解説記事2007年03月26日 【会社法解説】 新信託法および整備法における会社法改正の要点(2007年3月26日号・№204)
解説
新信託法および整備法における会社法改正の要点
法務省民事局参事官 寺本 昌広
法務省民事局付 村松 秀樹
法務省民事局付 富澤賢一郎
法務省民事局調査員 鈴木 秀昭
法務省民事局調査員 三木原 聡
Ⅰ はじめに
昨年12月8日、参議院本会議において信託法(以下「新信託法」という)および信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「信託法整備法」という)が可決・成立し、12月15日、それぞれ平成18年法律第108号・109号として公布された。
このうち、新信託法は、現行の信託法(以下「旧信託法」という)の内容を全面的に改めるものであり、附則1項において、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとされており、現在、早期の施行を目指して、関係政省令等の準備が進められている。
本稿では、新信託法につき、その主要な改正事項を解説するほか、信託法整備法において、新しい信託法との関連でされた会社法の一部改正の内容について解説することとしたい。
筆者らは、法務省民事局において新信託法の立案事務を担当したものであるが、本稿は、筆者らが個人的な立場で執筆するものであり、意見にわたる部分は筆者らの個人的見解にすぎないことをあらかじめお断りしておきたい。
Ⅱ 新信託法の概要
新信託法における改正項目は多岐にわたるが、大きく分ければ、
① 受託者の義務の内容等の合理化および受益者の権利行使の実効性・機動性を高めるための規律の整備を始めとした信託全般にわたるルールの合理化
② 多様な信託の利用形態に対応するための特例的な規定・制度の整備
に関するものに分類することができる。以下では、それぞれについて、主要な項目に触れることとしたい。
1 信託全般にわたるルールの合理化
(1)受託者の(善管)注意義務
受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならず(新信託法29条1項)、信託事務を処理するにあたっては、善良な管理者の注意をもってしなければならない(同条2項本文)。
この受託者の注意義務は、信託行為の定めにより、加重または軽減することができる(同項ただし書)。
旧信託法のもとでも、受託者の注意義務に関する規定(旧信託法20条)は任意規定であるとの解釈が有力であったが、法文上、その趣旨が明らかであるとはいい難かった。
そこで、新信託法においては、規定の明確化を図る観点から、新信託法29条2項にただし書を設けて、受託者の注意義務に関する規定が任意規定であることを明らかにしている。ただし、その一切を免除することはできない。
(2)忠実義務
受託者は、受益者のために信託財産に属する財産の管理・処分を始めとする信託事務を処理する者であるから、信託事務の処理にあたって、受益者の利益を犠牲にして、自己またはその利害関係人の利益を図ることは禁止される。
新信託法は、その趣旨を明らかにするため、受託者の忠実義務に関して、善管注意義務((1)参照)とは別に、次のとおり、詳細な規定を設けている。
(ア)忠実義務に関する一般規定の新設
受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない(新信託法30条)。
受託者が「忠実」に信託事務の処理その他の行為をしているか否かは、信託行為の定め等に基づいて実質的に判断される。
(イ)利益相反行為の禁止に関する規定の合理化
旧信託法においては、受託者が、信託財産に属する財産を固有財産に属する財産とすること、および信託財産に属する財産について権利を取得することのみが禁止されていた(旧信託法22条1項)。
これに対し、新信託法においては、受益者保護の観点から、旧信託法が禁止の対象としていた行為に加えて、
① 固有財産に属する財産を信託財産に属する財産に帰属させること(新信託法31条1項1号)
② 信託財産に属する財産を他の信託の信託財産に帰属させること(いわゆる信託財産間取引、同項2号)
③ 第三者との間において信託財産のためにする行為であって、受託者がその第三者の代理人となって法律行為を行うもの(いわゆる双方代理、同項3号)
④ 受託者が第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者またはその利害関係人と受益者との利益が相反することとなるもの(いわゆる間接取引、同項4号)
なども禁止の対象としている。
もっとも、受益者の利益が害されるおそれのない場合にまで、一律に、受託者の利益相反行為を禁止する必要は乏しく、かえって受益者の利益を害する結果ともなりかねないと考えられる(たとえば、適正な対価による信託財産に属する財産の受託者(の固有財産)に対する売却等も妨げられることになる)。
そこで、新信託法においては、
① 信託行為に許容する旨の定めがあるとき
② 重要な事実の開示を受けたうえで受益者が承認しているとき
③ 「信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき」、または「当該行為の信託財産に与える影響、当該行為の目的及び態様、受託者と受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるとき」
