税負担を伴わないかあるいはそれが軽減されることなどを動機ないしは目的(又は、動機等の一部)として、何らかの契約を締結する場合には、その目的等がより達成可能な私法上の契約類型を選択し、その効果意思を持つことは、ごく自然なことであり、かつ、合理的なことであるといえる。そうすると、当該当事者が作出した契約等の形式について、これと異なる効果意思の存在を推認することは、上記したところと整合せず、そのように推認するとすれば、当事者の意思(私法上選択された契約類型)を離れて、その動機等の主観的要素のみに着目して課税することになり、当事者が行った法律行為を法的根拠なく否定する結果になる。
本件各事業の経済合理性に関連して、法人投資家向けのものが相当数混在していると思われる報告書の内容もって、個人投資家向け案件について、キャッシュ・フロー・ベースでも利益を上げられた例として扱うことはできないし、これをもって、一般に個人投資家がキャッシュ・フロー・ベースでも利益を上げられると推認することはできない。 仮に報告書の内容に法人向け投資家の案件が混在するとしても、法人向けと個人向けとでリース事業の仕組み自体が異なると認めるに足りる証拠はないし、リース料の設定が異なるとは通常考えられない。前記(原判決)のとおり、そもそも、「航空機賃貸事業のご案内」と題するパンフレットの最終頁記載の投資効果に関する試算表による試算結果が、条件次第でキャッシュ・フロー・ベースでも高額の利益を得ることが可能であることを示しているのであり、上記報告書のみによって、キャッシュ・フロー・ベースでも利益を得ることが可能であると判断するものではないから、控訴人らの指摘をもって、当然に、個人投資家において、キャッシュ・フロー・ベースで利益を上げられると推認できないとはいえない。

本件各事業の当事者がキャッシュ・フロー・ベースで利益を上げられないことを前提に、本件各事業は、課税減少効果がなければ成り立ち得ず、課税額の減少それ自体を取引の手段として本件各事業の当事者の利益を図るもので、投資による経済的利益獲得を主目的とし、それに付随して法形式の選択による税法上のメリットを検討する場合とは異なるにもかかわらず、上記判断(原判決)は、これらを混同するものである。

原判決及び上記のとおり、本件各事業の当事者は、キャッシュ・フロー・ベースで利益を得る可能性はあるから、本件各事業は、課税減少効果がなければ成り立ち得ないとまではいえないし、課税額の減少それ自体を取引の手段として本件各事業の当事者の利益を図るものであるとの点は、前記のとおり、契約締結の動機、意図などの主観的要素と効果意思とを混同するものであり、このことを言葉を変えて述べているにすぎず、上記で判断(原判決)したところに対する反論とはなり得ないというべきである。

本件各事業は、我が国の租税歳入それ自体を取引対象とし、本件各事業の当事者の利益を図る事業であり、本件各組合契約は、契約当事者の認識や実体と法形式とが大きく齟齬する異常な法形式である。 左記主張も、動機等の主観的要素と効果意思し、本件各組合契約は、課税減少効果を目的とする契約であるとして、当事者の認識等をその動機等や経済的側面のみに着目してこれを理解し、動機等とは別の効果意思の検討を放棄するものである。
被控訴人らは、本件各組合契約において、検査権及び解任権を有しないと解すべきであり、被控訴人らがそれらを有するとするのは、契約解釈の手法や経済的合理性の有無について誤った認識を前提にするもので、組合契約書等の形式的な「文理」を過度に重視するあまり、本件各ローン契約の条項からうかがわれる当事者の意思や一般組合員の実体等を軽視しており不当である。 契約解釈の手法や経済的合理性の有無について控訴人らの主張が採用できないことは、上記(原判決を含む。)のとおりである。そして、本件各事業においては、民法上の組合契約の法形式が通常用いられないものであるとはいえないから、契約の文言解釈を中心として当事者の考慮の探求を行うのが相当であるところ、控訴人らの左記主張を検討しても、被控訴人らの検査権及び解任権が排除されていないと解すべきことは前記(原判決)のとおりであり、契約書の形式的な「文理」を過度に重視するものでもない。
被控訴人らは、本件各組合契約を共同の事業として営む意思がない、要するに、被控訴人らは本件各事業の経営に参加する意思がない。 民法上の組合の成立要件である共同の事業を営む合意の具体的内容は、前記(原判決)のとおりであり、左記主張が採用できないことは、前記(原判決)のとおりである〔なお、控訴人らは、本件各組合契約が民法上の組合契約であるとしても、控訴人ら主張の上記共同の事業を営む意思がないことをもって、心裡留保又は虚偽表示が認められるべきであり、前記判断(原判決)は、何らの明確な根拠も示さずに効果意思を認めたのは失当であるとも主張するが、明確な根拠を示していることは明らかである(原判決)。〕。

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