コラム2007年08月13日 【SCOPE】 取引の透明性を確保するMBO指針案の概要を読み解く(2007年8月13日号・№223)
急増するMBO取引に対応した実務上の指針を示す
取引の透明性を確保するMBO指針案の概要を読み解く
経済産業省は8月3日、「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針(案)」を公表した。8月17日まで意見募集を行う。MBO指針案は8月2日に同省の企業価値研究会(座長:神田秀樹東京大学大学院教授)が公表した報告書がもとになっているもので、MBO取引を行ううえでの実務上の指針となるものだ(本誌221、222号参照)。今回のスコープでは、MBO指針案の概要を紹介する。
2大原則のもとで実務上の対応策を示す
レックスホールディングスやすかいらーくなど、会社の経営者が資金を出資し、事業の継続を前提として自社の株式を購入するMBO取引が増加傾向にある。しかし、MBO取引等を巡っては、多数の当事者との利害調整が生じるなか、既存の株主等から取引の透明性を求める指摘がなされている。たとえば、①業績の下方修正を行った後に、MBOにおける公開買付価格の算定を行うケース、②MBO取引により、上場廃止となる可能性が高い場合には、既存の株主は公開買付価格の算定に疑問があっても売却せざるを得ないケースなどの問題点が指摘されている。
このような状況に鑑み、経済産業省では、企業価値研究会の報告書を受けてMBO取引に関する指針案をまとめたものである。
指針案では、(1)企業価値の向上(望ましいMBOか否かは、企業価値を向上させるか否かを基準に判断されるべきである)、(2)公正な手続を通じた株主利益への配慮(MBOは取締役と株主との間の取引であるため、株主にとって公正な手続を通じて行われ、株主が受けるべき利益が損なわれることのないように配慮されるべきである)という2つの原則のもと、①株主の適切な判断機会の確保、②意思決定過程における恣意性の排除、③価格の適正性を担保する客観的状況の確保、④その他という4種類の枠組みで実務上の対応を検討することが重要であるとしている。
社外役員の「独立性」に関しても株主に説明
そのうえで指針案では、実務上の対応策を示している(上記の「実務上の対応の整理」を参照)。
当初は、MBOに際しての公開買付期間について、最低でも30営業日以上に設定する方向であったが、この数値基準については削除された。会社の規模によっても公開買付期間は変わってくるため、柔軟に対応できるよう、比較的長期間に設定することとされている。
また、経営者の恣意性の排除を行う対応策の1つとして、社外役員等への諮問や判断の尊重が挙げられているが、社外役員等の「独立性」については、会社との利害関係について十分に精査し、株主に対する説明が必要としている。
MEMO
今後の企業価値研究会の動向は? 買収防衛策のルールをまとめた「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収暴利策に関する指針」が平成17年5月に経済産業省と法務省との間で策定されているが、その後、実際の企業買収の事例が積み重ねられていることから、企業価値研究会では、今後、買収防衛策のあり方について再検討を行う方針だ。有事における買収者側と被買収者側の行動のあり方などについて検討する。企業価値研究会に「実務小委員会」を設置して、必要に応じて論点などを整理する予定となっている。
たとえば、被買収者側の論点としては、①経営陣の恣意性を排除し、株主に対して透明性・中立性を有する意思決定についての実務上の選択肢、②買収防衛策の導入や発動の際の株主意思の確認、③買収防衛策を平時に導入していない場合における有事における防衛策のあり方など、また、買収者側の論点としては、情報開示のあり方などが挙げられている。
取引の透明性を確保するMBO指針案の概要を読み解く
経済産業省は8月3日、「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針(案)」を公表した。8月17日まで意見募集を行う。MBO指針案は8月2日に同省の企業価値研究会(座長:神田秀樹東京大学大学院教授)が公表した報告書がもとになっているもので、MBO取引を行ううえでの実務上の指針となるものだ(本誌221、222号参照)。今回のスコープでは、MBO指針案の概要を紹介する。
2大原則のもとで実務上の対応策を示す
レックスホールディングスやすかいらーくなど、会社の経営者が資金を出資し、事業の継続を前提として自社の株式を購入するMBO取引が増加傾向にある。しかし、MBO取引等を巡っては、多数の当事者との利害調整が生じるなか、既存の株主等から取引の透明性を求める指摘がなされている。たとえば、①業績の下方修正を行った後に、MBOにおける公開買付価格の算定を行うケース、②MBO取引により、上場廃止となる可能性が高い場合には、既存の株主は公開買付価格の算定に疑問があっても売却せざるを得ないケースなどの問題点が指摘されている。
このような状況に鑑み、経済産業省では、企業価値研究会の報告書を受けてMBO取引に関する指針案をまとめたものである。
指針案では、(1)企業価値の向上(望ましいMBOか否かは、企業価値を向上させるか否かを基準に判断されるべきである)、(2)公正な手続を通じた株主利益への配慮(MBOは取締役と株主との間の取引であるため、株主にとって公正な手続を通じて行われ、株主が受けるべき利益が損なわれることのないように配慮されるべきである)という2つの原則のもと、①株主の適切な判断機会の確保、②意思決定過程における恣意性の排除、③価格の適正性を担保する客観的状況の確保、④その他という4種類の枠組みで実務上の対応を検討することが重要であるとしている。
社外役員の「独立性」に関しても株主に説明
そのうえで指針案では、実務上の対応策を示している(上記の「実務上の対応の整理」を参照)。
当初は、MBOに際しての公開買付期間について、最低でも30営業日以上に設定する方向であったが、この数値基準については削除された。会社の規模によっても公開買付期間は変わってくるため、柔軟に対応できるよう、比較的長期間に設定することとされている。
また、経営者の恣意性の排除を行う対応策の1つとして、社外役員等への諮問や判断の尊重が挙げられているが、社外役員等の「独立性」については、会社との利害関係について十分に精査し、株主に対する説明が必要としている。

MEMO
今後の企業価値研究会の動向は? 買収防衛策のルールをまとめた「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収暴利策に関する指針」が平成17年5月に経済産業省と法務省との間で策定されているが、その後、実際の企業買収の事例が積み重ねられていることから、企業価値研究会では、今後、買収防衛策のあり方について再検討を行う方針だ。有事における買収者側と被買収者側の行動のあり方などについて検討する。企業価値研究会に「実務小委員会」を設置して、必要に応じて論点などを整理する予定となっている。
たとえば、被買収者側の論点としては、①経営陣の恣意性を排除し、株主に対して透明性・中立性を有する意思決定についての実務上の選択肢、②買収防衛策の導入や発動の際の株主意思の確認、③買収防衛策を平時に導入していない場合における有事における防衛策のあり方など、また、買収者側の論点としては、情報開示のあり方などが挙げられている。
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