には、禁止の例外を認めている(新信託法31条2項)。
(ウ)競合行為の制限に関する規定の新設
受託者は、その権限に基づいて信託事務の処理としてすることができる行為であってこれをしないことが受益者の利益に反するものについては、これを固有財産またはその利害関係人の計算でしてはならない(新信託法32条1項)。
取締役の競業取引が禁止されること(会社法356条1項1号)と同趣旨である。
(エ)忠実義務違反行為の効果に関する規定の新設
新信託法においては、受託者が忠実義務違反行為をした場合の当該行為の効果を明らかにしている。
すなわち、禁止の例外を満たさない利益相反行為は、原則として無効となるとし(新信託法31条4項)、また、受託者が競合行為の禁止に違反したときは、受益者は、受託者の固有財産に帰属した行為を信託財産に帰属したものとみなすことができるとしている(介入権の行使、新信託法32条4項)。
さらに、忠実義務違反行為によって受託者またはその利害関係人が利益を得た場合には、受託者は、その利益の額と同額の損失を信託財産に生じさせたものと推定し(新信託法40条3項)、受託者が信託財産に損失が発生していないことの立証責任を負うこととしている。
(3)信託事務の処理の第三者への委託(自己執行義務)
受託者は、
① 信託行為で信託事務の処理の委託が許容されているとき
② 信託行為に信託事務の処理の委託を許容する旨の定めがない場合において、信託事務の処理を第三者に委託することが信託の目的に照らして相当であると認められるとき
③ 信託行為に信託事務の処理を第三者に委託してはならない旨の定めがある場合において、信託事務の処理を第三者に委託することにつき信託の目的に照らしてやむを得ない事由があると認められるとき
は、信託事務の処理を第三者に委託することができる(新信託法28条)。
社会の分業化および専門化が進んだ現代社会においては、受託者が信託事務のすべてを処理することは現実的ではなく、信託事務の処理を必要に応じて第三者に委託することを受託者に認めることが受益者の利益にもかなうと考えられることから、旧信託法と異なり、信託行為に別段の定めがない場合であっても、信託の目的に照らして相当であると認められるときには、第三者への委託を許容している。
(4)受益者の多数決による意思決定の許容(受益者集会制度)
旧信託法の制定当時は、主として、受益者が単数の信託が想定されていたためか、旧信託法には受益者が複数の信託に関する適切な規定が存しなかった。
しかし、権利関係の複雑化した現代社会においては、1個の信託行為により複数の者が受益者として指定される場合があり、このような受益者が複数の信託における受益者の意思決定の合理的なルールを整備する必要があった。
そこで、新信託法では、信託行為に定めを置くことにより、複数の受益者による意思決定を多数決等によって行うことを許容するとともに(新信託法105条1項ただし書)、さらに、多数の受益者が存する信託における受益者の意思決定のあり方の1つのフォーマットとして受益者集会制度を設けている(新信託法106条以下)。
他方で、自己の意思に反して受益者としての意思決定がされる可能性が生じたことから、決議に反対する受益者等の保護を図るため、信託の目的の変更や受益権の譲渡の制限等に係る信託の変更等については、これに反対する受益者に対し、自己の有する受益権を公正な価格で取得することを受託者に請求する権利(受益権取得請求権)を付与している(新信託法103条)。
(5)信託管理人・信託監督人・受益者代理人の創設
旧信託法は、受益者が不特定または未存在の場合に限定して受益者に代わってその権利を行使する者(信託管理人)を選任することを認めていたが、受益者に代わってその権利を行使し、受託者の監督を行う者を選任するニーズは、受益者が不特定または未存在の場合のほか、受益者が高齢者等である場合などにも認められる。
そこで、新信託法では、このようなニーズに対応するため、幅広く、受益者に代わって受益者としての権利を行使する者の選任を認めることとしたうえで、これを3つの類型に区分した。
① 信託管理人
信託管理人は、受益者が現に存しない場合、すなわち、いまだ存在しない者を受益者として指定した場合やいまだ受益者となるべき者が特定しない場合のほか、受益者の定めのない信託(後述2(5)参照)である場合に選任される(新信託法123条1項)。
信託管理人は、受益者の権利に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する(新信託法125条1項)。
② 信託監督人
信託監督人は、受益者が現に存する場合に選任される(新信託法131条)。
信託監督人は、受益者のために自己の名をもって監督的権能(新信託法92条各号(17号、18号、21号および23号を除く)に掲げる権利である)に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する(新信託法132条1項)。
③ 受益者代理人
受益者代理人は、受益者が現に存する場合に選任される(新信託法138条1項)。
受益者代理人は、その代理する受益者のために当該受益者の権利(受託者の責任の免除に係るものを除く)に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する(新信託法139条1項)。
