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解説記事2007年04月16日 【会計基準等解説】 企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」および同適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」の解説(2007年4月16日号・№207)

実務解説
企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」および同適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」の解説

 企業会計基準委員会 研究員 小堀一英

Ⅰ.はじめに

 
企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は、平成19年3月14日に、企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「会計基準」という。)および同適用指針第14号「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」という。)を公表した(脚注1)。これらは、平成18年11月1日に公開草案を公表し、広くコメントの募集を行った後、ASBJにおいて寄せられたコメントを検討し、公開草案の修正を行った上で公表するに至ったものである。
 本稿では、本会計基準および適用指針について解説を行うこととするが、四半期財務諸表を対象とした初めての会計基準等であることから、必要に応じて設例を交えながら、個別・具体的な会計処理に関する解説も加えることとしたい。なお、文中意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。

Ⅱ.目的と前提

 本会計基準および適用指針は、今般、法律(脚注2)に基づく四半期報告制度が導入されたことに伴い開示されることとなる四半期連結財務諸表または四半期個別財務諸表(以下あわせて「四半期財務諸表」という。)に適用される会計処理および開示を定めることを目的としたものである。また、これらの検討は、これまでの半期報告制度や証券取引所の自主ルールに基づく四半期開示、さらには諸外国において行われている四半期開示の内容を参考にしつつ、四半期会計期間終了後45日以内に公認会計士または監査法人のレビュー手続を経た上で開示しなければならないという、適時性に係る強い制約があることを前提として行われた。したがって、四半期財務諸表の作成のために採用する会計処理の原則および手続は、四半期特有の会計処理を除き、原則として年度の財務諸表と同じものにしなければならないとしつつも、財務諸表利用者の判断 を誤らせない限りにおいて採用することのできる簡便的な会計処理に関する定めを設けている(後述Ⅲ2(3)参照)。

