税務ニュース2004年04月05日 名古屋国税局、米国LPSのパス・スルー課税を認めず(2004年4月5日号・№061) 公式見解の明確化には消極的
名古屋国税局、米国LPSのパス・スルー課税を認めず
公式見解の明確化には消極的
米国のLPS(リミテッドパートナーシップ)に出資し、LPSが所有していたアパートの減価償却費などを、個人の所得の赤字としてパス・スルー課税させていた名古屋市内の会社社長が、国税当局の税務調査を受け、2001年までの3年間で約2億円の申告漏れを指摘された。名古屋国税局は、LPSはわが国の税法上「法人」と認定し、減価償却費等を個人所得と相殺することはできず、LPSから受けた分配金は配当所得として取り扱うべきものとして、加算税を含め約8千万円の追徴課税を行った。社長は、処分を不服として国税不服審判所に審査請求を申し立てている。
“LPS”とは
LPSとは、米国などに設立されている法人格を持たない共同出資組織“リミテッドパートナーシップ”の略で、経営に携わる「ゼネラルパートナー」と出資額以上の責任を持たない「リミテッドパートナー」から構成される。主に、不動産投資などに多く用いられている事業形態である。法人格を持たないため組織自体へ課税されず、出資者個人が利益や損失を申告(パス・スルー課税)できる、とされてきた。このため、バブル以降、LPSによって所有する不動産の減価償却などで生じた損失を、個人所得と通算し、所得を圧縮する節税スキームとして利用する日本の投資家も増えていた。
税務上の取扱いの判断基準は示さず
米国LPSの課税上の取扱いについて、税務当局では、“米国LLCに係る税務上の取扱い”とは別個のものとした上で、「LPSの税務上の取扱いについても、設立準拠法、経済実態などの実情をみて、海外の制度をどう評価するか個別に判断していくしかない。司法上で判断されたことを元に、税法で手当てしていく道もある。」との回答があった。税務上の取扱いの判断基準は明らかにされず、“個々の案件を実態で判断する”との主張を崩していない。
インフラの整備が急務
今回の課税処分の背景には、日本の投資家の一部が「節税」を目的にしてLPSに出資し、その赤字を個人所得と合算して自らの所得を抑える節税スキームとして利用してきたことが挙げられる。ただ、日本国内に同じような組織形態が存しないとはいえ、直訳すれば「組合」となるパートナーシップを「法人」と認定して課税することには、疑問が残りそうだ。
金融取引の発展や、投資の多様化などにより、わが国の税法の規定にない海外金融商品等が今後も日本に流れてくるのは必至だ。国は、課税処分の前に、課税上の取扱いを明確にして、租税法律主義に基づく課税を適切に行うためのインフラを整備する必要がある。
公式見解の明確化には消極的
米国のLPS(リミテッドパートナーシップ)に出資し、LPSが所有していたアパートの減価償却費などを、個人の所得の赤字としてパス・スルー課税させていた名古屋市内の会社社長が、国税当局の税務調査を受け、2001年までの3年間で約2億円の申告漏れを指摘された。名古屋国税局は、LPSはわが国の税法上「法人」と認定し、減価償却費等を個人所得と相殺することはできず、LPSから受けた分配金は配当所得として取り扱うべきものとして、加算税を含め約8千万円の追徴課税を行った。社長は、処分を不服として国税不服審判所に審査請求を申し立てている。
“LPS”とは
LPSとは、米国などに設立されている法人格を持たない共同出資組織“リミテッドパートナーシップ”の略で、経営に携わる「ゼネラルパートナー」と出資額以上の責任を持たない「リミテッドパートナー」から構成される。主に、不動産投資などに多く用いられている事業形態である。法人格を持たないため組織自体へ課税されず、出資者個人が利益や損失を申告(パス・スルー課税)できる、とされてきた。このため、バブル以降、LPSによって所有する不動産の減価償却などで生じた損失を、個人所得と通算し、所得を圧縮する節税スキームとして利用する日本の投資家も増えていた。
税務上の取扱いの判断基準は示さず
米国LPSの課税上の取扱いについて、税務当局では、“米国LLCに係る税務上の取扱い”とは別個のものとした上で、「LPSの税務上の取扱いについても、設立準拠法、経済実態などの実情をみて、海外の制度をどう評価するか個別に判断していくしかない。司法上で判断されたことを元に、税法で手当てしていく道もある。」との回答があった。税務上の取扱いの判断基準は明らかにされず、“個々の案件を実態で判断する”との主張を崩していない。
インフラの整備が急務
今回の課税処分の背景には、日本の投資家の一部が「節税」を目的にしてLPSに出資し、その赤字を個人所得と合算して自らの所得を抑える節税スキームとして利用してきたことが挙げられる。ただ、日本国内に同じような組織形態が存しないとはいえ、直訳すれば「組合」となるパートナーシップを「法人」と認定して課税することには、疑問が残りそうだ。
金融取引の発展や、投資の多様化などにより、わが国の税法の規定にない海外金融商品等が今後も日本に流れてくるのは必至だ。国は、課税処分の前に、課税上の取扱いを明確にして、租税法律主義に基づく課税を適切に行うためのインフラを整備する必要がある。
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