受益者代理人と信託監督人との間では、行使すべき権限の内容が異なる(受益者代理人にはより包括的な権限の行使が期待されるものである)。
2 多様な信託の利用形態に対応するための制度の整備
(1)事業の信託
信託の対象である「財産」には、金銭的価値に見積もりうるものすべてが含まれるが、いわゆる消極財産たる債務は含まれない。
したがって、債務を信託することはできず、委託者と受託者との合意に基づいて委託者の債務を受託者が(信託財産で)引き受けることができるにすぎない(なお、この際、債権者の同意を得なければ、委託者が当然に免責されることにはならず、重畳的債務引受けの効力が生ずるにすぎない)。したがって、積極財産と消極財産の複合体としての「事業」自体を信託することは、旧信託法と同様に、できないことになる。
もっとも、このような整理に従えば、積極財産たる財産を信託するとともに、債権者の同意を得て(あるいは得ることなく)、債務引受けを行うことによって、実質的には、積極財産および消極財産を信託したのと同様の状態を作出することは可能であり、これを利用することによって、事業(を構成する積極財産および消極財産)を信託したのと同様の状態を作り出すことができる(このような手法が「事業の信託」と位置付けられるものであるが、このように、正確には、事業のうちの積極財産は信託されるものの消極財産については債務引受けの形式が取られることになるものであり、若干の注意を要する)。
なお、このような事業の信託も、事業の譲渡に該当し、それが一定程度を超えるものであれば株主総会の決議を要することになる(会社法467条1項1号・2号)。
(2)自己信託の創設
新信託法においては、新たな信託の方法として、自己信託(新信託法附則2項の見出し参照)、すなわち、委託者自身が受託者となる信託が認められた。
新信託法の定義上では「特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分……を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録……で……法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法」とされており、換言すれば特定の者(委託者)が自己の有する一定の財産の管理・処分を自ら(受託者として)すべき旨の意思表示をする方法であるとされている。
この自己信託については、たとえば、次のような利用方法が考えられている。
① 障害を抱える者の親等が、その財産を障害を抱える者に贈与しようとしても本人による管理は困難であるところ、自己信託が可能になれば、委託者自身の倒産による財産の散逸の危険を避けつつも、財産の管理は自ら行うことで、適切な財産の管理・給付等を行うことが可能になる。
② 会社が、特定のプロジェクト(事業部門)から上がる収益を基礎として資金調達をしようとする場合に、当該プロジェクトに必要な資産を自己信託し、その受益権を投資家に販売することが可能になれば、従業員の子会社への転籍・出向といった問題や技術的なノウハウの外部流失の危険等を避けつつ、資金調達を行うことが可能になる。
③ 会社が自社の債権等を流動化して資金調達を行おうとする場合に、自己信託が可能になれば、第三者へ信託譲渡等をすることにより債権者が変更することに対する債務者の心理的抵抗感を回避しながら、自社債権等の流動化を行うことが可能になるとともに、第三者を受託者として利用する場合と比べ、費用等を縮減することも可能になる。
もっとも、自己信託については、これを悪用することで、委託者兼受託者の債権者を害することになるおそれがあることから、自己信託に係る意思表示は、書面または電磁的記録によるとするとともに、これには法務省令で定める事項(信託の目的、自己信託の対象財産の特定に必要な事項など)を記載等しなければならないとされ(新信託法3条3号)、さらに、その効力発生時期を明らかにするため、その効力は、当該意思表示が、
① 公正証書または公証人の認証を受けた書面等によってされる場合にはこれらの作成の時から
② 公正証書等以外の書面等によってされる場合には受益者となるべき者として指定された第三者(複数の者を指定する場合にあっては、そのうちの1人)に対する確定日付のある証書による通知(当該信託がされた旨および信託の内容を通知内容とする必要がある)がされた時から
生ずることとされている(新信託法4条3項)。
なお、このほかの対策として、自己信託の対象財産についても、当該財産が登記・登録制度のある財産である場合には信託財産に属していることを第三者に対抗するためには信託の登記・登録をしなければならない(新信託法14条)ほか、自己信託以外の信託では、裁判所によって詐害信託の取消しがされて初めて、委託者の債権者は信託財産に対して強制執行をすることができるのに対し、自己信託では、委託者の債権者は、詐害信託の取消しの訴訟を提起することなく、直ちに、信託財産に属する財産に対して強制執行等をすることができる(新信託法23条2項)。
また、前述のとおり、株式会社の一事業部門を取締役等が自由に自己信託をすることができるとすると株主の利益を害しかねないことから、会社法467条を始めとする法人の事業の譲渡に関する規定の適用については、自己信託は、その適用の対象となる行為に含まれることが確認的に規定されている(新信託法266条2項)。したがって、自己信託を活用して、実質的に、事業の全部または事業の重要な一部を第三者に移転する場合には、株主総会の決議が必要であり、これによって株主の利益は保護されることになる。