Ⅲ.会計基準および適用指針の概要

 本会計基準では、四半期連結財務諸表と四半期個別財務諸表のそれぞれについて定めを設けているが、両者はおおむね同趣旨の定めとなっており、また、四半期連結財務諸表を開示する場合には四半期個別財務諸表の開示は要しないことから(会計基準第6項)、本稿では特段の断りのない限り、四半期連結財務諸表を対象として解説することとする。
1 四半期連結財務諸表の範囲および開示対象期間
(1)範囲
 四半期連結財務諸表の範囲は、以下の3つとする(会計基準第5項)。
① 四半期連結貸借対照表
② 四半期連結損益計算書
③ 四半期連結キャッシュ・フロー計算書
 年度の連結財務諸表あるいは中間連結財務諸表においては、連結株主資本等変動計算書の開示が求められていることから、四半期連結財務諸表にもこれを含めるかどうかが問題となった。しかし、四半期開示制度が定着している米国においても四半期段階の株主資本等変動計算書は求められていないこと、また、四半期開示における迅速性の要請などを勘案した結果、四半期では連結株主資本等変動計算書の開示は求めないものとされた。
 ただし、株主資本の金額に著しい変動があった場合には、その主な変動事由について注記す るものとされている(会計基準第19項(13))。
(2)開示対象期間
 四半期報告書に含まれる財務諸表等については、財務諸表の種類ごとに次のとおり定められている(会計基準第7項)。
① 四半期貸借対照表関係
・四半期会計期間の末日の四半期貸借対照表
・前年度の末日の要約貸借対照表
② 四半期損益計算書関係
・四半期会計期間(3ヶ月)の四半期損益計算書
・前年度の対応する四半期会計期間(3ヶ月)の四半期損益計算書
・期首からの累計期間の四半期損益計算書
・前年度の対応する累計期間の四半期損益計算書
③ 四半期キャッシュ・フロー計算書関係
・期首からの累計期間の四半期キャッシュ・フロー計算書
・前年度の対応する累計期間の四半期キャッシュ・フロー計算書
2 会計処理
(1)基本的な考え方
 四半期連結財務諸表の作成のために採用する会計処理の原則および手続は、四半期特有の会計処理を除き、原則として年度の連結財務諸表の作成にあたって採用する会計処理の原則および手続に準拠しなければならないが、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、簡便的な会計処理によることができる(会計基準第9項)。この簡便的な会計処理が認められるものとしては、中間連結財務諸表等の作成基準で認められているもののほか、一般債権の貸倒見積高の算定方法、棚卸資産の収益性の低下による簿価切下げの方法、原価差異の配賦方法、固定資産の減価 償却費の算定方法、経過勘定項目の処理方法、
税金費用の算定方法などが考えられる(後述(3)のとおり、これらについては適用指針において具体的なガイダンスが示されている。)。
 また、採用した会計処理の原則および手続は、これを継続して適用し、みだりに変更してはならない(会計基準第10項)。なお、ここでは、直前の四半期財務諸表との継続性のみならず、前年度の財務諸表との継続性も求められている点に留意しなければならない。
(2)四半期特有の会計処理
 四半期連結財務諸表の性格としていわゆる「実績主義」の考え方を推し進めれば、平成10年3月改正前の中間財務諸表作成基準で認められていた営業費用の見越し・繰延べは認められないこととなる。しかしながら、四半期会計期間は3ヶ月という短い会計期間であるため、この考え方を貫くと操業度等が大きく変動した場合などにおいて売上と売上原価の対応関係が適切に表示されない可能性もある。そこで、本会計基準では、①原価差異の繰延処理と②後入先出法における売上原価修正について、一定の条件を満たした場合には、継続適用を条件に四半期特有の会計処理として認めることとした。また、あわせて、③税金費用の計算における年間見積実効税率の使用などについても、四半期特有の会計処理として定めている。
 原価差異の繰延処理(【設例1】)
 標準原価計算等を採用している場合において、原価差異が操業度等の季節的な変動に起因して発生したものであり、かつ、原価計算期間末までにほぼ解消が見込まれるときには、継続適用を条件として、当該原価差異を流動資産または流動負債として繰り延べることができる(会計基準第12項)。
 これは、予定価格または標準原価が年間(または6ヶ月等)を基礎に設定されているために発生する原価差異で、原価計算期間末である年度末(または第2四半期会計期間末等)までにほぼ解消が見込まれる場合に、上記の会計処理を認めることとしたものである。
 なお、この定めは四半期会計期間における売上と売上原価の対応をより適切に表示するためのものであるため、原価計算期間が四半期会計期間と同じまたはそれよりも短い場合や、原価計算期間末までに原価差異の解消が見込まれない場合には認められない。
② 後入先出法における売上原価修正(【設例2】)
 棚卸資産の評価方法に後入先出法を採用している場合において、棚卸資産の四半期会計期間の末日における数量が年度の期首の数量より少ないが、年度末までにその不足分を補充することが合理的に見込まれるときには、継続適用を条件として、その再調達価額に基づいて売上原価を加減し、当該加減した金額を流動資産または流動負債として繰り延べることができる(脚注3)(会計基準第13項)。
 これは、年度末までに不足分が補充されることが見込まれているにもかかわらず、四半期会計期間において期首以前の古い単価による売上原価が計上されると、必ずしも売上高と売上原価が適切に対応しているとは言えないと考えられるためである。

③ 税金費用の計算
 i)年間見積実効税率の使用(【設例3】
 法人税等は年度決算の終了後において確定するため、累進税率が適用されるような場合には、四半期会計期間を含む年度の法人税等の計算に適用される税率に基づき、原則として年度の決 算と同様の方法により計算することになる。
 ただし、本会計基準では、四半期会計期間を含む年度の税引前当期純利益に対する税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前四半期純利益に当該見積実効税率を乗じて計算することができるものとしている。また、この場合における四半期貸借対照表には、未払法人税等その他適当な科目により流動負債または流動資産として表示し、前年度末の繰延税金資産および繰延税金負債については、回収可能性等を検討した上で、四半期貸借対照表に計上する(会計基準第14項)(脚注4)。
 なお、各四半期会計期間(3ヶ月)の税金費用の計上額は、原則として、期首からの累計期間における税金費用の額から直前の四半期会計期間の末日までの期首からの累計期間における税金費用の額を差し引いて計算するものとした。これは、期中における見積実効税率等の変更を考慮したためである。
 ii)未実現利益の消去に係る税効果
 期首から四半期会計期間末までの連結会社間での取引により生じた未実現利益を四半期における連結手続上で消去するにあたり、当該未実現利益額が、売却元の年間見積課税所得額(税引前四半期純利益に年間見積実効税率を乗じて計算する方法による場合は、予想年間税引前当期純利益)を上回っている場合には、連結消去に係る一時差異の金額は、当該年間見積課税所得額(または、予想年間税引前当期純利益)を限度とする(適用指針第22項)。