なお、新信託法附則2項により、自己信託の方法について定める新信託法3条3号は、新信託法の施行の日から起算して1年を経過する日までの間は適用しないこととされているから、新信託法の施行の日から1年間は自己信託の方法によって信託をすることはできない。
(3)受益証券発行信託の創設
受益証券発行信託とは、受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託である(新信託法185条3項)。
旧信託法には、受益権の有価証券化に関する規定は存せず、学説上も受益権を記名証券または無記名証券に表章させることは可能であるとする見解と法律の規定または慣習法が存する場合にのみ権利の有価証券化は許されるとする見解とが対立している状況にあり、投資信託、貸付信託など特別法の定めがあるものを除いて、受益権を有価証券化してその円滑な流通を安定的に図ることは困難であった。
そこで、新信託法では、新たな信託の類型として、受益権を表示する受益証券を発行する信託の特例が設けられ、より広く、受益証券を発行して受益権の流通性を強化することができるようになった。
なお、受益証券発行信託においては、受託者の善管注意義務の軽減が許容されない(新信託法212条1項)。また、一般の信託と異なり、受益者による濫用的な権利行使に対処する観点から、受益者が単独で行使することができる権利(新信託法92条参照)のうち一部のものについて、信託行為の定めによって、その行使に一定の制約を課すことができる(新信託法213条)。
(4)限定責任信託の創設
限定責任信託とは、受託者が、信託に関して負担する債務について、信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う信託をいう(新信託法2条12項)。
信託においては、受託者が信託事務として行った取引から生じた債務のように信託に関して負担する債務については、受託者は、信託財産のみならず、固有財産によっても責任を負うことになるのが原則である。しかし、特に、信託において取引等を繰り返して行う場合や借入れ等を行う場合には、受託者の責任を制限する必要性が高いとの指摘がされていた。
そこで、新信託法では、新たな類型の信託として限定責任信託が創設されている(なお、不法行為に基づく損害賠償請求権については、いわゆる所有者の工作物責任を除き、責任が限定されることとはならない(新信託法217条1項参照))。
もっとも、受託者と取引等をする債権者を保護するため、取引の相手方に対して限定責任信託であることを示すべき義務を受託者に課すほか、会計帳簿等の作成等を受託者に義務付け、財産給付の制限(株式会社における剰余金分配規制に類似する)やその制限に反する給付に関する責任を設け、さらに、限定責任信託の登記の制度を新設するなどしている。
(5)受益者の定めのない信託(目的信託)の創設
旧信託法のもとでは、公益信託を除いて、受益者の定めのない信託は認められていなかった。しかし、公益信託以外にも受益者の定めのない信託を許容することにより、厳密な意味で公益目的とはいえない社会活動(市民活動やボランティア活動など)の受け皿等としての信託の利用が可能となるとの指摘がされていた。
そこで、新信託法では、受益者の定めのない信託を一般に許容するとともに、あまりに長期間にわたって受益者の定めのない信託の存続を認めると信託に供される財産の流通を阻害することにもなりかねないとの指摘を踏まえ、その有効期間を20年間に限ることとされている(新信託法259条)。
なお、受益者の定めのない信託においては、信託財産の給付を受けるべき者であり、かつ、受託者に対する監督権限を行使し、その他信託に関する意思決定を行う者としての「受益者」の存在は一切予定されていない。そのため、受益者の権利については、基本的に、委託者が行使するものとされている(新信託法260条・261条)。
Ⅲ 信託法整備法における会社法の一部改正の概要
信託法整備法においては、会社法の一部改正がされ、不発行の株式・新株予約権・社債につき、これらのものが信託財産に属する旨を株主名簿等に記載し、または記録しなければ、これらのものが信託財産に属することを株式会社その他の第三者に対抗することができないとされた(信託法整備法による改正後の会社法154条の2、272条の2、695条の2)。これは、旧信託法3条3項を引き継いだものであるが、この際、新株予約権や社債についても同様の扱いとすることとされたものである。
これに対し、株券の発行された株式等については、特段の公示は要しないこととされている(なお、分別管理の観点からは、原則として、信託財産に属する財産と固有財産および他の信託の信託財産に属する財産とを外形上区別することができる状態で保管する方法によって分別することになる(新信託法34条1項2号イ))。
他方、振替制度の対象となった振替株式等については、当該振替株式等が信託財産に属する旨を振替口座簿に記載し、または記録しなければ、これが信託財産に属することを第三者に対抗することができない(信託法整備法による改正後の社債、株式等の振替に関する法律142条)。