(3)簡便的な会計処理
 四半期財務諸表は、年度の財務諸表や中間財務諸表よりも開示の迅速性が求められることから、利害関係者の判断を誤らせない限り、簡便的な会計処理によることができるものとされた(会計基準第9項)。なお、適用指針では、おお むね想定される次の簡便的な会計処理を例示しているが、これらの処理が認められるのはあくまで利害関係者の判断を誤らせない場合に限られるため、その適用にあたっては十分な留意が必要である。
 一般債権の貸倒見積高の算定(適用指針第3項)
 四半期会計期間末における一般債権に対する貸倒見積高の算定において、直近の財務諸表あるいは四半期財務諸表の作成時に使用した貸倒実績率等と著しく変動していないと考えられる場合には、当該直近の貸倒実績率等の合理的な基準を使用することができる。
 なお、ここでいう「貸倒実績率等の合理的な基準」には、必要に応じて過去の貸倒実績率を補正したものや、企業が新規事業に参入した場合など過去の貸倒実績率を用いることができないときに採用する同業他社の引当率や経営上用いている合理的な貸倒見積高などが含まれる。
 棚卸資産の実地棚卸の省略(適用指針第6項)
 四半期会計期間末における棚卸高は、前年度に係る実地棚卸高を基礎として、合理的な方法により算定することができる。
③ 棚卸資産の収益性の低下による簿価切下げ(適用指針第8項)
 通常の販売目的で保有する棚卸資産の簿価切下げにあたり、「棚卸資産の評価に関する会計基準」では、実務上、収益性が低下していないことが明らかであり、事務負担をかけて収益性の低下の判断を行うまでもないと認められる場合には、正味売却価額を見積る必要はないとされている。すなわち、収益性が低下しているかどうか不明なものについては、正味売却価額の見積りが必要ということになる。
 しかし、四半期会計期間末における通常の販売目的で保有する棚卸資産の簿価切下げにあたっては、収益性が低下していることが明らかな棚卸資産についてのみ、正味売却価額を見積り、簿価切下げを行うこともできるものとした。なお、収益性が低下していることが明らかかどうかは、棚卸資産を管理する製造部門または営業部門の損益の状況や、品目別の損益管理を行っている場合における当該損失の発生状況などにより判断する。
 また、営業循環過程から外れた滞留または処分見込等の棚卸資産であって、前年度末において帳簿価額を処分見込価額まで切下げている場合には、当該四半期会計期間において前年度から著しい状況の変化がないと認められる限りにおいて、前年度末における貸借対照表価額を引き続き計上することができる。
④ 原価差異の配賦方法(適用指針第9項)
 予定価格等または標準原価を用いているために原価差異が生じた場合、当該原価差異の棚卸資産と売上原価への配賦は、四半期財務諸表作成に求められる迅速性を考慮し、年度の決算と比較して簡便的な方法によることができることとした。
 ただし、簡便的に、年度末における原価差異の配賦区分よりも大きな区分により配賦計算を行う場合であっても、財務諸表利用者の判断を誤らせない範囲であること、例えば、事業の種類別セグメントを超えない程度の区分による配賦計算を行うことが必要と考えられる。
⑤ 経過勘定項目の処理方法(適用指針第11項)
 経過勘定項目は、一定の契約に従った継続的な役務提供に基づくものであるため、毎期同時期の残高が近似することも多いと考えられる。したがって、四半期財務諸表作成に求められる迅速性を考慮し、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、これらを合理的な算定方法による概算額で計上することができることとした。
⑥ 減価償却費の算定における合理的な予算制度の利用(適用指針第12項)
 固定資産の取得や除売却は年間を通して行われることが通常であることから、四半期会計期間末ごとに、当該四半期会計期間に対応する減価償却費を算定することは、迅速性の観点から困難な場合も考えられる。このため、固定資産の年度中の取得、売却または除却等の見積りを考慮した上で減価償却費に係る予算を策定している場合には、当該予算に基づく年間償却予定額を期間按分する方法により、減価償却費を計上することができることとした。
 ただし、期中に取得、売却または除却する固定資産の減価償却費に重要性がある場合には、その部分について適切に反映するよう当該期間按分額を調整するものとした。これは、期中において重要な設備の取得や除却がある場合においてまで、予算をベースとした減価償却費をそのまま利用することは、利害関係者の判断を誤らせるおそれがあることによる。
⑦ 減価償却方法に定率法を採用している場合の減価償却費の期間按分計算(適用指針第13項)
 減価償却の方法として定率法を採用している場合には、年度に係る減価償却費の額を期間按分する方法により、四半期会計期間または期首からの累計期間の減価償却費を計上することができる。これは、四半期会計期間に対応する償却率を使用して減価償却費を計算するのは実務上煩雑であるため、年間の減価償却費を見積り、四半期会計期間においてはその4分の1相当額を計上することを容認したものである。
⑧ 税金費用の計算(適用指針第15項)
 年度決算と同様の方法により四半期会計期間の法人税等を算出する場合であっても、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、納付税額の算出等にあたり簡便的な方法によることができることとした。この場合における簡便的な方法としては、納付税額の算出にあたり加味する加減算項目や税額控除項目を重要なものに限定することなどが考えられる。
 なお、この取扱いは、税金費用の計算において年間見積実効税率を使用した場合(前述(2)③i)参照)における一時差異に該当しない差異や税額控除等の算定にあたっても同様である(適用指針第19項)。
⑨ 繰延税金資産の回収可能性の判断(適用指針第16項、第17項)
 四半期財務諸表に計上された繰延税金資産についても、原則として、年度の決算と同様の方法により回収可能性の判断を行うこととなるため、四半期決算日ごとに、将来の回収見込みについて見直しを行うことになる。しかしながら、収益力に基づく課税所得の十分性やタックス・プランニング、あるいは将来加算一時差異の十分性についてその都度作成・判断することは実務上過度な負担となるとも考えられるため、次のような取扱いを認めることとした。
 まず、重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転または悪化、その他経営環境の著しい変化が生じておらず、かつ、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がないと認められる場合には、繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングを利用することができることとした。
 一方、重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転または悪化、その他経営環境に著しい変化が生じ、または、一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動があると認められる場合には、繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、財務諸表利用者の判断を誤らせない範囲において、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングに、当該著しい変化または大幅な変動による影響を加味したものを使用することができることとした。
⑩ 重要性が乏しい連結会社における税金費用の計算の特例(適用指針第20項)
 連結財務諸表における重要性が乏しい連結会社(親会社および連結子会社)において、経営環境に著しい変化が生じておらず、かつ、四半期財務諸表上の一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がない場合には、四半期財務諸表における税金費用の計算にあたり、税引前四半期純利益に、前年度の損益計算書における税効果会計適用後の法人税等の負担率(脚注5)を乗じて計算する方法によることができるものとした(【設例4】)。なお、ここでいう連結財務諸表における重要性が乏しい親会社とは、持株会社制を採用している企業集団における持株会社などを想定している。
 また、この方法は、当該連結会社の前年度末に計上された繰延税金資産および繰延税金負債の回収可能性等の判断結果が当該四半期会計期間末まで継続している場合にのみ認められるため、前年度末における繰延税金資産および繰延税金負債はそのまま四半期貸借対照表に計上されることになる。