(てらもと・まさひろ/むらまつ・ひでき/とみざわ・けんいちろう/すずき・ひであき/みきはら・さとし)
新信託法および整備法における会社法改正の要点
法務省民事局参事官 寺本 昌広
法務省民事局付 村松 秀樹
法務省民事局付 富澤賢一郎
法務省民事局調査員 鈴木 秀昭
法務省民事局調査員 三木原 聡
Ⅰ はじめに
昨年12月8日、参議院本会議において信託法(以下「新信託法」という)および信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「信託法整備法」という)が可決・成立し、12月15日、それぞれ平成18年法律第108号・109号として公布された。
このうち、新信託法は、現行の信託法(以下「旧信託法」という)の内容を全面的に改めるものであり、附則1項において、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとされており、現在、早期の施行を目指して、関係政省令等の準備が進められている。
本稿では、新信託法につき、その主要な改正事項を解説するほか、信託法整備法において、新しい信託法との関連でされた会社法の一部改正の内容について解説することとしたい。
筆者らは、法務省民事局において新信託法の立案事務を担当したものであるが、本稿は、筆者らが個人的な立場で執筆するものであり、意見にわたる部分は筆者らの個人的見解にすぎないことをあらかじめお断りしておきたい。
Ⅱ 新信託法の概要
新信託法における改正項目は多岐にわたるが、大きく分ければ、
① 受託者の義務の内容等の合理化および受益者の権利行使の実効性・機動性を高めるための規律の整備を始めとした信託全般にわたるルールの合理化
② 多様な信託の利用形態に対応するための特例的な規定・制度の整備
に関するものに分類することができる。以下では、それぞれについて、主要な項目に触れることとしたい。
1 信託全般にわたるルールの合理化
(1)受託者の(善管)注意義務
受託者は、信託の本旨に従い、信託事務を処理しなければならず(新信託法29条1項)、信託事務を処理するにあたっては、善良な管理者の注意をもってしなければならない(同条2項本文)。
この受託者の注意義務は、信託行為の定めにより、加重または軽減することができる(同項ただし書)。
旧信託法のもとでも、受託者の注意義務に関する規定(旧信託法20条)は任意規定であるとの解釈が有力であったが、法文上、その趣旨が明らかであるとはいい難かった。
そこで、新信託法においては、規定の明確化を図る観点から、新信託法29条2項にただし書を設けて、受託者の注意義務に関する規定が任意規定であることを明らかにしている。ただし、その一切を免除することはできない。
(2)忠実義務
受託者は、受益者のために信託財産に属する財産の管理・処分を始めとする信託事務を処理する者であるから、信託事務の処理にあたって、受益者の利益を犠牲にして、自己またはその利害関係人の利益を図ることは禁止される。
新信託法は、その趣旨を明らかにするため、受託者の忠実義務に関して、善管注意義務((1)参照)とは別に、次のとおり、詳細な規定を設けている。
(ア)忠実義務に関する一般規定の新設
受託者は、受益者のため忠実に信託事務の処理その他の行為をしなければならない(新信託法30条)。
受託者が「忠実」に信託事務の処理その他の行為をしているか否かは、信託行為の定め等に基づいて実質的に判断される。
(イ)利益相反行為の禁止に関する規定の合理化
旧信託法においては、受託者が、信託財産に属する財産を固有財産に属する財産とすること、および信託財産に属する財産について権利を取得することのみが禁止されていた(旧信託法22条1項)。
これに対し、新信託法においては、受益者保護の観点から、旧信託法が禁止の対象としていた行為に加えて、
① 固有財産に属する財産を信託財産に属する財産に帰属させること(新信託法31条1項1号)
② 信託財産に属する財産を他の信託の信託財産に帰属させること(いわゆる信託財産間取引、同項2号)
③ 第三者との間において信託財産のためにする行為であって、受託者がその第三者の代理人となって法律行為を行うもの(いわゆる双方代理、同項3号)
④ 受託者が第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者またはその利害関係人と受益者との利益が相反することとなるもの(いわゆる間接取引、同項4号)
なども禁止の対象としている。
もっとも、受益者の利益が害されるおそれのない場合にまで、一律に、受託者の利益相反行為を禁止する必要は乏しく、かえって受益者の利益を害する結果ともなりかねないと考えられる(たとえば、適正な対価による信託財産に属する財産の受託者(の固有財産)に対する売却等も妨げられることになる)。
そこで、新信託法においては、
① 信託行為に許容する旨の定めがあるとき
② 重要な事実の開示を受けたうえで受益者が承認しているとき
③ 「信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき」、または「当該行為の信託財産に与える影響、当該行為の目的及び態様、受託者と受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるとき」
には、禁止の例外を認めている(新信託法31条2項)。
(ウ)競合行為の制限に関する規定の新設
受託者は、その権限に基づいて信託事務の処理としてすることができる行為であってこれをしないことが受益者の利益に反するものについては、これを固有財産またはその利害関係人の計算でしてはならない(新信託法32条1項)。
取締役の競業取引が禁止されること(会社法356条1項1号)と同趣旨である。
(エ)忠実義務違反行為の効果に関する規定の新設
新信託法においては、受託者が忠実義務違反行為をした場合の当該行為の効果を明らかにしている。
すなわち、禁止の例外を満たさない利益相反行為は、原則として無効となるとし(新信託法31条4項)、また、受託者が競合行為の禁止に違反したときは、受益者は、受託者の固有財産に帰属した行為を信託財産に帰属したものとみなすことができるとしている(介入権の行使、新信託法32条4項)。
さらに、忠実義務違反行為によって受託者またはその利害関係人が利益を得た場合には、受託者は、その利益の額と同額の損失を信託財産に生じさせたものと推定し(新信託法40条3項)、受託者が信託財産に損失が発生していないことの立証責任を負うこととしている。
(3)信託事務の処理の第三者への委託(自己執行義務)
受託者は、
① 信託行為で信託事務の処理の委託が許容されているとき
② 信託行為に信託事務の処理の委託を許容する旨の定めがない場合において、信託事務の処理を第三者に委託することが信託の目的に照らして相当であると認められるとき
③ 信託行為に信託事務の処理を第三者に委託してはならない旨の定めがある場合において、信託事務の処理を第三者に委託することにつき信託の目的に照らしてやむを得ない事由があると認められるとき
は、信託事務の処理を第三者に委託することができる(新信託法28条)。
社会の分業化および専門化が進んだ現代社会においては、受託者が信託事務のすべてを処理することは現実的ではなく、信託事務の処理を必要に応じて第三者に委託することを受託者に認めることが受益者の利益にもかなうと考えられることから、旧信託法と異なり、信託行為に別段の定めがない場合であっても、信託の目的に照らして相当であると認められるときには、第三者への委託を許容している。
(4)受益者の多数決による意思決定の許容(受益者集会制度)
旧信託法の制定当時は、主として、受益者が単数の信託が想定されていたためか、旧信託法には受益者が複数の信託に関する適切な規定が存しなかった。
しかし、権利関係の複雑化した現代社会においては、1個の信託行為により複数の者が受益者として指定される場合があり、このような受益者が複数の信託における受益者の意思決定の合理的なルールを整備する必要があった。
そこで、新信託法では、信託行為に定めを置くことにより、複数の受益者による意思決定を多数決等によって行うことを許容するとともに(新信託法105条1項ただし書)、さらに、多数の受益者が存する信託における受益者の意思決定のあり方の1つのフォーマットとして受益者集会制度を設けている(新信託法106条以下)。
他方で、自己の意思に反して受益者としての意思決定がされる可能性が生じたことから、決議に反対する受益者等の保護を図るため、信託の目的の変更や受益権の譲渡の制限等に係る信託の変更等については、これに反対する受益者に対し、自己の有する受益権を公正な価格で取得することを受託者に請求する権利(受益権取得請求権)を付与している(新信託法103条)。
(5)信託管理人・信託監督人・受益者代理人の創設
旧信託法は、受益者が不特定または未存在の場合に限定して受益者に代わってその権利を行使する者(信託管理人)を選任することを認めていたが、受益者に代わってその権利を行使し、受託者の監督を行う者を選任するニーズは、受益者が不特定または未存在の場合のほか、受益者が高齢者等である場合などにも認められる。
そこで、新信託法では、このようなニーズに対応するため、幅広く、受益者に代わって受益者としての権利を行使する者の選任を認めることとしたうえで、これを3つの類型に区分した。
① 信託管理人
信託管理人は、受益者が現に存しない場合、すなわち、いまだ存在しない者を受益者として指定した場合やいまだ受益者となるべき者が特定しない場合のほか、受益者の定めのない信託(後述2(5)参照)である場合に選任される(新信託法123条1項)。
信託管理人は、受益者の権利に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する(新信託法125条1項)。
② 信託監督人
信託監督人は、受益者が現に存する場合に選任される(新信託法131条)。
信託監督人は、受益者のために自己の名をもって監督的権能(新信託法92条各号(17号、18号、21号および23号を除く)に掲げる権利である)に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する(新信託法132条1項)。
③ 受益者代理人
受益者代理人は、受益者が現に存する場合に選任される(新信託法138条1項)。
受益者代理人は、その代理する受益者のために当該受益者の権利(受託者の責任の免除に係るものを除く)に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する(新信託法139条1項)。
受益者代理人と信託監督人との間では、行使すべき権限の内容が異なる(受益者代理人にはより包括的な権限の行使が期待されるものである)。