⑪ その他の簡便的な会計処理
 持分プーリング法の適用時におけるみなし結合日から企業結合日前日までの結合当事企業間の内部取引の相殺消去、連結会社相互間の債権債務および取引の相殺消去、連結上の未実現損益の消去の取扱いについて、それぞれ簡便的な会計処理が認められている(適用指針第27項~第30項)。
(4)その他
 適用指針では、四半期特有の会計処理や簡便的な会計処理のほか、次の取扱いについてガイダンスを提供している。
① 有価証券に係る減損損失の取扱い(適用指針第4項)
 年度決算において有価証券の減損処理を行った場合には、当該切下げ後の価額を翌期首の取得原価とするが(すなわち、減損損失の戻入れは認められない。)、四半期会計期間末に計上した減損損失については、継続適用を条件として、いわゆる洗替え法と切放し法のいずれかの方法を選択適用することができることとした。
 したがって、四半期報告制度の導入以後、初めて有価証券の減損処理を行う必要が生じた場合には、会社の決算方針や税務上の取扱いなどに十分留意しつつ、いずれの方法を採用するかどうか決定しなければならない。
② 市場価格のない株式の減損処理(適用指針第5項)
 市場価格のない株式について、発行会社の財政状態の悪化により実質価額(通常は、1株当たりの純資産額に所有株式数を乗じることにより算定される。)が著しく低下したときは相当の減額を行わなければならないが、当該財政状態が悪化しているかどうかの判断にあたっては、四半期会計期間末までに入手し得る直近の財務諸表を使用することとした。これは、時価のない株式の発行会社の四半期決算書を入手することは通常困難であると考えられるためである。もっとも、直近の財務諸表を使用する場合であっても、その後の財政状態に重要な影響を及ぼす事項が判明した場合には、直近の財務諸表に当該判明した事項を加味することが望ましい。
 また、子会社株式および関連会社株式の減損処理の検討にあたっては、一般には、当該子会社および関連会社の直近の状況を把握することが容易であると考えられるため、直近の貸借対照表には反映されていない四半期会計期間末における資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味した実質価額を、可能な限り四半期会計期間ごとに算定することが望ましいと考えられる。
③ 棚卸資産の簿価切下げに係る取扱い(適用指針第8項)
 棚卸資産の簿価切下げを行うにあたり、年度決算で洗替え法を採用している場合には、四半期決算においても洗替え法を採用する。一方、年度決算で切放し法を採用している場合には、税務上の取扱い等との整合性を考慮し(脚注6)、切放し法と洗替え法のいずれかを選択適用することができることとした。
④ 固定資産の減損の兆候(適用指針第14項)
 減損処理は、固定資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合に、その回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理であり、直接的に貸借対照表価額を求めるものではない。したがって、減損処理は、年度末のみならず、期中において行われる場合もある。しかしながら、実務上は、年度末において、所有する資産または資産グループに関連する営業損益や営業キャッシュ・フローあるいはその市場価格等を算定または入手し、減損の兆候があるものを識別していることも多いと考えられる。
 そこで、前年度末等において所有する資産または資産グループについて全体的に減損の兆候を把握している場合には、必ずしも四半期会計期間ごとに資産または資産グループに関連する営業損益、営業キャッシュ・フローあるいはその市場価格を算定または入手することを求めるのではなく、使用範囲または方法について当該資産または資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化を生じさせるような意思決定や、経営環境の著しい悪化に該当する事象が発生したかどうかについて留意することとした。
⑤ 退職給付引当金(適用指針第24項~第26項)
 四半期決算において計上する退職給付費用は、原則として、年間の費用処理額を期間按分することにより計上する。

3 開示
(1)四半期連結財務諸表の科目の表示
 四半期連結財務諸表の表示方法は、年度の連結財務諸表に準じる。ただし、財務諸表利用者の判断を誤らせない限りにおいて、主要な科目について独立掲記した上で、その他の科目は集約して記載することができる(会計基準第17項)。
 また、資産、負債、純資産、収益および費用等の各表示科目および表示区分は、年度の連結財務諸表における表示との整合性を勘案しなければならない(会計基準第18項)。したがって、例えば、第2四半期から、役員退職慰労金の会計処理を支出時に費用として処理する方法から期末時の要支給額を役員退職慰労引当金として計上する方法に変更した場合、第2四半期会計期間(3ヶ月)の四半期損益計算書には過年度の期間が負担すべき額と第1四半期会計期間が負担すべき額が特別損失(前期損益修正)として計上されるが、期首からの累計期間(6ヶ月)に係る四半期損益計算書には、年度の財務諸表との整合性を勘案して、過年度の期間が負担すべき額のみ特別損失として計上されることになる
ものと思われる。
(2)注記事項
 会計基準では、次の場合または項目について注記しなければならないとしている(脚注7)。なお、これらは最小限の項目を掲げたものであり、個々の企業集団が、四半期会計期間における実態を適切に示すために必要と認められる事項を、これらに加えて開示することを妨げるものではない。
① 連結の範囲その他連結の方針に関する事項について重要な変更を行った場合
② 重要な会計処理の原則および手続について変更を行った場合
③ 当年度の第2四半期以降に自発的に重要な会計処理の原則および手続について変更を行った場合
④ 前年度の連結財務諸表の作成にあたり自発的に重要な会計処理の原則および手続について変更を行っており、かつ、前年度の四半期連結財務諸表と当年度の四半期連結財務諸表の作成にあたっての重要な会計処理の原則および手続との間に相違が見られる場合
⑤ 四半期連結財務諸表の表示方法を変更した場合
⑥ 簡便的な会計処理および四半期特有の会計処理を採用している場合
⑦ セグメント情報
⑧ 1株当たり利益情報
⑨ 1株当たり純資産額情報
⑩ 発行済株式総数、自己株式数、新株予約権(自己新株予約権を含む。)に関する事項
⑪ ストック・オプションを新たに付与した場合および重要な事項に変更がある場合
⑫ 配当に関する事項
⑬ 株主資本の金額に著しい変動があった場合
⑭ 四半期会計期間の末日において、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象または状況が存在する場合
⑮ 事業の性質上、営業収益または営業費用に著しい季節的変動がある場合
⑯ 重要な保証債務その他の重要な偶発債務
⑰ 重要な企業結合に関する事項
⑱ 重要な事業分離に関する事項
⑲ 重要な後発事象
⑳ 四半期連結キャッシュ・フロー計算書における現金および現金同等物の四半期末残高と四半期連結貸借対照表に掲記されている科目の金額との関係
(21) 企業集団の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況を適切に判断するために重要なその他の事項