2 多様な信託の利用形態に対応するための制度の整備
(1)事業の信託
信託の対象である「財産」には、金銭的価値に見積もりうるものすべてが含まれるが、いわゆる消極財産たる債務は含まれない。
したがって、債務を信託することはできず、委託者と受託者との合意に基づいて委託者の債務を受託者が(信託財産で)引き受けることができるにすぎない(なお、この際、債権者の同意を得なければ、委託者が当然に免責されることにはならず、重畳的債務引受けの効力が生ずるにすぎない)。したがって、積極財産と消極財産の複合体としての「事業」自体を信託することは、旧信託法と同様に、できないことになる。
もっとも、このような整理に従えば、積極財産たる財産を信託するとともに、債権者の同意を得て(あるいは得ることなく)、債務引受けを行うことによって、実質的には、積極財産および消極財産を信託したのと同様の状態を作出することは可能であり、これを利用することによって、事業(を構成する積極財産および消極財産)を信託したのと同様の状態を作り出すことができる(このような手法が「事業の信託」と位置付けられるものであるが、このように、正確には、事業のうちの積極財産は信託されるものの消極財産については債務引受けの形式が取られることになるものであり、若干の注意を要する)。
なお、このような事業の信託も、事業の譲渡に該当し、それが一定程度を超えるものであれば株主総会の決議を要することになる(会社法467条1項1号・2号)。
(2)自己信託の創設
新信託法においては、新たな信託の方法として、自己信託(新信託法附則2項の見出し参照)、すなわち、委託者自身が受託者となる信託が認められた。
新信託法の定義上では「特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分……を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録……で……法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法」とされており、換言すれば特定の者(委託者)が自己の有する一定の財産の管理・処分を自ら(受託者として)すべき旨の意思表示をする方法であるとされている。
この自己信託については、たとえば、次のような利用方法が考えられている。
① 障害を抱える者の親等が、その財産を障害を抱える者に贈与しようとしても本人による管理は困難であるところ、自己信託が可能になれば、委託者自身の倒産による財産の散逸の危険を避けつつも、財産の管理は自ら行うことで、適切な財産の管理・給付等を行うことが可能になる。
② 会社が、特定のプロジェクト(事業部門)から上がる収益を基礎として資金調達をしようとする場合に、当該プロジェクトに必要な資産を自己信託し、その受益権を投資家に販売することが可能になれば、従業員の子会社への転籍・出向といった問題や技術的なノウハウの外部流失の危険等を避けつつ、資金調達を行うことが可能になる。
③ 会社が自社の債権等を流動化して資金調達を行おうとする場合に、自己信託が可能になれば、第三者へ信託譲渡等をすることにより債権者が変更することに対する債務者の心理的抵抗感を回避しながら、自社債権等の流動化を行うことが可能になるとともに、第三者を受託者として利用する場合と比べ、費用等を縮減することも可能になる。
もっとも、自己信託については、これを悪用することで、委託者兼受託者の債権者を害することになるおそれがあることから、自己信託に係る意思表示は、書面または電磁的記録によるとするとともに、これには法務省令で定める事項(信託の目的、自己信託の対象財産の特定に必要な事項など)を記載等しなければならないとされ(新信託法3条3号)、さらに、その効力発生時期を明らかにするため、その効力は、当該意思表示が、
① 公正証書または公証人の認証を受けた書面等によってされる場合にはこれらの作成の時から
② 公正証書等以外の書面等によってされる場合には受益者となるべき者として指定された第三者(複数の者を指定する場合にあっては、そのうちの1人)に対する確定日付のある証書による通知(当該信託がされた旨および信託の内容を通知内容とする必要がある)がされた時から
生ずることとされている(新信託法4条3項)。
なお、このほかの対策として、自己信託の対象財産についても、当該財産が登記・登録制度のある財産である場合には信託財産に属していることを第三者に対抗するためには信託の登記・登録をしなければならない(新信託法14条)ほか、自己信託以外の信託では、裁判所によって詐害信託の取消しがされて初めて、委託者の債権者は信託財産に対して強制執行をすることができるのに対し、自己信託では、委託者の債権者は、詐害信託の取消しの訴訟を提起することなく、直ちに、信託財産に属する財産に対して強制執行等をすることができる(新信託法23条2項)。
また、前述のとおり、株式会社の一事業部門を取締役等が自由に自己信託をすることができるとすると株主の利益を害しかねないことから、会社法467条を始めとする法人の事業の譲渡に関する規定の適用については、自己信託は、その適用の対象となる行為に含まれることが確認的に規定されている(新信託法266条2項)。したがって、自己信託を活用して、実質的に、事業の全部または事業の重要な一部を第三者に移転する場合には、株主総会の決議が必要であり、これによって株主の利益は保護されることになる。