Ⅳ.適用時期等

 本会計基準および適用指針は、四半期報告制度の導入時期とあわせて、平成20年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度から適用する。なお、四半期報告書に含まれる財務諸表の開示対象は、当該年度のものに加え、その前年度に係るものも必要とされているが(前述Ⅲ1(2)参照)、適用初年度においては、前年度の対応する四半期会計期間および期首からの累計期間の四半期損益計算書等の記載は要しないものとされている。(こぼり・かずひで)

脚注
1
会計基準および適用指針の全文については、ASBJのホームページ(http://www.asb.or.jp/html/documents/docs/ed16_shihanki/)で参照することができる。
2 平成18年6月14日に公布された「証券取引法等の一部を改正する法律」(平成18年法律第65号)および「証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成18年法律第66号)。なお、改正法第3条の規定により、「証券取引法」の名称は「金融商品取引法」に改められる。
3 ただし、棚卸資産については企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」が適用されるため、売上原価を減算した金額を流動資産として繰り延べるにあたっては、対象となっている棚卸資産の収益性の低下との関係に留意する必要があると思われる。
4 連結納税制度を採用した場合であっても、予想年間税金費用と予想年間税引前当期純利益を合理的に見積ることができるときには、同様の取扱いによることができる(適用指針第23項)。


6 前期末の帳簿価額よりも正味売却価額が下がったため四半期決算で簿価を切り下げたが、その後の年度末において正味売却価額が上昇したケースを想定していただきたい。
7 より詳細な注記内容については、会計基準および適用指針を参照いただきたい。

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