なお、新信託法附則2項により、自己信託の方法について定める新信託法3条3号は、新信託法の施行の日から起算して1年を経過する日までの間は適用しないこととされているから、新信託法の施行の日から1年間は自己信託の方法によって信託をすることはできない。
(3)受益証券発行信託の創設
受益証券発行信託とは、受益権を表示する証券を発行する旨の定めのある信託である(新信託法185条3項)。
旧信託法には、受益権の有価証券化に関する規定は存せず、学説上も受益権を記名証券または無記名証券に表章させることは可能であるとする見解と法律の規定または慣習法が存する場合にのみ権利の有価証券化は許されるとする見解とが対立している状況にあり、投資信託、貸付信託など特別法の定めがあるものを除いて、受益権を有価証券化してその円滑な流通を安定的に図ることは困難であった。
そこで、新信託法では、新たな信託の類型として、受益権を表示する受益証券を発行する信託の特例が設けられ、より広く、受益証券を発行して受益権の流通性を強化することができるようになった。
なお、受益証券発行信託においては、受託者の善管注意義務の軽減が許容されない(新信託法212条1項)。また、一般の信託と異なり、受益者による濫用的な権利行使に対処する観点から、受益者が単独で行使することができる権利(新信託法92条参照)のうち一部のものについて、信託行為の定めによって、その行使に一定の制約を課すことができる(新信託法213条)。
(4)限定責任信託の創設
限定責任信託とは、受託者が、信託に関して負担する債務について、信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う信託をいう(新信託法2条12項)。
信託においては、受託者が信託事務として行った取引から生じた債務のように信託に関して負担する債務については、受託者は、信託財産のみならず、固有財産によっても責任を負うことになるのが原則である。しかし、特に、信託において取引等を繰り返して行う場合や借入れ等を行う場合には、受託者の責任を制限する必要性が高いとの指摘がされていた。
そこで、新信託法では、新たな類型の信託として限定責任信託が創設されている(なお、不法行為に基づく損害賠償請求権については、いわゆる所有者の工作物責任を除き、責任が限定されることとはならない(新信託法217条1項参照))。
もっとも、受託者と取引等をする債権者を保護するため、取引の相手方に対して限定責任信託であることを示すべき義務を受託者に課すほか、会計帳簿等の作成等を受託者に義務付け、財産給付の制限(株式会社における剰余金分配規制に類似する)やその制限に反する給付に関する責任を設け、さらに、限定責任信託の登記の制度を新設するなどしている。
(5)受益者の定めのない信託(目的信託)の創設
旧信託法のもとでは、公益信託を除いて、受益者の定めのない信託は認められていなかった。しかし、公益信託以外にも受益者の定めのない信託を許容することにより、厳密な意味で公益目的とはいえない社会活動(市民活動やボランティア活動など)の受け皿等としての信託の利用が可能となるとの指摘がされていた。
そこで、新信託法では、受益者の定めのない信託を一般に許容するとともに、あまりに長期間にわたって受益者の定めのない信託の存続を認めると信託に供される財産の流通を阻害することにもなりかねないとの指摘を踏まえ、その有効期間を20年間に限ることとされている(新信託法259条)。
なお、受益者の定めのない信託においては、信託財産の給付を受けるべき者であり、かつ、受託者に対する監督権限を行使し、その他信託に関する意思決定を行う者としての「受益者」の存在は一切予定されていない。そのため、受益者の権利については、基本的に、委託者が行使するものとされている(新信託法260条・261条)。
Ⅲ 信託法整備法における会社法の一部改正の概要
信託法整備法においては、会社法の一部改正がされ、不発行の株式・新株予約権・社債につき、これらのものが信託財産に属する旨を株主名簿等に記載し、または記録しなければ、これらのものが信託財産に属することを株式会社その他の第三者に対抗することができないとされた(信託法整備法による改正後の会社法154条の2、272条の2、695条の2)。これは、旧信託法3条3項を引き継いだものであるが、この際、新株予約権や社債についても同様の扱いとすることとされたものである。
これに対し、株券の発行された株式等については、特段の公示は要しないこととされている(なお、分別管理の観点からは、原則として、信託財産に属する財産と固有財産および他の信託の信託財産に属する財産とを外形上区別することができる状態で保管する方法によって分別することになる(新信託法34条1項2号イ))。
他方、振替制度の対象となった振替株式等については、当該振替株式等が信託財産に属する旨を振替口座簿に記載し、または記録しなければ、これが信託財産に属することを第三者に対抗することができない(信託法整備法による改正後の社債、株式等の振替に関する法律142条)。
(てらもと・まさひろ/むらまつ・ひでき/とみざわ・けんいちろう/すずき・ひであき/みきはら・さとし)
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